この記事は連載「内線規程の解釈と解説」(全119回)の1本です。
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出典:内線規程(JEAC8001-2022)3705節、電気設備の技術基準の解釈 第153条

電動機(モーター)は起動時に大きな電流が流れるため、配線設計では負荷算定とブレーカーの選定が特に重要です。ここでは内線規程にもとづき、電動機回路を安全に設計する要点を整理します。

ブレーカー 定格の3倍以下。
電線 1.25倍以上・遮断器の40%以上。
過負荷 サーマルなど。
欠相 欠相保護。

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ペン太ペン太
電動機のブレーカーって定格電流と同じ値を選べばいいんですよね?
ハリタハリタ
起動時に大きな電流が流れるため、定格の3倍まで余裕を持たせられるんです。

この記事で押さえる3つのこと

  • ブレーカーは定格電流の3倍以下(50A超は2.75倍)。電線は1.25倍以上かつブレーカーの40%以上。
  • 起動の大電流でほかを巻き込まないよう、原則1台に1回路。
  • 過負荷はサーマルなどで守る。0.2kW以下など4つの場合は省略可(電技解釈第153条)。三相には欠相保護。
この記事でわかること
倍率の使い分けは、選定の項にまとめています。
この記事の内容を、ツールで計算する動力盤 主幹ブレーカー選定ツール電動機の出力と台数から、主幹ブレーカーと幹線ケーブルが出ます
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電動機の負荷算定

汎用 銘板の定格電流。
特殊 メーカー資料で確かめる。
起動 冷凍機は起動電流も。
回路 1台に1回路。
  • 汎用モーターは銘板(ネームプレート)の定格電流をそのまま使うのが基本。出力別に決まった規約電流から選ぶこともできる
  • インバーター付きやエアコン・冷凍機などの特殊なモーターはメーカー資料を確認する。圧縮機もメーカー資料で確かめる
  • 冷凍機やチラーは起動時の電流に注意する
  • 電動機は起動時に大電流が流れるため、原則として1台につき1回路(専用回路)とする
ペン太ペン太
3倍って大きすぎませんか?配線が心配になってきました…
ハリタハリタ
上限は3倍まで、50A超は2.75倍までです。過負荷保護は別の装置が担います。
ここまでのポイント
  • 汎用モーターは銘板(ネームプレート)の定格電流をそのまま使うのが基本
  • 出力別に決まった規約電流から選ぶこともできる
  • インバーター付きやエアコン・冷凍機などの特殊なモーターはメーカー資料を確認する
  • 圧縮機もメーカー資料で確かめる
  • 冷凍機やチラーは起動時の電流に注意する
  • 起動時に大電流が流れるため、原則として1台につき1回路(専用回路)とする
ここに注意!
「どのモーターも、銘板の定格電流で計算すればよい」ではありません。
汎用モーターは銘板の定格電流が基本ですが、インバータ付きや冷凍機などの特殊なモーターは、メーカー資料の電流で確かめます。

開閉器とブレーカーの選定

16A×3 上限48A。
選ぶ 48A以下の40A。
50A 上限超えで不可。
式 ×3+ほかの機器。
  • 開閉器の定格電流は、ブレーカーの定格電流と同じか、それ以上とする
  • 電動機1台の場合、ブレーカーの定格電流は電動機の定格電流の3倍まで。ただし電動機が50Aを超える場合は2.75倍まで
  • 他の機器と一緒に使うときは、それらの定格電流も合計して計算する
  • 原則として電線の許容電流≧ブレーカーの定格電流。過負荷保護装置との協調が取れれば、電線の2.5倍以下のブレーカーでもよい
  • 許容電流が100A超で計算値が中途半端になる場合は、直近上位の定格値のブレーカーでよい。専用回路で1360-4に適合する遮断器を使う場合は、電線と同じ定格電流でもよい
条件 ブレーカーの定格電流 補足
電動機1台(50A以下) 電動機の定格電流の3倍まで —
電動機1台(50A超) 2.75倍まで —
他の機器と併用 それらの定格電流も合計して計算する —
電線との関係 原則、電線の許容電流以下 過負荷保護装置と協調が取れれば電線の2.5倍以下でも可
許容電流100A超 直近上位の定格値でよい 専用回路で1360-4に適合する遮断器なら電線と同じ定格でも可

