【2026トップランナー変圧器 第2回】基準エネルギー消費効率の読み方|E=Wi+(m/100)²×Wc を自分で計算する
第2回は、この制度でいちばん技術的な部分――エネルギー消費効率と基準エネルギー消費効率です。カタログの「エネルギー消費効率 1052W」「基準値 1080W」という2つの数字が何を意味するのか、そして自分の案件の負荷率でどう計算し直せばいいのかを、告示の条文どおりに整理します。
カタログに「エネルギー消費効率」って書いてあるんですけど、これって%じゃないんですね。1052Wって、効率が1052ワット……?
いい着眼点。変圧器のトップランナー制度で言う「エネルギー消費効率」は、効率(%)ではなく、損失(W)なんだ。だから数字が小さいほど優秀。ここを取り違えると全部逆に読んでしまうよ。
エネルギー消費効率=「基準負荷率における全損失」
告示は、エネルギー消費効率を次のように定義しています。
E = Wi + ( m / 100 )² × Wc
- E:全損失(W)= エネルギー消費効率
- Wi:無負荷損(W)= 鉄損。負荷に関係なく常時発生する
- Wc:負荷損(W)= 銅損。定格負荷をかけたときの損失
- m:基準負荷率(%)。500kVA以下=40/500kVA超=50
Wi・Wcは JIS C 4304/JIS C 4306 に規定する方法で測定した値を用います。
ここで見落とされがちなのが、負荷損は負荷率の「二乗」で効くという点です。基準負荷率40%なら 0.4²=0.16倍、50%なら 0.5²=0.25倍。負荷損が大きくても、軽負荷で使うなら全損失にはあまり効きません。逆に言えば――
カタログの「エネルギー消費効率」は、あくまで告示が決めた評価用の想定負荷率(40%/50%)での値です。あなたの物件の実負荷率が20%なら、その数字は実態を表していません。JEMAも「使用する負荷率での全損失を算定し、より効果的な省エネを図ることをお勧めします」と明言しています。
基準負荷率はなぜ40%/50%のまま据え置かれたのか
第三次では基準負荷率が見直されるのでは、という観測もありましたが、結果は第二次と同じ値で据え置きでした。JEMAはその根拠として、需要家の用途別平均負荷率の実態調査と、基準負荷率20〜60%の5パターンで設計した製品を負荷率0〜60%で走らせたシミュレーションの結果、現行の基準負荷率に妥当性があることを確認した、と説明しています。
基準エネルギー消費効率|24区分の算定式
「その変圧器がクリアすべき損失の上限」が基準エネルギー消費効率です。告示は区分ごとに算定式を定めており、形はすべてE = a × S^b(S=定格容量kVA)というシンプルなべき乗式です。定数項はありません。
| 区分名 | 種別 | 相数 | 周波数 | 定格容量 | 第二次の算定式 | 第三次の算定式 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 3-1 | 油入 | 単相 | 50Hz | ― | E=11.2 S0.732 | E=9.34 S0.737 |
| 3-2 | 油入 | 単相 | 60Hz | ― | E=11.1 S0.725 | E=8.60 S0.744 |
| 3-3 | 油入 | 三相 | 50Hz | 500kVA以下 | E=16.6 S0.696 | E=14.5 S0.694 |
| 3-4 | 油入 | 三相 | 50Hz | 500kVA超 | E=11.1 S0.809 | E=10.6 S0.797 |
| 3-5 | 油入 | 三相 | 60Hz | 500kVA以下 | E=17.3 S0.678 | E=14.4 S0.681 |
| 3-6 | 油入 | 三相 | 60Hz | 500kVA超 | E=11.7 S0.790 | E=8.00 S0.825 |
| 3-7 | モールド | 単相 | 50Hz | ― | E=16.9 S0.674 | E=14.1 S0.685 |
| 3-8 | モールド | 単相 | 60Hz | ― | E=15.2 S0.691 | E=13.3 S0.692 |
| 3-9 | モールド | 三相 | 50Hz | 500kVA以下 | E=23.9 S0.659 | E=16.9 S0.699 |
| 3-10 | モールド | 三相 | 50Hz | 500kVA超 | E=22.7 S0.718 | E=31.2 S0.659 |
| 3-11 | モールド | 三相 | 60Hz | 500kVA以下 | E=22.3 S0.674 | E=16.2 S0.702 |
| 3-12 | モールド | 三相 | 60Hz | 500kVA超 | E=19.4 S0.737 | E=17.4 S0.742 |
表① 標準仕様12区分の基準エネルギー消費効率 算定式(S=定格容量kVA)/出典:平成24年経産省告示第71号
区分3-10だけ係数が22.7→31.2と「大きく」なっています。これを見て「緩和された」と読むのは誤りです。指数が0.718→0.659と小さくなっているため、実際に使う容量域(750〜2000kVA)では基準値は下がります。係数だけを見て判断しないこと。
準標準仕様は「標準仕様の式に係数を掛ける」
残りの12区分(3-13〜3-24)は準標準仕様です。算定式は独立して定められているのではなく、標準仕様の式全体に係数を乗じる形になっています。
油入:(標準仕様の式)× 1.10 / モールド:(標準仕様の式)× 1.05
たとえば区分3-15(油入・三相・50Hz・500kVA以下・準標準)は E=(14.5 S0.694)※×1.10。標準仕様より1割ゆるい基準になります。
標準仕様と準標準仕様って、どう分かれるんですか?
