連載第1回では太陽光発電の仕組みと発電量の目安を整理しました。しくみが分かると、次に必ず出てくるのがこの問いです。

「2026年のいま、うちは太陽光を載せて得なのか?」

この判断が10年前より難しくなっているのは、売電価格が下がり続ける一方で、電気代は上がり続けている——2つのトレンドが逆向きに動いたからです。この記事では両方の実データを突き合わせ、どんな家庭なら得をして、どんな家庭なら見送るべきかを判断チャートまで落とし込みます。

結論:2026年の太陽光は「電気を多く使う家」ほど得をする

先に答えを書きます。2026年の損得を決めるのは、屋根の広さでも設置容量でもなく、発電した電気を自宅でどれだけ使えるか(自家消費率)です。

  • 得をしやすい家庭:電気使用量が多い/日中に在宅/エコキュートやEVがある/今後10年以上住む
  • 見送るべき家庭:屋根条件が悪い/電気使用量が少ない/数年内に引っ越す可能性がある

なぜそうなるのか、数字で追っていきます。

なぜ判断が難しくなったのか:2つのトレンドが逆向きに動いた

売電単価は42円から24円/8.3円へ

FIT制度が始まった2012年度の住宅用売電単価は42円/kWhでした。そこから毎年下がり続け、2024年度16円、2025年度15円まで落ちています。2026年度は制度が変わり初期4年24円、5年目以降8.3円という二段階制になりました。

一方で「買う電気」は上がり続けた

電気代が上がった2つの要因を示した棒グラフ。家庭向け電力の平均単価は21.39円から34.00円へ1.6倍、再エネ賦課金は0.22円から4.18円へ19倍
図6:電気代が上がった2つの要因

家庭向け(低圧)の平均単価は、2010年度の21.39円/kWhから2022年度には34.00円/kWhへ、約1.6倍になりました。2011年の震災以降、原発停止による燃料費増加を理由とした値上げが2012〜2015年の間だけで6回行われています。

さらに見落とされがちなのが再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)です。2012年度の0.22円/kWhから2026年度は4.18円/kWh——約19倍。これは電気を買うすべての家庭が、使用量に比例して払っています。皮肉な話ですが、太陽光を載せない家庭が、載せた家庭の売電を支える構造になっているわけです。

2019年ごろ、「売る」と「使う」が逆転した

売電単価と買う電気の単価の推移を比較したグラフ。2012年は売電42円が買電22円を上回っていたが、2019年ごろ逆転し2026年は買電31円が売電24円を上回る
図5:売電単価と「買う電気」の単価の逆転

2本の線が交差しているのが分かります。2019年ごろを境に、電気を売る単価より買う単価のほうが高くなりました。

年度 売電単価 買う電気(目安) どちらが得か
2012年度 42円 約22円 売る(約1.9倍)
2019年度 24円 約26円 ほぼ互角(逆転点)
2026年度(5年目以降) 8.3円 約31円 使う(約3.7倍)

この構造変化が、営業トークとの噛み合わなさの正体です。「売電で儲かりますよ」という説明は2018年までの話で、いまは「電気を買わずに済ませる装置」として評価すべき設備になっています。

損得を決めるのは「自家消費率」ただ一つ

では自家消費率が何%違うと、いくら変わるのか。5kW設置(年間発電5,500kWh)で試算しました。

自家消費率別の年間メリットを示した棒グラフ。1〜4年目は自家消費率20%で14.0万円、60%で15.5万円だが、5〜10年目は7.1万円から12.1万円へ1.7倍の差が出る
図7:自家消費率で年間メリットはこう変わる

ここに2026年度FITの重要な性質が現れています。

  • 1〜4年目(売電24円):自家消費率20%でも14.0万円、60%でも15.5万円。差は1.5万円しかない。売電単価24円と買電31円が近いためです。
  • 5〜10年目(売電8.3円):自家消費率20%なら7.1万円、60%なら12.1万円。差は5万円、実に1.7倍に開きます。

つまり最初の4年は誰が設置してもそれなりに得をするが、5年目からは自家消費率の低い家庭のメリットが半減する——これが2026年度スキームの本質です。営業の試算表が「1〜4年目の数字」だけを大きく見せていないか、必ず確認してください。

自家消費率の実態値

条件 自家消費率の目安
太陽光のみ(ZEHの平均) 約30%
太陽光+蓄電池 50%以上
太陽光4〜6kW+蓄電池7〜10kWh
(4人家族・年間5,400kWh消費のモデル)
50〜60%台

蓄電池なしの標準が30%前後。ここを50%まで持ち上げる手段が、蓄電池・エコキュート・EV充電・タイマー家電です。ただし蓄電池は本体で100万円超が普通なので、「自家消費率を上げるため」だけの理由で入れると回収が遠のく点に注意が必要です。この損得は連載第11回で詳しく扱います。

得をしやすい家庭の条件5つ

  1. 年間の電気使用量が多い(4,000kWh以上)——買う電気が多いほど、自家消費で削れる金額が大きくなります。検針票の「使用量kWh」を12か月分合計してください。
  2. 日中に人がいる——在宅勤務、自営業、小さな子どもや高齢の家族がいる世帯。発電のピークと消費のピークが重なります。
  3. エコキュートやEVがある——昼間に沸き上げ・充電を回せば、実質的に「昼の電気を夜に持ち越す」ことができます。蓄電池より安価に自家消費率を上げられる有力手段です。
  4. 屋根が南〜東西向きで影がない——第1回で触れたとおり、影は1枚でもストリング全体の出力を落とします。
  5. 今後10年以上住む予定——回収に13〜15年かかる前提なので、これは実質的な必要条件です。

