この記事は連載「接地・雷保護の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
技術図書館接地極と接地抵抗|抵抗値は設計ではなく、土が決める抵抗の正体、深さ・本数・太さの効き方の違い、値が出ないときの打ち手の順番をスライドで整理しました。この資料をスライドで見る資料一覧を見る
接地・雷保護の設計マニュアル第2回のタイトル図
接地抵抗の大半は、接地極のすぐ近くの土で決まります。深さと本数の効き方の違い、土壌抵抗率の目安、値が下がらないときの打ち手の順番、構造体接地の工程、そして3極法による測定と記録までを整理します。

接地工事でいちばんよく聞く声は、たぶんこれです。「打ったけど、値が落ちない」。

よくある現場

  • 図面の指定は「D種接地 10Ω以下」
  • 1本目を打って測ると 80Ω
  • もう1本打っても 60Ω。半分にはならない
  • 3本目を打つ頃には、掘削の手間も日程も、当初の見込みから完全に外れている
ペン太ペン太
図面は10Ω以下。でも3本打っても60Ωから下がりません。打ち方が悪いんでしょうか?
はりたはりた
たぶん腕の問題じゃないよ。接地抵抗を決めているのは電極じゃなくて、その下の土だから。
ペン太ペン太
じゃあ、どれだけ頑張っても下がらない現場がある、ということですか?
はりたはりた
あるよ。だから大事なのは「下がらなかったとき、どうするか」を着工前に決めておくこと。

このとき起きていることは、施工の失敗ではありません。接地抵抗というのは、電極の性能ではなく、その土地の性質だからです。

第1回で「接地とは電位をそろえること」と書きました。今回は、その電位をそろえる相手である「大地」が、どれくらい言うことを聞かないのかという話をします。

合言葉は「抵抗値は設計ではなく、土が決める」。設計者にできるのは、土が決めた値を受け入れたうえで、どう手を打つかを事前に決めておくことだけです。

接地抵抗の正体は、電極ではなく「土」

トピック①:接地抵抗の正体

接地抵抗計が表示している値は、次の3つの合計です。

  • 接地極そのものの金属抵抗(銅・溶融亜鉛めっき鋼)
  • 接地極と、それに接する土との接触抵抗
  • 接地極のまわりに広がる、大地そのものの抵抗

このうち1番目は、実務上ゼロと思って構いません。2番目も、きちんと打ち込まれていれば大きくはない。値のほとんどすべては、3番目です。

そして、その大地の抵抗には特徴があります。電流は接地極から放射状に広がっていくので、電極のすぐ近くでは電流の通り道の断面積が小さく、遠ざかるほど断面積が大きくなる。断面積が小さいところほど、抵抗は大きい。

つまり接地抵抗の大半は、接地極からごく近い範囲の土で発生しているということです。

接地抵抗は、どこで発生しているか 抵抗の大半は「接地極のすぐそば」の土で生まれる 地上 大地 接地極 ここで 大半が決まる 残りはわずか 遠方はほぼ影響しない 電極からの距離と、抵抗の積み上がり方 接地極からの距離 → 累積した抵抗 → 電極から1m程度で もう大半が積み上がる ここから先は、ほとんど増えない

この図が意味することは、実務的にかなり重要です。接地抵抗を下げたければ、電極のすぐ近くの土をどうにかするしかない。逆に言えば、遠くの土がどれだけ良質でも、電極の周囲が悪ければ値は下がりません。

