饋電盤(きでんばん)は受電した高圧を各負荷へ送り出す盤。配電盤との違い、開閉器・保護継電器など内蔵機器の構成と、過電流・地絡保護の選定基準を図解で解説。

饋電盤(きでんばん)とは、受変電設備で受電した高圧電力を、変圧器や各負荷設備へ送り出す(饋電=給電する)ための盤です。「き電盤」「高圧き電盤」とも書きます。配電盤は受電盤・饋電盤・変圧器盤などの総称で、饋電盤はそのうち負荷側へ送り出す役割を持つ盤を指し、遮断器・開閉器・保護継電器で回路ごとの保護と操作を行います。

動く図解この記事のポイントを動く図解にまとめました(2本に分けています・上のボタンで切り替え・波及防止 → 饋電盤とは → 開閉器 → 過電流保護・くり返し再生)。ジャンル「受変電・高圧」で見る →
 

饋電盤って字が難しいですよね。

 
今回の疑問

 

高圧分岐に必要機器って何があるの?

 

ペン太ペン太
ん~この場合って何を入れればいいんだろう・・・

ハリタハリタ
高圧分岐を検討しているのかな?

ペン太ペン太
そうなんだよ。将来増築計画があるから高圧分岐について検討しているんだけど送り出しにどんな機器が必要か全然わかんないんだよ~

ハリタハリタ
それじゃあ今回は高圧分岐の検討手順について解説していこう!

本記事のおすすめの方

  • 将来計画の高圧分岐について検討されている方
  • 改修工事で高圧分岐を検討されている方
  • 高圧饋電盤の必要な中身について知りたい方
  • 高圧饋電盤とは何か調べている方
この記事でわかること

  1. 高圧饋電盤の検討方法
  2. 必要な開閉器・継電器の選定方法
ペン太ペン太
高圧き電盤の設計って、開閉器を選べばそれで終わりじゃないんですか?
ハリタハリタ
検討事項は開閉器と継電器の2つです。VCBとLBS+PFがあり、過電流保護が必要ならVCBを選定するんですよ。

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この記事で押さえる3つのこと

  • 検討するのは、開閉器と継電器の2つ。
  • 過電流保護は、CB+OCR+CT(LBS+PFではできない)。
  • 継電器の省略は、同じ電気室内などで保護協調を確かめて検討する。

高圧き電盤の選定方法

饋電盤 高圧を送り出す盤。
配電盤 受電・饋電・変圧器盤の総称。
1 開閉器を選ぶ。
2 継電器を選ぶ。
たとえるなら
饋電盤は、家の水道の分岐ヘッダー
家の水道は、元の配管からヘッダーで各部屋へ分け、それぞれに元栓があります。饋電盤も同じで、受電した高圧を回線ごとに分けて送り出し、回線ごとに開閉器と継電器を付けて、事故のときにその回線だけを止められるようにします。
高圧饋電盤の検討に必要なもの

高圧饋電盤には次の二つの検討事項について考慮する必要があります

  1. 開閉器の選定
  2. 継電器の選定

ペン太ペン太
この2つでいいのか?もっと難しいと思っていたぞ

ハリタハリタ
必要な条件を決めてそれに必要な機器を選定すればいいんだよ

ペン太ペン太
やっぱりなんだか難しそうだな・・・

ハリタハリタ
詳しく解説していくから大丈夫!それじゃあ続きを見ていこう!

ここまでのポイント
  • 検討事項は「開閉器の選定」と「継電器の選定」の2つ
  • 必要な条件を先に決めれば、必要な機器が決まる

開閉器の種類

短絡 両方とも切れる。
過電流 VCB+OCR+CTだけ。
LBS+PF OCRの信号で切れない。
コスト LBS+PFが安い。
たとえるなら
LBS+PFは「ヒューズ」、VCBは「見張り役の合図で切れるブレーカー」
ヒューズは大きな短絡では切れて守ってくれますが、じわじわ続く使いすぎを見張って切ったり、離れた所から合図して切ったりはできません。VCBは、継電器という見張り役の合図で切れるので、過電流保護や時限投入まで組めます。
ここに注意!
「LBS+PFでも、過電流保護ができる」ではありません。
PFで短絡は切れますが、過電流継電器(OCR)の信号を受けて切ることはできません。過電流保護が要るなら、CB(VCB)+OCR+CTにします。
ハリタハリタ
検討すべき開閉器は主に次の2種類があります
VCB

