工業高校の電気科・電気工学科・電子科で「どの資格から取ればいいのか」「何年生で受けるのか」を迷っている人のための記事です。資格には、受験資格がないもの、試験は受けられるが免状に実務経験がいるもの、科目ごとに合格を持ち越せるものがあります。この違いを知ると、3年間の順番は自然に決まります。

この記事の結論
順番は「第二種電気工事士 → 第一種電気工事士の試験 → 電験三種の科目合格」。就職試験(9月16日〜)に間に合わせるのがゴールです。
  • 2年生の上期に第二種電気工事士(学科4〜6月・技能7月)。受験資格はなく、合格したら高校生でも免状をもらえる
  • 2年生の下期〜3年生の上期に第一種電気工事士の試験。免状は実務経験3年のあとだが、試験合格は消えない
  • 3年生の夏に電験三種を科目合格ねらい。年2回・持ち越しは連続5回なので、在学中に1〜2科目でも効く
  • 余力があれば1年生で危険物乙4・計算技術検定、2年生の下期以降に消防設備士乙種・工事担任者

工業高校3年間の受験カレンダー:1年生は基礎、2年生の上期に第二種電気工事士、下期に第一種電気工事士、3年生の夏に電験三種の科目合格、9月16日から就職試験

順番が決まる3つのルール ― 受験資格・免状・科目合格

資格の順番は「難しさの順」ではなく、制度の決まりで決まります。身近なたとえで言うと、運転免許に似ています。第二種電気工事士は「普通免許」で、合格すればすぐ免状がもらえます。第一種は「大型免許」で、試験には受かっても、免状は経験を積んでから。電験三種は「科目ごとに単位を取る大学の授業」のように、合格した科目を持ち越せます。

資格 受験(受検)資格 合格したあと 受ける学年の目安
第二種電気工事士 なし 都道府県に申請すると免状(高校生でも可) 2年生の上期
第一種電気工事士 なし(試験は誰でも) 免状は実務経験3年が必要(令和3年4月から)。試験合格は消えない。合格者は認定電気工事従事者の認定証を申請できる 2年生の下期〜3年生の上期
電験三種(第三種電気主任技術者) なし 4科目そろえば免状申請。科目合格は次の試験から連続5回まで免除 3年生(1〜2科目でも可)
2級電気工事施工管理技士 第一次検定は17歳以上(受検年度末) 第一次に合格すると「2級技士補」。第二次は実務経験3年のあと 3年生(受けられる学校は少ない)
消防設備士 乙種はなし。甲種は電気工事士免状などが必要 都道府県に免状申請 乙種は2年生の下期以降、甲種は第二種の免状のあと
工事担任者(第二級デジタル通信など) なし 資格者証を申請 2年生の下期以降
危険物取扱者 乙種4類 なし 免状申請 1年生

受験資格や免状の条件は年度で変わることがあります。申込みの前に各試験機関の受験案内で確かめてください。

ジュニアマイスターの点数で見ると、順番がもっとはっきりする

工業高校には、資格や検定を点数にして表彰する「ジュニアマイスター顕彰制度」(全国工業高等学校長協会)があります。合計20点でブロンズ、30点でシルバー、45点でゴールド。さらに、S区分またはA区分の資格を1つ以上持ち、上位8つの合計が60点以上なら特別表彰です。電気系の資格の点数を並べると、こうなります。

ジュニアマイスター顕彰の点数:電験三種30点、第一種電気工事士20点、消防設備士甲種20点、第二種電気工事士7点、工事担任者7点、計算技術検定2級7点、危険物乙4と消防設備士乙種は4点

31点第二種(7)+第一種(20)+危険物乙4(4)=シルバー
61点上に電験三種(30)を足すとゴールド、特別表彰の60点にも届く
20点第一種電気工事士1つでブロンズに届く

点数の高い資格は、そのまま「就職で評価される資格」でもあります。第一種電気工事士(20点)と電験三種(30点)が、電気科の3年間の主役です。点数と区分は年度で見直されるので、最新の区分表は学校の先生か協会のサイトで確かめてください。