ペン太ペン太
値が落ちないので、もう1本打とうと思います。
はりたはりた
どこに打つ?
ペン太ペン太
ハンドホールの中の、いま打ったやつの横です。
はりたはりた
それだと効かない。抵抗を発生させている領域が重なるからね。増やすなら接地極の長さの2倍以上は離す。離せないなら、深く打つほうが早い。
同じ理由で、地表の電位も急に落ちる
地絡電流が流れているとき、接地極の近くでは地面の電位が急激に変化します。人が両足を開いて立っていると、その差が足の間にかかる。これが歩幅電圧(ステップ電圧)です。屋外キュービクルや鉄塔まわりで接地極の位置に気を使うのは、この電位の勾配が電極のすぐ近くで最も急だからです。
接地極の近くで地表の電位が急に落ちる様子と、歩幅電圧を示した図
電位の勾配は電極のすぐ近くでいちばん急になります。
ここまでのポイント
  • 接地抵抗計が示す値は、金属抵抗・接触抵抗・大地の抵抗の合計
  • ほとんどすべては3つ目、電極のまわりに広がる大地の抵抗
  • 電流は放射状に広がるので、電極のすぐ近くほど断面積が小さく、抵抗が大きい
  • 下げたければ、電極のすぐ近くの土をどうにかするしかない
  • 同じ理由で、地表の電位も電極の近くで急に落ちる(歩幅電圧)

だから「深さ」は効いて、「本数」は効きにくい

トピック②:深さと本数の効き方

棒状接地極1本の抵抗は、おおよそ次のように表されます(Dwightの式)。

R ≒ ρ ÷ (2πL) × { ln(4L ÷ a) − 1 }
R:接地抵抗〔Ω〕 ρ:土壌抵抗率〔Ω・m〕 L:接地極の埋設長〔m〕 a:接地極の半径〔m〕

式を覚える必要はありません。読み取ってほしいのは、次の3点だけです。

  • ρに比例する。土が悪ければ、何をしても比例して悪い。
  • Lにほぼ反比例する。深さを2倍にすれば、抵抗はおおむね半分近くまで下がる。
  • aはlnの中にしかいない。つまり太さを2倍にしても、数%〜十数%しか変わらない。

「太い接地棒を使えば下がるのでは」という発想が空振りするのは、このためです。効くのは深さです。

では本数はどうか。2本打てば並列だから半分——にはなりません。近くに打った2本は、お互いの「抵抗を発生させている領域」が重なるからです。この重なりを相互干渉といいます。

2本並列で実際に得られるのは、おおむね0.55〜0.65倍程度。3本打っても0.4倍前後で、そこから先はどんどん鈍くなります。

深く打つ vs 本数を増やす 同じ「2倍」でも、返ってくるものが違う 深さを2倍にする 1.5m 3.0m 80Ω → 約45Ω 掘削面積は増えない・深い層は湿っている 季節変動も小さくなる 本数を2倍にする 領域が重なる=相互干渉 80Ω → 約50Ω 半分にはならない。掘削も端子も2倍 離隔をとれば効くが、敷地を食う

本数で稼ぐなら、離隔をとることが条件になります。目安は接地極の長さの2倍以上。1.5mの接地棒なら3m以上離す。50cm横に並べて打った2本は、電気的にはほとんど1本と同じです。

変えるもの式の中での効き方2倍にしたときの目安実務上の条件
深さ Lほぼ反比例おおむね半分近くまで下がる連結式接地棒で深打ち。深い層は湿っていて季節変動も小さい
本数(並列)相互干渉で頭打ち2本で0.55〜0.65倍、3本で0.4倍前後接地極長さの2倍以上の離隔が前提
太さ alnの中にしかいない数%〜十数%しか変わらない太径化は費用に対して効果が小さい
土壌抵抗率 ρ比例そのまま2倍設計者には選べない。ボーリング柱状図で着工前に見当をつける

※いずれも棒状接地極1本を基準にした目安です。実際の値は土質と施工状態で振れます。

接地極を近くに打った場合と離して打った場合の、影響領域の重なりを示した図
増やすなら離す。離せないなら深くする。
現場でよくある、意味の薄い増設
「値が出ないのでハンドホールの中でもう1本打ちました」。狭いピットの中で数十cm横に打った2本目は、期待した効果を出しません。増やすなら、離す。離せないなら、深くする。この判断を現場で即答できるかどうかが、手戻りの量を決めます。
ここまでのポイント
  • 棒状接地極1本の抵抗は R ≒ ρ÷(2πL)×{ln(4L÷a)−1}(Dwightの式)
  • ρに比例する。土が悪ければ、何をしても比例して悪い
  • Lにほぼ反比例する。深さを2倍にすれば、おおむね半分近くまで下がる
  • aはlnの中にしかない。太さを2倍にしても数%〜十数%しか変わらない
  • 2本並列で約0.55〜0.65倍、3本で約0.4倍。相互干渉があるため
  • 本数で稼ぐなら離隔が条件。目安は接地極の長さの2倍以上

