【そうだったのか小ネタ⑥】なぜ高圧は6,600Vなのか ― 7,000Vの壁まで、残り100V
キュービクルの銘板にも、図面の系統図にも、当たり前のように並ぶ6,600V。なぜ6,000Vでも7,000Vでもなく、この半端な数字なのか。調べていくと、由来そのものは霧の中でした。ただしその代わり、6,600Vという値が、法令上の「高圧」にぎりぎり収まっているという、もっと実務的な仕掛けが見えてきます。
結論
高圧の上限は7,000V。6,600Vの最大使用電圧は6,900Vで、7,000Vをわずか100V下回ります。この6,900Vという値から、耐圧試験の10,350Vまで一本の計算でつながります。
- 最大使用電圧 = 公称電圧 × 1.15 ÷ 1.1。6,600Vなら6,900V
- 6,900V ≦ 7,000V。だから6.6kV系統は「高圧」に収まる
- 耐圧試験の10,350Vは、6,900V × 1.5 という掛け算
- 「なぜ6,600なのか」を記録した資料は、見つかっていない
この連載でここまで扱ってきた数字は、たいてい「由来をたどると、ある一点にたどり着く」ものでした。0.1MΩは1mAに、電線の太さは素線の寸法に。
6,600Vは、少し様子が違います。由来をたどると、途中で道が消えます。その代わり、この数字がいまどう効いているかのほうは、驚くほどきれいに説明がつきます。今回は、そちらから入っていきます。
ハリタ
ハリタまず、低圧と高圧の境目を確認する
電気設備技術基準では、電圧を三つに区分しています。
| 区分 | 交流 | 直流 |
|---|---|---|
| 低圧 | 600V以下 | 750V以下 |
| 高圧 | 低圧を超え、7,000V以下 | |
| 特別高圧 | 7,000Vを超えるもの | |
ここで押さえておきたいのは、7,000Vという上限が、意外と近いということです。6,600Vとの差は400V。1割にも届きません。
⚠️ 直流1,500Vの話は、まだ一般化していない
「直流の低圧が1,500Vまで広がった」という話を耳にすることがありますが、省令の電圧区分そのものは、いまも直流750V以下のままです。2024年10月の解釈改正で直流750V超〜1,500V以下に触れているのは、電気自動車の急速充電設備と充電ケーブルに関する保安要件の例示です。区分の定義が変わったわけではないので、一般の直流回路にそのまま当てはめないでください。
- 低圧は交流600V以下・直流750V以下
- 高圧は7,000V以下、それを超えると特別高圧
- 6,600Vと上限7,000Vの差は400Vしかない
- 直流1,500VはEV充電設備に限った話。区分の改正ではない
6,600Vが高圧に収まるのは、100Vの余裕
ここからが本題です。電路にかかる電圧は、公称電圧のままではありません。
系統の電圧は、負荷の状況や送電端からの距離で常に揺れます。そのため、法令では最大使用電圧という値を別に定めて、それを基準に絶縁の要求を決めています。1,000Vを超える電路では、次の式で求めます。
💡 最大使用電圧の式
最大使用電圧 = 公称電圧 × 1.15 ÷ 1.1
6,600Vに当てはめると、6,600 × 1.15 ÷ 1.1 = 6,900V。つまり6.6kV系統の絶縁は、6,900Vを前提に設計されています。
そして、この6,900Vという値が効いてきます。
6,900V ≦ 7,000V。高圧の上限を、わずか100V下回っています。もし公称電圧が6,700Vだったら、最大使用電圧は約7,004Vとなり、7,000Vをはみ出します。6,600Vという値は、高圧という区分の中に収まる、ほぼ上限いっぱいの選択だということです。
- 絶縁の基準になるのは公称電圧ではなく最大使用電圧
- 6,600V の最大使用電圧は 6,900V
- 7,000Vの上限まで、余裕は100Vしかない
- 6.6kVは高圧の枠のほぼ上限いっぱいに位置している
では、なぜ6,600という数字なのか
📖 ここからは推し量り
よく語られる二つの説明は、どちらも一次資料での裏付けが取れませんでした。
では、そもそもなぜ6,600Vだったのか。ここから先は、はっきり分かりません。
いちばん広く流布しているのは、「末端で6,000Vを確保するために、送出側を1割増しの6,600Vにした」という説明です。複数の解説で見かけますし、話としてよくできています。ただし、出典を示している資料が見当たりません。電気学会・経済産業省・電力会社の公式資料でこの説明を確認することはできませんでした。
もうひとつは、数列に注目する見方です。日本の標準電圧は3.3/6.6/11/22/33/66/77/110/154/187/220/275kVと並びますが、これらはすべて1.1kVの倍数になっています(500kVだけが例外)。英国が11kV・33kV・66kV・132kVという体系を使っていることとの関係も指摘されますが、日本の体系がそこから来たと記した資料は見つかりませんでした。
そして、いちばん知りたい「誰が、いつ、どういう議論で6,600Vに決めたのか」を記録した資料には、たどり着けませんでした。数字は毎日使っているのに、決めた場面だけが抜け落ちている。この連載では、もう何度目かの行き止まりです。
