前回は9社の売上・利益を見た。今回は株式市場からの評価、つまり株価と時価総額を比べる。売上が「会社がどれだけ稼いだか」なら、株価・時価総額は「その会社を市場がどれだけ価値があると見ているか」だ。上場している8社(住友電設は後述のとおり2026年3月に上場廃止)について、時価総額の大きさと、この4年の株価の推移を整理した。

はじめに(重要)

本稿は各社の過去の公表株価・市場データを事実として整理したもので、特定銘柄の売買を勧めるものでも、投資助言でもありません。株価は日々変動し、本稿の数値は記載の時点のものです。将来の株価を示すものではありません。投資の判断は、各社の有価証券報告書など最新の一次情報をご自身で確認のうえ行ってください。

この記事の結論

時価総額はきんでん・関電工が突出し、1兆円を超える。2026年3月末時点で、きんでん約1.39兆円・関電工約1.20兆円。3位クラフティア(旧・九電工)が約6,624億円で続き、以下は2,000億円前後に4社、四電工が約900億円だ。

この4年で株価は9社そろって急騰した。2022年3月末を100とすると、関電工は703(+603%)で突出。最も穏やかな中電工でも221(+121%)で、全社が2〜7倍になった。電設セクター全体が再評価された4年だった。

背景はデーセンター・半導体・再エネの工事需要と、増収増益。前回見たとおり9社は増収かつ営業利益率を大きく改善しており、その業績と将来期待が株価に映っている。

住友電設は2026年3月に上場廃止。大和ハウス工業のTOB(買付価格9,760円)で完全子会社化され、株価が存在しなくなった。9社を共通で比べられるのは2025年3月末までだ。

電気設備サブコン大手9社の時価総額ランキング(2026年3月末)

1. 時価総額=市場が測る「会社の値段」

時価総額は株価 × 発行済株式数で、その会社を丸ごと買うのに市場が付けている値段だ。図1のとおり、2026年3月末できんでん(約1.39兆円)と関電工(約1.20兆円)が1兆円を超え、3位クラフティア(約6,624億円)を大きく引き離す。売上と同じく、この3社が上位グループだ。

おもしろいのは、時価総額の順位が売上の順位と少しずれることだ。前回の売上(2025年3月期)では4位トーエネック→ユアテック→中電工→日本電設工業の順だったが、時価総額では日本電設工業(約2,932億円)が中電工・トーエネックを上回り4位につけている。売上の規模だけでなく、利益率や成長期待を市場が織り込むため、「売上は中位でも市場評価は高い」会社が出てくる。時価総額は、売上とは別の物差しなのだ。

最大:きんでん
時価総額(2026年3月末)
1.39兆円
2位:関電工
時価総額(2026年3月末)
1.20兆円
最小:四電工
時価総額(2026年3月末)
900億円
電気設備サブコン大手9社の株価指数の推移(2022年3月末=100)

2. 株価はこの4年で2〜7倍に

次に株価の推移だ。図2は、2022年3月末を100として各社の株価を指数化したもの(株式分割は調整済み)。9社すべてが右肩上がりで、4年で2〜7倍という急騰ぶりがひと目でわかる。突出しているのは関電工で、指数703(+603%)。続いてきんでん442(+342%)、ユアテック370(+270%)と続き、最も穏やかな中電工でも221(+121%)だ。

この背景には、前回の記事で見た増収増益がある。データセンター・半導体工場・再生可能エネルギー関連の電気設備工事が急増し、各社の売上と営業利益率が伸びた。市場はその業績と、これからも需要が続くという期待を織り込んで株価を賷い上げた。電気設備という「地味」に見えていた業種が、脱炭素とデジタル化の担い手として見直された4年だった。

ただし注意点がある。トーエネックは2024年10月に1→5、四電工は同時期に1→3の株式分割を実施している。分割すると1株の値段は下がるが会社の価値は変わらない。図2はこれを調整した連続系列で比べている。株価チャートを自分で見るときは、分割の前後で「急落した」ように見えることがあるので、分割調整後の値かどうかを確かめたい。

3. PER・PBRで「期待の大きさ」を見る

株価が業績の何倍まで買われているかを示すのがPER(株価収益率)、純資産(解散価値)の何倍かを示すのがPBR(株価純資産倍率)だ。数字が大きいほど、市場の期待が高い(=割高になりやすい)ことを意味する。

9社の中ではきんでんのPERが21.14倍、関電工のPBRが2.99倍と高く、成長期待が大きい。一方、中電工のPBRは1.05倍と解散価値の近くにとどまり、相対的に評価は控えめだ。配当に着目すると、四電工の配当利回りは4.22%と9社で最も高く、株主還元に積極的な姿勢がうかがえる。下の表に、時価総額・4年の株価上昇率・PER・PBR・配当利回りを整理した。

