そうだったのか小ネタ 第3回

同じ「電線の太さ」を言っているはずなのに、片方は1.6mm・2.0mm、もう片方は2sq・5.5sq。現場では当たり前に混ざっていて、換算表を見ながら「まあ、こういうものだ」と流している人が多いところです。ところがこの二つは、たまたま違う単位になったのではありません。測れるものと、実際に効いているものが違う——という、はっきりした理由があります。

結論

単線は導体そのものを測れるから直径(mm)、より線は外から測っても中身が分からないから断面積(mm²)で呼びます。そして両者は無関係な物差しではなく、より線の素線径が、単線の寸法系列そのものという形でつながっています。

  • 単線は丸い1本なので、直径を測ればそれが規格値になる
  • より線は素線の集まり。外径には隙間が含まれるので、導体量=断面積で呼ぶ
  • 2sq=7本/0.6mm、14sq=7本/1.6mm。素線径は単線と同じ系列
  • 直径を断面積に換算すると、二つの許容電流表はきれいに並ぶ
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
単線とより線の断面の違いを示した図
単線は導体そのものを測れますが、より線の外径には隙間が含まれます。だから呼び方が分かれました。

電気工事の現場で、電線の太さは二通りの言い方をされます。屋内配線の打ち合わせでは「1.6でいい? 2.0にする?」とミリで話が進み、制御盤や動力の話になった途端に「そこは5.5、幹線は38で」とスケアに切り替わります。同じ銅線の太さの話なのに、単位が入れ替わる。

慣れてしまえば何とも思わない切り替えですが、新人からは必ず質問が出ます。そして答えようとすると、意外と言葉に詰まります。「単線がミリで、より線がスケアだから」というのはルールの説明であって、理由の説明ではないからです。

ペン太
どっちも太さの話なのに、なんで単位を揃えてくれなかったんですか。ややこしいです。
ハリタハリタ
揃えられなかった、が正しいですね。より線は「直径」という値がそもそも決めにくいんです。
ペン太
ノギスで挟めば測れますよね?
ハリタハリタ
測れます。でもその値には隙間が入っています。銅の量ではなく、束の大きさを測っていることになる。

まず、呼び方のルールを整理する

電線の太さの呼び方は、導体の構造によって二つに分かれます。

導体の構造 呼び方 代表的なサイズ よく使う電線
単線(1本の丸い銅線) 直径[mm] 1.6/2.0/2.6/3.2 VVFケーブル、IV(細物)
より線(素線の束) 公称断面積[mm²] 2/3.5/5.5/8/14/22/38 IV(太物)、CV、CVT、KIV
単線は3.2mmまでしか規格になく、それより太い電線はすべてより線です。だから幹線の話は自然と断面積だけで進みます。

ここで押さえておきたいのは、単線の上限が3.2mmだという点です。太い単線は曲がらず、施工できません。結果として、太物の世界には単線が存在せず、mm表記も出てきません。「途中で単位が切り替わる」ように見えるのは、切り替わっているのではなく、細物の領域だけで二つの表記が併走しているからです。

ここまでのポイント
  • 単線=直径mm、より線=公称断面積mm²
  • 単線は3.2mmが上限。太物はすべてより線
  • 二つの表記が併走するのは細物の領域だけ

単線が「直径」なのは、そのまま測れるから

単線は、銅の丸棒を細く伸ばした1本です。断面は円で、そこに隙間はありません。つまり、マイクロメータで挟んだ値が、そのまま導体の寸法になります。

製造の側から見ても同じです。伸線工程では、ダイス(穴の空いた金型)を通して線を細くしていきます。制御している値は穴の径なので、製造条件と製品の呼称が最初から一致しています。検査も施工中の判別も、同じ1つの値で通せる。測れるものを、そのまま名前にした——単線がmm表記なのは、それだけの話です。

より線が「断面積」なのは、外径では中身が分からないから

より線は、細い素線を何本もねじり合わせた束です。曲げやすくするための構造ですが、この「ねじり合わせる」という作りが、直径での呼称を不可能にします。

理由は二つあります。

  • 束には必ず隙間がある——丸い素線を寄せ集めても、円は隙間なく詰められません。外径には、この空隙が含まれてしまいます。
  • より方で外径が変わる——同じ本数・同じ素線径でも、ねじりのピッチを変えれば仕上がりの外径は変わります。導体の量は変わらないのに、測った値だけが動く。

つまり、より線の外径は導体の量を表さない数字です。それを名前にしてしまうと、同じ呼び方の電線で許容電流が違う、という事態が起きます。

一方で、実際に効いているのは何かといえば、銅が何mm²あるかです。抵抗値も、発熱量も、許容電流も、断面積で決まります。だから、より線は効いている値のほうを名前にした——これがsq表記の正体です。

