【2026トップランナー変圧器 第6回】電気代はいくら下がる?|損失低減の試算・価格上昇・補助金の使い方
「第三次に替えると電気代はいくら下がるのか」「本体価格の上昇分は回収できるのか」。第6回は、この連載でいちばん施主に説明を求められる部分を、公的な計算式と実データで扱います。結論を先に言うと――第二次機からの更新を電気代だけで回収するのは、現実的ではありません。
省エネ機なんだから、電気代でモトが取れますよね?
そこは正直に数字で答えたほうがいい。第二次からの更新なら年間で数万円のオーダー。本体価格の上昇分には遠く届かない。でも1981年規格や2005年規格の老朽機からの更新なら話が変わる。そこを切り分けよう。
公的な計算式|SIIの「指定計算」がそのまま実務標準
補助金の省エネ量算定に使われる、SII(環境共創イニシアチブ)の指定計算がいちばん確実な手順です。
① 全損失を求める
全損失[W] = 無負荷損[W] + 負荷損[W] × ( 基準負荷率[%] ÷ 100 )²
② 年間の電力損失量に換算する
電力損失量[kWh] = 全損失[W] × 稼働時間[h] × 台数 ÷ 1,000
③ 差を取る
省エネルギー量 = 既存設備の損失量 − 導入設備の損失量
指定計算では稼働時間は 24h × 365日 = 8,760h に自動設定されます。変圧器は通電している限り無負荷損が出続けるためです。
SIIの手引きが明記している注意点(実務でも効きます)
- 稼働時間は更新前後で同じという前提で計算すること。
- 24h×365日以外の稼働条件、あるいは導入前後で容量や負荷率が大きく変わる場合は、指定計算は使えず独自計算が必須。
- 納入時の性能は、JISにおいて基準エネルギー消費効率+10%の裕度が許容されている。カタログ代表値どおりに出るとは限らない。
まず覚える換算|「損失100Wは、年間いくらか」
細かい機種比較の前に、この換算を頭に入れておくと交渉が速くなります。
損失 100W = 年間 876 kWh(100W × 8,760h ÷ 1,000)
電力量単価 17円/kWh なら → 年間 約 14,900円
ざっくり「損失100Wの削減 = 年1.5万円」。これを基準に暗算できます。
試算|三相500kVA・50Hz を第二次から第三次へ
第5回で使ったダイヘンのカタログ値(Wi 580W/Wc 3,915W → Wi 156W/Wc 5,599W)で、負荷率別の年間削減額を出します。24h×365日運転、電力量単価17円/kWhとします。
| 実負荷率 | 第二次 全損失 | 第三次 全損失 | 年間の差 | 年間の電気代差 |
|---|---|---|---|---|
| 20% | 737 W | 380 W | −357 W | 約 −53,200円 |
| 30% | 932 W | 660 W | −272 W | 約 −40,500円 |
| 40% | 1,206 W | 1,052 W | −154 W | 約 −22,900円 |
| 50% | 1,559 W | 1,556 W | −3 W | 約 −400円 |
| 60% | 1,989 W | 2,172 W | +183 W | 約 +27,200円(増) |
| 80% | 3,086 W | 3,739 W | +653 W | 約 +97,200円(増) |
表① 当サイトによる試算(ダイヘン カタログ公表値を SII 指定計算の考え方に代入)
負荷率20〜40%の物件で年間2〜5万円。これが第二次→第三次の実力です。一方、第4回で見たとおり本体価格は大きく上がっています。電気代だけで価格上昇分を回収するのは、第二次機からの更新では現実的ではない――これが正直な結論です。
じゃあ、更新する意味がないってことですか……?
