整備工場の危険物保管庫という、件数の多い小規模な例で考える。照明スイッチを庫外に出すと何が減るのか、その前に確かめる中身と指定数量、そして換気と落とし穴まで。

この記事の要点

200L
ガソリンの指定数量
1/5以上
少量危険物になる下限
0
目指したい庫内の電気設備
  • 防爆の費用は機器代だけではない。庫内の電気設備の台数が減るほど、配管・シール・保守がまとめて減る。
  • 整備工場の保管庫では、照明スイッチを庫外に出すだけで、庫内に残る防爆機器が1点になる。
  • その前に確かめるのは中身の引火点である。常温で蒸気を出さないものだけなら、話はそこで終わる。

小さな保管庫ほど、費用の効き方が大きい

ひとことで言うと:庫内の電気設備を1つ減らすことは、機器代・配管・シール・点検をまとめて1つ減らすことである。

防爆というと大きなプラントの話に見えるが、実務で件数が多いのは、自動車のディーラーや整備工場にある危険物の保管庫である。ガソリンの入った混合油缶、シンナー、塗料、ブレーキクリーナーのエアゾール缶、廃油。部屋は数平方メートルで、照明は1灯か2灯。

この規模では、防爆機器を1点減らせるかどうかが、そのまま見積の差になる。しかも効くのは器具の単価だけではない。庫内に点滅器を置けば、そこまでの配管が要り、貫通部にシールが要り、点検のたびに開ける箇所が増える。

保​管​庫​の​照​明​の​3​つ​の​案保​管​庫​の​照​明​ ​─​─​ ​3​つ​の​案庫​内​に​残​る​電​気​設​備​が​少​な​い​ほ​ど​、​費​用​も​保​守​も​軽​く​な​る保​管​庫案​A防​爆​照​明​器​具S​W庫​内​ス​イ​ッ​チ庫​内​に​器​具​と​ス​イ​ッ​チ防​爆​機​器​2​点​+​配​管保​管​庫案​B防​爆​照​明​器​具S​W器​具​は​庫​内​、​ス​イ​ッ​チ​は​庫​外防​爆​機​器​1​点​+​貫​通​1​か​所保​管​庫案​C電​気​設​備​な​しS​W器​具​も​庫​外​か​ら​照​ら​す防​爆​機​器​0​点※​案​C​は​庇​の​下​や​開​口​部​の​透​光​板​越​し​に​照​ら​す​方​法​。​小​面​積​の​保​管​庫​で​成​立​す​る​こ​と​が​あ​る​。

案Bが、この規模でもっとも現実的な落としどころになる。庫内に残るのは照明器具1点、壁の貫通は1か所。案Cが成立すれば庫内の電気設備はゼロになるが、庇や開口部の条件が合う場合に限られる。

その前に ── そもそも危険場所になるか

ひとことで言うと:エンジンオイルや廃油だけなら、常温で爆発性の雰囲気はできない。中身の確認が先である。

依頼を受けて最初に確かめるのは、庫に何が入るかである。第4石油類のエンジンオイルやギヤー油は引火点が高く、常温で爆発性の雰囲気を作らない。それだけを置く倉庫なら、防爆の議論は不要になる。

一方で、ガソリンの入った缶が1つでも置かれるなら扱いが変わる。現場では「オイル倉庫」と呼ばれていても、実際に開けてみるとスプレー缶とシンナーが並んでいることが多い。設計の段階で、置かれる物を品名で拾っておきたい。

保​管​庫​の​電​気​設​備​を​決​め​る​ま​で​の​判​定ま​ず​「​危​険​場​所​に​な​る​か​」​か​ら​確​か​め​る中​身​の​引​火​点​で​、​話​が​ま​る​ご​と​変​わ​る①​ ​常​温​で​蒸​気​を​出​す​も​の​が​入​る​か入​ら​な​い​ ​→​ ​防​爆​は​不​要②​ ​数​量​は​指​定​数​量​の​5​分​の​1​以​上​か未​満​ ​→​ ​条​例​の​対​象​外​の​場​合​も③​ ​指​定​数​量​以​上​か以​上​ ​→​ ​危​険​物​貯​蔵​所​と​し​て​許​可い​ず​れ​に​せ​よ​、​電​気​設​備​は​電​気​工​作​物​に​係​る​法​令​に​よ​る=​ ​電​気​設​備​技​術​基​準​の​解​釈​ ​第​1​7​6​条​ほ​か​の​工​事​方​法​に​従​う※​少​量​危​険​物​は​指​定​数​量​の​5​分​の​1​以​上​・​指​定​数​量​未​満​(​個​人​の​住​居​は​2​分​の​1​以​上​)​。​届​出​先​と​基​準​は​市​町​村​の​条​例​に​よ​る​。
品名 代表的な物 指定数量 整備工場での例
第1石油類(非水溶性) ガソリン 200L 混合油の缶、部品洗浄用の溶剤
アルコール類 メタノール、エタノール 400L
第2石油類 灯油、軽油 1,000L 暖房用の灯油、軽油の予備
第3石油類 重油 2,000L
第4石油類 エンジンオイル、ギヤー油 6,000L 各種オイルのペール缶

