結論

家の電気設備は引込線取付点を境に、電力会社のものとあなたのものに分かれます。ただし電力量計とアンペアブレーカーだけは、あなたの敷地側にあっても電力会社のものです。この「飛び地」を知らないと、連絡先を間違えます。

  • 電柱・引込線・電力量計 → 電力会社(一般送配電事業者)
  • 分電盤から先すべて → 電気工事店
  • 契約・料金・アンペア変更 → 小売電気事業者
  • 新電力と契約していても、停電の連絡先は変わりません

「ブレーカーが落ちた」「コンセントが焦げた」「電気が消えた」——このとき電力会社に電話すべきか、電気工事店を呼ぶべきか。判断の軸になるのが責任分界点です。一枚の図で整理します。

💬 はりた&ペン太(まずは疑問から)

🐧 見習いペン太
「電気のことは全部、電力会社に聞けばいいんじゃないんですか?」

🦔 はりた
「それが半分正解で半分間違い。電力会社が面倒を見てくれるのは家の外までなんだ。家の中の配線やコンセントは、あなたの持ち物だよ」

🐧 見習いペン太
「じゃあ壁のところが境目ですか?」

🦔 はりた
「惜しい。境目は引込線が家に取り付いている点。しかもややこしいことに、境目より内側にあるのに電力会社のもの、という設備が2つあるんだ」

一枚の図で見る、電気設備の境界線

家庭の電気設備の責任分界点の図。電柱・引込線・引込線取付点までが電力会社(一般送配電事業者)の所有。取付点より内側の引込口配線・分電盤・屋内配線はお客さまの所有だが、電力量計とアンペアブレーカーだけは内側にあっても電力会社の所有。連絡先は前者が電力会社、後者が電気工事店。
架空引込の場合。地中引込の家では引込線取付点は存在せず、開閉器や計量器の接続点が分界点になります。

境界は「引込線取付点」

電柱から家に向かって伸びている線を引込線といいます。この線が家の壁や軒先に取り付いている点が引込線取付点で、ここが電力会社とあなたの境目です。東京電力パワーグリッドは「黄または赤のチューブがついているところ」と説明しています。外に出て、電線が家に取り付いているあたりを見上げてみてください。

この点より電柱側は電力会社のもの。引込線が垂れ下がっている、木の枝が当たっている、電線から音がする——こうしたときは、さわらずに電力会社へ連絡します。自分で枝を切ろうとしないでください。

豆知識:「責任分界点」は約款の言葉ではありません

電力会社の託送供給等約款を読むと、「責任分界点」という語は出てきません。約款が定めているのは「供給地点=当社の供給設備と需要者の電気設備との接続点」「保安の責任」の2つで、この組み合わせを一般に責任分界点と呼んでいます。そして保安の責任は、分界点だけでは決まりません。

境界より内側なのに電力会社のもの、が2つある

ここが最大の落とし穴です。電力量計(スマートメーター)アンペアブレーカーは、分界点より内側、つまりあなたの敷地や家の中にありますが、電力会社の所有・保安責任です。約款には「計量器等は当社が選定し、かつ当社の所有とし、当社の負担で取り付けます」「取付場所は需要者から無償で提供していただきます」とあります。

つまり場所ではなく所有で決まるのです。図で「飛び地」と書いたのはこの意味です。メーターから音がする、表示がおかしい、といったときの連絡先は電気工事店ではなく電力会社になります。

逆に、分電盤はあなたのものです

よくある誤解の反対側がこれです。分電盤の箱も、漏電ブレーカーも、分岐ブレーカーも、すべてあなたの所有物です。電力会社のものは、その中に間借りしているアンペアブレーカー1個だけ。国民生活センターの資料でも、サービスブレーカー(アンペアブレーカー)のみが「一般送配電事業者の所有物」、漏電遮断器と配線用遮断器は「消費者の所有物」と明記されています。

しかもそのアンペアブレーカーは、関西・中国・四国・沖縄にはそもそも存在しません。これらのエリアは契約アンペア制ではなく最低料金制で、約款に「電流制限器等の取付け」という条文自体がないのです。さらに東京電力エリアなどでは、スマートメーター化に伴ってアンペアブレーカーを取り付けなくなっています(制限機能がメーター内蔵に移りました)。

スマートメーターの家で覚えておきたいこと

分電盤のブレーカーが全部「入」なのに停電している——このときは分電盤をいくら操作しても直りません。スマートメーター内蔵の電流制限機能が働いている可能性があり、連絡先は電力会社です。短時間の停電が何度も繰り返される場合も同じです。

引込線取付点の金物は、どっち?

