技術図書館引込部を読む|波及事故を出さない責任分界点の位置、PAS・UGSが要る理由、地絡は即・短絡は蓄勢というSOGの動きこの資料をスライドで見る資料一覧を見る
高圧受変電設備の設計マニュアル④ 引込部と責任分界点、PAS・UGSの全体像
連載第4回、見方編スタート。単線結線図のいちばん上「引込部」を読み解きます。責任分界点の位置、PASとUGSの使い分け、SOG制御装置が地絡と短絡で動きを変える理由、GR付とDGR付ともらい事故まで。
📚 この記事は連載高圧受変電設備の設計マニュアル」(全14回)の第4回、ここから見方編です。前回:第3回 図記号・文字記号・器具番号の読み方/資料編:機器別 目的早見表
引​込​部​の​き​ほ​ん第4回 | 責​任​分​界​点​と P​A​S・U​G​S | ぜ​ん​ぶ1枚​ま​と​め① 責​任​分​界​点 ― こ​こ​か​ら​内​側​は「自​分​の​持​ち​物」電​力​会​社外​側需​要​家(お​客​さ​ん)内​側保​守​も 事​故​の​責​任​も 更​新​費​用​も こ​ち​ら​側架​空​引​込 → 第1号​柱​の P​A​S / 地​中​引​込 → キ​ャ​ビ​ネ​ッ​ト​内​の U​G​S※ キ​ュ​ー​ビ​ク​ル​は​電​力​会​社​の​持​ち​物​で​は​な​い② 引​込​部​の​機​器​は「波​及​事​故」を​出​さ​な​い​た​め自​社​で​地​絡​事​故敷​地​内​で​切​り​離​せ​な​い配​電​線​ご​と​停​電近​隣​一​帯​が​巻​き​添​えP​A​S・U​G​S が​あ​れ​ば ②で​止​ま​る③ S​O​G ― 地​絡​は「す​ぐ」、短​絡​は「待​っ​て​か​ら」切​る地 絡Z​C​T が​検​出 → そ​の​場​で​即​開​放理​由地​絡​電​流​は​小​さ​い​の​で P​A​S で​も​切​れ​る結​果配​電​線​が​停​電​す​る​前​に​切​り​離​せ​る短 絡「切​る」と​記​憶(蓄​勢)→ 無​電​圧​で​開​放理​由短​絡​電​流​は P​A​S で​は​切​れ​な​い(壊​れ​る)結​果変​電​所​の​再​閉​路​で​近​隣​は​復​旧、自​社​だ​け​切​離④ G​R付 か D​G​R付 か ―「も​ら​い​事​故」を​防​ぐG​R(無​方​向)零​相​電​流​の「大​き​さ」だ​け​で​判​断D​G​R(方​向​性)零​相​電​圧​も​見​て 構​内​か​構​外​か​を​判​別 → 現​在​の​標​準
📝 第4回の内容を1枚に。責任分界点・波及事故・SOG・GR/DGR が要点です。

こんにちは、HARITAの設計室です。第3回までで、図面の構造と記号の読み方を押さえました。ここからは単線結線図を上から順に読んでいく「見方編」に入ります。

最初は引込部。図面のいちばん上、電力会社との境目です。機器の数は少ないのに、受変電設備の中でいちばん責任が重い場所でもあります。

この3つ、すぐ答えられますか
  • 責任分界点は、何と何を分ける点ですか。
  • PASは短絡事故を切れますか。
  • 無事なのに自分だけ停電する、という事態はなぜ起きますか。
ペンタ
引込部って、電柱から線が来てるだけですよね。機器も1個か2個しか描いてないし…。
はりた
その1個が壊れると、近所の会社や住宅まで停電させるんだ。受変電で「絶対に手を抜けない場所」を1つ挙げろと言われたら、僕はここを挙げるよ。

引込部とは、どこからどこまでか

トピック1:配電線から、キュービクル入口まで

引込部は、電力会社の配電線から分岐して、キュービクルの入口までの区間です。単線結線図では図面のいちばん上に描かれます。

引込方式は大きく2つあります。

引込方式は2つ
① 架空引込…電柱から空中を通して引き込む。安価で工期が短い。敷地内に建てた最初の柱を第1号柱(引込柱)と呼び、その上に区分開閉器PAS)を付ける。
② 地中引込…道路の地中から引き込む。景観がよく、風雨・飛来物に強い。道路境界付近に高圧キャビネットを設け、その中に区分開閉器(UGS)を納める。
ここまでのポイント
  • 引込部は、電力会社の配電線から分岐して、キュービクルの入口までの区間
  • 単線結線図では図面のいちばん上に描かれる
  • 架空引込ならPAS、地中引込ならUGSが区分開閉器になる