土壌抵抗率という、設計者が動かせない変数

トピック③:土壌抵抗率

式のなかで、いちばん大きく効くのに、いちばん手が出せないのがρ(土壌抵抗率)です。単位はΩ・m。ざっくりした目安は次のとおりです。

土質と土壌抵抗率の目安 同じ接地極でも、土が違えば値は100倍変わる 10 100 1,000 10,000〔Ω・m〕 海水・海岸埋立地 数Ω・m台も 粘土・ローム(関東ローム等) 最も一般的な地盤 砂質土・シルト 乾湿で大きく振れる 礫・砂利・玉石 深打ちが効きにくい 岩盤・花崗岩 ボーリング接地の領域 コンクリート(湿潤) =構造体接地が成り立つ理由 数値は代表値の幅。実地盤は層構造なので、上の層が悪くても下が良いことは珍しくない

重要なのは、この値が設計段階で調べられるということです。建築側のボーリング柱状図には、深さごとの土質が書いてあります。地下水位も書いてあります。

埋立地なのか、ローム層なのか、途中から礫が出るのか。それを見れば、「1.5mの接地棒1本で10Ωはまず無理だ」という判断は、着工前にできます。

もうひとつ。ρは季節で動きます。土に含まれる水分と、その水に溶けた塩類が電気を運んでいるので、乾期は上がり、雨期は下がる。

地表付近ほど振れ幅が大きく、深いところは安定しています。冬に凍結する地域では、凍結深度以下に電極を入れることが前提になります。

土壌抵抗率が季節でどう動くかを、地表付近と深いところで比べた図
乾期は上がり、雨期は下がる。地表付近ほど振れ幅が大きくなります。
竣工検査の値は「その日の値」
梅雨明け直後の測定で8Ω、翌年2月に測ったら14Ω。これは施工不良ではなく、土が乾いただけです。だからこそ、規定値ぎりぎりで竣工させるのは危ない。余裕を見るというのは、この季節変動を見込むという意味でもあります。
ここまでのポイント
  • ρ(土壌抵抗率)は、いちばん大きく効くのに、いちばん手が出せない
  • 建築側のボーリング柱状図で、深さごとの土質と地下水位が分かる
  • 「1.5mの接地棒1本で10Ωはまず無理だ」という判断は着工前にできる
  • ρは季節で動く。乾期は上がり、雨期は下がる
  • 地表付近ほど振れ幅が大きく、深いところは安定している
  • 凍結する地域では、凍結深度以下に電極を入れることが前提

値が出ないときの打ち手には、順番がある

トピック④:打ち手の順番

現場で困ったときに、思いつく順ではなく、効果とコストの順に手を打つ。順番はおおむね次のとおりです。最後の「目的に戻る」は、等電位ボンディングや漏電遮断器による保護まで含めて、接地に何をさせたいのかを考え直すという意味です。

接地抵抗が下がらないときの手順 上から順に検討する。飛ばすと、たいてい高くつく1深く打つ(連結式接地棒・深打ち)最も素直に効く。掘削面積が増えず、季節変動も小さくなる。まずここ2離して増やす(並列接地・接地極長さの2倍以上)敷地に余裕があるとき有効。近接して打つと効果が出ないので離隔が命3接地抵抗低減剤を使う電極まわりのρを下げる。非公害性・電極を腐食させないものを選び、効果の経年低下を前提に4構造体接地・メッシュ接地に切り替える建物の基礎を使う。数Ω以下が現実的に狙える。ただし建築工程との調整が前提5目的に戻る(電位差をなくす・保護方式の見直し)低い値そのものが目的ではない。保護が確実に働き、電位差が抑えられるなら、そちらが本筋

