標識は営業所に常時掲示し、1日で完了しない工事の施工場所にも掲げる。帳簿は営業所ごとに備え、6項目を記載して5年間保存する。記載事項の中身と、実務で抜けやすいところを整理する。
この記事の要点
- 標識は営業所に常時掲示する。加えて、1日で完了しない工事の施工場所にも掲示が要る。改修や増設で2日かかる案件は珍しくない。
- 帳簿は営業所ごとに備え、注文者・工事の種類と場所・施工年月日・主任電気工事士等と作業者の氏名・配線図・検査結果の6項目を記載する。
- 保存は5年間。記載を怠る、虚偽を記載する、保存しない場合は法第42条により1万円以下の過料になる。
標識 ── 何を書き、どこに貼るのか
ひとことで言うと:標識は「この工事は登録した事業者がやっている」ことを外から見える形にする仕組み。だから営業所だけでなく、現場にも要る。
法第25条は、電気工事業者に対して、営業所と電気工事の施工場所ごとに、氏名または名称、登録番号その他の事項を記載した標識を掲げることを求めている。具体的な記載事項は規則第12条で定められている。
登録電気工事業者の場合、書くのは7項目である。登録番号と登録の年月日、氏名または名称、代表者の氏名、営業所の名称、電気工事の種類、そして主任電気工事士等の氏名。1項目でも欠けていれば、掲示したことにならない。
見落とされやすいのが「主任電気工事士等の氏名」である。第3回で触れたとおり主任電気工事士は登録事項なので、交代したら30日以内に変更届を出すことになるが、同時に標識の書き換えも必要になる。届出だけ出して標識が前任者の名前のまま、という状態は実際によく見かける。
掲示する場所は2か所ある
営業所は無条件である。登録している営業所すべてに、見やすい場所へ常時掲示する。
もうひとつが施工場所で、こちらには条件がつく。1日で完了する工事は除かれるが、裏を返せば2日以上かかる現場には標識が要る。改修、増設、分電盤の更新といった案件は2日を超えることが多く、対象範囲は思っているより広い。
現場用の標識を用意していない事業者は多い。営業所の登録票は額に入れて壁に掛けてあるが、現場に持ち出せる可搬式のものがない、という状態である。持ち運べる標識を営業所の数だけ作っておくのが、いちばん確実な対応になる。
帳簿 ── 6項目を、営業所ごとに
法第26条は、電気工事業者に営業所ごとの帳簿の備付けと記載、そして保存を求めている。記載事項は規則第13条にある。
並べてみると、この6項目が何のためにあるのかが見えてくる。誰から請け負い、どこで何をして、いつ施工し、誰が管理して誰が作業し、どう配線して、何を確かめたか。あとから工事の中身を再現できるだけの情報を、意図的に選んでいる。
実務で抜けやすいのは、後ろの2つ――配線図と検査結果である。前の4つは請求書や工事台帳から拾えるが、この2つは意識して残さないと消える。第5回で扱う器具の話ともつながっていて、絶縁抵抗計や接地抵抗計で測った値を書き残す場所が、この帳簿になる。
5年間、営業所に置いておく
保存期間は5年。起点は施工した日である。工事が完了して引き渡し、請求も終わったあとも、記録だけは営業所に残り続ける。
置き場所も「営業所ごと」と決まっている。支店で施工した工事の帳簿を本社に集約する運用は、条文の求めるところではない。立入検査はその営業所に来るので、そこで出せなければ意味がない。
罰則は小さいが、入口になる
記載を怠る、虚偽を記載する、保存しない場合の罰則は、法第42条により1万円以下の過料である。金額としては連載中で最も軽い部類にあたる。ただし立入検査で最初に開かれるのは帳簿であり、そこに書かれた主任電気工事士や作業者の氏名から、無資格者が作業していなかったか、主任電気工事士が実際に管理していたかという別の論点へ進んでいく。帳簿は、事業者を守る記録にも、追及の起点にもなる。
標識には、何をどう書くのか
ひとことで言うと:記載事項は決まっている。書式は自由でも、抜けがあれば掲示していないのと同じ扱いになる。