責任分界点 ― どこからが自分の持ち物か

トピック2:ここから内側は、自分の責任

引込部を理解する鍵が責任分界点です。電力会社の設備と、需要家(お客さん)の設備を分ける境界のことで、ここから内側は、保守も事故の責任もすべて需要家が負います

📐 責任分界点はどこにあるか
① 架空引込の場合
電力会社の配電線
  │
  │ ←ここまで電力会社
━━━━━━━━━━━━ 責任分界点
  │ ←ここから需要家
  ▣ PAS(第1号柱の上)
  │
  │ 高圧引込ケーブル CVT
  ▼
 キュービクル
敷地内に建てた最初の柱(第1号柱)の上にPASを付け、そこを分界点にするのが一般的。
② 地中引込の場合
電力会社の配電線
  │(地中)
┌───────────┐
│ 高圧キャビネット │
│ 分岐装置 │ ←電力会社
│ ━━━━━━━━ 分界点
│ UGS │ ←需要家
└───────────┘
  │ 高圧引込ケーブル
  ▼
 キュービクル
高圧キャビネットの中で分かれる。箱は同じでも、中で持ち主が変わるのがポイント。
ポイント:分界点の位置は電力会社との協議で決まります。図面を渡されたら、まず「どこが分界点か」を指させるかを確認してください。停電作業の範囲も、事故時の責任も、すべてここが基準になります。
用語:財産分界点と保安上の責任分界点
財産分界点…設備の所有権が変わる点
保安上の責任分界点…保守・保安の責任が変わる点
多くの場合この2つは同じ位置ですが、電力会社の供給規程や契約によってずれることがあります。実務では供給側との協議書類でどちらの意味か確認するのが確実です。
📐 図1 責任分界点はどこにあるか(架空引込/地中引込)
責​任​分​界​点​は​ど​こ​に​あ​る​か ― 架​空​引​込​と​地​中​引​込① 架​空​引​込地​面電​力​会​社​の​配​電​線P​A​SD​G​R付高​圧​引​込​ケ​ー​ブ​ルキ​ュ​ー​ビ​ク​ル受​変​電​設​備責​任​分​界​点こ​こ​か​ら​内​側​が​需​要​家こ​こ​ま​で​電​力​会​社第1号​柱(引​込​柱)の​上​に P​A​S を​付​け、そ​こ​を​分​界​点​に​す​る​の​が​一​般​的② 地​中​引​込地​面​よ​り​下(管​路)電​力​会​社​の​地​中​配​電​線高​圧​キ​ャ​ビ​ネ​ッ​ト分​岐​装​置(電​力​会​社)責​任​分​界​点U​G​S(需​要​家)キ​ュ​ー​ビ​ク​ル受​変​電​設​備箱​は1つ​で​も、中​で​持​ち​主​が​変​わ​る ― 上​が​電​力​会​社、下​が​需​要​家分​界​点​の​位​置​は​電​力​会​社​と​の​協​議​で​決​ま​る。図​面​を​渡​さ​れ​た​ら、ま​ず「ど​こ​が​分​界​点​か」を​指​さ​せ​る​か​確​認​す​る停​電​作​業​の​範​囲​も、事​故​時​の​責​任​も、す​べ​て​こ​こ​が​基​準​に​な​る
分界点の位置は電力会社との協議で決まります。図は代表的な構成の一例です。
ここまでのポイント
  • 分界点の位置は電力会社との協議で決まる。図面を渡されたら、まず指させるかを確認する
  • 停電作業の範囲も、事故時の責任も、すべてここが基準になる
  • 財産分界点と保安上の責任分界点は多くの場合同じ位置だが、契約によってずれることがある