3番の低減剤について補足します。低減剤は、電極のまわりの土のρを下げるものです。前半で見たとおり抵抗の大半は電極近傍で発生するので、理屈としては正しく効きます。ただし効くのは施工した範囲だけで、雨で流亡したり、経年で効果が薄れたりします。

また、種類によっては電極を腐食させます。公的な評価を受けた非公害性のものを、施工要領どおりに使うのが前提です。塩や木炭を埋めるといった昔ながらの方法は、腐食と環境の両面で、今は選択肢になりません。

そして5番。これがいちばん大事です。第1回で書いたとおり、接地の目的は「電位をそろえること」であって「小さい数字を出すこと」ではありません。D種接地の規定値は、電技解釈では100Ω以下。0.5秒以内に動作する漏電遮断器を施設する場合は500Ω以下まで緩和されます。

図面に書かれた「10Ω以下」は、多くの場合は法令ではなく、発注者の特記仕様です。

その値の出どころ緩められるか実務での対応
電技解釈(D種接地)原則100Ω以下。0.5秒以内に動作する漏電遮断器を施設する場合は500Ω以下法令上の要求。これを満たしていれば、規定としては足りている
発注者の特記仕様書・社内標準協議の対象になりうる数字の根拠を確認し、地盤の条件と実測値を示して協議する
機能上の要求(医用接地、情報通信の基準電位、雷保護など)緩められない構造体接地やメッシュなど、確実に値の出る方法を設計段階で選ぶ

覚えておきたい

どうしても出ないとき、その数字が何に由来しているのかを確認するのは、逃げではなく設計行為です。

ただし、緩めてはいけない接地もある
医用接地、情報通信設備の基準電位、雷保護用の接地など、値そのものに機能上の意味がある接地は別です。「規定値は100Ωでいい」という理屈が通るのは、あくまで漏電遮断器による保護が成立する範囲の話。何のための接地かを取り違えると、数字合わせのために本来の機能を落とすことになります。
ここまでのポイント
  • 打ち手には順番がある。深く→離して増やす→低減剤→構造体・メッシュ→目的に戻る
  • 低減剤は「最初から当てにする」ものではない
  • 効果は電極周囲に限られ、経年で薄れる
  • 低減剤で規定値ぎりぎりに収めた接地は、数年後に規定値を割る可能性がある

構造体接地は、電気工事ではなく工程の話

トピック⑤:構造体接地

建物の基礎の鉄筋を接地極として使う方法を、構造体接地(基礎接地)といいます。効く理由は単純で、面積が桁違いに大きいからです。

1.5mの接地棒がせいぜい数百cm²の表面積であるのに対し、建物の基礎は数百m²の広がりを持っています。

湿ったコンクリートは土壌と大差ない導電性を持つので、鉄筋がそのまま巨大な接地極になる。数Ω、条件が良ければ1Ω以下も現実的です。

問題は、これが電気工事の都合だけでは成立しないことです。鉄筋に端子を溶接して、地上まで引き出す作業は、配筋が終わってコンクリートを打つ前の、ごく短い期間にしかできません。この一点に尽きます。

  • 基本設計の段階で、構造設計者に「基礎鉄筋を接地に使う」と伝えて合意を取る
  • 引出し位置(受変電室、EPS、避雷設備の引下げ導線位置)を、躯体図に落とす
  • 配筋検査の日程を押さえ、その前に溶接と端子出しを終わらせる
  • 溶接した鉄筋の位置と本数を写真に残す(あとから確認する手段がなくなるため)

コンクリートが打たれた瞬間に、この選択肢は消えます。「あとで接地棒を打てばいい」で済ませてしまった建物が、竣工間際に値が出なくて大騒ぎになる——という流れを、何度も見ることになるはずです。

