【1社を深掘り】トーエネックの業務内容・業績・投資|株主説明資料から読む
1社ずつの深掘り、第4回はトーエネック。中部電力系の総合設備工事会社で、名古屋に本社を置く。売上規模は業界4位。関電工・きんでん・クラフティアと同じく、会社が何をやっていて、どう稼ぎ、どこに投資しているのかを、株主・投資家向け資料(決算短信・中期経営計画・適時開示)だけを使って読み解く。トーエネックには、一度の赤字からの立て直しと親会社の資本引き揚げという2つのドラマがある。
この記事の結論
① 事業の柱は屋内線工事(約40%)と配電線工事(約33%)。ビル・工場の電気設備に加え、配電線工事の比率が高いのが中部電力系らしい特徴だ。地中線を合わせた送配電インフラで約4割を占め、空調管・通信・エネルギー事業が続く(工事種類別は単体の開示)。
② 2023年3月期に一度赤字、そこから過去最高益へV字回復。太陽光発電事業の減損(約100億円)などで純損失△55億円を計上したが、その後は増益が続き、2026年3月期は純利益178億円・ROE12.3%と過去最高水準になった。
③ 売上・利益ともに拡大。連結売上高は2,196→2,725億円、営業利益は141→214億円、営業利益率は6.4→7.9%。中期経営計画2027の目標(売上2,700億円・経常180億円・ROE8%)は前倒しで達成圏にある。
④ 親会社・中部電力が資本を引き下げ、子会社から関連会社に。2024年7月の株式売出しで中部電力の持株比率が約51.88%→現在約44.6%に下がり、トーエネックは中部電力の連結子会社から関連会社(その他の関係会社)へ変わった。
会社の基本情報
トーエネックは1944年10月1日設立、本社は名古屋市中区栄。資本金76.8億円(7,680百万円)、連結従業員は約6,487人(2026年3月末)。中部電力の配電工事を担ってきた歴史を持つ、中部圏の代表的な設備工事会社だ。筆頭株主は中部電力で、持株比率は約44.6%(2026年3月末。後述のとおり資本関係が変化)。提出会社(単体)の平均年間給与は約687万円、平均41.3歳・勤続19.4年だ。
(2026年3月期)
(2026年3月末)
(2026年3月期)
(単体・概算)

1. 何をやっている会社か
トーエネックの事業を工事種類別に見たのが図1だ(単体・個別の開示)。最大は屋内線工事で約40%(1,033億円)。ビル・工場・データセンターなどの電気設備がここに入る。次いで特徴的なのが配電線工事の約33%(836億円)で、電柱や送配電線など、街のインフラをつくる工事だ。中部電力向けが中心で、地中線工事(約5%)を合わせると送配電インフラで約4割を占める。この配電比率の高さが、中部電力系のトーエネックらしさといえる。
残りは空調管工事(約8%)、通信工事(約7%)、そして再エネ発電などのエネルギー事業・商品販売(兼業、約7%)だ。海外はフィリピン・タイなどアジアに展開しているが、セグメントとして独立開示されておらず売上規模は非公表となっている。なお工事種類別は単体(個別)の数字で、連結子会社を含む連結売上高(2,725億円)とは範囲が異なる点に注意したい。

2. 業績-拡大基調、ただし一本調子ではない
図2は連結の売上高と営業利益の推移だ。売上高は5年で2,196億円→2,725億円、営業利益は141億円→214億円。営業利益率も6.4%から7.9%へ改善した。ただし一本調子ではなく、2023年3月期は営業利益が前年から約27%減と落ち込んだ年もある。工事の採算悪化と、次に述べる特別損失が重なった年だ。
それでも直近は勢いがある。受注高(個別)は約2,411億円、期末の手持ち工事高も約1,370億円と積み上がり、当面の仕事量は見通しやすい。会社は2027年3月期に売上2,850億円・営業利益240億円を見込んでいる。

