📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら

「3階はコロガシで」「先にスミダシしてヨウジョウしといて」——現場の打合せは、新人には呪文に聞こえます。今日は番外編として、現場で毎日飛び交う施工用語の「読み方」と「意味」を一気に押さえます。用語が分かるだけで、会議も電話も一気に日本語になりますよ。

配線の用語は「建物の断面」で見る

ペンタ

ペンタ(新人)
はりたさん、きのう現場の定例に出たんですけど…「コロガシ」「インペイ」「タチアガリ」って、正直ぜんぶ初耳で。議事録が書けませんでした…。
はりた

はりた(先輩)
あるある!でも配線系の用語は、建物の断面図に置いてみると一発で分かるんだ。図①を見て。どこを通すかで呼び名が変わるだけだよ。
図1 配線用語の断面図(アニメ):転がし・隠蔽・露出・立上り立下り・天井フトコロが順に光る
図① 建物の断面で覚える配線用語 ― どこを通すかで呼び名が変わる
  • 転がし(ころがし)配線:天井裏にケーブルをそのまま這わせる。
  • 隠蔽(いんぺい)配線:壁や天井の中を通す。仕上がると見えない。
  • 露出(ろしゅつ)配線:壁の表面に見える形で通す。増設の定番。
  • 立上り(たちあがり)/立下り(たちさがり):配線が上下方向へ移動する区間。
  • 天井フトコロ:スラブと天井の間のすき間。ダクトや配管との取り合いの主戦場。

読めたら一人前!難読用語フラッシュカード

ペンタ

ペンタ(新人)
断面で見ると分かりやすい…!でも「歩掛」とか「竣工」とか、そもそも漢字が読めない用語も多くて…。
はりた

はりた(先輩)
大丈夫、みんな最初は読めない(笑)。図②のフラッシュカードで、読み→意味の順に声に出して覚えよう。
図2 難読用語フラッシュカード(アニメ):竣工・養生・墨出し・歩掛・納まり・拾いの読みと意味が順にめくられる
図② 難読用語フラッシュカード ― 竣工・養生・墨出し・歩掛・納まり・拾い

グループで覚える施工用語ミニ辞典

フラッシュカードの6語に加えて、最初の現場で出会う用語を4グループでまとめます。

  • 図面・書類系竣工(しゅんこう)図=完成時の最終図面/施工図=現場で作るための詳細図/歩掛(ぶがかり)=作業の標準手間/拾い(ひろい)=数量を数え出すこと。
  • 配線・施工方法系:転がし・隠蔽・露出・立上り立下り(図①)/渡り(わたり)配線=器具から器具へ送る配線/呼び線(よびせん)=あとで本線を引くための誘導ワイヤー。
  • 建物・取り合い系スリーブ=梁や壁の貫通用に先に入れる筒/インサート=天井から物を吊るために先に打ち込む金物/取り合い(とりあい)=他設備との位置関係/納まり(おさまり)=部材のきれいな収まり方/逃げ(にげ)=あとで調整できる余裕。
  • 現場動作系墨出し(すみだし)=位置の印付け/養生(ようじょう)=保護/是正(ぜせい)=指摘への手直し/ダメ直し=竣工前の残り作業・手直しのこと。
ペンタ

ペンタ(新人)
スリーブとインサートって、どっちも「先に仕込む物」なんですね。あとから入れられないから…。
はりた

はりた(先輩)
いいところに気づいた!この2つはまさに「コンクリートを打つ前に仕込む」二大アイテム。だから電気屋は建築の工程を常に気にしてるんだ。「スリーブ入れ忘れ」は現場の大事故だからね。

💼 この回が実務でこう生きる

  • 定例会議・現場電話の内容が理解でき、議事録が書ける
  • 「先に仕込む物(スリーブ・インサート)」の感覚が付き、工程の会話についていける。
  • 施工図・竣工図など書類の名前と役割で迷わない。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