細かいところですが、実務ではよく問題になります。取付点のがいしは引込線に含まれるので電力会社のもの。一方、それを支える腕金やがいし取付枠組、引込小柱などの補助支持物はあなたの負担で施設するものです。「取付点の金物は全部電力会社」と思っていると、修繕の話で食い違います。

症状別|まずどこに連絡するか

こんなときまず連絡するのは理由
近所も一緒に停電している電力会社配電設備側の事故。まず停電情報サイトを確認
自宅だけ停電。分電盤のブレーカーは全部「入」電力会社引込線・メーターの故障、またはスマートメーターの制限機能
短時間の停電が何度も起きる電力会社スマートメーターのアンペア制限が繰り返し働いている
アンペアブレーカーが落ちたまず自分で復帰使いすぎ。何度も落ちるなら契約変更を小売電気事業者
漏電ブレーカーが落ちて戻らない電気工事店漏電は宅内側の事象。分岐ブレーカーで回路を特定してから連絡
分岐ブレーカーだけが落ちる電気工事店その回路の使いすぎかショート。繰り返すなら要調査
一部屋だけ電気がつかない電気工事店その回路の配線・器具の問題
コンセントが熱い・焦げている電気工事店まず該当回路のブレーカーを切る。発煙・発火なら119番
引込線が垂れている・木が当たっている電力会社(至急)絶対にさわらない
電力量計から音がする・表示が変電力会社メーターは電力会社の所有物
照明が暗い・電圧が低い気がする電力会社電圧維持は法律上の義務。正常なら次に電気工事店へ
台風・地震のあと。浸水した電気工事店水に浸かった配線・機器は点検前に通電しない

電圧については、法律で維持すべき値が決まっています。100Vなら101Vの上下6V以内(95〜107V)、200Vなら202Vの上下20V以内(182〜222V)。これは電気事業法施行規則第38条に書かれた数字です。範囲外なら電力会社に是正の責任があります。

ただし、単相3線式中性線が断線すると、片側が過電圧・片側が低電圧になり、症状が似ます。これが宅内側で起きていれば電気工事店の領域です。まず電力会社に測ってもらい、供給電圧が正常なら電気工事店へ、という2段構えが確実です。

電力会社に連絡するときに伝えること

  • 住所と、近所も停電しているかどうか
  • 分電盤のブレーカーの状態(どれが落ちているか、全部入っているか)
  • いつから、どんな状態か(完全に停電/点いたり消えたり)

新電力と契約していても、停電の連絡先は変わりません

ここは誤解が非常に多いところです。電気を「売っている会社」と、電線を「維持している会社」は別です。

用件連絡先
停電した/設備が壊れた一般送配電事業者(東京電力パワーグリッド、関西電力送配電など)
契約・料金・アンペア変更・引越し小売電気事業者(契約している会社。新電力ならその会社)
家の中の配線・コンセント・分電盤電気工事店(登録電気工事業者)

電線・引込線・電力量計を維持しているのは一般送配電事業者で、小売電気事業者は送配電設備をひとつも持っていません。ですから、契約先がどこであっても、停電の連絡先はお住まいのエリアの一般送配電事業者です。窓口は契約先を問わずエリア内の全世帯を対象に開かれています。

2020年の発送電分離で、大手電力は送配電部門を分社化しました。「東京電力パワーグリッド」「関西電力送配電」のように社名に「パワーグリッド」「送配電」「ネットワーク」が入っているほうが送配電会社です。沖縄だけは例外で、沖縄電力が1社で送配電も担っています。

各エリアの停電情報は、送配電網協議会の各エリアの停電情報から10社分をまとめて辿れます。停電したらまずここです。

4年に1回の調査は本物です(ただし無料)

「電気の点検に伺います」という訪問には、本物と偽物があります。境界を知っておくと見分けられます。

本物のほうは、電気事業法第57条にもとづく調査です。電線路を維持する事業者(=一般送配電事業者)に調査義務があり、実際には国の登録を受けた登録調査機関が委託を受けて回ります。頻度は施行規則で4年に1回以上と定められ、絶縁抵抗や接地抵抗を測定します。

本物(4年に1回の法定調査)点検商法
費用無料点検は無料 → 高額な交換契約へ
身分証調査員証の携帯が法令で義務。提示を求めてよい提示できない・あいまい
点検のあとその場で工事の契約を持ちかけない「今すぐ交換しないと火事になる」と迫る
説明法令にもとづく調査であることを説明「法律で交換が義務」という虚偽

国民生活センターによると、分電盤の点検を持ちかける勧誘の相談は2024年度に前年同期の約25倍に急増し、契約者の約8割が70歳以上でした。契約額は15万〜23万円ほど。中には電話口で電力会社やその委託会社を名乗る例もあるといいます。

覚えておきたい反論はこの2つ

住宅用分電盤の交換時期を定めた法律はありません。「法律で決まっている」は虚偽です。
法定点検は無料で、その場で工事契約を持ちかけることはありません。

なお「分電盤は電力会社のものだから交換不要」という反論は誤りです。分電盤はあなたの所有物なので、必要なら交換します。争点は「今すぐ必要か」であって、所有ではありません。不安なときは複数の業者に見積もりを取り、地域の電気工事業工業組合や電力会社に相談してください。おかしいと思ったら消費者ホットライン188です。

