電気設備のキャリアは、資格でかなり決まる。どの資格を、どの順に取るかで、できる仕事も、任される役割も、給料も変わってくる。今回は電気工事の主要資格を合格率という公的データで並べて「難易度の階段」を可視化し、それがそのままキャリアの階段になっていること、そして大手9社がどんな資格支援をしているかを見る。

扱う資格は、電気工事士(作業)・電気工事施工管理技士(管理)・電気主任技術者(電験、保安)の3系統。合格率は電気技術者試験センターと施工管理技術検定の一次データ、各社の支援・有資格者数は統合報告書と採用サイトから拾った。

この記事の結論

電気設備の主要資格は「作業→管理→保安」で役割が分かれ、これがキャリアの階段になる。電気工事士=工事に従事(作業)、電気工事施工管理技士=現場の施工管理(監理技術者・主任技術者)、電気主任技術者(電験)=設備の保安監督。根拠法もそれぞれ電気工事士法・建設業法・電気事業法と異なる。

難易度には明確な壁がある。電気工事士・施工管理技士は合格率40〜70%台で、実務経験なしでも受けられる。一方、電験(電気主任技術者)は三種で合格率約13%、二種・一種はさらに難関で、工事士系との間に大きな段差がある。

大手9社はいずれも資格取得を支援している。受験料の会社負担と祝金・報奨金が基本セット。金額まで公表するのはクラフティア(1級施工10万円・電験三種10万円ほか)・日本電設工業(1級施工10万円・第一種電工5万円ほか)・中電工(電験一種20万円)など少数だ。

有資格者数を開示する会社は、電気工事施工管理技士を1,000〜2,500人規模で抱える。関電工2,498人を筆頭に、資格者の厚みがそのまま会社の施工力・競争力になっている。

1. 電気設備の3大資格:作業・管理・保安で役割が違う

まず押さえたいのが、3つの資格は役割がまったく違うことだ。名前が似ていて混同しやすいが、根拠となる法律も、できることも別物である。

電気工事士(電気工事士法)は、電気工作物の工事に実際に手を動かして従事する「作業」の資格だ。第二種は一般住宅など(600V以下)、第一種は工場やビル(最大500kW未満の自家用)まで扱える。電気工事施工管理技士(建設業法)は、工事の品質・工程・安全・原価を管理する「施工管理」の資格で、1級は監理技術者、2級は主任技術者になれる。現場に配置が義務づけられる技術者だ。電気主任技術者=電験(電気事業法)は、完成後も含めて設備の保安を監督する「保安」の資格で、一定規模以上の事業用電気設備には選任が義務づけられる。

つまり作る人(電工)・管理する人(施工管理技士)・守る人(電験)という分業だ。多くの技術者は電気工事士から入り、施工管理技士へと進む。電験はその先の、あるいは別ルートの専門資格になる。

電気設備の資格の難易度とキャリアの階段

2. 難易度の階段:工事士系と電験系の間に大きな壁

図1は、主要資格を取得の典型的な順に並べ、令和7年度(2025年度)の合格率を添えたものだ。きれいな階段になっている。第二種電気工事士(技能71.7%)から第一種、2級・1級電気工事施工管理技士まで、合格率はおおむね40〜70%台。これらは受験に実務経験が不要で、誰でも(または年齢要件のみで)挑戦できる。

ところが電験に入ると景色が変わる。電気主任技術者・第三種(電験三種)の合格率は約13%。二種・一種はさらに難関で、工事士・施工管理技士系との間にはっきりとした難易度の壁がある。電験も受験自体は誰でもできるが、理論・電力・機械・法規と範囲が広く、三種は科目合格制(合格科目は3年間有効)で数年かけて取る人も多い。

第二種電工の技能
合格率(令和7年度)
71.7
電験三種の合格率
(令和7年度)
13.0
1級電気工事施工管理
(一次・令和7年度)
41.5

注記:施工管理技士は令和6年度から受けやすくなった

電気工事施工管理技士は、令和6年度(2024年度)から第一次検定の受験資格が実務経験不要(1級は満19歳以上、2級は満17歳以上の年齢要件のみ)に改正された。これにより、若手が現場経験を積む前に第一次検定(=『技士補』)を取得できるようになった。第二次検定には引き続き実務経験が必要で、そこで正式な施工管理技士になる。合格率は学科(一次)と技能(二次)で別に公表されており、図の%は各段階の値、段の高さは取得の目安であって厳密な難易度スコアではない。

3. キャリアの階段をどう登るか

この資格の階段は、そのまま現場のキャリアパスに対応する。多くの会社の育成モデルも「入社→現場でOJT→施工管理→現場代理人・監理技術者」という道筋で、資格取得がその節目になっている。

典型的には、入社後まず第二種・第一種電気工事士で現場の作業を覚え、次に2級・1級電気工事施工管理技士で現場を管理する立場へ上がっていく。1級を取れば監理技術者として大規模工事を任され、現場代理人(現場の会社代表)への道が開ける。電験は、保安管理のスペシャリストとして進む別軸のキャリアだ。各社の資格取得支援も、この階段を登らせるための投資と言える。

実際、各社のキャリアモデルもこの形をしている。関電工は「現場施工管理→現場担当者→現場代理人」、住友電設は「入社5年目で現場代理人」、トーエネックは年齢別の5ステージ、中電工は職種別の要員区分で育成期間を設定――いずれも資格を取りながら現場での役割を上げていく設計だ。