いや、比較の相手が違うんだ。第二次機はまだ新しい。本当に更新すべきは、もっと古い機械だよ。
老朽機からの更新なら、桁が変わる
JEMAは第三次品の省エネ効果を、比較対象別に次のように公表しています。
| 比較対象 | 改善率 | 国内稼働台数(2021年度時点) |
|---|---|---|
| JIS C 4304(1981)規格 = 2001年以前の機 | 約46% | 約221万台(全体の57%) |
| JIS C 4304(2005)規格 = 第一次 | 約26% | 約60万台 |
| JIS C 4304(2013)規格 = 第二次 | (算定式ベースで平均14.2%) | 約71万台 |
表② 比較対象別の省エネ効果と稼働台数/出典:JEMA 公式ページ・パンフレット(産5231)
国内の変圧器稼働台数は2021年度時点で約386万台(油入351万台・モールド35万台)と推定され、そのうち更新推奨時期の20年を経過した2001年以前の機が約221万台・57%を占めます。1981年規格機を第三次機に替えれば損失は約46%減。三相500kVAクラスなら年間10万円を超える削減も見込めます(概算)。
この46%・26%という数字は区分全体を通した平均的な改善率であって、個別の容量・機種の値ではありません。施主に提示する試算では、必ず現機の銘板から Wi・Wc を拾って個別に計算してください。銘板に損失値がない場合は、当時のJIS標準値かメーカーの製造記録を当たります。
価格はどれだけ上がったのか
ここは慎重に扱う必要があります。メーカー・工業会は具体的な上昇率を公表していません。JEMAの公式見解は定性的な表現にとどまります。
2026トップランナー変圧器は省エネルギー性能を高めると共に更新性能、耐地震強度等の性能を高めた製品です。この実現のために高性能材料の採用や構造の改良を行っていますので、製造原価の上昇は避けられません。
(JEMA「2026トップランナー変圧器 FAQ」Q21 より)
一方、流通・工事事業者側からは具体的な数字が出ていますが、出所によって1.5倍〜3倍とばらつきます。提案書に使うなら必ず出所を併記してください。
| 上昇率 | 出所 | 性質 |
|---|---|---|
| 約2倍 | 河村電器産業 お知らせ S20404(2025年4月) | メーカー(盤)の告知資料 |
| 約1.5倍 | 工事会社のコラム記事 | 二次情報 |
| 2〜3倍 | 工事会社のコラム記事 | 二次情報 |
表③ 公表されている価格上昇率(メーカー団体の公式値ではない点に注意)
背景には材料価格もあります。2026年5月時点でLME銅は1トンあたり13,000ドル超、国内銅建値は2,100円/kg超と数年前の約2倍の水準にあり、「2026年内は高値圏で推移、大幅な下落は見込みにくい」とする市況情報もあります。第三次でコイル導体断面積が増えていることを考えると、銅価が価格に直撃する構造になっています。
納期|駆け込みのピークは過ぎたが、切替直後の空白に注意
2025年後半、第三次への切替前の駆け込み需要でキュービクル納期は約10か月まで伸びました。2026年に入ってからは改善傾向にあり、2026年2月時点で約5か月という市況情報が出ています。
一方で、盤メーカーの切替スケジュールには構造的な空白があります。たとえば河村電器産業の告知では、第三次対応機の受注開始が2026年8月、製作開始が2026年10月。日東工業も第三次対応キュービクルの出荷開始は2026年5月以降で、「設計および収納確認等には納期を頂く場合があります」と注記しています。
第4回で見たとおり、第三次対応では盤への収納可否そのものを個別に確認する工程が発生します。「同じ品番の盤だから」と工期を組むと、収納確認だけで数週間持っていかれることがあります。
補助金|変圧器は「省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)」が本命
変圧器の更新に使える補助金として、まず押さえるべきは経済産業省の省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)です。変圧器は、この制度の指定設備(ユーティリティ設備9区分)の1つとして明記されています。
