【新人講座 用語編②】電気屋のための建築用語 ― 「躯体」「通り芯」「FL+300」が読める
番外編②は、前回の施工用語からさらに一歩踏み込んで「建築側の用語」を深掘りします。電気の仕事は、建築の骨組み(躯体)と内装(仕上げ)の間を縫って進むもの。躯体・LGS・通り芯・FL+300が読めると、建築図面と現場の会話が一気につながります。
「躯体」と「仕上げ」― 電気屋は2つの世界の間で仕事する
はりたさん、建築の人が「クタイが」「エルジーエスが」って話してるんですけど…電気と関係あるんですか?
大ありだよ!電気の配線・器具は、ぜんぶ建築のどこか(躯体か仕上げ)に取り付くからね。図①の断面で、建築の言葉と電気の関係をセットで見てみよう。

- 躯体(くたい):スラブ・梁・柱などコンクリートの骨組み。“コンクリを打つ前”しか仕込めない(インサート・スリーブ・埋設配管)。
- スラブ:床版。電気の埋設配管やインサートの舞台。
- 梁(はり):横の骨。通したければ構造検討+スリーブ。勝手な穴あけは厳禁。
- 二重天井:スラブの下にLGS下地+ボードで作る天井。照明・感知器・スピーカーの取付先。
- LGS壁:軽量鉄骨下地のボード壁。スイッチ・コンセントのボックスはボードを張る前に仕込む。
- OAフロア:床を二重にして下に配線。オフィスの電源・LANの通り道。
「打つ前」「張る前」…。建築の工程に合わせて、電気の仕込みのタイミングが決まってるんですね。
それが核心!だから電気屋は建築工程表とにらめっこする。「コンクリ打設はいつ?」「ボード張りはいつ?」が、そのまま電気の段取りになるんだ。
位置の言葉 ―「通り芯」と「FL」
図面の指示で「X3通りから600、FL+300」って書いてあったんですけど、これって暗号ですか…?
それが読めたら現場デビューできる「位置の共通語」だよ。平面の住所が通り芯、高さの基準がFL。図②で見てみよう。

- 通り芯(とおりしん):柱の中心を通る基準線。X1・X2…/Y1・Y2…と番号がふられ、建物の「住所」になる。
- 芯々(しんしん):芯から芯までの寸法のこと。「芯々600」=中心間で600mm。
- FL(Floor Level):その階の仕上がり床=高さの基準0。コンセントはFL+300、スイッチはFL+1200あたりが定番。
- GL/SL:GL=地盤の高さ、SL=スラブの高さ。FLとの使い分けに注意。
- CH(天井高):Ceiling Height。FLから天井までの高さ。
💼 この回が実務でこう生きる
- 建築図面(平面詳細・断面)が読め、建築側との打合せについていける。
- 「打つ前・張る前」の感覚が付き、仕込みの段取りミスを防げる。
- 「X3通りから600、FL+300」のような位置指示を正確に出せる・読める。
🐣 いまさら聞けない素朴なギモン
「こんなこと聞いていいのかな…」という質問ほど大事。ここで拾います。
Q.なんで建物の骨組みに「体」という字を使うんですか?
→ 躯体の「躯」はからだの意味。建物を人にたとえて、骨組み=体、内装=服、設備=血管や神経、とイメージすると各工事の関係が分かりやすいです(電気はまさに神経!)。
Q.梁って、ちょっとくらいなら穴をあけてもいいんですか?
→ 絶対にダメです。梁は建物を支える構造材で、穴の位置・大きさは構造計算に関わります。通したいときは必ず構造設計者の検討を経て、コンクリ打設前にスリーブを入れます。これは新人が最初に覚えるべき禁止事項のひとつ。
📋 実務活用事例|「X3通りから芯々600、FL+300」を現場で形にする
ケース:図面の指示——「会議室コンセント増設。X3通りから芯々600、FL+300、LGS壁内 隠蔽配線」。これを現場で形にせよ。
① 通り芯X3の墨(基準線)を現場で確認 → そこから600mmの位置に縦の墨出し。
② 高さはFL+300 → 床仕上げ面から300mmにボックス中心の墨出し。
③ LGS壁内・隠蔽 → ボードを張る前にボックスをLGSに固定し、配線を仕込む——と、建築のボード工程前に作業日を調整。
結論:建築用語が読めると、1行の指示を「位置×高さ×工程」に翻訳できる。これが「段取りのできる新人」の正体です。
🔎 深掘りQ&A ― もう一歩、聞いてみよう
Q.RC造・S造・SRC造って何が違うんですか?電気に関係あります?
A.RC=鉄筋コンクリート造、S=鉄骨造、SRC=その合体。電気には大アリで、RCは「打つ前の仕込み」勝負(スリーブ・埋設配管)、Sは梁への穴あけ不可・専用金具で吊るなど、構造によって配線ルートの作り方が変わります。案件の構造種別は最初に確認するクセを。
Q.「防火区画」って何ですか?配線と関係ありますか?
A.火災の広がりを止めるために、建物を耐火の壁・床で区切ったブロックのこと。ここを配線が貫通するときは、法令で認められた工法(認定工法)で穴をふさぐ「区画貫通処理」が必須。ケーブルを通して終わり、では検査に通りません。竣工間際に発覚すると大騒ぎになる定番ポイント。
Q.FLとSLの差って、実際どれくらいあるんですか?
A.建物によりますが、数十mm〜200mm程度(仕上げ材やOAフロアの厚み分)。オフィスでOAフロア100mmなら、SL+100=FL。「どっち基準の寸法か」を取り違えると器具の高さがズレるので、図面の注記を必ず確認!
⚠️ ここだけ注意
躯体への穴あけ・アンカー打ち・はつりは、どんなに小さくても必ず構造側(建築・構造設計)の承認を取ってから。「これくらい大丈夫だろう」が建物の寿命と安全を削ります。構造に触るときは、必ず聞く。これだけは絶対に守ってください。
まとめ
- 躯体(スラブ・梁・柱)=打つ前しか仕込めない/仕上げ(LGS・ボード)=張る前に仕込む(図①)。
- 電気の段取りは建築工程で決まる。「打設はいつ?ボードはいつ?」。
- 位置は通り芯(平面の住所)×FL(高さの基準)で決まる(図②)。
- コンセントFL+300・スイッチFL+1200が定番。GL/SLとの取り違えに注意。
- 梁の穴あけ・区画貫通は勝手にやらない。構造承認と認定工法。
▶ 次回・第7回(第3部:建物に電気が届くまで)
受電から末端まで:電気の流れを1本でたどる
建築の中を、電気がどう旅するのか。引込→受変電→幹線→分電盤→コンセントの「電気の流れ1枚図」へ。





