2026年12月施行のiDeCo拠出限度額引き上げの全体像

「iDeCoの枠が増えるって聞いたんですけど、僕はいくらまでですか?」

ペン太くんが珍しく前のめりです。

2026年12月1日から、iDeCo(個人型確定拠出年金)の拠出限度額が引き上げられます。しかも今回は幅が大きく、人によっては月々の枠が2倍以上になります

ただ「いくらまで積めるか」は、その人がどういう立場で働いているかで変わります。この記事では、電気設備の世界でよくある働き方ごとに整理しました。

注意点

この記事は制度の内容を整理したものです。いくら積むべきかは、収入・家族構成・資金繰りによって変わります。具体的な判断はご自身で、必要に応じて専門家にご相談ください。


ペン太ペン太
iDeCoの枠が増えると聞きました。放っておけば自動で満額になるんですよね?
ハリタハリタ
自動では増えません。2026年12月の改正後も、掛金変更の手続きが必要ですよ。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 一人親方の新しい上限「月7.5万円」は、iDeCo単独で積める額か
  • 限度額が上がったら、掛金は自動で増えるか
  • iDeCoに加入できる年齢は、いつから何歳未満に広がるか
この記事でわかること
制度の一般的な説明です。企業型DCのマッチング拠出などは勤め先の規約によります。実際の手続きは運営管理機関や勤務先にご確認ください。

📌先に結論|変わるのは3つ

トピック1:📌先に結論|変わるのは3つ

2025年の年金制度改正法により、2026年12月1日から次の3つが変わります。

  1. 拠出限度額が上がる(一人親方も会社員も)
  2. 加入できる年齢が65歳未満→70歳未満に広がる
  3. 会社員は企業年金とiDeCoの枠が「合算」で管理される形に整理される

このうち、増える幅がいちばん大きくなりうるのは企業年金のある会社員です。月2.0万円だった枠が、企業年金の掛金と合算という条件付きで最大月6.2万円まで広がります(厚労省資料では「最大4.2万円増額」)。

ただしこれは会社の掛金が小さい場合の話です。誰でも確実にその幅だけ増えるのは、企業年金のない会社員(3.9万円増額)になります。


ペン太ペン太
一人親方なら月7.5万円まで丸ごとiDeCoに積めるんですよね?
ハリタハリタ
その枠は国民年金基金や付加保険料と合算です。基金分を引いた残りが上限ですよ。
ここまでのポイント
  • 2025年の年金制度改正法により、2026年12月1日から3つが変わる
  • ①拠出限度額が上がる ②加入できる年齢が65歳未満→70歳未満 ③会社員は企業年金と合算で管理
  • 増える幅が最も大きくなりうるのは企業年金のある会社員(最大4.2万円増額)
  • ただしそれは会社の掛金が小さい場合。確実にその幅だけ増えるのは企業年金のない会社員(3.9万円増額)

👷働き方別|あなたはいくらまで積めるのか

トピック2:👷働き方別|あなたはいくらまで積めるのか
区分 現行(〜2026年11月) 2026年12月1日〜
第1号被保険者(一人親方・個人事業主) 月6.8万円 月7.5万円
第2号・企業年金なし(会社員) 月2.3万円 月6.2万円
第2号・企業年金あり(会社員) 月2.0万円 月6.2万円(企業年金の掛金と合算)
第3号被保険者(扶養に入っている配偶者) 月2.3万円 月2.3万円(変更なし

電気設備の世界に当てはめると、こうなります。

ケース①|独立した一人親方・個人事業主

月6.8万円 → 月7.5万円(年81.6万円 → 年90万円)

伸び幅としては月7,000円と控えめですが、もともとの枠が大きいので絶対額は最大です。

注意点|国民年金基金・付加年金との「合算枠」です

ここは毎回誤解が起きるところです。一人親方のiDeCo枠は、国民年金基金の掛金・付加保険料と合わせて月7.5万円です。iDeCo単独で7.5万円ではありません。

国民年金基金に月3万円払っている方なら、iDeCoに回せるのは残りの4.5万円です。付加年金(月400円)を納めている方も、その分が枠を使います。

なお国民年金基金と付加年金は併用できませんので、枠を食うのはどちらか一方です。付加保険料を納めている場合、iDeCoの掛金は1,000円単位のため、実際の上限は月74,000円になります。