なぜPAS・UGSが必要なのか ― 波及事故を出さないため

トピック3:その1個が、近所を停電させる

第1回でも触れた波及事故を、ここで詳しく見ます。引込部の機器は、ほぼこれ1点のために存在しています。

⚡ 区分開閉器がないと、こうなる
① 自社のキュービクルで地絡事故が発生
   ↓
② 敷地内で切り離せない
   ↓
③ 配電用変電所の遮断器が動作(配電線ごと停電)
   ↓
④ 同じ配電線につながる近隣一帯が停電 ← 波及事故
   ↓
⑤ 原因調査・復旧まで自社が対応。信用も費用も失う
PAS・UGSがあれば、①のあと自分の敷地の中だけで切り離せるので、③から先は起こりません。
これが「引込部にお金と手間をかける理由」です。
📐 図2 区分開閉器がないと、どこまで停電するか
区​分​開​閉​器​が​な​い​と、ど​こ​ま​で​停​電​す​る​か区​分​開​閉​器(P​A​S・U​G​S)が な​い配​電​用変​電​所遮​断近​隣A停​電近​隣B停​電区​分​開​閉​器​な​し自​社停​電事​故自​社​の​事​故​で 近​隣​ま​で​停​電 = 波​及​事​故区​分​開​閉​器(P​A​S・U​G​S)が あ​る配​電​用変​電​所正​常近​隣A通​電近​隣B通​電P​A​S自​社停​電事​故自​社​だ​け​が​停​電。近​隣​は​生​き​た​ま​ま引​込​部​の​機​器​は、ほ​ぼ​こ​の1点​の​た​め​に​あ​る ― 自​分​の​事​故​を、構​外​に​出​さ​な​い波​及​事​故​を​起​こ​す​と、原​因​調​査​・​電​力​会​社​へ​の​報​告​・​近​隣​対​応​が​発​生​す​る。金​額​よ​り​信​用​の​損​失​が​大​き​い
自社の事故を構外に出さない ― 引込部の機器はほぼこの1点のためにあります。
ここまでのポイント
  • 区分開閉器の目的はただ1つ、波及事故を出さないこと
  • 自社で地絡が起きても、敷地の中だけで切り離せれば配電線ごとの停電にはならない
  • これが「引込部にお金と手間をかける理由」

SOG制御装置 ― 地絡は即時、短絡は待ってから切る

トピック4:地絡は即時、短絡は待ってから

PAS・UGSは「開閉器」であって、遮断器ではありません。短絡電流を切る能力がないのです。ではどうやって短絡事故に対応するのか。そこで登場するのがSOG制御装置です。

SOGは Storage(蓄勢)+ Over current(過電流)+ Ground(地絡)の頭文字。動作は事故の種類で変わります。

事故の種類SOGの動きなぜそうするのか
地絡ZCTが零相電流を検出 → その場ですぐPASを開放地絡電流は小さいので、PASでも切れる。配電線が停電する前に切り離せる。
短絡過電流を検出してもすぐには開かず「切る」と記憶(蓄勢) → 変電所が遮断して無電圧になった瞬間に開放短絡電流はPASでは切れない。無理に開くと開閉器が破損する。電流が止まってから開く。
配電線は「再閉路」する
配電用変電所は、事故で遮断したあと自動でもう一度入れ直す(自動再閉路)仕組みを持っています。雷などの一時的な事故なら、これで復旧するからです。
SOGはこの無電圧の間にPASを開くので、再閉路したときには自社が切り離されている状態になります。近隣は再閉路で復旧し、事故を起こした自社だけが停電する。よくできた仕組みです。
ペンタ
「切れないなら待つ」って発想、すごいですね。開閉器なのに短絡にも対応できてるんだ…。
はりた
そう。だからPASを遮断器と混同しないこと。「切る力があるもの」と「切るタイミングを選ぶもの」は別物なんだ。
📐 図3 SOG の動作 ― 地絡と短絡で動きが変わる
S​O​G ― 地​絡​は「す​ぐ」、短​絡​は「待​っ​て​か​ら」切​る地 絡の​と​き事​故​発​生構​内​で​地​絡Z​C​T が​検​出零​相​電​流P​A​S を​即​開​放そ​の​場​で​切​る完​了配​電​線​は​無​事地​絡​電​流​は​小​さ​い​の​で P​A​S で​も​切​れ​る → 配​電​線​が​停​電​す​る​前​に​切​り​離​せ​る時​間 →短 絡の​と​き事​故​発​生構​内​で​短​絡蓄​勢(記​憶)P​A​Sは​開​か​な​い変​電​所​が​遮​断配​電​線​が​無​電​圧P​A​S を​開​放 無​電​圧​で​切​る変​電​所​が​再​閉​路近​隣​は​復​旧短​絡​電​流​は P​A​S で​は​切​れ​な​い → 電​流​が​止​ま​っ​て​か​ら​開​く(開​閉​器​の​破​損​を​防​ぐ)時​間 →配​電​線​は​事​故​で​遮​断​し​た​あ​と、自​動​で​も​う​一​度​入​れ​直​す(自​動​再​閉​路)S​O​G は​こ​の​無​電​圧​の​間​に P​A​S を​開​く​の​で、再​閉​路​し​た​と​き​に​は​自​社​が​切​り​離​さ​れ​て​い​る近​隣​は​再​閉​路​で​復​旧​し、事​故​を​起​こ​し​た​自​社​だ​け​が​停​電​す​る ― よ​く​で​き​た​仕​組​み
短絡時に「待つ」のは、PASでは短絡電流を切れないためです。
ここまでのポイント
  • PAS・UGSは「開閉器」であって遮断器ではない。短絡電流を切る能力がない
  • SOGは Storage(蓄勢)+ Over current(過電流)+ Ground(地絡)の頭文字
  • 地絡は小さいのでその場で切る。短絡は電力会社側の停電を待ち、無電圧になってから開放する