標識に書く事項は省令で定められている。市販の標識板を買えば枠は用意されているが、営業所名や主任電気工事士の氏名は自分で埋めることになる。埋め忘れが起きやすいのはこの2つである。
主任電気工事士が交代したのに標識だけ前任者のままになっている例は珍しくない。変更の届出とあわせて、標識の書き換えも手順に組み込んでおきたい。施工場所に掲げる標識も同じ内容である。
帳簿は、実際にどう埋まるのか
ひとことで言うと:1件の工事につき1行ではなく、記載事項をひととおり埋めた記録を1件分として残す。
帳簿の記載事項は省令で定められている。様式は自由なので、自社の工事台帳に項目を足す形でも、市販の帳簿を使う形でもよい。次は、架空の1件を例に、どう埋まるのかを並べたものである。
| 帳簿の記載事項 |
記入例 |
| 注文者の氏名または名称および住所 |
みどり商事 株式会社/○○市○○町1-2-3 |
| 電気工事の種類および施工場所 |
一般用電気工事/○○市○○町1-2-3 事務所 |
| 施工年月日 |
令和8年5月12日 |
| 主任電気工事士および作業者の氏名 |
青木 二郎(主任)/白井 三郎 |
| 配線図 |
別紙のとおり(引込〜分電盤) |
| 検査結果 |
絶縁抵抗 0.2MΩ以上、接地抵抗 85Ω、導通・極性 良 |
| 請負金額 |
—(記載は任意) |
記載事項は省令で定められている。記入例は架空のもの。請負金額は法定の記載事項ではないが、実務では併記されることが多い。
検査結果の欄が空欄のまま回ってくることが多い。竣工時の測定値をその場で書き留める運用にしておくと、あとから探し直す手間がなくなる。配線図は帳簿に直接描かず、別紙を綴じて「別紙のとおり」と記す形でも差し支えない。
実務でつまずきやすいところ
注意 01
標識の書き換えを忘れる
主任電気工事士の交代、営業所の名称変更、更新による登録番号の変更。いずれも変更届は出すのに、標識だけ古いままになりやすい。更新のたびに登録番号が変わるので、5年ごとに作り直す前提で考えておくとよい。
注意 02
現場用の標識がない
2日以上かかる現場には施工場所にも標識が要る。営業所の額入り登録票は持ち出せないので、可搬式のものを別に用意する。掲示を怠った場合も法第42条の過料の対象である。
注意 03
配線図と検査結果が残っていない
帳簿の6項目のうち、この2つだけは現場で意識して残さないと後から復元できない。測定値は測ったその場で書く。
竣工検査の記録様式を帳簿の一部として設計しておくと、二重管理にならずに済む。
注意 04
本社にまとめてしまう
帳簿は営業所ごとに備え付ける。電子データで一元管理する場合も、その営業所で速やかに出力・提示できる状態にしておく必要がある。クラウドに置くこと自体は問題ないが、現地で見せられるかどうかで考える。
標識と帳簿は、どちらも「外から確かめられるようにする」ための義務である。技術的な難しさはないが、日々の運用に組み込んでおかないと必ず抜ける。
次回
第5回は器具の備付けを扱う。営業所に何を置くのか、一般用と自家用で何が違うのか、借りて済ませてよいものはどれか、という話になる。
一次資料で確認するには
- 各都道府県の担当課 ── 標識の様式(様式第15など)が公開されている
- 電気工事業法施行規則 第12条・第13条 ── 標識と帳簿の記載事項
- 自社の竣工検査記録の様式 ── 帳簿の記載事項を満たしているかを突き合わせる
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。様式・記載事項の運用は自治体によって細部が異なり、法令も改正されます。実際の対応にあたっては、所管する都道府県または産業保安監督部の最新の案内を必ず確認してください。
出典
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