ここが分かれ目

構造体接地は、着工前に決めるものです。

ペン太ペン太
構造体接地って、そんなに効くんですか。
はりたはりた
面積が桁違いだからね。1.5mの接地棒が数百cm²、基礎は数百m²。数Ωは普通に出る。
ペン太ペン太
じゃあ最初からそれで……。
はりたはりた
ただし手が出せるのは、配筋が終わってコンクリートを打つまでの間だけ。打たれたら終わり。これは電気工事の話じゃなくて、工程の話なんだ。
構造体接地に手が出せる工程を、基本設計からコンクリート打設まで並べた図
コンクリートが打たれた瞬間に、この選択肢は消えます。
ここまでのポイント
  • 構造体接地が効く理由は面積。基礎は数百m²の広がりを持つ
  • 数Ω、条件が良ければ1Ω以下も現実的
  • 鉄筋への溶接と端子出しは、配筋後・コンクリート打設前のごく短い期間にしかできない
  • 基本設計で構造設計者と合意し、引出し位置を躯体図に落とし、配筋検査の日程を押さえる
  • 溶接した鉄筋の位置と本数は写真に残す
  • コンクリートが打たれた瞬間に、この選択肢は消える

測るときに、何を測っているのか

トピック⑥:測るときに

接地抵抗計の基本は電位降下法(3極法)です。測りたい接地極Eのほかに、電流を流すための補助極Cと、電位を拾うための補助極Pを打ちます。EとCの間に既知の電流を流し、EとPの間に現れた電圧を測って、割り算する。それだけです。

問題は、Pをどこに置くかです。Eの近くに置けば低く出るし、Cの近くに置けばCの抵抗まで拾ってしまう。正しい位置は、E-C間の約61.8%のところ——というのが、いわゆる61.8%法です。

電位降下法(3極法)と、補助極の位置 Pの位置がずれると、値もずれる E 測りたい接地極 P 電位用 補助極 C 電流用 補助極 E – C 間の距離 D(10m以上が目安) 0.618 × D 地表の電位 Eの近くもCの近くも電位が急変する。中間の平らな部分で拾うのが61.8%の意味

実務では、補助極を打つ場所がないことのほうが多いはずです。舗装されている、地下に埋設物がある、敷地が狭い。そういうときにクランプ式の接地抵抗計が出てきますが、これには明確な使用条件があります。

クランプ式は「他に接地がある」ことが前提
クランプ式は、測定対象の接地極と、他の多数の接地極とで閉ループができていることを利用しています。裏を返せば、単独で打たれた接地極は測れません。屋外の独立柱、単独接地された機器などにクランプをかけて出た数字は、意味のある値ではありません。竣工時の記録は原則として3極法で、日常点検の傾向管理にクランプ式を使う、という切り分けが安全です。
単独接地と多点接地で、クランプ式が使えるかどうかが変わることを示した図
クランプ式は「他に接地がある」ことが前提です。

もうひとつ、測定時に必ず問題になるのが「接地線を外すかどうか」です。正確に測るには対象の接地極を系統から切り離したいところですが、通電中の設備の接地線を外す行為には危険が伴います。外した瞬間、その機器の外箱は接地を失います。

外す前に決めておくこと

原則として停電させて行う。やむを得ない場合は、他の接地が生きていることを確認する。いずれにしても、手順を決めてから触る作業です。

そして記録。測定値だけでなく、測定日、天候、直近の降雨、測定方法、補助極の配置まで残します。数年後に「値が上がった」と言われたとき、比較できるのは同じ条件で測った記録だけです。

接地抵抗の測定記録に残しておく項目を並べた図
値だけを残しても、あとから比較できません。
ここまでのポイント
  • 基本は電位降下法(3極法)。E・C・Pの3極を使う
  • Pの位置はE-C間の約61.8%(61.8%法)
  • クランプ式は、他の多数の接地極と閉ループができていることが前提
  • 単独で打たれた接地極は、クランプ式では測れない
  • 記録には測定値だけでなく、測定日・天候・直近の降雨・測定方法・補助極の配置を残す