PASとUGS、どう使い分けるか

トピック5:架空ならPAS、地中ならUGS
項目PASUGS
引込方式架空引込地中引込
設置場所第1号柱の上(高所)高圧キャビネット内(地上)
絶縁方式気中(Air)ガス(Gas)
点検のしやすさ高所作業車が必要になりがち地上で扉を開けて点検できる
風雨・塩害・飛来物受けやすい(屋外露出)受けにくい(箱の中)
コスト安い(柱と開閉器のみ)高い(掘削・管路・キャビネット)
景観柱と電線が見えるすっきりする

どちらを選ぶかは、前面道路が架空か地中かでほぼ決まります。設計者が自由に選べる場面はそれほど多くありません。まずは電力会社との事前協議で確認してください。

ここまでのポイント
  • 架空引込はPAS(第1号柱の上・気中)、地中引込はUGS(高圧キャビネット内・ガス)
  • UGSは地上で扉を開けて点検でき、風雨・塩害・飛来物も受けにくい
  • ただし掘削・管路・キャビネットのぶんコストは上がる

GR付か、DGR付か ― 「もらい事故」を防ぐ

トピック6:無事なのに、自分だけ停電する

PAS・UGSには、地絡を検出する継電装置が組み込まれています。ここに2種類あります。

GR付とDGR付のちがい
GR付(無方向)…ZCTがとらえた零相電流の大きさだけで判断する。構造が簡単で安価。
DGR付(方向性)…ZCTの零相電流に加えてZPDの零相電圧も見て、事故が構内か構外かを判別する。

構内の高圧ケーブルが長くなると対地静電容量が大きくなり、構外の事故でもGRが動いてしまうことがあります。これがもらい事故。自分は無事なのに自分だけ停電する、という理不尽な事態です。
そのため現在はDGR付(方向性)を採用するのが基本です。ケーブルこう長が長い物件では必須と考えてください。
ここまでのポイント
  • GR付(無方向)はZCTが捉えた零相電流の大きさだけで判断する。安価で単純
  • DGR付(方向性)はZPDの零相電圧も見て、事故が構内か構外かを判別する
  • 構内ケーブルが長いと対地静電容量が大きくなり、構外事故でもGRが動く(もらい事故)。現在はDGR付が基本

単線結線図では、こう描かれる

トピック7:6つ押さえれば、図面は読める

引込部に登場する要素は多くありません。次の6つを押さえれば、ほとんどの図面が読めます。

引込部の記載要素
① 受電条件…3φ3W 6.6kV 50/60Hz(図面の最上部に書く)
② 区分開閉器…PAS または UGS。定格(7.2kV 200A など)を併記
③ ZCT…開閉器に内蔵。地絡電流の検出用
④ ZPD+DGR…方向性の場合。零相電圧の検出と方向判別
⑤ 避雷器(LA)…PAS内蔵形が主流。雷サージから設備を守る
⑥ 高圧引込ケーブル…CVTなど。サイズとこう長を記入。両端にケーブルヘッド(CH)
📐 図4 引込部は図面でこう描かれ、分界点の内と外で停電範囲が変わる
作図イメージ:引込部が単線結線図でどう描かれるか。受電条件から区分開閉器、ZCT・ZPD+DGR、避雷器、引込ケーブルまでの6要素

