第7回 保管庫の照明とスイッチ
防爆というと大きなプラントの話に見えますが、実務で件数が多いのは、自動車のディーラーや整備工場にある小さな危険物の保管庫です。部屋は数平方メートル、照明は1灯か2灯。この規模では、庫内に残す機器を1つ減らせるかどうかが、そのまま見積の差になります。
結論
庫内の電気設備を1つ減らすことは、機器代・配管・シール・点検をまとめて1つ減らすこと照明スイッチを庫外に出せば、庫内に残る防爆機器は照明器具1点、貫通は1か所で済む。
- まず中身の引火点を確かめる。エンジンオイルや廃油だけなら、防爆の議論は不要になる。
- ガソリンの指定数量は200L。その5分の1以上・指定数量未満が少量危険物にあたる。
- 庫内にコンセントは設けない。未使用の引込口は指定の閉止プラグで塞ぐ。
- 換気は自然換気を優先。蒸気は空気より重いので、排気は低い位置に取る。
小さな保管庫ほど、費用の効き方が大きい
防爆というと大きなプラントの話に見えるが、実務で件数が多いのは、自動車のディーラーや整備工場にある危険物の保管庫である。ガソリンの入った混合油缶、シンナー、塗料、ブレーキクリーナーのエアゾール缶、廃油。部屋は数平方メートルで、照明は1灯か2灯。
この規模では、防爆機器を1点減らせるかどうかが、そのまま見積の差になる。しかも効くのは器具の単価だけではない。庫内に点滅器を置けば、そこまでの配管が要り、貫通部にシールが要り、点検のたびに開ける箇所が増える。
案Bが、この規模でもっとも現実的な落としどころになる。庫内に残るのは照明器具1点、壁の貫通は1か所。案Cが成立すれば庫内の電気設備はゼロになるが、庇や開口部の条件が合う場合に限られる。
| 案 | 庫内に残るもの | 庫外に出すもの | 必要な防爆機器 |
|---|---|---|---|
| 案A | 照明器具+点滅器 | — | 防爆機器2点+庫内までの配管 |
| 案B | 照明器具のみ | 点滅器 | 防爆機器1点+貫通1か所 |
| 案C | なし | 照明器具・点滅器とも | 0点 |
- 庫内に点滅器を置くと、機器代だけでなく配管とシールと点検が増える。
- 案B(スイッチを庫外)で、庫内は照明器具1点になる。
- 小面積なら、案C(庫内の電気設備ゼロ)も成立する。
その前に ── そもそも危険場所になるか
💡 エンジンオイルや廃油だけなら、常温で爆発性の雰囲気はできない
中身の確認が先です。ここで終わることもあります。
依頼を受けて最初に確かめるのは、庫に何が入るかである。第4石油類のエンジンオイルやギヤー油は引火点が高く、常温で爆発性の雰囲気を作らない。それだけを置く倉庫なら、防爆の議論は不要になる。
一方で、ガソリンの入った缶が1つでも置かれるなら扱いが変わる。現場では「オイル倉庫」と呼ばれていても、実際に開けてみるとスプレー缶とシンナーが並んでいることが多い。設計の段階で、置かれる物を品名で拾っておきたい。
| 品名 | 代表的な物 | 指定数量 | 整備工場での例 |
|---|---|---|---|
| 第1石油類(非水溶性) | ガソリン | 200L | 混合油の缶、部品洗浄用の溶剤 |
| アルコール類 | メタノール、エタノール | 400L | — |
| 第2石油類 | 灯油、軽油 | 1,000L | 暖房用の灯油、軽油の予備 |
| 第3石油類 | 重油 | 2,000L | — |
| 第4石油類 | エンジンオイル、ギヤー油 | 6,000L | 各種オイルのペール缶 |
どの区分になっても、電気設備については危険物の規制に関する政令が「電気工作物に係る法令の規定による」としている。つまり最後は電気設備技術基準の解釈に戻ってくる。消防と電気の両方を見る必要があるのは、このためである。
- 中身を品名で拾う。「オイル倉庫」でも実際はシンナーが入っていることがある。
- ガソリンの指定数量は200L。5分の1以上で少量危険物になる。
- 電気設備は、結局は電気設備技術基準の解釈に戻ってくる。
庫外スイッチの納まり
💡 庫内に点滅器とコンセントを設けない。貫通部は必ずシールする
構成そのものは単純です。
構成そのものは単純である。照明器具は庫内、点滅器は庫外の壁。配線は壁を1か所貫通し、そこをシールする。金属管工事ならシーリングフィッチング、ケーブル工事ならシール材や砂詰めによる。