⚠️ 「公称」断面積であって、実測値ではない

より線のsq値は、素線径から計算した面積を、きりのいい数字に丸めたものです。たとえば2sqは実際には1.98mm²、38sqは38.2mm²あります。カタログの導体抵抗値は実構成に基づくので、精密な電圧降下計算をするときは呼称ではなく抵抗値[Ω/km]を使ってください。呼称をそのまま面積として計算に入れると、細物ほど誤差が乗ります。

ここまでのポイント
  • より線の外径には隙間が含まれ、導体量を表さない
  • より方(ピッチ)でも外径は動くが、断面積は動かない
  • 許容電流を決めているのは断面積のほう
  • sq値は計算値の丸め。厳密計算は導体抵抗値で


直径と断面積を換算すると、許容電流表がつながる

二つの表記は、円の面積の式ひとつで行き来できます。直径をd[mm]とすれば、断面積SはS=π×(d÷2)²です。実際に当てはめると、次のようになります。

直径から断面積への換算と許容電流の対応表
1.6mmは約2mm²、2.6mmは約5.5mm²。換算すると許容電流の並びもそのまま対応します。
単線 換算した断面積 許容電流 近いより線 許容電流
1.6mm 2.01mm² 27A 2mm² 27A
2.0mm 3.14mm² 35A 3.5mm² 37A
2.6mm 5.31mm² 48A 5.5mm² 49A
3.2mm 8.04mm² 62A 8mm² 61A
許容電流は絶縁電線を単独で敷設した場合の値です。管内やケーブルでは電流減少係数を掛けるため、この数字のままでは使えません。

並べてみると、断面積が大きいほうが許容電流も大きいという関係が崩れていないことが分かります。2.0mm(3.14mm²)は3.5mm²より細いので35Aと37A、3.2mm(8.04mm²)は8mm²より太いので62Aと61A。表記が違うだけで、内側では同じ物理量が並んでいます。

ここまで来ると、疑問は形を変えます。「なぜ単位が違うのか」ではなく、「なぜ2/3.5/5.5/8という中途半端な数列なのか」です。

答えは素線の構成にあります。より線は7本、あるいは19本といった決まった本数でより合わせるため、断面積は素線1本の面積×本数で決まります。

呼称 素線の構成 計算値
2mm² 7本 × 0.6mm 1.98mm²
3.5mm² 7本 × 0.8mm 3.52mm²
5.5mm² 7本 × 1.0mm 5.50mm²
8mm² 7本 × 1.2mm 7.92mm²
14mm² 7本 × 1.6mm 14.07mm²
22mm² 7本 × 2.0mm 21.99mm²
38mm² 19本 × 1.6mm 38.20mm²
60mm² 19本 × 2.0mm 59.69mm²
100mm² 19本 × 2.6mm 100.88mm²
5.5や3.5という半端な数字は、素線の構成から出てきた計算値を丸めた結果です。最初から5.5を目指したわけではありません。

そして、この表でいちばん見てほしいのは素線径の列です。1.6mm、2.0mm、2.6mm——単線でおなじみの寸法が、そのまま並んでいます。

つまり、より線は単線と同じ寸法系列の素線を束ねたものです。14mm²は1.6mmを7本、38mm²は1.6mmを19本。二つの表記は別世界の物差しではなく、同じ素材寸法の上に立っているということになります。

💡 覚えるなら、この3つだけ

換算表を丸暗記する必要はありません。1.6mm≒2sq/2.6mm≒5.5sq/3.2mm≒8sqの3つを押さえておけば、現場の会話はほぼ成立します。間の2.0mmだけは3.14mm²で、3.5sqよりわずかに細い——ここだけ例外として覚えておくと、見積もりの読み替えで迷いません。

ここまでのポイント
  • 換算は S=π×(d÷2)² のひとつだけ
  • 1.6mm≒2sq、2.6mm≒5.5sq、3.2mm≒8sq
  • 2/3.5/5.5という数列は素線構成の計算値の丸め
  • より線の素線径は、単線と同じ寸法系列


「sq」はどこから来た言葉か

sqはsquare millimeter(平方ミリメートル)の頭を取った略記です。正式な単位記号ではなく、現場で定着した言い方にすぎません。日本工業規格の表記は「公称断面積 mm²」で、sqという文字はどこにも出てきません。

読み方も「スケア」「スケ」と割れています。口頭ではどれも通じますが、書類に残すときは話が別です。

場面 推奨する書き方 理由
設計図面・仕様書 IV 5.5mm² 規格表記に合わせる。第三者が読む前提の書類
現場の指示・メモ 5.5sq/5.5スケ 口頭と一致していて誤解が少ない
電線の呼称だけを書く場合 IV5.5 単位を省く慣習。ただし単線と紛れる文脈では避ける
sqを使ってはいけないわけではありません。ただし正式書類では規格表記に寄せるほうが、後から読む人にとって安全です。
ここまでのポイント
  • sqはsquare millimeterの略。正式な単位記号ではない
  • 規格上の表記は「公称断面積 mm²」
  • 図面・仕様書はmm²、現場のやり取りはsqで問題ない

