【高圧受変電設備の設計マニュアル①】高圧受変電設備とは何か ― 目的と用途をやさしく解説
こんにちは、HARITAの設計室です。今回から、「高圧受変電設備の設計マニュアル」という新しい連載を始めます。
配属されて最初に机の上に置かれた図面が、線と記号がびっしり詰まった1枚の紙だった――。電気設備の仕事を始めた人の多くが、ここでいったんつまずきます。この紙は単線結線図といって、その建物の「設計図の中の設計図」にあたるものです。
第1回のテーマは、記号ではありません。「そもそも、この設備はなんのためにあるのか」。ここを飛ばして記号から覚えると、必ずどこかで行き詰まります。逆に目的さえつかめれば、記号は後からいくらでも付いてきます。
高圧受変電設備ってなに?
ひとことで言えば、電力会社から高い電圧で電気を受け取り、建物の中で使える電圧に変えて配る設備です。ビルの屋上や工場の敷地の隅にある、あの金属の箱=キュービクルの中身がこれにあたります。
発電所でつくられた電気は、送電線と変電所を何段も経由し、電圧を段階的に下げながら運ばれてきます。その最後の段階で、受け取り方が3つに分かれます。
ここで、電圧の区分だけは正確に覚えてください。実務でも試験でも必ず出てきます。
| 区分 | 交流 | 直流 |
|---|---|---|
| 低圧 | 600V以下 | 750V以下 |
| 高圧 | 600Vを超え7,000V以下 | 750Vを超え7,000V以下 |
| 特別高圧 | 7,000Vを超えるもの | 7,000Vを超えるもの |
6.6kV=6,600Vは、この表で言えば高圧。だから「高圧受電設備」と呼びます。契約電力でいえば、おおむね50kW以上〜2,000kW未満が高圧受電の範囲です。
なぜ、わざわざ「高圧」で受けるのか
「最初から100Vや200Vでもらえば、変圧器なんて要らないのでは?」――新人からよく出る、とてもいい質問です。答えは電流にあります。
三相交流の電力は、P = √3 × V × I × cosθ(P:電力[W]、V:電圧[V]、I:電流[A]、cosθ:力率)で表されます。同じ電力Pを受け取るとき、電圧Vが高ければ電流Iは小さくて済むのです。
たとえば300kWを受け取る場合で比べてみます(力率0.9)。
| 受電電圧 | 必要な電流 | 電線のイメージ |
|---|---|---|
| 200V | 約960A | 太い幹線を何条も並べる規模 |
| 6,600V | 約29A | 高圧ケーブル1条で足りる |
電圧が33倍になれば、電流は約1/33。電流が小さくなると、次の3つが一気に良くなります。
だから電力会社は高い電圧で送り、需要家は敷地の入口まで高圧のまま引き込んで、建物のできるだけ近くで低圧に落とす。高圧受変電設備は、この「落とす場所」そのものだと考えてください。
高圧受変電設備が担う6つの役割
ここが第1回のいちばん大事なところです。高圧受変電設備は、変圧器だけの設備ではありません。次の6つの役割を果たすために、たくさんの機器が組み合わされています。
役割① 受ける・切り離す
電力会社の配電線から自分の敷地に電気を引き込み、必要なときに安全に切り離せるようにします。ここには「責任分界点」――どこまでが電力会社の持ち物で、どこからがお客さんの持ち物かという境界の考え方があります。
そして、この役割にはもうひとつ大きな目的があります。波及事故の防止です。
役割② 測る
電気は目に見えないので、測らなければ管理できません。測る目的は2つあります。
取引のため――電力会社への支払いの根拠となる電力量の計量(VCT+電力量計 Wh)。
運転管理のため――いま何A流れているか、電圧は正常か、力率はいくつか。
6,600Vをそのまま計器に入れることはできないので、VT(計器用変圧器)やCT(変流器)で扱える大きさに落としてから測ります。図面上に小さな丸がたくさん並んでいるのは、この計測回路です。