告示の定義はシンプルで、JIS C 4304/JIS C 4306に規定する標準仕様状態が「標準仕様」、それ以外が「準標準仕様」。実務的には、一次6.6kV/二次210V-105Vといった定番の組み合わせが標準仕様、3.3kV系や400V級、JIS標準容量以外の中間容量(90kVA、400kVAなど)が準標準仕様、というイメージだよ。
代表容量で見る|第二次からどれだけ厳しくなったか
いちばん流通量の多い油入・三相・50Hz・500kVA以下(区分2-3→3-3)で、JEMAが公表している目標基準値を並べてみます。
| 定格容量 | 20kVA | 50kVA | 75kVA | 100kVA | 150kVA | 200kVA | 300kVA | 500kVA |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 第二次(2-3) | 133 W | 252 W | 335 W | 409 W | 542 W | 663 W | 879 W | 1250 W |
| 第三次(3-3) | 115 W | 219 W | 290 W | 354 W | 469 W | 573 W | 759 W | 1080 W |
| 比率 | 86.5% | 86.9% | 86.6% | 86.6% | 86.5% | 86.4% | 86.3% | 86.4% |
表② 区分2-3→3-3 の目標基準値/出典:JEMA 講演会資料(2025年5月22日改定)
おおむね13〜14%の絞り込みです。JEMAのパンフレットによれば、標準仕様12区分を合計した効率改善の想定は平均14.2%(区分別には12.1〜17.2%)。一方、経済産業省のワーキンググループとりまとめは、2019年度の出荷構成を固定した加重平均ベースで約11.4%向上(501.1W/台→444.1W/台)と試算しています。数字が違うのは矛盾ではなく、算定のベースが違うだけです。
「省エネ効果◯%」の数字は、比較対象を必ず確認する
この分野の数字がややこしいのは、公表値ごとに比較対象がバラバラだからです。整理するとこうなります。
| 改善率 | 何と比べた数字か | 出典 |
|---|---|---|
| 約46% | JIS C 4304(1981)規格値 | JEMA公式ページ |
| 約26% | JIS C 4304(2005)=第一次判断基準 | JEMA公式ページ |
| 平均14.2% | 第二次の目標基準値算定式(標準仕様12区分の合計) | JEMAパンフレット(産5231) |
| 約11.4% | 2019年度の実出荷構成で加重平均した実績値 | 経産省WGとりまとめ |
表③ 「省エネ効果」の数値と比較対象
社内資料や提案書で「第三次で◯%省エネになります」と書くときは、必ず比較対象を併記してください。「1981年規格比で46%」と「第二次比で14.2%」を混同すると、提案の数字が3倍ずれます。
丸めの規定と、公表表との微妙なズレ
告示は第三次の基準値について、算定式で計算したあと「有効数字4桁切り捨て(ただし100W未満のものは有効数字3桁切り捨て)」と定めています。ところが実際に計算してみると、公表表と1桁目が食い違うケースがあります。
例:区分3-3・500kVA
- 算定式:14.5 × 5000.694 = 1082.5…
- 告示の「有効数字4桁切り捨て」を素直に適用すると → 1082 W
- ところがJEMA講演会資料の表も、東芝・ダイヘンのカタログも → 1080 W(有効数字3桁)
実務では各社カタログ・JEMA公表表に載っている値(1080W)が事実上の基準値として使われています。自分で式から計算した値が1〜2W違っても慌てないでください。
なお、この丸めの規定は第三次(3-x)の条文にしか存在しません。第二次(2-x)の条文には丸めの文言がなく、「算定式により算定した数値」とだけ書かれています。「トップランナー変圧器の基準値は4桁切り捨て」と一般化すると不正確です。
「区分が増えた」は誤り|新設されたのは”区分名の表示義務”
第三次の解説記事でよく見かける「区分の明確化を目的として区分名が新設された」という説明。これを「区分が細分化された」と読むのは誤解です。実際には――
- 区分の切り方(種別×相数×周波数×容量×仕様=全24区分)は第二次とまったく同じ。経産省WGとりまとめも「区分設定は現行基準と同様とした」と明記。