| 指定設備(ユーティリティ設備 9区分) |
|---|
| 高効率空調/産業ヒートポンプ/業務用給湯器/高性能ボイラ/高効率コージェネレーション/変圧器/冷凍冷蔵設備/産業用モータ/制御機能付きLED照明器具 |
出典:SII 補助対象設備一覧
| 申請枠 | 補助率 | 上限(事業全体) | 下限 |
|---|---|---|---|
| 従来枠 | 1/3以内 | 1億円 | 30万円 |
| GXメーカー強化枠 | 1/3以内 | 3億円 | 30万円 |
| GXトップ性能枠(更新) | 1/2以内 | 3億円 | 30万円 |
| GXトップ性能枠(新設) | 1/5以内 | 3億円 | 30万円 |
表④ 設備単位型の補助率・補助額(令和7年度補正予算)
2026年8月時点での注意
- 令和7年度補正予算の1次公募(2026年3月30日〜4月27日)・2次公募(6月1日〜7月9日)は既に締切。3次公募はGX設備単位型のみ予定とされていますが、詳細は公表待ちです。
- 変圧器の性能要件は、過年度の基準表では「エネルギー消費効率の達成率125%以上」でした。最新年度の基準は必ずSIIの補助対象設備一覧で確認してください。
- 環境省のSHIFT事業は、対象設備に変圧器の記載がなく、受変電設備は「付属設備として導入する場合のみ補助対象」。変圧器単体の更新では使いにくい制度です。
- 「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」という旧名称で書くと誤りになります。現在は「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」「省エネ・非化石転換補助金」に再編されています。
施主への説明はこう組み立てる
- 現機の銘板から Wi・Wc を拾う。これが出発点。無ければ製造年とJIS年版で当たりをつける。
- 実負荷率を決める。デマンドデータがあれば最良。無ければ契約電力と容量から推定。
- 両機の全損失を同じ負荷率で計算し、差を8,760時間で年間kWhに換算する。
- 電気代の削減額と、価格上昇+盤改造+基礎補強+搬入費を並べる。第二次機からなら回収は難しい、老朽機からなら効く、と正直に示す。
- 補助金の可否を確認する。設備単位型が使えれば1/3〜1/2。判断は大きく変わる。
- 省エネ以外の価値も並べる。耐震性能の向上、更新性能、故障リスクの低減、BCP。
💼 この回が実務でこう生きる
- 「損失100W = 年約1.5万円」の換算で、打ち合わせの場で即答できる。
- 第二次機からの更新で電気代回収は難しいことを、数字で正直に説明できる。
- 老朽機(2001年以前)からの更新なら効果が桁違いであることを、稼働台数の実態とセットで示せる。
- 価格上昇率を語るときにメーカー公表値と二次情報を区別して提示できる。
- 設備単位型補助金の存在と、SHIFT事業が使いにくい理由を説明できる。
まとめ
- 計算はSIIの指定計算がそのまま使える。全損失 × 8,760h ÷ 1,000 で年間kWh。
- 損失100Wの削減 = 年間876kWh ≒ 約1.5万円(17円/kWh)が暗算の基準。
- 第二次→第三次(三相500kVA・負荷率20〜40%)の削減は年2〜5万円。価格上昇分の回収は難しい。
- 負荷率60%以上では逆に増えるケースもある(第5回参照)。
- 2001年以前の1981年規格機からなら約46%の改善。国内稼働機の57%がこの世代。
- 価格上昇率はメーカー公表値がなく、二次情報で1.5〜3倍とばらつく。出所を必ず併記する。
- 補助金は省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)が本命。変圧器は指定設備。SHIFT事業は単体では使いにくい。
📚 出典・参考
【追補】2026年8月時点の納期|ボトルネックは変圧器から「その周り」へ移った