学年ごとの動き方

1年生 ― 土台と「余力の4点」
オームの法則・電力・図記号・工具の名前を、授業と一緒に手を動かして覚えます。資格は危険物乙4と計算技術検定(各4〜7点)を余力で。第二種の学科は1年生の知識で半分は解けるので、冬から過去問を見始めても早すぎません。

ラボでオームの法則を動かす

2年生 ― 第二種の上期、第一種の下期
春に申込み(例年3月中旬〜4月上旬)、学科はCBTで4月下旬〜6月上旬の好きな日、技能は7月中旬の土日。合格したら免状申請。秋は第一種の学科(CBT 9〜10月)と技能(11月)に挑戦できます。

学習ページで週割りを作る

3年生 ― 電験三種と就職試験
電験三種の上期はCBTが7月中旬〜8月上旬、筆記が8月末。就職試験が9月16日から始まるので、夏休みの前半に理論と電力を仕上げるのが理想です。落とした科目は下期(2〜3月)で拾えます。

就職先ガイドを読む

CBTは「日を選べる」のが最大の味方学科のCBT方式は、期間内なら試験日と会場を自分で選べます。定期テスト・大会・修学旅行とぶつからない日を先に押さえてください。技能試験の日(土日)は動かせません。第二種の学科試験は令和9年度からCBT方式に移行すると告知されています。

就職試験・進学にどう書けるか

状態 履歴書の書き方(例) ひとこと
免状をもらった 第二種電気工事士 免状取得 いちばん強い。免状番号を控えておく
試験に合格した(免状はまだ) 第一種電気工事士 試験合格 「取得」とは書かない。入社後の実務経験3年で免状
科目に合格した 第三種電気主任技術者試験 理論・電力 科目合格 会社は「続きをやる人」と見る。取得見込みの時期も書く
申込み済み・勉強中 第二種電気工事士 令和8年度下期 受験予定 面接で「今どこまで進んだか」を話せるようにしておく

求人票の「電気工事士 歓迎」「資格手当あり」は、第二種の免状と第一種の試験合格を持っている人が有利になる書き方です。大学や高専への進学でも、第二種と第一種の合格は電気系の推薦入試で評価の対象になることがあります(学校ごとに違うので募集要項で確認してください)。


よくある質問

第一種電気工事士は、免状がもらえないのに在学中に受ける意味がありますか。

あります。試験合格に期限はなく、入社後に実務経験を3年積んだ時点で免状を申請できます。また、合格者は認定電気工事従事者の認定証を申請でき、自家用電気工作物(ビルや工場)の低圧部分の工事ができるようになります。就職試験でも「第一種 試験合格」は評価されます。

電験三種は高校生には無理ですか。

4科目を一度にそろえるのは大変ですが、科目合格制なので1科目ずつで大丈夫です。理論から始めるのが定番で、三角関数・複素数・ベクトルの計算に慣れている必要があります。3年生の夏に理論(できれば電力も)を取って、残りは入社後に続ける人が多くいます。

第二種に落ちたらどうなりますか。

下期にもう一度受けられます。学科に合格して技能で落ちた場合は、次の試験で学科が免除されます(申込時に免除を申請)。技能は候補問題13問を2回ずつ作れば、次はほぼ届きます。

受験料はいくらですか。

第二種電気工事士はインターネット申込みで11,100円、第一種は13,000円、電験三種は7,700円(いずれも令和8年度)。学校でまとめて申し込む団体申込みや、受験料の補助がある学校もあるので、先生に聞いてみてください。

出典・参考:電気技術者試験センター 第二種電気工事士試験/同 第一種電気工事士試験/同 第三種電気主任技術者試験/全国工業高等学校長協会 ジュニアマイスター顕彰制度/建設業振興基金 2級電気工事施工管理技術検定/国土交通省 令和6年度からの施工管理技術検定の受検資格

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。