図面と発注で、間違えないための実務

単線とより線が存在する太さの範囲を示した図
単線は3.2mmまで。二つの表記が併走するのは細物の領域だけで、その先はより線しかありません。

単位の由来が分かっても、実務で困るのは取り違えです。とくに危ないのが、数字だけが独り歩きする場面です。

⚠️ 「2.0」と「2sq」を取り違えると1.6倍違う

2.0mmの単線は3.14mm²、2sqのより線は1.98mm²です。断面積で約1.6倍、許容電流では35Aと27Aの差があります。電話やチャットで「ニーゼロ」「ニー」とだけ伝わると、この取り違えが起きます。伝えるときは必ず「2.0ミリの単線」「2スケのより線」と、構造まで含めて言い切ってください。数字だけでは足りません。

もう一つ、見落としやすいのが端子まわりです。

  1. 圧着端子の適用範囲は断面積で決まっている——単線に付けるときは、直径から断面積へ換算してから選びます。2.0mmの単線は3.14mm²なので、2sq用の端子には入りません。
  2. 端子台の締付けは、より線と単線で挙動が違う——より線は素線がばらけると締付け不良になります。棒端子(フェルール)の使用が前提の機器も増えています。
  3. 制御盤内はより線が原則——盤内配線は振動と開閉を受けるため、単線は使いません。KIVのように、より柔らかい構成の電線が指定されます。
  4. 既設との接続は、両方の呼称を図面に残す——「既設IV5.5に、増設VVF2.0を接続」のように、どちらの表記かが読み取れる形で書いてください。

単線とより線は、性能で優劣がつくものではありません。固定して動かさない配線は単線、動きや振動がある場所はより線——選ぶ基準は施工条件のほうにあります。呼び方が二つあるのは、その二つの世界がそれぞれ自分にとって自然な物差しを選んだ結果です。

ここまでのポイント
  • 数字だけで伝えない。「ミリの単線」「スケのより線」まで言う
  • 圧着端子は断面積で選ぶ。単線は換算してから
  • 盤内・可動部はより線、固定配線は単線


よくある質問

1.6mmは何スケアに相当しますか?

約2mm²です。円の面積の式に当てはめると2.01mm²で、より線の2sq(実構成は1.98mm²)とほぼ一致します。許容電流もどちらも27Aで並びます。同じように2.6mmは5.31mm²で5.5sq、3.2mmは8.04mm²で8sqに近い値です。

なぜ2や5.5のような半端な数字なのですか?

素線の構成から出た計算値を丸めたためです。より線は7本や19本といった決まった本数でより合わせるので、断面積は素線1本の面積×本数で決まります。5.5mm²は1.0mmの素線を7本で5.50mm²、3.5mm²は0.8mmを7本で3.52mm²。きりのいい数字を先に決めたわけではありません。

単線とより線で、同じ断面積なら性能は同じですか?

抵抗も許容電流もほぼ同じです。違うのは施工性で、より線は曲げやすく振動に強い一方、素線がばらけると締付け不良を起こします。単線は形が安定して端子に納まりやすい代わりに、曲げを繰り返すと折れます。

単線に太いサイズがないのはなぜですか?

曲がらないからです。太い単線は施工時に取り回しができず、器具への納まりも取れません。規格上も3.2mmまでで、それより太い電線はより線になります。幹線の話が自然と断面積だけで進むのは、そこに単線が存在しないためです。

図面にはmm²とsqのどちらで書くべきですか?

設計図面や仕様書、積算書のように第三者が読む書類ではmm²を使ってください。規格上の表記が「公称断面積 mm²」であり、sqは現場で定着した略記だからです。現場での指示やメモにsqを使うことは問題ありません。

圧着端子は単線にも使えますか?

端子の適用電線範囲に単線が含まれていれば使えます。適用範囲は断面積で規定されているため、単線は直径から換算してから選んでください。2.0mmの単線は3.14mm²なので、2sq用の端子には入りません。メーカーの適用表で単線可の記載も確認してください。

電圧降下の計算に、呼称の数字をそのまま使っていいですか?

おおまかな検討なら問題ありませんが、余裕の少ない設計では避けてください。呼称は計算値を丸めた公称値で、2sqは実際には1.98mm²しかありません。精度が要る場面では、カタログの導体抵抗値[Ω/km]を使って計算してください。細物ほど丸めの影響が大きく出ます。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。