納期についてのご質問が多かったので、2026年8月1日時点で確認できる最新の情報にまとめ直します。結論から言うと、変圧器本体の納期は2025年秋のピークから大きく改善しました。ところが2026年に入って別の場所に新しい壁ができています。
えっ、改善したんですか? 「1年待ち」って聞いてましたけど……
それは2025年11月の話だね。当時は受注生産品で最大11ヶ月だった。でも2026年2月の時点で油入の標準品は5〜6ヶ月まで戻っている。ただし――ケーブルと開閉器が別の意味でヤバいことになっているんだ。
変圧器本体の標準納期(2026年2月12日時点)
メーカーで納期を数値公表しているのは日立産機システムだけです。商社経由で配布されている「配電用変圧器 標準納期見直しのご連絡 第23報」の内容を掲載します。
| 製品種別 | 容量 | 標準納期 |
|---|---|---|
| 油入・見込生産品(SuperトップランナーⅢ) | 単相10〜200/三相20〜200kVA | 5ヶ月 |
| 油入・見込生産品 | 単相300〜500/三相300〜1000kVA | 6ヶ月 |
| 油入・受注生産品 | 単相10〜50/三相20〜50kVA | 5.5ヶ月 |
| 油入・受注生産品 | 単相75〜500/三相75〜2000kVA | 6ヶ月 |
| 油入・トップランナー適用外品 | 全容量 | 7ヶ月 |
| 油入・Superアモルファス | 全容量 | 8ヶ月 |
| モールド・受注生産品(SuperトップランナーⅢ) | 全容量 | 6ヶ月 |
| モールド・Superアモルファス | 全容量 | 10ヶ月 |
| H種乾式変圧器 | 単相10〜300/三相20〜300kVA | 4.5ヶ月 |
| スコット変圧器 | ― | 5ヶ月 |
| 特別高圧変圧器 | ― | 10ヶ月 |
| タイトランス | ― | 9ヶ月 |
出典:日立産機システム「配電用変圧器 標準納期見直しのご連絡(第23報)」2026年2月12日時点/通知2026年3月2日 ※SuperトップランナーⅡ(現行=2014基準品)は受注締切済み
ピークからの改善幅(第21報 → 第23報)
同じ資料の3ヶ月前の版と比べると、駆け込み需要の解消が数字で確認できます。
| 機種 | 2025年11月5日時点 | 2026年2月12日時点 | 短縮 |
|---|---|---|---|
| 油入 見込生産品(全容量) | 8ヶ月 | 5〜6ヶ月 | ▲2〜3ヶ月 |
| 油入 受注生産品 単相10〜300kVA | 10ヶ月 | 5.5〜6ヶ月 | ▲4〜4.5ヶ月 |
| 油入 受注生産品 単相500kVA | 11ヶ月 | 6ヶ月 | ▲5ヶ月 |
| 油入 受注生産品 三相750〜2000kVA | 9ヶ月 | 6ヶ月 | ▲3ヶ月 |
| 油入 Superアモルファス | 12ヶ月 | 8ヶ月 | ▲4ヶ月 |
| モールド 受注生産品 | 9ヶ月 | 6ヶ月 | ▲3ヶ月 |
| 特別高圧変圧器 | 10ヶ月 | 10ヶ月 | 変化なし |
| H種乾式変圧器 | 4.5ヶ月 | 4.5ヶ月 | 変化なし |
出典:日立産機システム 標準納期のご連絡 第21報(2025年11月5日)/第23報(2026年2月12日時点)
駆け込み需要のピークは2025年11月で、これが「納期10か月」と言われていた時期の実態です。2026年3月31日の変圧器メーカー出荷期限を過ぎて需要が消化され、第三次品の標準納期は5〜6ヶ月まで戻りました。
ただし、2026年6〜8月付の公表納期表は各社とも確認できていません(日立産機は第23報、富士電機は第58報が最新)。上の数値は2026年2月時点のものです。また後述する中東情勢の影響が2026年3月以降に発生しているため、実案件では必ず個別に最新の納期回答を取ってください。
2026年の本当のボトルネックは、ケーブルと開閉器
ここからが今年に入って発生した新しい話です。2026年2月28日のホルムズ海峡の事実上の封鎖に端を発する原材料供給の混乱(いわゆるナフサショック)が、受変電設備の周辺部材を直撃しています。
🚨 変圧器より先に詰まる可能性がある部材
| 高圧ケーブル 6600V CV/CVT |
