この記事は、連載コンセント設備の設計マニュアル」第5回 施工・検査 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
施工実務編③ 躯体工事の仕込みの全体像
📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。施工実務編③は躯体工事の仕込み用語編②で「コンクリの中は打つ前しか仕込めない」と学びました。今回はその“仕込み”の実際——締切(打設日)から逆算して動く仕事を見ていきます。

ペンタ
先輩、うちの課の先輩が「明日打設だから今日中に確認行ってくる」ってバタバタしてました。打設ってそんなに大イベントなんですか?
はりた
大イベントだよ。コンクリートは固まったら二度と中身を触れない。だから電気の仕込みはぜんぶ打設日がタイムリミット。流れを見てみよう。
ペン太ペン太
配管って、コンクリートを打った後に通せばいいと思ってました…
ハリタハリタ
コンクリの中は打つ前しか仕込めません。すべての工程は打設日からの逆算です。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 配管は、コンクリートを打った後に通せばよいのでしょうか。
  • 梁に開ける穴だけ扱いが特別なのは、なぜでしょうか。
  • 打設の当日、電気の担当者は現場で何をしているのでしょうか。

すべては打設日からの逆算

トピック1:すべては打設日からの逆算
図面承認から打設までの逆算フローと合番の役割
【図1】打設日から逆算する仕込みの流れ。打設中の「合番」まで含めて電気の仕事
ペンタ
「合番(あいばん)」って初めて聞きました。打設中も現場にいるんですか?
はりた
そう。コンクリを流し込むとき、圧力やバイブレータ(締固めの振動機)で配管がつぶれたりズレたりすることがある。それを打設に立ち会って見張り、その場で直すのが合番。埋まる瞬間まで気を抜けないんだ。
ペン太ペン太
スリーブとインサートって、同じ埋込部材じゃないんですか?
ハリタハリタ
スリーブは配管が通る穴、インサートは後付け機器の取付用。梁スリーブは梁せい1/3以下です。
ここまでのポイント
  • コンクリートは固まったら二度と中身を触れない。電気の仕込みはすべて打設日がタイムリミット。
  • 流れは承認→取付→確認→合番→打設。打設中の合番まで含めて電気の仕事。
  • 打設時は圧力やバイブレータの振動で配管がつぶれたりズレたりする。
  • 合番は打設に立ち会って見張り、その場で直す役目。埋まる瞬間まで気を抜けない。

コンクリートに仕込む4点セット

トピック2:コンクリートに仕込む4点セット
スラブ配管・梁スリーブ・床貫通枠・インサートの役割と急所
【図2】仕込み4点セット。合言葉は「図面で予約→打つ前に固定→埋まる前に記録」
ペンタ
梁スリーブだけ「構造の承認」って書いてありますね。梁の穴はそんなに特別なんですか?
はりた
梁は建物の骨だからね。穴を開けていい位置・大きさには構造上の制限(梁せいの1/3以下、端部を避ける等)があって、必ず構造設計の確認を受けた図面どおりに入れる。勝手に動かすのは絶対NG。第2部で図面を「共通言語」と言ったけど、スリーブ図はまさに構造と設備の契約書だよ。
仕込む部材役割急所
スラブ配管床の中に配管ルートを通す固定の甘さとかぶり厚
梁スリーブ梁を貫通する穴を確保する構造承認を受けた位置・サイズ
床貫通枠床を貫く開口をあらかじめ確保する位置の実測と数量の確認
インサート後付け機器の取付点を仕込む在来用とデッキ用の使い分け
ここまでのポイント
  • 仕込みの4点は、スラブ配管・梁スリーブ・床貫通枠・インサート。
  • スリーブは配管が通る穴、インサートは後付け機器の取付用。役割が違う。
  • 梁は建物の骨なので、穴を開けてよい位置・大きさに構造上の制限がある(梁せいの1/3以下、端部を避けるなど)。
  • 必ず構造設計の確認を受けた図面どおりに入れる。勝手に動かすのは絶対にしない。

💼 実務でこう生きる

トピック3:実務でこう生きる
📋 実務活用事例:スリーブ図の作成と承認フロー
新人が最初に任されがちなのがスリーブ・インサート図の作成。設備のルート図から貫通位置を拾い、構造設計へ確認を出します。
→ 打設日程を工程表で確認し、承認→現場取付→検査の日数を逆算してスケジュールを引けたら、もう「図面屋」ではなく「工事を動かす設計者」です。
📋 実務活用事例:打設前の立会いチェック
打設前検査では図面を持って位置(返り墨から実測)・数量・固定状態・かぶり厚を確認し、必ず写真を残します。埋まったあとは写真だけが証拠。「あのスリーブ入ってたっけ?」を防ぐのは記録の質です。
タイミングやること残すもの
打設のずっと前貫通位置を拾い、構造設計へ確認を出す承認を受けたスリーブ図
取付が済んだ日位置・数量・固定状態・かぶり厚を確認する打設前検査の写真
打設の当日合番で配管の変形やズレを見張るその場で直した記録
打設のあと中身は触れない竣工図への反映
ここまでのポイント
  • スリーブ・インサート図の作成は、新人が最初に任されがちな仕事。ルート図から貫通位置を拾い、構造設計へ確認を出す。
  • 打設日程を工程表で確認し、承認→現場取付→検査の日数を逆算してスケジュールを引けると、工事を動かす設計者になれる。
  • 打設前検査では、図面を持って位置(返り墨から実測)・数量・固定状態・かぶり厚を確認し、必ず写真を残す。
  • 埋まったあとは写真だけが証拠になる。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