まとめ

トピック⑦:まとめ
  • 接地抵抗のほとんどは、電極の性能ではなく電極のすぐ近くの土で発生している
  • 効くのは深さ。太さはほとんど効かない。本数は相互干渉があるので、離隔とセットで考える
  • 土壌抵抗率は着工前にボーリング柱状図で見当がつく。値が出るかどうかは設計段階で予想できる
  • 下がらないときは「深く→離して増やす→低減剤→構造体・メッシュ→目的に戻る」の順に検討する
  • 構造体接地は最も確実だが、コンクリート打設前にしか手が出せない。工程の問題であって、電気工事の問題ではない
  • 測定は3極法が基本。クランプ式は単独接地では測れない。記録には天候と条件を添える

よくある質問

トピック⑧:よくある質問

Q1. 接地抵抗低減剤は、使ってしまってよいのでしょうか?

使ってよい場面はあります。ただし「最初から当てにする」ものではなく、深打ちや離隔増設を検討したうえでの手段です。

選定では、非公害性であること、電極を腐食させないこと、施工要領が明確であることを確認してください。効果は電極周囲に限られ、経年で薄れます。低減剤で規定値ぎりぎりに収めた接地は、数年後の点検で規定値を割る可能性があると考えておくのが現実的です。

Q2. 図面の「D種10Ω以下」が、どうしても出ません。

まず、その10Ωの出どころを確認してください。電技解釈が求めるD種接地の値は100Ω以下(0.5秒以内に動作する漏電遮断器を施設する場合は500Ω以下)です。

10Ωという数字は、発注者の特記仕様書や社内標準に由来していることが多く、その場合は協議の対象になります。

一方で、医用接地や情報通信の基準電位、雷保護など、値そのものに機能上の意味がある接地は緩められません。何のための数字かを切り分けることが先で、値を追いかけるのはそのあとです。

ペン太ペン太
図面に「D種 10Ω以下」とあるんですが、どうしても出ません。
はりたはりた
その10Ωはどこから来た数字? 電技解釈が求めるD種は100Ω以下、条件が合えば500Ω以下だよ。
ペン太ペン太
特記仕様書でした。
はりたはりた
なら協議の対象になる。逆に医用接地や雷保護みたいに、値そのものに意味がある接地は緩められない。まず切り分けることだね。
D種接地工事の法令値と、図面の10Ωの出どころを整理した図
まず、その10Ωがどこから来た数字かを確認します。

Q3. 接地極は結局、何本打てばよいのですか?

本数から決めるのは順番が逆です。土壌抵抗率の見当をつけ、1本あたりで何Ω出そうかを見積もり、必要な値との差を埋める方法(深さか、本数か、構造体か)を選ぶ。

この順で考えると、「とりあえず3本」という見積もりが、現場でどれだけ外れるかが分かります。本数で稼ぐ場合は、接地極長さの2倍以上の離隔を確保できるかどうかを、必ず先に確認してください。

Q4. 測定するたびに値が変わります。計器の故障でしょうか?

まず疑うのは土の状態と補助極です。降雨の直後かどうか、補助極が乾いた砂利や舗装の隙間に打たれていないか、E-P-Cが一直線になっているか、近くに地中埋設の金属体や他の接地極がないか。

また、電車軌道や大型設備の近くでは迷走電流の影響を受けます。計器側の設定(補助極抵抗の警告表示)も確認してください。故障を疑うのは、これらを一通り潰したあとで十分です。

次回予告

第3回は「接地の共用と分離」です。強電と弱電の接地は分けるべきなのか。医用接地はどうか。ノイズを嫌って別々に打った接地が、かえって機器を壊すことがあるのはなぜか。

第1回・第2回で見てきた「電位をそろえる」「大地の抵抗は下がらない」という2つの事実が、ここで効いてきます。

合言葉は「分けるほど安全ではない」。→ 第3回 接地の共用と分離 を公開しました。

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ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。