SFCC(旧SWCC・古河ブランド)は新規引合いの納期対応を2026年10月以降と案内(2026年4月20日)。「契約済件名への製品供給を最優先」。 |
| KIP電線 JP電線 |
フジクラ・ダイヤケーブルが一時販売中止(2026年6月10日)。キュービクル内配線の標準材。 |
| LBS 限流ヒューズ付 負荷開閉器 |
エナジーサポート PFS-201M-A/PFS-205M-A 系列は「現状納期:未定」(2026年1月)。「昨今の需要増加により生産が逼迫」。 |
| VCB 高圧真空遮断器 |
富士電機 36kV(HS2530系)は7ヶ月→12ヶ月に悪化(2026年1月15日→3月12日)。24kV品も7〜8ヶ月→8〜9ヶ月。 |
| 指定色・準標準色 塗装 |
日東工業・内外電機・テンパール工業が一時受注停止(2026年3〜4月)。日東工業は2026年5月に再開、7月22日付で標準製作日数+4〜6日に短縮。ただし「再度受注停止や納期変更の可能性」も併記。 |
工程管理上の意味は大きい。変圧器が5〜6ヶ月で入っても、高圧ケーブルが2026年10月以降、LBSが納期未定なら、クリティカルパスはそちらに移ります。受変電設備の更新工事では、変圧器と同時にケーブル・LBS・VCBの手配に着手してください。
盤メーカー3社の切替スケジュールには大きな差がある
第三次対応キュービクルをいつから作れるかは、盤メーカーによってまるで違います。
| 盤メーカー | 新型(第三次対応)受注開始 | 新型 生産・出荷開始 | 情報の日付 |
|---|---|---|---|
| 内外電機 | 2025年7月1日〜 | 2026年1月〜 | 2025年5月 |
| 日東工業 | 2025年10月〜 | 2026年5月〜 | 2026年1月(改5) |
| 河村電器産業 | 2026年8月〜 | 2026年10月〜 | 2025年4月(S20404) |
各社の公表資料より/東和電機工業は公開情報なし
つまり2026年8月時点で、内外電機と日東工業はすでに第三次対応キュービクルの生産フェーズに入っています。一方、河村電器産業は公表ベースでは今月が受注開始、製作開始が10月。納期最優先の案件では、盤メーカーの選択そのものが数ヶ月を左右します。
河村電器産業のスケジュールの出典は2025年4月付の文書で、2026年に入ってからの改訂版は公表ベースでは確認できませんでした。メーカーが商流内でのみ改訂版を配布している可能性があるため、実案件では代理店経由で必ず最新スケジュールを確認してください。
なお日東工業の案内はBQ-2025-02 改5(2026年1月発行)が最新で、同社の製品NEWS配信を2026年7月分まで確認した範囲で改6は存在しません。
キュービクル一式では、結局どれくらいかかるのか
2026年8月時点の目安(各種情報から編集部が整理)
- 前工程(見積 → 納入仕様書 → 収納確認):1〜2ヶ月
日東工業は「2026トップランナー変圧器搭載キュービクルの設計および収納確認等には納期を頂く場合があります」と注記 - 機器製作・出荷:5〜7ヶ月
VCB搭載盤や特殊仕様はさらに延びる - 停電日程の調整:数ヶ月
電力会社・保安管理者・テナント調整。停電作業自体は半日(6〜8時間)程度でも、日程確保に時間がかかる - 合計(発注検討 → 受電):8ヶ月〜1年
「2〜3ヶ月に戻る」という2026年2月時点の観測もありましたが、2026年8月時点ではまだ実現していないと考えるべきです。
納期を縮める8つの手だて
| 手だて | 効果と根拠 |
|---|---|
| 見込生産品(標準品)を選ぶ | 日立産機の油入は 見込生産品5ヶ月/受注生産品5.5〜6ヶ月/適用外品7ヶ月。最大2ヶ月短縮。 |
| アモルファス機を避ける | Superアモルファスは油入8ヶ月・モールド10ヶ月で、標準品より2〜4ヶ月長い。省エネ性と納期のトレードオフ。 |
| H種乾式変圧器を検討する | 4.5ヶ月と最短。かつトップランナー制度の法令上の除外機種(第3回・表①参照)。 |
| 標準色を選ぶ | 指定色・準標準色は標準製作日数+4〜6日、かつ受注停止リスクあり(日東工業 2026年7月22日)。 |