引込部に登場する要素は多くありません。上の6つを押さえれば、ほとんどの図面が読めます。数値は書式を示すための記載例です。

要素図面に書くこと読みどころ
① 受電条件3φ3W 6.6kV 50/60Hz図面の最上部にあるか
② 区分開閉器PAS または UGS。定格を併記架空引込か地中引込かが、ここで分かる
③ ZCT開閉器に内蔵地絡電流の検出はどこで行っているか
④ ZPD+DGR方向性の場合に記載ZPDがあるかどうかが、GRとDGRの見分け
⑤ 避雷器(LA)PAS内蔵形が主流接地の記載があるか
⑥ 高圧引込ケーブルCVTなど。サイズとこう長両端にケーブルヘッド(CH)があるか

設計・施工でおさえるポイント

トピック8:経路を決めてから、サイズを詰める
① 整定値は電力会社との協議で決める
地絡の整定電流・整定時間は、勝手に決めるものではありません。上位(配電用変電所)の保護と協調が取れていないと、事故のたびに配電線ごと停電します。受電協議の中で確認してください。
② 引込ケーブルは「サイズ」より先に「経路」
許容電流だけで太さを決めると、曲げ半径や管路の占積率で入らないことがあります。経路・管路・ハンドホールを先に決めてからサイズを詰めるのが結局は早道です。
③ 更新時期を「設計時に」考えておく
PAS・UGSは屋外で常に電圧がかかっている機器です。メーカーの推奨更新時期はおおむね10〜15年とされています。第1号柱の位置を決めるときに高所作業車が寄り付けるかまで見ておくと、10年後の自分(と保安管理者)が助かります。
ここまでのポイント
  • 整定値は電力会社との協議で決める。上位(配電用変電所)の保護と協調が取れていないと、事故のたびに配電線ごと停電する
  • 引込ケーブルは「サイズ」より先に「経路」。経路・管路・ハンドホールを決めてから太さを詰める
  • PAS・UGSの推奨更新時期はおおむね10〜15年。第1号柱の位置を決めるとき、高所作業車が寄り付けるかまで見ておく

新人がやりがちなミス 3選

トピック9:遮断器だと思い込む、が一番多い
① PASを遮断器だと思う
PAS・UGSは短絡電流を切れません。「事故が起きたらPASが切ってくれる」ではなく、「地絡はすぐ切る/短絡は無電圧になってから切る」が正しい理解です。
② ケーブルが長いのにGR付を選ぶ
構内ケーブルが長い=対地静電容量が大きい=もらい事故のリスクが高い。安いからとGR付を選ぶと、毎年のように原因不明の停電に悩まされます。
③ 責任分界点を図面で確認しないまま停電作業を計画する
分界点より外側は電力会社の設備で、需要家側では操作できません。停電範囲の計画は、必ず分界点の位置を確認してから立ててください。
ここまでのポイント
  • PASを遮断器だと思わない。短絡電流は切れない
  • 整定値を単独で決めない。電力会社との協議で決まる
  • 更新時期を設計時に考えておく。10年後の自分と保安管理者が助かる

まとめ

トピック10:外に出さないための、6行

引込部の機器は、ほぼ「自分の事故を構外に出さない」その1点のために存在しています。機器の数は少なく、図面上も数行です。それでも受変電設備の中でいちばん責任が重いのは、ここを外すと被害が敷地の外へ出るからです。

決めることと、外したときに起きること

項目決めること・確かめること外したときに起きること
責任分界点図面のどこが分界点かを指させるようにする停電作業の範囲も事故時の責任も、基準を持てない
区分開閉器架空ならPAS、地中ならUGS。定格を併記する敷地内で切り離せず、配電線ごとの停電(波及事故)になる
SOG地絡は即時、短絡は無電圧を待って開放という動作を理解するPASを遮断器と思い込み、短絡時の想定を誤る
GR/DGRケーブルこう長を見てDGR付(方向性)を選ぶ構外事故で自分だけ停電する(もらい事故)
整定値電力会社との協議で決める上位の保護と協調が取れず、事故のたびに配電線ごと停電
引込ケーブル経路・管路・ハンドホールを決めてからサイズを詰める曲げ半径や占積率で、決めた太さが入らない

どこからが自分の設備か

引込部と分界点
  • 引込部は配電線からキュービクル入口まで。架空引込ならPAS、地中引込ならUGS
  • 責任分界点から内側は需要家の資産。保守も事故の責任もこちら側
  • 区分開閉器の目的はただ1つ、波及事故を出さないこと