指定数量の5分の1以上・指定数量未満が少量危険物にあたり、市町村の火災予防条例の対象になる(個人の住居は2分の1以上)。届出の要否と基準は条例による。

どの区分になっても、電気設備については危険物の規制に関する政令が「電気工作物に係る法令の規定による」としている。つまり最後は電気設備技術基準の解釈に戻ってくる。消防と電気の両方を見る必要があるのは、このためである。


庫外スイッチの納まり

ひとことで言うと:庫内に点滅器とコンセントを設けない。貫通部は必ずシールする。

構成そのものは単純である。照明器具は庫内、点滅器は庫外の壁。配線は壁を1か所貫通し、そこをシールする。金属管工事ならシーリングフィッチング、ケーブル工事ならシール材や砂詰めによる。

庫​外​ス​イ​ッ​チ​の​納​ま​り庫​外​ス​イ​ッ​チ​の​納​ま​り貫​通​は​1​か​所​、​庫​内​に​残​す​の​は​器​具​だ​け保​管​庫​(​危​険​場​所​)防​爆​照​明​器​具​(​検​定​合​格​品​)点​滅​器​・​コ​ン​セ​ン​ト​は​設​け​な​い低​い​位​置​に​排​気​(​蒸​気​は​空​気​よ​り​重​い​)外​壁S​FS​W庫​外​ス​イ​ッ​チパ​イ​ロ​ッ​ト​ラ​ン​プ​付​き非​危​険​場​所貫​通​部​は​シ​ー​ル​す​る(​金​属​管​な​ら​シ​ー​リ​ン​グ​フ​ィ​ッ​チ​ン​グ​)※​ス​イ​ッ​チ​を​庫​外​に​出​す​と​消​し​忘​れ​が​起​き​や​す​い​。​点​灯​状​態​が​外​か​ら​わ​か​る​よ​う​に​し​て​お​く​。

スイッチを外に出すと、副作用として消し忘れと第三者の誤操作が起きる。パイロットランプ付きの点滅器にして、庫外から点灯状態がわかるようにしておきたい。保管庫は施錠管理されることが多いので、施錠とスイッチの位置を揃えておくと運用が楽になる。

コンセントは、庫内に設けないのが原則である。設けてしまうと、そこに一般の機器がつながる余地を残すことになる。冬場に電気ストーブが持ち込まれた、掃除機の延長コードが引き込まれた、という話は実際に起きる。図面から消すだけでなく、その意図を施主に伝えておきたい。

換気と、そのほかの落とし穴

ひとことで言うと:換気扇を付けると、そのモータまで防爆になる。まずは自然換気で成立しないかを見る。

保管庫には換気が要る。ここで機械換気を選ぶと、換気扇のモータが庫内の電気設備として増えてしまう。小規模なら、給気口と排気口による自然換気で条件を満たせることが多い。

位置には理由がある。ガソリンの蒸気は空気より重く、低いところにたまる。排気は床に近い低い位置に取るのが原則である。高い位置にだけ換気口を設けた保管庫は、見た目は換気されていても、いちばん濃いところが動いていない。

CHECK 01
防滴型では代わりにならない
「屋外用の防滴器具なら大丈夫」という誤解が根強い。必要なのは型式検定に合格した防爆機器である。銘板と合格番号を確認する。
CHECK 02
貫通部のシールを省かない
小規模だからと省かれやすい箇所である。庫内と庫外がつながったままなら、スイッチを外に出した意味が薄れる。
CHECK 03
換気口の前に棚を置かせない
引渡し後、棚や段ボールで塞がれる例が多い。壁面に表示を付けるか、棚の位置を図面で決めておく。
CHECK 04
庫内にコンセントを残さない
既設の改修では、既にコンセントがあることが多い。撤去まで含めて見積に入れる。

この規模の防爆は、難しい技術というより、順番の問題である。中身を確かめ、危険場所を狭め、機器を外に出し、それでも残るものだけを防爆機器にする。庫内に残るものが1つ減るたびに、費用も、引渡し後の点検も軽くなる。

一次資料で確認するには

  • 所轄の消防本部 ── 少量危険物の届出の要否と、条例で定める構造・設備の基準を確認する。
  • 市町村の火災予防条例 ── 少量危険物貯蔵取扱所の基準を確認する。
  • 電気設備技術基準の解釈 第176条 ── 可燃性ガス等の存在する場所の工事方法を確認する。

本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。少量危険物の基準は市町村の条例により差があります。実際の計画は、所轄の消防機関への事前相談のうえで進めてください。

出典

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次に読むならこれ第6回 配管工事とケーブル工事の違い防爆電気設備の解説
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。