第3回 対象範囲と除外機種の全体像

「この案件の変圧器、2026トップランナーの対象なんですか?」――第三次への切り替わりで、いま最も多い問い合わせがこれです。第3回は対象範囲と除外機種を、施行令・施行規則の条文レベルで整理します。結論から言うと、対象範囲は第二次から一切変わっていません。変わったのは基準値だけです。

ペンタ
ペンタ(新人)
スコット結線変圧器って対象ですか? あと、うちの現場にある整流器用のトランスは……
はりた
はりた
前者は法令で明記された除外、後者は工業会の実務解釈による除外。この二つは根拠のレベルが違うから、分けて理解しておくと混乱しないよ。順番に見ていこう。
ペン太ペン太
手元の案件の変圧器がトップランナーの対象か分かりません。どこで判定するんですか?
ハリタハリタ
まず法令の定義から。一次電圧600V超〜7,000V以下の交流変圧器で、三相なら10kVA超〜2,000kVA以下が入口です。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 手元の変圧器が対象かどうか、どこから判定しますか。
  • 法令による除外と、工業会の実務解釈による除外は同じ重さでしょうか。
  • 第三次で対象範囲は広がったのでしょうか。

大前提|法令が定める「変圧器」の定義

トピック1:大前提|法令が定める「変圧器」の定義

省エネ法施行令 第18条第18号は、特定エネルギー消費機器としての変圧器をこう定義しています。

変圧器(定格一次電圧が六百ボルトを超え、七千ボルト以下のものであつて、かつ、交流の電路に使用されるものに限り、絶縁材料としてガスを使用するものその他経済産業省令で定めるものを除く。)
(省エネ法施行令 第18条第18号)

つまり最初の関門は「一次電圧 600V超〜7,000V以下」かつ「交流」。6.6kV系・3.3kV系の受変電用変圧器が主戦場で、特高(22kV・33kV・66kV…)や低圧トランスはそもそも制度の外です。

ここまでのポイント
  • 最初の関門は、一次電圧が600V超〜7,000V以下であることと、交流の電路に使うものであること。
  • 6.6kV系・3.3kV系の受変電用変圧器が主戦場になる。
  • 特別高圧の変圧器や低圧トランスは、そもそも制度の外。
  • 絶縁材料にガスを使うものなどは、定義の段階で除かれている。

法令で除外されている10項目

トピック2:法令で除外されている10項目

上の定義から、さらに施行令本文(ガス絶縁)と施行規則で計10項目が除外されています。ここが「法令上の除外」=最も強い根拠です。

# 除外される変圧器 根拠
絶縁材料としてガスを使用するもの(ガス絶縁変圧器) 施行令 第18条第18号
H種絶縁材料を使用するもの 施行規則
スコット結線変圧器 施行規則
三以上の巻線を有するもの(三巻線変圧器) 施行規則
柱上変圧器 施行規則
単相変圧器で定格容量が5kVA以下または500kVA超のもの 施行規則
三相変圧器で定格容量が10kVA以下または2,000kVA超のもの 施行規則
樹脂製の絶縁材料を使用する三相変圧器で、三相交流を単相交流及び三相交流に変成するもの
(=モールド灯動変圧器
施行規則
定格二次電圧が100V未満または600V超のもの 施行規則
風冷式または水冷式のもの 施行規則

表① 法令上の除外機種/出典:省エネ法施行令 第18条第18号・同施行規則

柱上変圧器の除外は「永久」ではありません。経産省WGのとりまとめには「柱上変圧器については引き続き行われる本ワーキンググループにて審議を行うものとする」と明記されており、別途審議事項として残されています。将来の動向は要ウォッチです。

ここまでのポイント
  • 法令上の除外は、施行令本文と施行規則を合わせて10項目。
  • ガス絶縁、H種絶縁、スコット結線、三巻線、柱上といった種類が並ぶ。
  • 容量が範囲外のもの(単相・三相それぞれに上下限がある)も除外に含まれる。
  • この10項目が、除外の根拠としてはいちばん強い。