ケース②|企業年金のないサブコン・工事会社に勤めている

月2.3万円 → 月6.2万円(年27.6万円 → 年74.4万円)

枠が2.7倍になります。会社の掛金額に左右されず、この幅がまるごと増えるのがこの層の強みです。

中小の電気工事会社にお勤めで、会社に企業年金(企業型DC・確定給付企業年金)がない場合はここに当てはまります。ご自身の会社に企業年金があるかどうかは、就業規則・退職金規程を見るか、総務・人事に確認するのが確実です(企業型DCの事業主掛金は給与明細には載らないのが通常です)。

ケース③|大手サブコンなど、企業型DCやDBがある会社に勤めている

月2.0万円 → 月6.2万円

ただし企業年金の掛金と合算して6.2万円です。会社が企業型DCに月3万円出してくれているなら、iDeCoに回せるのは残りの3.2万円、という考え方になります。

会社の掛金額は、企業型DCの記録関連運営管理機関(レコードキーパー)のWebサイトで確認できます。

注意点|確定給付企業年金(DB)の場合

DBは会社が実際に払っている額ではなく、「他制度掛金相当額」という計算上の金額が枠から差し引かれます。この額はご自身では計算できないので、勤め先または企業年金の窓口に確認してください。

ケース④|配偶者の扶養に入っている

月2.3万円のまま変更なしです。


第1号被保険者や会社員など働き方別のiDeCo拠出限度額の改正前後を比べた横棒グラフ
図1:働き方別のiDeCo拠出限度額(2026年12月1日改正)
ここまでのポイント
  • 第1号被保険者(一人親方・個人事業主)は月6.8万円→7.5万円(年81.6万円→年90万円)
  • 第2号・企業年金なしは月2.3万円→6.2万円、企業年金ありは月2.0万円→6.2万円(合算)
  • 第3号被保険者(扶養に入っている配偶者)は月2.3万円で変更なし
  • 一人親方の7.5万円は国民年金基金の掛金・付加保険料との合算枠。iDeCo単独ではない
  • 付加保険料を納めている場合、掛金は1,000円単位のため実際の上限は月74,000円


🎂加入できる年齢も70歳未満まで広がります

トピック3:🎂加入できる年齢も70歳未満まで広がります

同じ2026年12月1日から、iDeCoに加入できる年齢が65歳未満から70歳未満へ引き上げられます。

対象となるのは、次の①〜③のいずれかに該当し、かつ老齢基礎年金・iDeCoの老齢給付金をまだ受け取っておらず、マッチング拠出もしていない方です。

  1. すでにiDeCoの加入者である
  2. iDeCoの運用指図者である
  3. 企業年金からiDeCoへ資産を移換する

なお、施行日から3年間の経過措置があり、その間は①〜③に該当しない60歳以上70歳未満の方も加入できます。

注意点

経過措置が免除するのは①〜③の要件だけです。「年金をすでに受け取っている」「マッチング拠出をしている」という除外条件は、経過措置の期間中も残ります。

ポイント!

電気工事の世界では、60代でも現役で現場に出ている方が珍しくありません。これまでは「65歳になったら積立終了」でしたが、70歳近くまで働くなら、その間ずっと所得控除を受けながら積めるようになります。