ちなみに法定調査は、立ち入りを断ることもできます(法律に「承諾を得ることができないときは、この限りでない」と書かれています)。ただし断ると屋外だけの調査になり、分電盤は見てもらえません。無料で絶縁と接地を測ってもらえる機会なので、受けておくほうが得です。

電気工事店を選ぶときに確認できること

分界点より内側の工事は、電気工事店に頼むことになります。相手を選ぶとき、法律で決まっていることを知っていると判断材料が増えます。

  • 登録電気工事業者であること。電気工事業法により登録が必要で、登録の有効期間は5年です。番号だけでなく期限切れでないかも確認できます
  • 標識の掲示義務。営業所と工事の施工場所ごとに、氏名・登録番号などを記した標識を掲げる義務があります
  • 主任電気工事士の設置。営業所ごとに、第一種電気工事士か、第二種取得後3年以上の実務経験者を置く義務があります
  • 絶縁抵抗計の備付け義務。営業所ごとに備える義務があります。測定もせずに「漏電しています」と断定する業者は、この点で疑ってよいことになります

登録業者の名簿は都道府県が公開しています。営業所の所在地の都道府県に照会できます。

なお、分界点より内側の工事はすべて⚠ 電気工事士の資格が必要です。コンセントやスイッチの交換、分電盤の交換、配線の延長は、いずれも資格が必要な工事にあたります。一方で、電力量計とアンペアブレーカーの取付け・取外しは電気工事士法上の「軽微な工事」とされており、電力会社側が扱います。

💬 はりた&ペン太(まとめ)

🐧 見習いペン太
「境目は引込線取付点。でもメーターとアンペアブレーカーだけは中にあっても電力会社のもの、ですね」

🦔 はりた
「よく覚えたね。もうひとつ、分電盤は自分のものというのも一緒に覚えておくといい。点検商法から身を守るときに効いてくるから」

🐧 見習いペン太
「今日やることは?」

🦔 はりた
「家の外に出て、引込線が家のどこに取り付いているか見てみよう。それと、お住まいのエリアの送配電会社の連絡先を、スマホに登録しておくこと。停電してから調べるのは大変だからね」

よくある質問

マンションの場合、境目はどこですか?

原則は建物に1つの共同引込線で受電し、そこから各戸へ分かれます。建物内に電力会社の変圧器室(借室電気室)がある場合は、変圧器の二次側接続点までが電力会社です。各戸の電力量計は電力会社の所有ですが、共用部の幹線やパイプシャフト内の配線は建物側(管理組合)の設備になります。

地中に電線が埋まっているタイプの家です

地中引込では「引込線取付点」という金物は存在しません。約款では、需要場所内に設ける開閉器・断路器・接続装置の接続点、または電力会社が施設する計量器の接続点が境界になります。また、埋設用の管やハンドホールなどの付帯設備はお客さまの負担で施設し、電力会社が無償で使用する形です。

電力会社が家の中の修理をしてくれることはありますか?

会社によります。約款で「保安上必要な電気工作物の検査・工事を当社に申し込むことができます」と定めている会社もあり、その場合は実費(電線被覆のテープ巻き等の軽易なものは材料費のみ)です。一方、沖縄電力のように「配線や器具の修理・取替は行っておりません」と明記している会社もあります。まずは地域の電気工事店に相談するのが確実です。

アンペアブレーカーが見当たりません

関西・中国・四国・沖縄エリアには、もともとアンペアブレーカーがありません(契約アンペア制ではなく最低料金制のため)。またスマートメーターに切り替わったお宅では、制限機能がメーター側に移り、分電盤からアンペアブレーカーが外されている場合があります。異常ではありません。

引込線に木の枝が当たっています。自分で切っていいですか?

切らないでください。電力会社に連絡します。垂れ下がった電線にも絶対に触れないでください。敷地内の樹木が電線に接触しそうな場合も、電力会社に相談する対象です。

停電したとき、契約している新電力に電話すればいいですか?

いいえ。停電と電気設備の連絡先は、契約先にかかわらずお住まいのエリアの一般送配電事業者です。小売電気事業者は送配電設備を持っておらず、復旧の対応はできません。契約・料金・アンペア変更は小売電気事業者、という切り分けになります。

参考にした一次情報

約款の条番号は電力会社ごとに異なります。また設備の扱いや修理受託の可否にも会社差があるため、個別の判断はお住まいのエリアの一般送配電事業者にご確認ください。本記事は一般的な情報提供であり、個別の設備の安全を保証するものではありません。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

次に読むならこれV2H補助金の締切は9月30日ではない|残り予算から見た「いま間に合うか」と、うちに付けられるかの現地チェック家庭の電気設備の設計
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。