電線の太さ

電動機の分岐回路の電線は、次の2つのうち大きいほう以上の許容電流のものを選びます(内線規程3705-4)。

  • 電動機の定格電流の1.25倍(定格電流が50Aを超えるときは1.1倍)
  • ブレーカーの定格電流の40%(1/2.5)
×1.25 16A→20A。
÷2.5 40A→16A。
大きいほう 20A以上。
50A超 ×1.1。
条件 計算(定格16A・ブレーカー40Aの例)
定格電流×1.25 16A×1.25=20A
ブレーカー÷2.5 40A÷2.5=16A
選ぶ電線 許容電流20A以上(布設条件で確かめる)

ブレーカーと電線の計算例は、動力ブレーカーの選定根拠と計算例でも詳しく扱っています。

ここに注意!
「上限が48Aなら、50Aのブレーカーでよい」ではありません。
上限は「以下」です。48Aを超える50Aは選べないので、48A以下の標準の定格(例 40A)から、始動電流で切れないものを選びます。
ここに注意!
「ブレーカーが3倍なら、電線も3倍の太さがいる」ではありません。
電線は、定格電流の1.25倍以上(50A超は1.1倍以上)、かつブレーカーの定格の40%(1/2.5)以上の許容電流で選びます。じわじわ続く過負荷は、サーマルが受け持ちます。
ここまでのポイント
  • 開閉器の定格電流は、ブレーカーの定格電流と同じか、それ以上とする
  • 電動機1台の場合、ブレーカーは電動機の定格電流の3倍まで。50Aを超える場合は2.75倍まで
  • 他の機器と一緒に使うときは、それらの定格電流も合計して計算する
  • 原則として電線の許容電流≧ブレーカーの定格電流
  • 過負荷保護装置との協調が取れれば、電線の2.5倍以下のブレーカーでもよい
  • 許容電流100A超で計算値が中途半端なら、直近上位の定格値でよい


過負荷保護と欠相保護

サーマル 無理が続くと切る。
0.2kW以下 省略可。
常時監視 省略可。
単相 15A(MCCB20A)以下で省略可。
  • 過負荷保護装置には、電動機用ヒューズ、配線用遮断器(モーター保護タイプ)、熱動継電器(サーマルリレー)などがある
  • 常時人が監視する、過負荷の心配がない、単相モーターで15A以下の回路(20A以下の配線用遮断器)から電源供給、出力0.2kW以下の小型モーターなどは省略できる場合がある
  • 三相のうち1本でも電源が途切れる欠相は電動機の損傷につながるため、欠相保護装置で検出・遮断する。やむを得ない場合は警報のみでよいケースもある

過負荷保護を省略できる場合(電技解釈第153条)

屋内に施設する電動機には、焼損を防ぐ過負荷保護装置を設けます。電技解釈第153条で、次の4つの場合は省略できます。

省略できる場合 中身
出力が小さい 0.2kW以下
常時監視 運転中、取扱者が常時監視できる位置に施設する
過電流のおそれがない 電動機の構造上・負荷の性質上、焼損するほどの過電流が生じない
単相で電源側が小さい 電源側の過電流遮断器が15A以下(配線用遮断器なら20A以下)
たとえるなら
ブレーカーとサーマルは、門番と見回り
大きな建物では、入口の門番が不審者を止め、館内の見回りが小さな異常に気づきますよね。門番だけでは館内の小さな異常に気づけません。電動機の回路も同じで、ブレーカー(門番)は短絡のような大きな事故を止め、サーマル(見回り)はじわじわ続く無理を見張ります。
ここに注意!
「ブレーカーが付いていれば、過負荷も守れる」ではありません。
定格の3倍まで大きくしたブレーカーは、短絡などの大きな事故を切るためのものです。モーターに無理が続く過負荷は、サーマルなどの過負荷保護装置で守ります。
ペン太ペン太
モーターって、どれも同じように電気を使うんじゃないの?
ハリタハリタ
いや、種類や使い方で必要な電流がけっこう変わるよ。基本は銘板の定格電流を見て、圧縮機や冷凍機はメーカー資料で確かめるんだ。
ペン太ペン太
ブレーカーは電線と同じ大きさにすればいい?
ハリタハリタ
電動機は起動電流が大きいから、定格の3倍まで(50A超は2.75倍まで)OK。そのぶん過負荷保護や欠相保護でしっかり守るんだよ。

欠相保護

三相の電源のうち1本が切れる(欠相)と、モーターは残りの2本で回ろうとし、大きな電流が流れます。欠相保護で検出して切ります。やむを得ない場合は、警報だけでよいこともあります。