60代で収入がある方にとっては、加入期間が5年延びる意味は小さくありません。


第1号被保険者のiDeCo枠が国民年金基金と付加保険料との合算枠であることを示した図
図2:iDeCo単独で7.5万円ではない(国民年金基金・付加保険料との合算)
ここまでのポイント
  • 2026年12月1日から、加入できる年齢が65歳未満から70歳未満へ
  • 対象は「すでに加入者」「運用指図者」「企業年金からの資産移換」のいずれかに該当する方
  • かつ老齢基礎年金・iDeCoの老齢給付金を受け取っておらず、マッチング拠出もしていないこと
  • 施行日から3年間の経過措置があり、その間は①〜③に該当しない60歳以上70歳未満も加入できる
  • 経過措置が免除するのは①〜③の要件だけ。年金受給中・マッチング拠出中の除外は残る

🏢会社員の方へ|2026年4月にもう一つ改正が済んでいます

トピック4:🏢会社員の方へ|2026年4月にもう一つ改正が済んでいます

企業型DCに入っている方は、施行日が2段階である点に注意してください。

時期 内容
2026年4月1日(施行済み) 企業型DCのマッチング拠出で、「加入者掛金は事業主掛金以下」という制限が撤廃された
2026年12月1日 企業年金+iDeCoの拠出限度額が月5.5万円→6.2万円

マッチング拠出の制限撤廃は、すでに効いています。これまでは「会社が月1万円出しているから、自分も1万円まで」という縛りがありましたが、それがなくなりました。

ただし、事業主掛金と加入者掛金の合計が拠出限度額の範囲内(2026年4〜11月は月5.5万円、12月以降は月6.2万円)という枠そのものは残ります。

制度上できるようになっても、実際に使えるかどうかは勤め先の規約次第です。総務や人事に確認してみてください。


ここまでのポイント
  • 企業型DCに入っている方は、施行日が2段階に分かれている
  • 2026年4月1日(施行済み)|マッチング拠出の「加入者掛金は事業主掛金以下」という制限が撤廃
  • 2026年12月1日|企業年金+iDeCoの拠出限度額が月5.5万円→6.2万円へ
  • 事業主掛金と加入者掛金の合計が限度額の範囲内という枠自体は残る
  • 制度上できても、実際に使えるかは勤め先の規約次第


🗓️いつから、どうすればいいのか

トピック5:🗓️いつから、どうすればいいのか
  • 新しい限度額が適用されるのは、2026年12月分の掛金(2027年1月引き落とし分)からです
  • すでにiDeCoに入っている方は、掛金額の変更手続きが必要です(自動では増えません)
  • 手続きの案内は、加入している運営管理機関(銀行・証券会社)から届きます

ポイント!掛金の変更は「1年に1回」まで

掛金額の変更は、制度上1年に1回と決まっています。これは運営管理機関ごとの運用ではなく、制度共通のルールです。

ここでいう1年は「12月分の掛金から翌年11月分の掛金まで」(納付月では1月〜12月)という拠出単位期間を指します。

新しい限度額が適用される2026年12月分は、ちょうどこの拠出単位期間の初月にあたります。年1回の変更枠をどこで使うか、事前に考えておくとよいでしょう。

なお、企業型DCの事業主掛金額が変動したことにともなってiDeCoの掛金が変わる場合(自動減額を含む)は、この変更回数には数えません。


ここまでのポイント
  • 新しい限度額が適用されるのは2026年12月分の掛金(2027年1月引き落とし分)から
  • すでに加入している方は掛金額の変更手続きが必要。自動では増えない
  • 案内は加入している運営管理機関(銀行・証券会社)から届く
  • 掛金の変更は制度共通で1年に1回まで。12月分から翌年11月分までが拠出単位期間
  • 企業型DCの事業主掛金の変動にともなう変更は、この回数に数えない

🤔枠が増えたら、満額まで積むべきなのか

トピック6:🤔枠が増えたら、満額まで積むべきなのか

制度としては枠が広がりましたが、満額積むことが常に正解とは限りません

iDeCoの性質を整理すると、こうなります。

メリット デメリット
掛金が全額所得控除になる 原則60歳まで引き出せない
運用益が非課税 口座管理手数料がかかる
受け取り時も退職所得控除・公的年金等控除が使える 元本保証ではない(商品による)