スイッチを外に出すと、副作用として消し忘れと第三者の誤操作が起きる。パイロットランプ付きの点滅器にして、庫外から点灯状態がわかるようにしておきたい。保管庫は施錠管理されることが多いので、施錠とスイッチの位置を揃えておくと運用が楽になる。
コンセントは、庫内に設けないのが原則である。設けてしまうと、そこに一般の機器がつながる余地を残すことになる。冬場に電気ストーブが持ち込まれた、掃除機の延長コードが引き込まれた、という話は実際に起きる。図面から消すだけでなく、その意図を施主に伝えておきたい。
- 照明器具は庫内、点滅器は庫外の壁。
- パイロットランプ付きにして、庫外から点灯状態を見えるようにする。
- コンセントは庫内に設けない。既設にあれば撤去まで見積に入れる。
換気と、そのほかの落とし穴
⚠️ 換気扇を付けると、そのモータまで防爆になる
まずは自然換気で成立しないかを見ます。
保管庫には換気が要る。ここで機械換気を選ぶと、換気扇のモータが庫内の電気設備として増えてしまう。小規模なら、給気口と排気口による自然換気で条件を満たせることが多い。
位置には理由がある。ガソリンの蒸気は空気より重く、低いところにたまる。排気は床に近い低い位置に取るのが原則である。高い位置にだけ換気口を設けた保管庫は、見た目は換気されていても、いちばん濃いところが動いていない。
| よくある不具合 | なぜ問題か |
|---|---|
| 普通の器具に樹脂カバーだけ被せている | 防滴型では代わりになりません。必要なのは型式検定に合格した防爆機器です。 |
| シーリングフィッチングが入っていない | 庫内と庫外がつながったままでは、スイッチを外に出した意味が薄れます。 |
| 庫内にコンセントがある | 電気ストーブや延長コードが持ち込まれる余地を残します。 |
| 換気口の前に棚が置かれて塞がっている | 引渡し後に起きます。壁面に表示を付けるか、棚の位置を図面で決めておきます。 |
| 排気口が高い位置にしかない | ガソリン蒸気は空気より重く、低いところにたまります。いちばん濃いところが動きません。 |
- 換気は自然換気を優先する。
- 蒸気は空気より重いので、排気は低い位置に取る。
- 引渡し後に塞がれないよう、換気口の扱いを施主に伝える。
💡 この回のまとめ
この規模の防爆は、難しい技術というより、順番の問題である。中身を確かめ、危険場所を狭め、機器を外に出し、それでも残るものだけを防爆機器にする。庫内に残るものが1つ減るたびに、費用も、引渡し後の点検も軽くなる。
よくある質問
整備工場の保管庫は、防爆にする必要がありますか?
中身によります。エンジンオイルや廃油(第4石油類)だけなら常温で爆発性の雰囲気はできませんが、ガソリンの入った缶、シンナー、塗料、エアゾール缶が1つでも入るなら扱いが変わります。まず品名で中身を拾ってください。
照明のスイッチを庫外に付けてよいですか?
庫外に出すのが費用面でも保守面でも有利です。庫内に残るのは照明器具だけになり、壁の貫通は1か所で済みます。ただし消し忘れと第三者の誤操作が起きるため、パイロットランプ付きの点滅器にして、庫外から点灯状態がわかるようにします。
照明器具も庫外に出せますか?
小面積の保管庫なら成立することがあります。庇の下や窓越し、開口部に透光板を入れて外から照らす方法です。庫内の電気設備がゼロになれば、防爆の議論そのものが不要になります。
少量危険物とは何ですか?
指定数量の5分の1以上、指定数量未満の危険物です(個人の住居は2分の1以上)。市町村の火災予防条例の対象になり、届出が必要です。ガソリンの指定数量は200L、灯油・軽油は1,000L、エンジンオイルなど第4石油類は6,000Lです。
庫内にコンセントを付けてもよいですか?
原則として設けません。設けると、そこに一般の機器がつながる余地を残すことになります。冬場に電気ストーブが持ち込まれた、掃除機の延長コードが引き込まれた、という例は実際に起きます。
換気扇は必要ですか?
機械換気にすると、換気扇のモータまで庫内の電気設備として増えます。小規模なら給気口と排気口による自然換気で条件を満たせることが多くなります。ガソリン蒸気は空気より重いので、排気は床に近い低い位置に取ります。
本記事は公開情報にもとづく一般的な解説です。少量危険物の基準は市町村の条例により差があります。実際の計画は、所轄の消防機関への事前相談のうえで進めてください。