切り方と、選び方

SOGとDGR
  • SOGは地絡なら即時、短絡なら無電圧を待って開放する
  • ケーブルが長い物件はDGR付(方向性)を選び、もらい事故を防ぐ
  • 整定値は電力会社との協議で決める。単独では決められない

最後に ― 10年後に触る人のために

PAS・UGSは屋外で常に電圧がかかっている機器です。第1号柱の位置を決めるときに、高所作業車が寄り付けるかまで見ておく。設計時の数分の判断が、10年後の更新工事のしやすさをそのまま決めます。次回はいよいよキュービクルの中に入ります。

✅ 今日のチェックリスト(できたらチェック)
📝 理解度チェック(全3問クイズ)
Q1. 責​任​分​界​点​と​は​何​を​分​け​る​点​か?
A.電​力​会​社​と​需​要​家​の、保​安​上​の​責​任​の​境​目
B.高​圧​と​低​圧​の​境​目
C.屋​外​と​屋​内​の​境​目
答えと解説を見る
正解:A
ここから内側の設備の保安責任は需要家側にあります。だからPAS・UGSは「自分の事故を外へ出さない」ために置かれます。
Q2. S​O​G制​御​装​置​の​動​作​の​説​明​と​し​て​正​し​い​も​の​は?
A.地​絡​も​短​絡​も、検​出​し​た​ら​即​時​にP​A​Sを​開​放​す​る
B.地​絡​は​即​時​開​放、短​絡​は​電​力​会​社​側​が​停​電​し​て​か​ら(無​電​圧​を​確​認​し​て)開​放​す​る
C.地​絡​・​短​絡​と​も、電​力​会​社​が​停​電​さ​せ​て​か​ら​開​放​す​る
答えと解説を見る
正解:B
PASは短絡電流を遮断する能力を持たないため、短絡時はいったん電力会社側の遮断を待ち、無電圧になってから開放します(Ground・Over current・Selective)。
Q3. 構​内​ケ​ー​ブ​ル​が​長​く、他​需​要​家​の​地​絡​に​よ​る「も​ら​い​事​故」が​心​配​な​と​き​に​選​ぶ​の​は?
A.G​R付P​A​S
B.D​G​R付P​A​S
C.L​A内​蔵P​A​S
答えと解説を見る
正解:B
対地静電容量が大きいと、他者の地絡でも自分のZCTに電流が流れて不要動作します。方向性(DGR)なら地絡電流の向きを見て自構内の事故だけを判別できます。
※ まず自分で答えを考えてから「答えと解説を見る」を開いてみてください。

よくある質問

トピック11:現場でよく出る、3つの疑問
Q. PASは需要家の持ち物ですか?
責任分界点に設置する区分開閉器は、原則として需要家の資産です。つまり点検も更新も需要家の費用と責任で行います。「電柱の上にあるから電力会社のもの」と誤解されやすい代表格です。
Q. 避雷器はPASに内蔵されていれば別に付けなくていい?
引込部の保護としては内蔵形で足りることが多いですが、キュービクル内にも避雷器を設ける構成は一般的です。雷の多い地域や重要負荷がある物件では二重に設けることもあります。第5回で避雷器そのものを扱います。
Q. 高圧キャビネットは誰が用意するのですか?
電力会社の分岐装置と需要家のUGSが同じ箱に入るため、取り扱いは電力会社ごとに異なります。設置は需要家、内部の分岐装置は電力会社、という分担が多いですが、必ず供給規程と事前協議で確認してください。
Q. 波及事故を起こすと、どうなりますか?
近隣一帯を停電させるため、原因調査への対応、電力会社への報告、場合によっては近隣への補償が発生します。金額よりも信用の損失が大きいのが実情です。だからこそ、引込部の保護は設計・施工・保安のどの段階でも手を抜けません。

次回予告

トピック12:次は、キュービクルの中へ
第5回:受電部① ― 計量装置(VCT・Wh)、断路器DS、避雷器LA
キュービクルの中に入ります。電気を「測る」ための取引用計量装置、点検のために「切り離す」断路器、雷から「守る」避雷器。3つの役割がなぜこの順に並ぶのかを読み解きます。

参考:高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/電気設備の技術基準の解釈/各電力会社の電気供給約款・受電設備に関する協議資料

30秒アンケートこの記事は役に立ちましたか?

タップするだけで完了します。あなたの声でこのサイトは育ちます。

次に読むならこれ【EV充電・再エネ設備の設計マニュアル⑥・最終回】申請と図面化 ― 申請が設計の締切を決める設計マニュアル
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。