- 新しくなったのは表示事項。「3-1」〜「3-24」という区分名をカタログ等に表示することが義務化された。
- 表示義務の実質的な開始は2024年10月31日以降(告示の経過措置は「令和6年10月30日まで従前の例による」)。
表示事項は全11項目です。カタログを開いたら、次の項目が並んでいるはずです。
イ) 品名及び形名/ロ) 区分名/ハ) 変圧器の種別/ニ) 定格容量/ホ) 相数/ヘ) 定格周波数/ト) 定格一次電圧及び定格二次電圧/チ) エネルギー消費効率/リ) 基準負荷率/ヌ) 規格名/ル) 製造事業者等の氏名又は名称
実践|自分の案件の負荷率で計算し直す
ここまでを踏まえて、実務で本当にやるべき計算はこれです。
手順
- カタログから無負荷損 Wi と 負荷損 Wc を拾う(エネルギー消費効率の値ではなく、その内訳)。
- その物件の実際の想定負荷率 m′(%)を決める。
- E′ = Wi + (m′/100)² × Wc を計算する。
- 比較したい機種すべてで同じ計算をして、同じ負荷率で横並びにする。
たとえば油入・三相・50Hz・500kVAで、ダイヘンのカタログ値を使うと次のようになります。
| 無負荷損 Wi | 負荷損 Wc | 負荷率20% | 負荷率40% (基準負荷率) |
負荷率60% | |
|---|---|---|---|---|---|
| 第二次(TOP ECO Ⅱ) | 580 W | 3,915 W | 737 W | 1,206 W | 1,989 W |
| 第三次(TOP ECO Ⅲ) | 156 W | 5,599 W | 380 W | 1,052 W | 2,172 W |
表④ 全損失の負荷率依存(ダイヘン カタログ公表値より計算)/三相6kV-210V・50Hz・500kVA
あれっ!? 負荷率60%だと、新基準のほうが損失が大きい…!
よく気づいたね。これがこの制度のいちばん怖い落とし穴なんだ。第三次の500kVA機は無負荷損を580W→156Wと激減させる代わりに、負荷損を3,915W→5,599Wと増やしている。だから軽負荷では圧勝、重負荷では逆転する。この話は第5回でみっちりやるよ。
💼 この回が実務でこう生きる
- カタログの「エネルギー消費効率」が%ではなく損失Wであることを理解し、数字の向きを間違えない。
- Wi と Wc を分けて拾い、物件の実負荷率で全損失を計算し直せる。
- 「省エネ◯%」の提案数字について、比較対象を明示して信頼できる説明ができる。
- 基準値を自分で計算できるので、カタログ値が本当に基準をクリアしているか検算できる。
まとめ
- エネルギー消費効率=基準負荷率での全損失(W)。%ではなく、小さいほど優秀。
- 式は E=Wi+(m/100)²×Wc。基準負荷率 m は500kVA以下40/500kVA超50。負荷損は負荷率の二乗で効く。
- 基準エネルギー消費効率は E=a×Sb のべき乗式。標準仕様12区分+準標準仕様12区分=全24区分。
- 準標準仕様は標準仕様の式に油入×1.10/モールド×1.05。
- 第二次比の絞り込みは代表区分でおおむね13〜14%(JEMA公表の効率改善想定は平均14.2%)。
- 区分は増えていない。新しくなったのは「区分名をカタログに表示する義務」。
- 公表表の基準値は有効数字3桁表記。自分で計算した値と1〜2Wずれることがある。
📚 出典・参考
📖 連載「2026トップランナー変圧器」全8回
- 第1回|2026年4月に何が変わった?|制度の全体像と「ユーザーに交換義務はない」の本当の意味
- 第2回|基準エネルギー消費効率の読み方|E=Wi+(m/100)²×Wc を自分で計算する (この記事)
- 第3回|対象範囲と除外機種|「この変圧器はトップランナーの対象?」を判定する
- 第4回|キュービクルに入らない|寸法・質量の増加をメーカー公表値で確認する
- 第5回|省エネ機なのに発熱が増える|換気設計とアモルファス鉄心の落とし穴
- 第6回|電気代はいくら下がる?|損失低減の試算・価格上昇・補助金の使い方
- 第7回|仕様書・見積書の書き方|「トップランナー基準適合品」では足りない
- 第8回|更新(リプレース)の判断|いつ・どれを・どう替えるか【連載まとめ】
▶ あわせて読みたい:第三次トップランナー規格と切り替えに伴う注意点について詳しく解説