会社(証券コード)時価総額
(2026年3月末)
4年株価
上昇率
PERPBR配当利回り
きんでん
1944
約1.39兆円+342%21.14倍2.24倍3.21%
関電工
1942
約1.20兆円+603%17.94倍2.99倍2.22%
クラフティア
1959
約6,624億円+226%15.36倍1.79倍2.5%
日本電設工業
1950
約2,932億円+201%14.3倍1.29倍2.81%
中電工
1941
約2,651億円+121%13.07倍1.05倍2.88%
トーエネック
1946
約1,920億円+202%11.5倍1.35倍3.41%
ユアテック
1934
約1,770億円+270%12.77倍1.09倍3.18%
四電工
1939
約900億円+221%14.28倍1.23倍4.22%
住友電設
1949
上場廃止
(2026年3月)
+118%
2025年3月末まで
TOB 9,760円
時価総額=2026年3月末終値×発行済株式総数(算出値)。4年株価上昇率は2022年3月末→2026年3月末(住友電設は2025年3月末)、株式分割調整後。PER・PBR・配当利回りは各社2026年5〜7月時点で、取得日は会社により異なる(配当利回りは会社予想)。株価はYahoo!ファイナンス。2026年7月27日取得。

4. 就活・転職でどう読むか

株価は「市場の期待」の写し鏡

株価や時価総額は、その会社の将来への期待を市場がどう見ているかを映す。PBRやPERが高い会社は成長期待が大きく、低い会社は「割安」とも「評価が控えめ」とも読める。ただし株価は業績以外の要因(金利・市況・需給)でも動くため、会社選びでは株価そのものより、前回見た売上・利益の中身とあわせて総合的に見るのが安全だ。

株価は給与に直結しない。ただし例外もある

株価が上がっても、それが直接あなたの給与になるわけではない。ただし、業績連動賞与・従業員持株会・株式報酬(RS等)がある会社なら、会社の業績や株価の伸びが待遇に反映されることがある。気になる会社があれば、募集要項や有価証券報告書で、持株会の奨励金や株式報酬制度の有無を確認するとよい。

配当・還元の姿勢も一つのシグナル

配当利回りや増配の方針は、会社が稼いだ利益をどう扱うかの姿勢を示す。四電工の利回り4.22%やきんでんの大幅増配計画(2026年3月期実績130円→2027年3月期予想240円)のように、株主還元を強める会社が増えている。これは財務に余裕が出てきたサインでもあり、会社の体力を測る補助線として使える。

5. このデータの限界

以下は本稿が示していないこと

株価は日々変動し、本稿は特定時点の値にすぎない。各期末(3月末)終値と、直近指標(2026年5〜7月時点、取得日は会社で異なる)を用いており、同一時点の厳密な横比較ではない。

時価総額は「終値×発行済株式総数」の算出値。各期末時点の時価総額を各社が単独で公表しているわけではない。過年度(2022〜2025年3月末)の時価総額は、各年の発行済株式数(自己株式の変動)が必要なため本稿では扱わず、株価は指数化して比較した。

株式分割の調整が入っている。トーエネック(2024年10月1 1→5)・四電工(同 1→3)は、2022〜2024年3月末を分割調整後の値に直して連続化した。生の株価チャートとは数字が異なる。

住友電設は2026年3月に上場廃止。大和ハウス工業のTOB(9,760円)で完全子会社化され、2026年3月末の株価・時価総額は存在しない。上場廃止直前はTOB価格に張り付き、PER・PBR等が歪むため比較には用いていない。

株価はファンダメンタルズと必ずしも一致しない。セクター全体の急騰には、業績だけでなく市場全体の地合いやテーマ物色(データセンター関連)も影響しており、将来も同じ伸びが続くとは限らない。

本稿は投資助言ではない。数値はすべて公表株価・各社の一次情場にもとづく事実整理であり、売買を勧めるものではない。転職・就活メディアが独自に集計・推定した数値は使用していない。

出典

株価(各期末=3月最終売業日終値)・PER・PBR・配当利回り:各社のYahoo!ファイナンス個別ページ(2026年7月27日取得、指標は2026年5〜7月�時点)。発行済株式総数:関電工・きんでん・クラフティアは各社2026年3月期 決算短信、他社は会社公表情報。

各社の株価情報:関電工(1942)きんでん(1944)クラフティア(1959)トーエネック(1946)住友電設(1949)中電工(1941)ユアテック(1934)日本電設工業(1950)四電工(1939)。住友電設の上場廃止・TOB(買付価格9,760円、2026年3月3日上場廃止・最終売買3月2日)は、日本取引所グループ(JPX)の上場廃止に関する開示および大和ハウス工業の適時開示(2025年10月30日公表)による。時価総額は2026年3月末終値×発行済株式総数(自己株式を含む)の算出値。株価は変動するため、最新の数値は各社IR・証券会社サイトで確認されたい。