 
LBS+PF

ハリタハリタ
目的と機器の機能をすり合わせて選定してます

対応可能な機能について

開閉器を選定する場合、求める機能によって各々の選定が決まります

次の表を見たときに必要な機能・項目によって可否は異なるため

件名・規模によって必要な機能を判断し選定する必要がありますが

主な判断要素として下記項目が挙げられます。

必要な条件

設置条件(が必要な場合) VCB LBS+PF
過電流保護 〇 ×
短絡保護 〇 〇
時限協調・投入時限 〇 ×
インターロック 〇 ×
コスト 高い 低い
   
 
通常の選定を考慮し下記の場合にて比較しています
  • VCB(固定型)
  • LBS+PF(引き外し機能なし)

ペン太ペン太
結局必要なものそのものがよくわかってないんだよな

ハリタハリタ
なぜ必要か。目的について解説していこう!

過電流保護の目的について

過電流保護の目的

過電流保護機能を持たせる。とは

高圧受変電設備の負荷側で過電流が発生した場合、

故障部分・範囲のみを切り離すことで

他の機器や系統への波及事故を防ぐことができます。

短絡電流又は過電流が発生した場合、

計器用変流器(CT)を経由し過電流継電器(OCR)にて検出することができます。

その信号を遮断器(CB)に送り動作させることで系統から切り離すことができます。

この機能を過電流保護機能といいます。

そのため過電流保護機能が必要な場合

CB +(OCR+CT)が必要となります

図面にはこう書こう!

ペン太ペン太
難しいな~

ハリタハリタ
継電器の種類は最低限思えておこう!

ペン太ペン太
大きな電流が流れたら遮断する機能だな!
ハリタハリタ
そうだね!その回路を遮断することで他の系統への波及を防ぐんだよ
下記のようなLBSを接続した結線では過電流が発生した際、過電流継電器の検出信号を送っても動作させることはできません。つまり過電流保護ができないため、過電流保護が必要な場合は、必然的にCBにて選定する必要があります。

過電流保護に必要な機器

 
計器用変流器(CT)

過電流継電器

OCR|過電流継電器(Over Current Relay) 電路の短絡や過電流による短絡電流・過電流を変流器により検出し、設定した電流値の大きさによって動作する継電器です。

遮断器(CB)

地絡保護の目的について

地絡保護の目的

地絡保護機能を持たせる。とは

地絡事故が発生した場合、故障部分・範囲のみを切り離すことで

他の機器や系統への波及事故を防ぐことができます。

地絡事故が発生した場合、地絡継電器(GR)にて検出することができます。

その信号を遮断器(CB)に送り動作させることで系統から切り離すことができます。

この機能を地絡保護機能といいます。

そのため地絡保護機能が必要な場合

CB+(GR+ZCT) または CB+(DGR+ZCT+ZPD)が必要となります

図面にはこう書こう!

  • GRの場合
  • DGRの場合

地絡保護に必要な機器

 
零相変流器(ZCT)

地絡継電器(GR)

地絡方向継電器(DGR)

遮断器(CB)

ペン太ペン太
地絡保護はどう組むんですか?過電流と同じ機器でまかなえます?
ハリタハリタ
過電流保護はCB+OCR+CT、地絡保護はCB+GR+ZCTの組み合わせです。もらい事故防止には方向性のDGR+ZCT+ZPDが推奨ですよ。
ここまでのポイント
  • 過電流保護・時限協調・インターロックが必要ならVCB
  • 短絡保護だけならLBS+PFでも対応できる
  • 過電流保護はCB+(OCR+CT)、地絡保護はCB+(GR+ZCT または DGR+ZCT+ZPD)

機器の組み合わせ選定方法

過電流 CT+OCR。
地絡 ZCT+GR。
方向性 ZCT+ZPD+DGR。
切るのは どれもCB。
ここに注意!
「DGRは、ZCTだけでつなげる」ではありません。
DGRは、零相電流(ZCT)と零相電圧の両方を見て向きを判別します。零相電圧を取り出すZPDなどが要ります。
ペン太ペン太
機能はわかったけど結局何をどうしたらいいんだい
ハリタハリタ
学んだ機能が必要かどうかを件名毎に判断する必要があるんだよ
ペン太ペン太
全体の構成と施設の重要性で判断しなきゃいけないのか
ハリタハリタ
そうだね。コストと比較して正しい機器を選定しよう!
ペン太ペン太
だけどもうちょっと教えてくれよ
ハリタハリタ
それじゃあよくある設計パターンを解説していこう!