見送った方がいい家庭の条件5つ

  1. 屋根が北向き中心、または影が多い——発電量が確保できないうえ、北面は反射光による近隣トラブルのリスクもあります。
  2. 電気使用量が少ない(年3,000kWh未満)——単身・共働きで日中不在などのケース。自家消費できる量が小さく、大半が8.3円の売電に流れます。
  3. 数年内に引っ越す・売却する可能性がある——回収前に手放すことになります。設備付き売却で価格が上がる保証もありません。
  4. 築年数が古く、屋根の葺き替えが近い——パネルを載せた後に屋根工事をすると、脱着費用が別途かかります。屋根の更新と同時に載せるのが原則です。
  5. 訪問販売で急かされている——判断材料が揃っていない状態は、それ自体が見送る理由になります。

判断チャート:あなたの家はどうか

太陽光発電を載せるべきか判断するフローチャート。屋根条件、電気使用量4000kWh以上、10年以上居住、日中在宅やエコキュートEVの有無で判定する
図8:太陽光発電を載せるべきか 判断チャート

4つの質問で大枠は判断できます。注目してほしいのはQ4で「いいえ」に進んだルートです。日中に電気を使う仕掛けがない家庭は、太陽光単体では5年目以降のメリットが薄いため、蓄電池とセットで検討するか、そもそも見送るという判断になります。

「今すぐ載せる」か「もう少し待つ」か

設置に向いていると分かっても、「もっと安くなるまで待つべきでは?」という迷いは残ります。待つ理由・待たない理由を整理します。

待つべきという主張の根拠

  • ペロブスカイト太陽電池:2026年からパナソニックがガラス型で本格参入、積水化学のフィルム型も動き始めました。ただし住宅用として普及するには耐久性・コスト・鉛使用の課題が残り、専門家の多くは「いま検討するなら既存技術が現実的」という見方です。
  • 設置費用の下落:長期的には下がってきましたが、近年は資材・人件費の上昇で下落ペースが鈍化しています。

待たないほうがよい理由

  • 電気代は今日から発生している——待っている期間、削減できるはずだった電気代は戻ってきません。年間8〜14万円のメリットを1年見送れば、その分だけ回収完了が後ろにずれます。
  • FIT単価は年度ごとに決まる——2026年度の24円がいつまで続くかは保証されていません。
  • 補助金は年度予算制——自治体の制度は予算上限に達すると受付終了します。

結論としては、判断チャートで「向いている」に着いた家庭は待つ理由が薄く、「要検討」に着いた家庭は次世代技術の動向を見ながら待つ判断もあり得る——という整理になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 売電単価が8.3円になる5年目以降、売電はやめられますか?

A. 売電をやめる(発電した電気を電線側に流さない)設定は技術的には可能ですが、余剰が出るなら8.3円でも受け取ったほうが得です。やめるのではなく、自家消費に回す量を増やす方向で考えるのが正解です。

Q. 電気代がこれ以上上がらなければ、太陽光は損になりますか?

A. 自家消費分のメリットは「買う電気の単価」に連動するので、単価が下がれば太陽光のメリットも下がります。ただし再エネ賦課金は2012年度から一貫して上昇しており、送配電網の更新費用も控えているため、大幅な下落を前提に計画するのは現実的ではありません

Q. 太陽光を載せると固定資産税は上がりますか?

A. 屋根に架台で後付けする一般的な設置方法(屋根置き型)では、原則として家屋の評価額に影響しません。一方、屋根材と一体になった建材型は家屋の一部とみなされ課税対象になり得ます。設置方法によって扱いが変わるため、契約前に業者と自治体に確認してください。

Q. 賃貸や集合住宅では設置できませんか?

A. 屋根の所有権・管理規約の問題があるため、個人での設置は基本的にできません。分譲マンションの共用部への設置は管理組合の決議事項になります。

Q. 見積もりを3社取るのが面倒です。1社で決めてはいけませんか?

A. kW単価は業者によって10万円以上開くことがあります。5kWなら総額で50万円の差です。この1点だけで回収年数が5年前後変わるため、面倒でも比較する価値は十分あります。

まとめ:2026年の判断軸は「売る」から「使う」へ

  • 売電単価は42円(2012年度)→ 24円/8.3円(2026年度)まで下がり、買う電気は21.39円 → 34.00円へ約1.6倍、再エネ賦課金は約19倍になった。
  • 2019年ごろに「売る<使う」が逆転。いまや自家消費1kWh(約31円)は売電1kWh(8.3円)の3.7倍の価値がある。
  • 2026年度FITは1〜4年目は誰でも得をするが、5年目以降は自家消費率で1.7倍の差がつく設計。
  • 判断チャートの4問——屋根条件/電気使用量4,000kWh/10年以上居住/日中の電気の使い道——を自分の家に当てはめてみてください。

次回(第3回)は、この判断をさらに一歩進めます。「何年で元が取れる?回収シミュレーション」——検針票の数字を入れるだけで、あなたの家の回収年数を計算する手順を用意します。

連載第1回:太陽光発電の仕組みを図解でわかりやすく解説|家庭用の発電量・売電の流れ

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※本記事の数値は2026年7月時点の公表情報および一般的な相場をもとにした目安です。「買う電気の単価」は電力量料金・燃料費調整額・再エネ賦課金を含む総額ベースの概算で、契約プラン・地域・使用量によって変動します。FIT単価・補助金・税制は年度ごとに変わるため、契約前に必ず最新の公式情報をご確認ください。