対象になる範囲|標準仕様と準標準仕様

トピック3:対象になる範囲|標準仕様と準標準仕様

除外を差し引いて残った範囲を、JEMAが実務向けに整理しているのが次の表です。この表の範囲が第二次から変わっていないことが、第三次を理解するうえで重要なポイントです。

項目 標準仕様 準標準仕様
定格容量(単相) 10〜500kVA の標準容量 10〜500kVA
定格容量(三相) 20〜2,000kVA の標準容量 20〜2,000kVA
定格一次電圧 6.6kV 6.6kV、3.3kV
定格二次電圧 210V-105V(単相)/210V(三相)/
420V・440V(1500・2000kVA)
左記以外の200V級/左記以外の400V級
適用規格(油入) JIS C 4304:2024 JEM 1520:2024
適用規格(モールド) JIS C 4306:2024 JEM 1521:2024

表② 標準仕様と準標準仕様の範囲/出典:JEMA「2026トップランナー変圧器 FAQ」

容量について、JEMAは次のように整理しています。

  • 90kVA、400kVA などJIS標準容量以外の中間容量 → 準標準仕様として対象
  • 9kVA、単相550kVA、三相2,100kVA など範囲外の容量 → 対象外
ペン太ペン太
法令の除外10項目に載っていなければ、全部対象ってことですよね?
ハリタハリタ
もう一段あります。整流器用やオープンデルタ結線などは、工業会の実務解釈で機種単位に除外されます。
ここまでのポイント
  • 対象になる範囲は、標準仕様と準標準仕様に分かれる。
  • 標準仕様は一次6.6kV、二次は代表的な電圧の組み合わせ。
  • 準標準仕様には3.3kV系や、標準以外の200V級・400V級が入る。
  • JIS標準容量以外の中間容量は準標準仕様として対象になり、範囲外の容量は対象外。

「特殊用途」による機種単位の除外|工業会の実務解釈

トピック4:「特殊用途」による機種単位の除外

ここからは法令ではなく、JEMAがFAQで示している実務解釈です。次の3つは特定エネルギー消費機器から機種単位で除外され、区分ごとの年度出荷加重平均の集計対象からも外れます。

  • インバーター、コンバーター等の電源に使用する整流器用変圧器
  • 三相変圧器で多回路単相負荷に使用するオープンデルタ結線変圧器
  • 複数の電圧仕様(一次〜五次電圧)に対応するため、同一容量または異なる容量の変圧器2台を同一タンクに収納する変圧器

(JEMA「2026トップランナー変圧器 FAQ」Q15 より整理)

ネット上の解説では「電気炉用」「試験用」「防爆型」なども除外例として挙げられることがありますが、告示・施行令・施行規則・経産省WGとりまとめ・JEMA FAQのいずれにも明記はありません。仕様書や社内基準に書くなら、上記のFAQ Q15に挙がっている3例に留めるのが安全です。

「単品扱い(非適用)」という抜け道と、その封じ方

短絡インピーダンス励磁突入電流倍率が標準・準標準の範囲を大きく逸脱し、基準の達成が技術的に難しい単品については、メーカーの責任で発注者と協議のうえ「非適用(適用除外扱い)」とすることができます。ただしJEMAは、そのうえで重要な釘を刺しています。

個別的に非適用とした単品であっても、変圧器製造事業者等が行う区分ごとの年度出荷加重平均の集計対象に含めるものとします。したがって、単品扱いを根拠に当該品を加重平均から除外して制度上の達成状況を回避することはできません
(JEMA「2026トップランナー変圧器 FAQ」Q16 より)

JEMAはさらに「見積や提案の際には、非適用の有無・根拠・合意状況を分かりやすく示していただくようお願いします」としています。設計者側としては、見積書に「非適用」と書かれていたらその根拠を確認するのが正しい振る舞いです。