「こんなこと聞いていいのかな…」という質問ほど大事。ここで拾います。

Q.なんで保護することを「養生」って言うんですか?
→ もともとは「健康を保つ・大事にする」という言葉。建物や資材を“大事に守る”という意味で現場に定着しました。引っ越し屋さんも同じ言葉を使います。

Q.「ダメ直し」の“ダメ”って、失敗のこと?
→ 失敗とは限りません。囲碁の「駄目(どちらの陣地でもない目)」が語源とされ、竣工前に残っている細かい未完了・手直し箇所を指します。「ダメ回り」=それを見つけて回る点検のこと。

📋 実務活用事例|定例会議が「呪文」から「日本語」になる

ケース:現場定例で監督がこう言った——「3階のコロガシは今週中。ただしB通りのスリーブが1本抜けてるから、先に是正。インサートは明日打つから、墨出し今日中ね。」

用語を知らない新人:議事録が書けず、自分のタスクも分からない。

今日の内容を知っている新人:「①3階天井裏の直敷き配線は今週中 ②B通りの梁貫通の筒が1本入れ忘れ→手直しが先 ③天井吊り金物は明日コンクリ前に施工→今日中に位置の印付け」と翻訳して記録し、自分の確認事項(スリーブ是正の方法)を質問できた。

結論:用語の読み方・意味は、新人の「参加資格」。分かった瞬間から、会議はあなたの情報源になります。

🔎 深掘りQ&A ― もう一歩、聞いてみよう

Q.「歩掛(ぶがかり)」って、実際どう使うんですか?

A.「この作業は1人で1日にどれだけ進むか」という標準の手間の量。例えば配線100mに何人工(にんく)かかるかが決まっていて、見積=数量×歩掛×労務単価という形で金額になる。拾い(数量)とセットで見積の両輪だよ。

Q.スリーブとインサート、どう違うんですか?

A.どちらもコンクリートを打つ前に仕込む物だけど役割が違う。スリーブ=配管・配線を通すための貫通用の筒(梁・壁・床に)。インサート=天井からラックや器具を吊るボルトを受ける埋込金物。入れ忘れるとコンクリートに後から穴を開けることになり、構造にも工程にも大打撃。

Q.「逃げ」って、逃げていいんですか(笑)?

A.いい質問(笑)。現場の「逃げ」はあとで調整できる余裕・代替ルートのこと。「逃げをとっておく」=寸法や配線ルートに余裕を確保しておく、というプロの知恵。逃げのない設計は現場を苦しめるので、むしろ良い設計者ほど逃げ上手です。

💬 はりたから新人さんへ:会議で知らない用語が出たら、その場でメモ→帰りに1つだけ質問を習慣に。「さっきの“ケレン”ってなんですか?」と聞ける新人は、確実に現場に可愛がられます。用語は度胸で覚えるものです。

⚠️ ここだけ注意

施工用語には地域や会社による“方言”がかなりあります(同じ物を別の名前で呼ぶ・逆も)。この記事の意味で通じないときは、「それはこういう意味ですか?」と確認するのが正解。知ったかぶりだけが事故のもとです。

まとめ

  • 配線用語は断面図で覚える:転がし・隠蔽・露出・立上り/立下り・天井フトコロ(図①)。
  • 難読語は読み→意味で音読:竣工・養生・墨出し・歩掛・納まり・拾い(図②)。
  • スリーブとインサートは「コンクリ前に仕込む」二大アイテム。入れ忘れは大事故。
  • 用語が分かる=会議・電話・議事録に参加できる
  • 方言に注意。分からなければその場で確認、が鉄則。

▶ 次回・第7回(第3部:建物に電気が届くまで)

受電から末端まで:電気の流れを1本でたどる
第3部スタート。引込→受変電→幹線→分電盤→コンセントまで、建物全体の「電気の流れ1枚図」を手に入れます。