各社の電気工事施工管理技士の有資格者数の比較

4. 大手9社の資格支援:受験料負担+祝金、金額開示は少数

図2は、各社が開示する電気工事施工管理技士(1・2級)の有資格者数だ。関電工2,498人を筆頭に、開示する5社はいずれも1,000人前後〜2,500人規模で抱えている。これは会社の規模にも比例するが、それだけの数の管理技術者がいることが施工力の裏づけになっている。(きんでん・クラフティア・住友電設は非公表、ユアテックは工事有資格者の総数2,038名のみ公表。)

資格取得の支援制度は9社すべてが用意している。受験料の会社負担と、合格時の祝金・報奨金が基本セットだ。ただし金額まで公表する会社は少ない。確認できたのは、クラフティア(1級電気工事施工管理技士10万円・電験三種10万円・第一種電気工事士3万円ほか)、日本電設工業(1級施工10万円・第一種電工5万円・消防設備士甲種5万円)、中電工(電験一種20万円)などで、難関資格ほど高額な傾向がうかがえる。下の表に、各社の支援と有資格者数を整理した。

会社資格取得の祝金・報奨金主な有資格者数(最新開示)
関電工祝金あり(難易度・重要度に応じ支給)施工管理2,498・第一種電工2,403・電験735(2024年3月)
きんでん推奨資格を提示・受験料等は非公表非公表
クラフティア資格取得祝金:1級施工10万円・電験三種10万円・第一種電工3万円ほか(+受験料・旅費)非公表
トーエネック合格祝金あり・受験料会社負担施工管理1,426・第一種電工1,438・電験588(2025年3月)
住友電設資格手当あり・電験三種講習非公表
中電工取得祝金(電験一種20万円ほか)・受験費用会社負担施工管理1,205・電験243(2024年3月)
ユアテック報奨金・通信教育補助(費用会社負担)工事有資格者 総数2,038(内訳非公表)
日本電設工業報奨金:1級施工10万円・第一種電工5万円・消防設備士甲種5万円(受験料・テキスト全額会社負担)施工管理1,613・第一種電工823・電験434(2024年3月)
四電工取得祝金・受験料・旅費負担施工管理942・第一種電工643・電験74(2026年3月)
各社の統合報告書・会社概要・採用サイト(2026年7月26日取得)。祝金・報奨金は制度の有無と、金額を公表している会社のみ金額を記載。有資格者数は電気工事施工管理技士(1・2級)・第一種電気工事士・電気主任技術者(電験)で、開示時点(2024年3月〜2026年3月)・集計範囲は会社で異なる。

5. 就活・転職でどう読むか

まず電工、次に施工管理技士がキャリアの王道

電気設備のキャリアは、電気工事士で現場を覚え、電気工事施工管理技士で管理側に回るのが王道だ。施工管理技士は令和6年度から一次検定が受けやすくなり、若いうちに取りやすくなった。1級を取れば監理技術者として大きな現場を任され、待遇にも直結する。会社選びでは、この階段を登らせてくれる支援があるかを見たい。

電験は「別格」。取れば保安のプロとして道が開ける

電験(電気主任技術者)は合格率が桁違いに低い難関資格だ。その分、取得すれば保安管理のスペシャリストとして高く評価され、選任の担い手として重宝される。祝金も各社で高めに設定されていることが多い。施工管理と並ぶ、もう一つのキャリアの頂点と考えていい。

資格支援の手厚さは、会社選びの具体的な材料

受験料の会社負担や祝金・報奨金は、9社すべてにあるが金額の開示はまちまちだ。金額や対象資格を明示している会社(クラフティア・日本電設工業・中電工など)は、資格取得をどれだけ後押しするかが読み取りやすい。採用サイトの『資格取得支援』の記載は、面接で具体的に確認するとよいポイントだ。

6. このデータの限界

以下は本稿が示していないこと

合格率は段階(学科・技能/一次・二次)ごとに公表されており、単一の『総合合格率』ではない。図の段の高さは取得の典型順・レベルの目安で、厳密な難易度スコアではない。電験の年ごとの二次合格率は変動が大きい。

各社の有資格者数は、開示時点(2024年3月〜2026年3月)と集計範囲(単体/連結)が会社で異なる。人数は会社規模にも比例するため、単純な優劣比較ではない。第二種電気工事士など一部資格の内訳は多くが非公表。

資格取得の祝金・報奨金は、金額を公表している会社が少数。『資格手当(月額)』の有無・金額はほとんどの会社で非公表で、確認できたのは一時金の祝金・報奨金が中心。

キャリアパス・等級制度は定性的な記述にとどまる。各社とも育成モデルや研修体系は開示するが、具体的な等級テーブルやモデル年収は非公表。

電気設備で使う資格は他にも多数ある。本稿は電気工事士・電気工事施工管理技士・電験の3系統に絞っており、消防設備士・技術士・計装士・工事担任者などは扱っていない。

転職・就活メディアが独自に集計・推定した合格率・年収・難易度ランキングは使用していない。数値はすべて公的試験機関と各社の公式開示にもとづく。

出典

資格試験のデータ:電気技術者試験センター 第二種電気工事士同 第一種電気工事士同 電験(第三種)電験の制度施工管理技術検定(建設業振興基金)電気工事施工管理技士。合格率は令和7年度(2025年度)。技術者制度は国土交通省 技術検定・技術者制度経済産業省 電気主任技術者(いずれも2026年7月26日取得)。

各社の資格支援・有資格者数:関電工きんでんクラフティアトーエネック住友電設中電工ユアテック日本電設工業四電工(各社の統合報告書・会社概要・採用サイト・有価証券報告書。2026年7月26日取得)。資格手当・年収の詳細は前回までの記事「手当の開示格差」「有価証券報告書で読む平均年間給与」も参照。