| 盤メーカーを選ぶ | 内外電機(2026年1月〜生産)・日東工業(2026年5月〜出荷)は生産フェーズ入り済み。 |
| ケーブル・LBS・VCBを先行手配 | 2026年のクリティカルパスはここ。変圧器の発注と同時に着手する。 |
| 停電日程を並行で押さえる | 機器発注と並行できる唯一の短縮余地。土日・年末年始・GWは競合するため早期打診が必須。 |
| 既設・中古の活用を検討する | 既設機の使用に法的規制はない(JEMA FAQ)。中古キュービクルなら本体1ヶ月・全体3〜4ヶ月という情報も。 |
表⑤ 納期短縮の実務的な選択肢
海外製という選択肢が現実に出てきた
2026年に入って、海外製の第三次対応変圧器が本格的に日本市場へ入ってきています。
- DMM.com(DMMエナジー)× JSHP Transformer:2026年2月16日に「トップランナー3対応 高効率変圧器」の販売開始を発表。「既存のキュービクルや盤内への設置を考慮したサイズ設計」を訴求しており、国産第三次品の大型化問題への対抗軸を打ち出しています。
- WINコーポレーション:JSHP配電用トップランナーⅢ変圧器を2025年9月1日受注開始・2026年4月出荷開始。単相・三相 50〜2000kVA。
- GBP株式会社:自社製造の油入・モールドで「最短2か月以内で納品」を標榜(2025年9月)。
制度面では問題ありません。トップランナー基準は「製造事業者及び輸入業者」に課される義務なので、輸入品も第三次判断基準を満たしていれば適法に流通します(第1回参照)。ただし納期実績の第三者検証、保守部品の供給体制、アフターサービス、電力会社との協議実績については公開情報が乏しく、確認できませんでした。採用を検討するなら、この4点を必ず個別に確認してください。
💼 この回が実務でこう生きる
- 「変圧器の納期は1年」という2025年秋の情報を、2026年の案件にそのまま持ち込まない。
- ケーブル・LBS・VCBという2026年固有のボトルネックを、変圧器と同時に手配できる。
- 盤メーカーの切替フェーズの差を踏まえて、納期優先の案件で発注先を選べる。
- 標準品・標準色・H種乾式といった納期を縮める仕様の選択肢を提示できる。
- 停電日程の調整を機器発注と並行で進め、全体工期を圧縮できる。
📚 出典・参考
- 日立産機システム|配電用変圧器 標準納期見直しのご連絡 第23報(2026年2月12日時点)
- 日立産機システム|同 第21報(2025年11月5日)
- 富士電機機器制御|弊社商品の納期状況について 第58報(2026年3月12日)
- SFCC|弊社ブランド高圧製品の納期に関するお知らせ(2026年4月20日)
- エナジーサポート|限流ヒューズ付負荷開閉器の納期に関するお知らせ(2026年1月)
- 杉本電機産業|中東情勢緊迫化による影響 一覧(2026年7月13日版)
- 日東工業|中東情勢に伴う指定色塗装製品の対応納期変更について(2026年7月22日)
- 内外電機|トップランナー変圧器2026対応キュービクルについてのご案内(2025年5月)
- DMM.com|JSHP製 トップランナー3対応 高効率変圧器 販売開始(2026年2月16日)
📖 連載「2026トップランナー変圧器」全8回
- 第1回|2026年4月に何が変わった?|制度の全体像と「ユーザーに交換義務はない」の本当の意味
- 第2回|基準エネルギー消費効率の読み方|E=Wi+(m/100)²×Wc を自分で計算する
- 第3回|対象範囲と除外機種|「この変圧器はトップランナーの対象?」を判定する
- 第4回|キュービクルに入らない|寸法・質量の増加をメーカー公表値で確認する
- 第5回|省エネ機なのに発熱が増える|換気設計とアモルファス鉄心の落とし穴
- 第6回|電気代はいくら下がる?|損失低減の試算・価格上昇・補助金の使い方 (この記事)
- 第7回|仕様書・見積書の書き方|「トップランナー基準適合品」では足りない
- 第8回|更新(リプレース)の判断|いつ・どれを・どう替えるか【連載まとめ】
▶ あわせて読みたい:第三次トップランナー規格と切り替えに伴う注意点について詳しく解説