3. 2023年3月期の赤字と、その後のV字回復
トーエネックを語るうえで外せないのが、2023年3月期の純損失△55億円だ。図3のとおり、この年だけ純利益が赤字に沈んでいる。原因は本業の採算悪化に加えて、太陽光発電事業の固定資産の減損損失 約100億円を特別損失に計上したことが大きい。再生可能エネルギーは成長分野だが、事業として立ち上げる過程では、計画どおりに採算が取れずに損失処理が必要になることもある、という一例だ。
重要なのは、そこからの立て直しが速かったことだ。翌2024年3月期には純利益93億円へ回復し、2025年3月期108億円、2026年3月期には178億円と過去最高水準まで伸ばした。一度の赤字をきっかけに不採算事業を整理し、採算重視の経営に切り替えた結果といえる。会社を見るときは、単年の赤字だけで判断せず、その原因(一過性か、構造的か)と、その後どう立て直したかを追うことが大切だ。
4. 中部電力の資本引き揚げ-子会社から関連会社へ
もう一つの大きな変化が親会社・中部電力との資本関係だ。かつて中部電力はトーエネック株の約51.88%を持つ親会社だったが、2024年7月の株式売出しで持株比率を引き下げ、現在は約44.6%。これによりトーエネックは中部電力の連結子会社から関連会社(その他の関係会社)へ変わった。
背景には、電力の発電・販売の分離をより実効的にするという電気事業をめぐる制度対応がある。関電工(東京電力)、きんでん(関西電力)と同じく、電力会社系のサブコンで、親会社が資本を引き下げる動きが相次いでいる。親会社への依存度が下がることは、経営の自由度が高まる一方で、電力会社向けの安定した工事という後ろ盾の位置づけも少しずつ変わっていく可能性がある。
主要指標の5年推移
| 指標 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 連結売上高(億円) | 2,196 | 2,321 | 2,529 | 2,710 | 2,725 |
| 連結営業利益(億円) | 141 | 103 | 159 | 160 | 214 |
| 営業利益率 | 6.4% | 4.4% | 6.3% | 5.9% | 7.9% |
| 経常利益(億円) | 134 | 90 | 127 | 154 | 226 |
| 当期純利益(億円) | 83 | △55 | 93 | 108 | 178 |
| ROE | 6.7% | △4.6% | 7.5% | 8% | 12.3% |
| 1株配当(円) | 135 分割前 | 95 分割前 | 200 分割前 | 50 分割後 | 76 分割後 |
5. 就活・転職でどう読むか
単年の赤字に惑わされない
トーエネックのように、一度赤字になっても、原因が一過性なら数年で立て直せる会社は多い。会社を選ぶときは、単年の損益だけでなく、赤字の原因(減損なのか本業の悪化なのか)と、その後の回復の速さを見たい。トーエネックは減損という一過性の要因で赤字になり、翌年から力強く回復した。数年の推移で見ることが、会社の実力を測るコツだ。
中部電力系という基盤と、その変化
中部電力向けの配電工事という安定した基盤は、トーエネックの強みだ。一方で、親会社が資本を引き下げたことで、電力会社系という色は少しずつ薄まり、独立した設備会社としての性格が強まる。説明会などで、電力会社向け工事と民間・官公庁向け工事のバランスや、首都圏・近畿圏へのエリア拡大の方針を確認すると、会社の方向性が見えてくる。
成長分野と待遇
中期経営計画では、カーボンニュートラル・再生可能エネルギー・DXを成長分野に掲げている。太陽光での失敗を糧に、エネルギー事業をどう立て直していくかは注目点だ。1株配当は分割後で76円(2027年3月期も76円予想、配当性向約40%)と株主還元も安定している。平均年間給与は単体で約687万円だが、これは全社員の平均で、職種・年次・地域による差がある点には注意したい。
このデータの限界
以下は本稿が示していないこと
① 連結売上高と工事種類別完成工事高は範囲が異なる。工事種類別(屋内線・配電線など)は単体(個別)の開示で、連結売上高(連結子会社を含む)とは一致しない。図1の億円は単体売上高に構成比を掛けた値で、連結の内訳ではない。
② 海外事業の売上規模は非公表。フィリピン・タイなどアジアに展開しているが、セグメントとして独立開示されておらず金額は把握できない。
③ 受注高・手持工事高は個別(単体)ベース。連結の売上・利益とは集計範囲が異なるため、単純には比べられない。
④ 設備投資額は直近2期(2025・2026年3月期)のみ確認。本稿では5年の推移としては扱わず、直近の水準(2026年3月期 約71億円)を本文で示すにとどめた。
⑤ 平均年間給与は単体・全社員の平均の概算値。職種・年次・地域による差や手当の内訳は示されておらず、個人の実際の年収を保証するものではない。正確な値は有価証券報告書で確認できる。
⑥ 本稿はトーエネックが公表した資料の範囲の事実整理であり、投資勧誘・投資助言ではない。将来の業績や株価を約束するものではない。転職・就活メディアが独自に集計・推定した数値は使用していない。
出典
すべてトーエネックの公式開示および適時開示(2026年7月29日取得)。各期 決算短信(連結)、中期経営計画2027、株主の状況、トーエネック IR情報、および中部電力・トーエネックの資本構成見直しに関する適時開示(2024年7月)。売上高・利益・ROEは連結、受注高・手持工事高・工事種類別完成工事高・平均年間給与は単体(個別)。1株配当は2024年10月の1→5株式分割の前後で基準が異なる。億円は百万円を100で除して四捨五入した。