役割③ 守る
高圧受変電設備の機器のうち、実は半分以上が「守るため」の機器です。守る相手は次のとおり。
| 異常の種類 | どう守るか | 主な機器 |
|---|---|---|
| 短絡(ショート) | 大電流を高速で遮断する | VCB、PF、OCR |
| 地絡(漏電) | 漏れ電流を検出して切り離す | ZCT、DGR、PAS・UGS |
| 過負荷 | 電流の増加を検出して切る | OCR、MCCB |
| 雷などの異常電圧 | 過大な電圧を大地へ逃がす | 避雷器 LA |
| 電圧の異常低下 | 停電を検出して保護・切替 | 不足電圧継電器 UVR |
「なにを守るための機器なのか」という視点で図面を見ると、記号の並びが急に意味を持って見えてきます。
役割④ 変える
6,600Vを、照明やコンセントで使う105V/210Vに変換します(実際に使う電圧が100V/200V、変圧器の定格二次電圧が105V/210Vです)。
変圧器は1台とは限りません。電灯用(単相/照明・コンセント)、動力用(三相/空調機・ポンプ・エレベータ)、非常用(非常照明・消防設備)というように、用途ごとに分けて設置するのが一般的です。理由は、負荷の性質が違うから。動力負荷が起動して電圧が一瞬下がったときに、照明までちらついては困るからです。
役割⑤ 整える
モータなどの負荷が多いと力率が悪くなり、同じ仕事をするのに余計な電流が流れます。電気料金も高くなります。これを改善するのが進相コンデンサ(SC)で、その手前には必ず直列リアクトル(SR)が入ります。図面の右下あたりに、他とは違う形の記号が2つ並んでいたら、まずこれです。
役割⑥ 備える
停電しても止められない設備があります。非常照明、消防用設備、病院の医療機器、サーバなど。そのために非常用発電設備や蓄電池を設け、停電を検出して自動で切り替えます。近年は太陽光発電の系統連系も、この領域に含まれます。
6つの役割は、そのまま単線結線図の並びになっている
ここまで読むと、単線結線図がなぜあの順番で描かれているのかが見えてきます。単線結線図は、電気が流れる順(上から下)に描くのが原則。つまり6つの役割が、上から順に積み上がっているのです。
「図面が読めない」のではなく、「この6ブロックに分ける習慣がなかっただけ」――というケースが本当に多いです。どんなに複雑に見える単線結線図でも、まずこの6つの箱に区切ってください。それだけで、見える景色が変わります。
誰が、なんのためにこの図面を見るのか
単線結線図の「用途」も整理しておきましょう。立場によって、同じ1枚の紙の使い道がまったく違います。
とくに事故が起きたとき、現場でまず開かれるのがこの図面です。「どこを切れば安全に切り離せるか」を数分で判断しなければならない場面で、単線結線図が読めるかどうかが問われます。新人のうちから読む練習をする意味は、ここにあります。
単線結線図は「3本の線を1本で描いた図」
最後に、次回への橋渡しです。高圧の電路は三相3線式なので、本来は電線が3本あります。それを1本の線で代表して描いたのが単線結線図です。
だから実務では、単線結線図のほかに三線結線図(実際の3本を描いた図)や展開接続図(制御回路の動きを描いた図)を使い分けます。この使い分けが第2回のテーマです。
まとめ
よくある質問
次回予告
単線結線図・三線結線図・展開接続図・機器配置図。それぞれ何が描いてあり、どの場面で使うのか。同じ受電部を4つの図面で描き比べながら整理します。
参考:電気事業法施行規則(電圧の区分)/電気設備の技術基準の解釈/高圧受電設備規程 JEAC 8011-2025(日本電気協会)/内線規程 JEAC 8001/JIS C 4620 キュービクル式高圧受電設備