除外の種類 根拠のレベル 扱い
法令上の除外10項目 施行令・施行規則 制度の外。最も強い根拠
工業会の実務解釈(3例) FAQによる整理 機種単位で除外。加重平均の集計からも外れる
単品扱い(非適用) メーカーと発注者の合意 個別に非適用とするが、集計対象からは外れない
ネット上の除外例 出典なし 仕様書や社内基準には書かない
ここまでのポイント
  • 法令の除外10項目とは別に、工業会のFAQで示されている実務解釈による除外がある。
  • 整流器用、オープンデルタ結線、変圧器2台を同一タンクに収納するものの3例が機種単位で除外される。
  • ネット上で挙げられる他の例は、告示や規則、FAQのいずれにも明記がない。
  • 仕様書や社内基準に書くなら、FAQに挙がっている3例に留めるのが安全。


判定の手順|迷ったらこの順番で

トピック5:判定の手順|迷ったらこの順番で
図① 対象かどうかを6段階で判定する
1 600V7,000V23 5kVA500kVA 10kVA2,000kVA4 100V600V510H6JEMA3231324
省エネ法施行令第18条第18号および平成24年経産省告示第71号、日本電機工業会(JEMA)の実務解釈にもとづく判定順序。上から順に確認し、すべて通過したものが対象です。
  1. 一次電圧は600V超〜7,000V以下か? → 違えば対象外(特高・低圧トランスはここで脱落)
  2. 交流の電路か? → 直流用は対象外
  3. 容量は範囲内か? 単相5kVA超〜500kVA以下/三相10kVA超〜2,000kVA以下
  4. 二次電圧は100V以上600V以下か?
  5. 法令上の除外10項目(表①)に当たらないか? ガス絶縁・H種・スコット・三巻線・柱上・モールド灯動・風冷/水冷
  6. JEMAの特殊用途3例(整流器用・オープンデルタ・2台同一タンク)に当たらないか?
  7. ここまで残れば対象。あとは標準仕様か準標準仕様かで区分を確定する。
ペンタ
ペンタ(新人)
この順番でチェックしていけば、迷わなくて済みますね。
はりた
はりた
そう。そして「対象か対象外か」より大事なのは、対象だった場合に何が変わるか。寸法・質量・発熱・価格――そこが第4回からの本題だよ。
段階 確認すること 外れたらどうなる
一次電圧が範囲内か 特高・低圧はここで対象外
交流の電路か 直流用は対象外
容量が範囲内か 上下限を外れれば対象外
二次電圧が範囲内か 範囲外は対象外
法令の除外10項目に当たらないか 当たれば対象外
工業会の3例に当たらないか 当たれば対象外。残れば対象
ここまでのポイント
  • 判定は6段階。一次電圧→交流かどうか→容量→二次電圧→法令の除外10項目→工業会の3例、の順に見る。
  • どこかで外れればその時点で対象外になる。
  • すべて通過したものが対象で、あとは標準仕様か準標準仕様かで区分を確定する。
  • 見積書に「非適用」とあれば、その根拠を確認するのが設計者側の正しい振る舞い。


⚠️ ここだけ注意

トピック6:ここだけ注意

「対象範囲が変わっていない」ことは、朗報であり落とし穴でもあります。

対象範囲が同じということは、第二次で対象だった変圧器は第三次でもすべて対象ということ。「うちの物件はいつもの6.6kV/210V・三相300kVAだから関係ないだろう」――むしろそのど真ん中の機種こそ影響が最大です。