保護継電器選定のパターン

必要な機能

必要な機能 必要な機器
地絡保護 ZCT GR
地絡保護(もらい事故防止) ZCT+ZPD DGR
短絡・過電流保護 CT OCR
 
機能による主の可否

設置条件(が必要な場合) VCB LBS+PF
過電流保護 〇 ×
短絡保護 〇 〇
時限協調・投入時限 〇 ×
インターロック 〇 ×
コスト 高い 低い
   
 
ハリタハリタ
この条件を基に何を求めるか判断していこう!

地絡保護機能の選定基準

地絡保護機能の選定基準

  • 高圧ケーブルとクレーン等の接触事故
  • 小動物がケーブルをかじるなど
配線経路で地絡事故が懸念される場合

地絡継電器を設置します

 
ハリタハリタ
高圧ケーブルが地中埋設や別の設置場所の場合組み込むようにしよう!

地絡方向継電器の選定基準

地絡方向継電器の選定基準

  • 高圧ケーブルの距離が長い場合
  • もらい事故が懸念される場合

地絡方向継電器を設置します

 
ハリタハリタ
方向性と無方向のコスト差は大きくないので迷ったら方向性を選定しよう!
もらい事故 よその地絡で動く。
原因 自分の充電電流。
GR 動いてしまう。
DGR 向きを見て動かない。
ここに注意!
「地絡保護は、どこでもGRで十分」ではありません。
構内ケーブルが長いと、よその回線の地絡で自分の充電電流がZCTを通り、GRが動いてしまうことがあります(もらい事故)。心配なら方向性のDGRを選びます。
地絡継電器の方向性(DGR)は標準で入れる|もらい事故と無方向性の条件.harita-article{line-height:1.9;} .harita-article .ha-lead{font-size...

過電流継電器の選定基準

過電流継電器の選定基準

  • 短絡・過電流保護が必要な場合

過電流継電器を設置します

 
ハリタハリタ
この過電流保護を要求する場合、VCBは必須になるよ

継電器が不要・省略したい場合

継電器を省略したい場合

地絡保護と過電流保護は電気系統の保護に用いるため設置するのが通常です。 ただし、主遮断装置側の保護で足りるか(保護協調)とケーブルの経路を確かめたうえで、下記のような条件では省略を検討することがあります。

  • 同じ電気室の場合
同じ電気室内なのでケーブル事故の発生率が比較的低いものと想定する
  • 高圧ケーブルが金属管で保護されている場合(ひっかけ事故の可能性が低い)
受変電が屋上などでケーブルが金属管で保護されておりケーブル事故の発生率が比較的低いものと想定する などのケーブル事故発生の可能性が低い場合や保護機能が満たされている場合は継電器の省略を検討可能です。

制御が必要な場合

系統に制御が必要な場合

インターロックや時限投入が必要な場合、制御が可能なVCBが必要となります。

  • 時限投入
大型現場などサブ変電所が複数ある場合、停電後の復電などで一斉投入した場合、励磁突入電流が発生し主VCBの不要動作が発生する可能性があります。 励磁突入電流の発生を防ぐため、順次投入を行う場合があります。
一斉投入 突入電流が重なる。
主VCB 不要動作のおそれ。
順次投入 時間をずらす。
制御 VCBで組む。
ここに注意!
「変圧器は、一斉に投入しても問題ない」ではありません。
たくさんの変圧器を一度に入れると、励磁突入電流が重なって主VCBが不要動作することがあります。時間をずらす時限投入(順次投入)は、制御できるVCBで組みます。
ここに注意!
「同じ電気室なら、継電器は省いてよい」ではありません。
省略は、主遮断装置側の保護で足りるか(保護協調)と、ケーブル事故の起きにくさを確かめたうえで検討するものです。通常は設置します。
受変電設備の設計|変圧器の励磁突入電流と有効的な対策方法について詳しく解説 .hz{font-feature-settings:"palt";line-height:1.9} .hz-lead{margin:0...

