積算編④ 複合単価と歩掛 ― 材料費だけでは金額にならない
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📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら

こんにちは、HARITAの設計室です。積算編①で部位ごとの数え方を、②で拾い書の様式を、③で拾いミスの直し方を見てきました。ここまでで、図面から正しい数量を出せるようになりました。
でも、数量が出せても、まだ金額にはなりません。数量に何を掛けるのか――今回はそこを開けてみます。「複合単価」という、見積書の一番大事なのに、いちばん中身を見られていない数字の話です。
先輩、この前もらった見積、同じ工事なのに会社によって単価が全然違うんです。コンセント1個の値段が、A社は1,800円でB社は2,600円で…。どっちかがぼったくりなんですか?
いきなり「ぼったくり」は早いよ(笑)。その単価、「材料費」だけで比べてない?
え、単価って材料費のことじゃないんですか…?器具のカタログ見たら、コンセントって数百円くらいですよね。
そう、そこが今日のポイント。見積書に載ってる「1個いくら」は材料費じゃなくて「複合単価」。中身を分解すると、単価が違う理由がちゃんと見えてくるよ。
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複合単価ってなに? ― 「1個いくら」の中身

材料費と労務費と…雑材費?経費?急に4つに増えました。
順番に見ていこう。まず材料費は、コンセントや電線そのものの仕入値。ここはイメージ通り、カタログや卸の見積が根拠になる、いちばん分かりやすい部分。
じゃあ、さっきの1,800円と2,600円の差は、材料費じゃないってことですか?
その通り。同じ器具を使うなら材料費はほぼ同じはず。差が出るのは、残りの3つ――特に労務費。ここが今日いちばん大事なところだよ。
労務費と歩掛 ― 「手間」を数値にする
労務費って、「取り付ける人の日当」ってことですよね。それが単価に混ざってるのが、ちょっと不思議な感じです。
感覚としては合ってる。ただ「日当そのまま」じゃなくて、歩掛(ぶがけ)という係数を使って計算するんだ。歩掛は「1つ付けるのに、何人工(にんく)かかるか」を表す数字。
人工…働く人の数、ですか?
人工は「働く人1人が1日働く量」の単位。歩掛0.08人工/個のコンセントなら、1人で1日(8時間)働くと、理屈の上では12.5個くらい取り付けられる、という意味。数量×歩掛=所要人工、それに労務単価を掛けると労務費になる。
じゃあ、A社とB社で歩掛の考え方が違えば、単価が変わるってことですね。
そう。それに、同じ器具でも現場条件で歩掛は変わる。天井が高い、狭くて動きにくい、夜間作業しかできない――こういう条件は、材料費には出てこないけど、歩掛にはちゃんと反映される。
雑材費 ― 図面に描かれない材料
雑材費は初めて聞きました。何のことですか?
ビス、テープ、結束バンド、圧着端子…図面には描かれないけど、施工には絶対必要な消耗品のこと。1個1個は数円〜数十円でも、現場全体だと結構な金額になる。だから材料費の数%を目安に、まとめて計上するのが一般的。
拾い出しのときに、ビスの数まで数えたりはしないですもんね。
うん、そこまでやると拾いが終わらない(笑)。だからこそ「見えない材料費」として、比率で織り込んでおく。ここを忘れると、現場で「材料が足りない」が頻発するよ。
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経費 ― 会社を運営するための原価
最後の経費は、会社の利益ってことですか?
似てるけど少し違う。経費は現場管理費(現場監督の人件費や仮設費など)と一般管理費(会社を維持するための費用)のこと。利益はさらにその先、別枠で乗ることが多い。経費が無いと、そもそも工事を管理する人や会社自体が成り立たないから、これも立派な「原価」なんだ。
材料費・労務費・雑材費・経費…全部足して、やっと「1個いくら」になるんですね。
そういうこと。だから材料費だけを見て「高い」「安い」を判断するのは危ない。同じ器具でも、労務費や経費の考え方次第で、単価は普通に1.5倍くらい変わる。
歩掛で計算してみる ― 数量×歩掛の実践

この表、コンセントは歩掛0.08なのに、分電盤結線は1.50って全然桁が違いますね。
数が少なくても、1つあたりの手間が大きい作業は歩掛が高くなる。分電盤の結線は配線を1本ずつ端子に留めていく作業だから、1面でも1.5人工くらいかかることは珍しくない。
VVF敷設は数量が120mで歩掛0.03なのに、労務費がいちばん高いのは意外でした。
歩掛が小さくても、数量が大きければ所要人工は積み上がる。数量×歩掛の掛け算だから、どちらか一方だけを見ても金額の大きさは読めないんだ。
見積書の「コンセント新設 20個 単価1,800円」だけを見ていたら、この中身には絶対気づけないですね。
気づけない。でも歩掛の考え方を知っていれば、「この数量なら人工はこのくらいのはず」と逆算して、単価の妥当性を自分でチェックできるようになる。今日はそこがゴールだよ。
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⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント
- 単価を材料費だけで判断する … 労務費・雑材費・経費を無視すると、見積の高い安いを見誤ります。必ず内訳で考える。
- 歩掛は絶対の数字だと思い込む … 現場条件で補正が必要です。標準歩掛をそのまま鵜呑みにしない。
- 数量だけを見て労務費の大きさを予測する … 歩掛が高い品目は数量が少なくても労務費が大きくなります。数量×歩掛で考える。
- 雑材費をゼロとして扱う … 図面に描かれない消耗品も原価です。比率での計上を忘れない。
- 経費を「利益」と混同する … 経費は現場管理費・一般管理費で、利益とは別枠です。
- 相見積を総額だけで比較する … 総額差の理由を、材料費・労務費・経費に分解してから判断する。
まとめ ― 今日の1枚
- 見積書の「1個いくら」は複合単価。材料費+労務費+雑材費+経費の合計でできている。
- 材料費は器具・電線そのものの仕入値。カタログや見積が根拠。
- 労務費は歩掛(人工/個)×労務単価(円/人工)で算出する「手間」のコスト。
- 雑材費はビス・テープなど図面に描かれない消耗品。材料費の数%を目安に計上する。
- 経費は現場管理費・一般管理費。会社を運営するための原価で、利益とは別。
- 歩掛は現場条件(高所・狭所・夜間作業など)で補正され、会社によって見積もり方が変わる。
- 単価の高い安いは総額ではなく内訳(特に労務費)で判断する。
複合単価の中身が分かると、拾い出しで出した数量が、そのまま金額の根拠になっていく感覚がつかめてきます。あわせて第21回 拾い出しのきほんや第22回 積算・見積のきほん、おすすめアイテム一覧もどうぞ。
次回・積算編⑤は、「内訳書の読み方・見積比較 ― 総額ではなく中身で比べる」。今日で単価の中身が分かるようになりました。次はその単価が積み上がった内訳書を読み、他社見積と並べたときにどこを比べればいいのかを見ていきます。
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