欠相 三相の1本が切れる。
残りの相 大きな電流。
焼損 のおそれ。
欠相保護 2E・3Eリレーなど。
たとえるなら
欠相は、3人で担ぐ荷物から1人抜けたとき
3人で重い荷物を担いでいるとき、1人が手を離しても荷物は落ちず、残りの2人に重さがかかりますよね。そのまま続けると、2人とも疲れて倒れてしまいます。三相のモーターも、1本が切れると残りの2本に大きな電流が流れ、そのまま回り続けると焼けてしまいます。
ここに注意!
「三相の1本が切れたら、モーターは止まる」ではありません。
回っているモーターは、1本が切れても回り続けようとし、残りの相に大きな電流が流れます。気づかないまま運転すると焼損のおそれがあるので、欠相保護で検出して切ります。
取り違えやすいところ 正しくは
ブレーカーは電動機の定格電流に近い値で選ぶ 起動電流があるため3倍まで(50A超は2.75倍まで)認められる
ブレーカーが3倍なら配線も3倍必要 過負荷保護は別の装置が担う。電線は許容電流の条件で決める
電動機も他の負荷と同じ回路でよい 起動時の大電流のため、原則1台につき1回路
どんなモーターも銘板の定格電流でよい インバーター付きや冷凍機などはメーカー資料を確認する
過負荷保護は必ず外付けで設ける 電技解釈第153条の4つの場合は省略できる
ここまでのポイント
  • 過負荷保護装置には、電動機用ヒューズ、配線用遮断器(モーター保護タイプ)、熱動継電器などがある
  • 電技解釈第153条で省略できるのは、次の4つの場合
  • 常時人が監視する、過負荷の心配がない、出力0.2kW以下の小型モーター
  • 単相モーターで15A以下の回路(20A以下の配線用遮断器)から電源供給する場合も省略できる場合がある
  • 三相のうち1本でも途切れる欠相は電動機の損傷につながるため、欠相保護装置で検出・遮断する
  • やむを得ない場合は警報のみでよいケースもある


よくある質問(FAQ)

Q. 電動機の負荷算定は何を基準にしますか?
A. 汎用モーターは銘板(ネームプレート)の定格電流が基本です。出力別の規約電流から選ぶこともできます。圧縮機・冷凍機などはメーカー資料で確かめ、冷凍機・チラーは起動電流にも注意します。
Q. ブレーカーは電動機の定格電流の何倍まで選べますか?
A. 電動機1台の場合、定格電流の3倍までです。ただし電動機が50Aを超える場合は2.75倍までとします。他機器と併用する場合はその定格電流も合計します。
Q. 過負荷保護装置を省略できる場合はありますか?
A. 電技解釈第153条で、出力0.2kW以下、運転中に取扱者が常時監視できる、構造上・負荷の性質上過電流のおそれがない、単相で電源側の過電流遮断器が15A以下(配線用遮断器20A以下)の4つの場合は省略できます。
Q. 欠相保護はなぜ必要ですか?
A. 三相のうち1本でも電源が途切れると電動機がうまく動かず損傷する危険があるためです。欠相保護装置で異常を検出・遮断します。やむを得ない場合は警報のみでよいケースもあります。
Q. 電動機の電線の太さはどう決めますか?
A. 電動機の定格電流の1.25倍(50A超は1.1倍)と、ブレーカーの定格電流の40%(1/2.5)のうち、大きいほう以上の許容電流の電線を選びます(内線規程3705-4)。定格16A・ブレーカー40Aなら、許容電流20A以上です。
Q. ブレーカーとサーマルは何が違いますか?
A. ブレーカーは短絡などの大きな事故を切るためのもので、始動電流で切れないよう定格電流の3倍まで大きくできます。サーマルは、モーターに無理が続く過負荷を見張って切ります。役割が違うので、両方を組み合わせて守ります。

まとめ|起動電流を見込みつつ、保護は別に置く

電動機の配線設計は「ブレーカーは起動電流で飛ばないように大きめ、過負荷は別の装置で守る」という役割分担でできています。だからブレーカーが定格の3倍でも、配線が危険になるわけではありません。

確認する順番 見るところ 決まること
Step1 モーターの種類 銘板の定格電流か、メーカー資料か
Step2 回路の構成 原則1台につき1回路(専用回路)
Step3 ブレーカーの定格 3倍まで、50A超は2.75倍まで
Step4 電線の許容電流 定格の1.25倍以上(50A超は1.1倍)、かつブレーカーの40%以上
Step5 保護装置 過負荷保護(省略要件の確認)と欠相保護

倍率の数字だけを見ると過大に思えますが、過負荷保護を担う装置が別にあることが前提です。省略要件に当てはめる場合は、その根拠を図面や計算書に残しておくと後の確認がスムーズになります。

ペン太ペン太
保護装置はどこまで必要ですか?
ハリタハリタ
過負荷保護と欠相保護が基本です。0.2kW以下なら過負荷保護を省略できる場合もあります。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。