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取り違えやすいところ正しくは
LBS+PFでも過電流保護ができる過電流保護が必要な場合はVCBが必要
地絡保護はどの現場でもGRでよいもらい事故防止まで求めるならDGR+ZCT+ZPD
継電器は必ず設置しなければならない通常は設置する。省略は保護協調と経路を確かめて検討する
時限投入はLBS+PFでも組める制御が必要な場合はVCBが必要
ここまでのポイント
  • 配線経路で地絡事故が懸念される場合はGRを設置する
  • ケーブルが長い・もらい事故が懸念されるならDGR
  • インターロックや時限投入が必要な場合はVCB

よくある質問(FAQ)

Q1.高圧饋電盤の検討で必要な選定事項は何ですか?
A1.開閉器の選定と継電器の選定の2つを検討する必要があります。

Q2.過電流保護が必要な場合に必要な機器は?
A2.CB+(OCR+CT)が必要です。過電流保護を要求する場合、VCBが必須になります。

Q3.地絡保護が必要な場合に必要な機器は?
A3.CB+(GR+ZCT または DGR+ZCT+ZPD)が必要です。

Q4.継電器を省略できるのはどのような場合ですか?
A4.同じ電気室内である場合や高圧ケーブルが金属管で保護されている場合など、ケーブル事故の起きにくい条件では、主遮断装置側の保護で足りるか(保護協調)を確かめたうえで省略を検討することがあります。通常は設置します。

Q5.DGRにはZCTのほかに何が要りますか?
A5.零相電圧を取り出すZPD(零相電圧検出装置)などが要ります。DGRは零相電流(ZCT)と零相電圧の両方を見て、地絡が自分の回線側か外側かを判別します。

Q6.LBS+PFで守れないのはどんな事故ですか?
A6.PF(限流ヒューズ)で短絡は切れますが、過電流継電器(OCR)の信号を受けて切ることはできません。過電流保護・時限協調・インターロックが必要なら、VCBを選びます。

ペン太ペン太
組み合わせは分かりました。設計を仕上げる前に何を確認すべきですか?
ハリタハリタ
継電器の省略は同一電気室内など例外条件に限ります。通常は設置するのが標準設計と覚えて図面をまとめましょう。

まとめ

高圧き電盤の機器選定方法と設置機器について

検討すべき項目と機能

設置条件(が必要な場合) VCB LBS+PF
過電流保護 〇 ×
短絡保護 〇 〇
時限協調・投入時限 〇 ×
インターロック 〇 ×
コスト 高い 低い
機能に必要な機器
必要な機能 必要な機器
地絡保護 ZCT GR
地絡保護(もらい事故防止) ZCT+ZPD DGR
短絡・過電流保護 CT OCR
地絡保護機能の選定基準
  • 高圧ケーブルとクレーン等の接触事故
  • 小動物がケーブルをかじるなど
地絡方向継電器の選定基準
  • 高圧ケーブルの距離が長い場合
  • もらい事故が懸念される場合
過電流継電器の選定基準
  • 短絡・過電流保護が必要な場合
継電器が不要・省略したい場合
  • 同じ電気室の場合
  • 同じ電気室内なのでケーブル事故の発生率が比較的低いものと想定する
  • 高圧ケーブルが金属管で保護されている場合(ひっかけ事故の可能性が低い)
制御が必要な場合(VCBが必要)
  • インターロック
  • 時限投入
 

高圧き電盤は、必要な機能を先に決めてから、開閉器と継電器を選ぶのが基本の進め方です。

こんな場面選ぶ構成理由
過電流・短絡を確実に保護したいVCB+(OCR+CT)過電流保護はLBS+PFでは対応できないため
配線経路で地絡事故が懸念されるCB+GR+ZCT経路の地絡を検出して故障範囲だけを切り離すため
ケーブルが長く、もらい事故が心配CB+(DGR+ZCT+ZPD)方向性で自系統の事故かどうかを判別するため
短絡保護だけで足りるLBS+PF短絡保護には対応でき、構成が簡素になるため
インターロックや時限投入が必要VCB制御を組み込めるのはVCBだけのため

開閉器を選ぶときの目安

  • 過電流保護・時限協調・投入時限・インターロックが必要ならVCB
  • 短絡保護だけならLBS+PFでも成立する
  • 件名の規模と施設の重要性で、必要な機能を先に判断する

継電器を選ぶときの目安

  • 地絡事故が懸念される経路にはGR
  • ケーブルが長い・もらい事故が懸念される場合はDGR+ZCT+ZPD
  • 短絡・過電流保護が必要な場合はOCR+CT
  • 同一電気室内など事故の可能性が低い場合は省略も検討できる

機能から入れば、機器の組み合わせは迷いません。図面に落とすときは、この記事の記号例をそのまま参照してください。

📘 体系的に学びたい方へ
このテーマは、連載「高圧受変電設備の設計マニュアル(全14回+資料編)」で、単線結線図の読み方・書き方とあわせて基礎から解説しています。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。