トピック4:いまさら聞けない素朴なギモン
🐣 「合番」って、どういう語源?
「番を合わせる」=相手の作業に合わせてこちらも番(当番)に立つ、という現場言葉です。コンクリ打設に限らず、他職種の作業に立ち会って自分の設備を守る・調整する場面で広く使われます。「明日、打設の合番お願い」のように使います。
🐣 配管ってそんなに簡単につぶれるの?
生コンクリートは1㎥で約2.3トン。流し込む圧力とバイブレータの振動は相当なもので、固定の甘い樹脂管は変形・移動します。つぶれた配管は通線不能=埋め殺しの失敗資産になるので、結束・固定と合番が重要なのです。
ここまでのポイント
  • 合番は「番を合わせる」、つまり相手の作業に合わせてこちらも当番に立つという現場言葉。
  • 他職種の作業に立ち会って自分の設備を守る・調整する場面で広く使われる。
  • 生コンクリートは1㎥で約2.3トン。流し込む圧力と振動で、固定の甘い樹脂管は変形・移動する。
  • つぶれた配管は通線できず、埋め殺しの失敗資産になる。だから結束・固定と合番が重要になる。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

トピック5:深掘りQ&A ― 会話でもっと分かる
🔎 「スリーブの位置がずれて固まったらどうなるんですか?」と聞いてみた
はりた「軽微なら配管側のルートで吸収するけど、吸収できなければ“あと施工”——構造検討、鉄筋の位置調査(レントゲン)、補強…と大ごとになる。数センチのズレが数十万円になる世界。だから合番と打設前検査に本気を出すんだ」
🔎 「在来用とデッキ用のインサートは何が違うんですか?」と聞いてみた
はりた「スラブの作り方が違うから。合板の型枠に釘で打つのが在来用、波形の鋼板(デッキプレート)に取り付けるのがデッキ用。現場の構造がどちらかで使う金物が変わる——構造図を見る理由がまた一つ増えたね」
🔎 「打設後にどうしても穴が必要になったら?」と聞いてみた
はりた「まず構造設計に相談。位置の再検討、鉄筋探査、コア抜き(円形に削孔)、必要なら補強——正規の手順を踏めば不可能ではないけど、時間もお金もかかる。だから設計段階の貫通計画が大事なんだ」
ここまでのポイント
  • スリーブがずれて固まると、軽微なら配管ルートで吸収できるが、できなければあと施工になる。
  • あと施工は構造検討、鉄筋の位置調査、補強と大ごとになる。数センチのズレが大きな費用に化ける。
  • 在来用は合板の型枠に釘で打つ、デッキ用は波形の鋼板に取り付ける。現場の構造で使う金物が変わる。
  • 打設後の貫通も正規の手順を踏めば不可能ではないが、時間も費用もかかる。だから設計段階の貫通計画が大事。

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

トピック6:新人がやりがちな注意ポイント
  • 承認前のスリーブを現場に指示しない:構造確認の済んでいない位置・サイズは「仮」。先行手配は事故のもと。
  • かぶり厚を忘れない:配管が鉄筋やコンクリ表面に近すぎると強度・耐久性に影響します。
  • 写真を撮らずに埋めさせない:位置・固定・全景。埋まる前の記録は保険であり証拠。
ペン太ペン太
打設当日、僕は何をすればいいですか?
ハリタハリタ
合番で配管の変形を見張り、埋まる前に写真記録を。それが後々の証拠になります。
ここまでのポイント
  • 承認前のスリーブを現場に指示しない。構造確認の済んでいない位置・サイズは「仮」で、先行手配は事故のもと。
  • かぶり厚を忘れない。配管が鉄筋やコンクリ表面に近すぎると強度・耐久性に影響する。
  • 写真を撮らずに埋めさせない。位置・固定・全景の記録は保険であり証拠。

まとめ ― 今日の1枚

トピック7:まとめ ― 今日の1枚

この工程には、動かせない締切があります。打設日という1点に向けて、承認も取付も記録も並んでいきます。

合言葉中身外したときの代償
図面で予約承認を受けた位置に貫通を確保するあと施工で構造検討と補強が必要になる
打つ前に固定結束と固定で圧力・振動に耐えさせるつぶれた配管は通線できず埋め殺しになる
埋まる前に記録位置・固定・全景を写真に残す入っていたかどうかを証明できなくなる

逆算のながれ

  • 躯体仕込みは承認→取付→確認→合番→打設。すべて打設日からの逆算。
  • 仕込み4点:スラブ配管・梁スリーブ・床貫通枠・インサート。梁スリーブは構造承認が必須。

埋まる瞬間まで

  • 合番=打設中の見張り当番。埋まる瞬間まで配管を守る。
  • 生コンクリートの圧力と振動は相当なもの。固定の甘い配管は変形・移動する。

合言葉

  • あと施工は大ごと。「図面で予約→打つ前に固定→埋まる前に記録」
  • 打設前検査では、位置・数量・固定状態・かぶり厚を図面と照らして写真に残す。

コンクリートが流れ込んだ瞬間、その階の電気設備の骨格は確定します。締切のある仕事だからこそ、段取りがそのまま品質になります。

次回・施工実務編④は「接地工事と地中引込の実際」——建物の外、地面の下の電気工事です。

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。