💼 この回が実務でこう生きる

  • 問い合わせを受けたときに、法令上の除外工業会の実務解釈による除外を切り分けて答えられる。
  • 準標準仕様に該当する案件(3.3kV系・400V級・中間容量)を早期に見分け、基準値が1割ゆるいことを織り込める。
  • 見積書の「非適用」表記に対して、根拠を確認すべきと判断できる。
  • 仕様書に書く適用規格を、JIS C 4304:2024/C 4306:2024/JEM 1520:2024/JEM 1521:2024から正しく選べる。
💬 はりたから現場へ:対象範囲の判定でいちばん多いミスは「特高だから対象外」と言いたいところを一次電圧で判定せずに用途で判定してしまうこと。判定は必ず一次電圧 → 交流か → 容量 → 二次電圧 → 除外リストの順で。条文の順番どおりに追うのが、いちばん間違えません。
ペン太ペン太
判定の考え方は分かりました。実務ではどう進めれば?
ハリタハリタ
迷ったら判定手順の順番どおりに。6.6kV/210Vの三相300kVAのような標準機種は第三次でも全て対象ですよ。
ここまでのポイント
  • 対象範囲が変わっていないことは、朗報であり落とし穴でもある。
  • 第二次で対象だった変圧器は、第三次でもすべて対象ということ。
  • 「いつもの機種だから関係ないだろう」と考えたくなるが、そのど真ん中の機種こそ影響が最大。

まとめ

トピック7:まとめ

この回で押さえるのは、除外の根拠を混ぜないこと。法令か実務解釈かを分けて答えられると、問い合わせが一度で片づきます。

問い合わせ 答え方 根拠の示し方
この変圧器は対象か 6段階の順で確かめる どの段階で外れたかを言う
なぜ除外なのか 法令か実務解釈かを分けて答える 条文かFAQかを明示する
第三次で範囲は変わったか 対象範囲は変わっていない 変わったのは基準値だけ
見積の「非適用」 根拠と合意状況を確認する 記録として残してもらう

対象の入口

  • 対象は一次電圧600V超〜7,000V以下・交流の変圧器。特高も低圧トランスも制度の外。
  • 容量は単相5kVA超〜500kVA以下/三相10kVA超〜2,000kVA以下、二次電圧は100V以上600V以下。

除外の種類

  • 法令上の除外は10項目(ガス絶縁・H種・スコット結線・三巻線・柱上・モールド灯動・風冷/水冷 ほか)。
  • JEMAの実務解釈で、整流器用・オープンデルタ結線・2台同一タンク収納が機種単位で除外。
  • 「単品扱い(非適用)」はあり得るが、加重平均の集計対象からは外れない

変わったところ

  • 対象範囲は第二次から変更なし。変わったのは基準値だけ。
  • 柱上変圧器の除外は継続審議中で、将来変わる可能性がある。

対象か対象外かより大事なのは、対象だった場合に何が変わるかです。寸法・質量・発熱・価格の話が、ここから先の本題になります。

📖 連載「2026トップランナー変圧器」全8回

  1. 第1回|2026年4月に何が変わった?|制度の全体像と「ユーザーに交換義務はない」の本当の意味
  2. 第2回|基準エネルギー消費効率の読み方|E=Wi+(m/100)²×Wc を自分で計算する
  3. 第3回|対象範囲と除外機種|「この変圧器はトップランナーの対象?」を判定する (この記事)
  4. 第4回|キュービクルに入らない|寸法・質量の増加をメーカー公表値で確認する
  5. 第5回|省エネ機なのに発熱が増える|換気設計とアモルファス鉄心の落とし穴
  6. 第6回|電気代はいくら下がる?|損失低減の試算・価格上昇・補助金の使い方
  7. 第7回|仕様書・見積書の書き方|「トップランナー基準適合品」では足りない
  8. 第8回|更新(リプレース)の判断|いつ・どれを・どう替えるか【連載まとめ】

▶ あわせて読みたい:第三次トップランナー規格と切り替えに伴う注意点について詳しく解説

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このテーマは、連載「高圧受変電設備の設計マニュアル(全14回+資料編)」で、単線結線図の読み方・書き方とあわせて基礎から解説しています。
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。