電気設備の仕事は、独立していれば入金の波があり、勤め人でも転職や資格取得で出費が動きます。

ポイント!

iDeCoの最大の弱点は「60歳まで引き出せない」ことです。枠いっぱいまで積んだ結果、手元の現金が足りなくなると、金利の高い借入に頼ることになりかねません。

一般的な順序としては、①生活防衛資金を現金で確保 → ②無理のない範囲でiDeCo・小規模企業共済 → ③余力をNISA、という組み立てが挙げられます。引き出せる資産と引き出せない資産のバランスを先に決めるのが安全です。


iDeCoの性質 中身
掛金 全額が所得控除になる
運用中 運用益が非課税
受け取り時 退職所得控除・公的年金等控除が使える
引き出し 原則60歳まで引き出せない
コスト 口座管理手数料がかかる
元本 元本保証ではない(商品による)


✅まとめ

トピック7:✅まとめ

結論。2026年12月1日から枠は広がるが、掛金は自動では増えない。手続きが要るうえに、変更は1年に1回までです。

区分 現行(〜2026年11月) 2026年12月1日〜 注意
第1号(一人親方・個人事業主) 月6.8万円 月7.5万円 国民年金基金・付加保険料との合算枠
第2号・企業年金なし(会社員) 月2.3万円 月6.2万円 確実に3.9万円増える区分
第2号・企業年金あり(会社員) 月2.0万円 月6.2万円 企業年金の掛金と合算。会社の掛金しだい
第3号(扶養に入っている配偶者) 月2.3万円 月2.3万円 変更なし
加入できる年齢 65歳未満 70歳未満 3年間の経過措置あり
適用開始 2026年12月分の掛金から 引き落としは2027年1月分

この記事の要点

  • 2026年12月1日からiDeCoの拠出限度額が引き上げられる
  • 一人親方・個人事業主:月6.8万円 → 月7.5万円(国民年金基金・付加保険料と合算枠)
  • 企業年金なしの会社員:月2.3万円 → 月6.2万円(会社の掛金に左右されず3.9万円まるごと増える)
  • 企業年金ありの会社員:月2.0万円 → 月6.2万円(企業年金の掛金と合算。増える幅は会社の掛金次第)
  • 第3号被保険者:月2.3万円で変更なし

手続きと考え方

  • 加入できる年齢が65歳未満→70歳未満へ。60代でも現場に出る業界には意味が大きい
  • 企業型DCのマッチング拠出は、2026年4月1日に「事業主掛金以下」の制限が撤廃済み
  • 掛金の変更は自動ではない。運営管理機関からの案内を確認して手続きが必要
  • 掛金の変更は1年に1回(12月分〜翌年11月分が1単位)。2026年12月分はその初月にあたる
  • 枠が増えても満額が正解とは限らない。60歳まで引き出せない点を踏まえて手元資金とのバランスを

枠が広がることと、満額まで積むべきかどうかは別の話です。iDeCoは原則60歳まで引き出せないので、手元の現金とのバランスを先に決めておくのが安全です。ご自身の条件にあてはめるときは、運営管理機関や勤務先、必要に応じて専門家にご確認ください。



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⚠️免責事項

トピック9:⚠️免責事項

本記事は公表されている制度改正の内容を整理した情報提供であり、特定の金融商品の購入や特定の運用方針を推奨するものではありません

記載の内容は2026年7月30日時点で公表されている情報にもとづきます。施行日以降に細目が示される場合があるほか、掛金変更の手続きは運営管理機関によって異なります。最新の情報は厚生労働省・iDeCo公式サイトおよび加入先の運営管理機関でご確認ください。

税務上の取扱いは個別事情によって異なります。具体的な判断にあたっては税理士等の専門家にご確認ください。当サイトは金融商品取引業者ではなく、投資助言・代理業には該当しません。

参考にした主な情報源

ペン太ペン太
枠が増えたら、やっぱり満額まで積むべきですか?
ハリタハリタ
資金繰りと相談です。掛金変更は年1回なので、計画的に決めていきましょう。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。