耐圧試験の10,350Vは、どこから出てくるか
ここまで来ると、竣工検査でおなじみのあの数字も、自分で組み立てられるようになります。
高圧電路の絶縁耐力試験では、最大使用電圧の1.5倍の電圧を10分間加えます。6.6kV系統に当てはめると——
💡 10,350Vが出てくるまで
6,600V × 1.15 ÷ 1.1 = 6,900V(最大使用電圧)
6,900V × 1.5 = 10,350V(交流の試験電圧)
直流で行う場合は、この2倍の20,700Vになります。ケーブルの静電容量が大きく、交流では試験用電源の容量が足りない場合に選ばれる方法です。
10,350という数字は、覚えるものではありません。6,600から二回掛け算するだけで出てきます。そして、その出発点にあるのが、区分の上限まで100Vしか残っていない6,900Vという値です。
- 絶縁耐力試験は最大使用電圧の1.5倍を10分間
- 6,900V × 1.5 = 10,350V。暗記ではなく計算で出る
- 直流で行う場合はその2倍の20,700V
3.3kVから6.6kVへ、その先へは進まない
いまでこそ高圧配電といえば6.6kVですが、かつては3.3kVが主流でした。電気学会の雑誌には、1961年(昭和36年)に「高圧配電線の6kV化」という論文が載っています。1960年前後は、3.3kVから6kV級への昇圧が現実の技術課題だったということです。
理由は単純で、電圧を倍にすれば、同じ電力を半分の電流で送れるからです。電線の損失は電流の2乗で効くので、昇圧の効果は大きくなります。
では、そこからさらに20kV級へ——という話が、なぜ進まないのか。
⚠️ ここから先は、確かなことが書けません
20kV級配電への移行が進まない理由については、非接地方式による地絡電流の扱いや、柱上変圧器が大量に分散配置されている既存設備の規模を挙げる解説があります。ただし今回の調査では、出典の明確な資料にたどり着けませんでした。納得しやすい説明ではありますが、当サイトとして裏付けを取れていないため、そういう見方があるという以上のことは書けません。
- かつての高圧配電は3.3kVが主流だった
- 1960年前後に6kV級への昇圧が進められた
- 電流が半分になれば、損失は4分の1になる
- 20kV級へ進まない理由は、裏付けのある資料を確認できず
高圧受電になるのは、どこからか
設計の入口で必ず問われるのが、低圧受電で足りるか、高圧受電が要るかです。目安は契約電力で決まります。
| 契約電力 | 受電方式 | 設備の姿 |
|---|---|---|
| 50kW未満 | 低圧受電 | 分電盤。引込は100V/200V |
| 50kW以上〜2,000kW未満 | 高圧受電(6.6kV) | キュービクル。主任技術者が必要 |
| 2,000kW以上 | 原則、特別高圧受電 | 受変電設備の規模が一段上がる |
この50kWという線をまたぐと、話が一気に変わります。キュービクルの設置スペース、電気主任技術者の選任、年次点検のための停電——建物の計画そのものに影響します。契約電力49kWと51kWでは、必要になるものがまったく違うということです。
💡 境目の案件で確認しておくこと
- 将来の増設計画——EV充電器、空調更新、生産設備の追加。数年内に50kWを超えるなら、最初から高圧で考えます。
- キュービクルの置き場所——保有距離が要ります。建築の外構計画と同時に決めてください。
- 年次点検の停電——高圧受電になると、年1回の停電が発生します。24時間稼働の用途では、この一点が方式選定を左右します。
- 主任技術者——選任または外部委託が必要になります。運用コストとして効いてきます。
6,600Vという数字の由来は分かりませんでした。それでも、その値が7,000Vという区分の上限にどう収まっているか、そこから耐圧試験の電圧がどう出てくるか、そして受電方式の分かれ目がどこにあるか——効いている部分は、すべて追いかけられます。
由来が霧の中でも、実務は前に進みます。分からないことを分からないまま置いておけるのも、技術の扱い方のひとつだと思っています。
- 50kW以上〜2,000kW未満が高圧受電の目安
- 50kWの線をまたぐと、建物の計画そのものが変わる
- 境目の案件では、将来の増設まで含めて判断する
よくある質問
なぜ高圧は6,600Vなのですか?
「末端で6,000Vを確保するため1割増しにした」という説明が広く流布していますが、出典ははっきりしません。確かなのは、6,600Vの最大使用電圧が6,900Vで、高圧の上限7,000Vをわずか100V下回っているという点です。
最大使用電圧とは何ですか?
系統の電圧は負荷や距離で揺れるため、絶縁の要求はその変動を織り込んだ値で決めます。それが最大使用電圧です。1,000Vを超える電路では、公称電圧×1.15÷1.1で求めます。6,600Vなら6,900Vになります。
耐圧試験の10,350Vはどこから来ますか?
最大使用電圧6,900Vの1.5倍です。高圧電路の絶縁耐力試験では、最大使用電圧の1.5倍を10分間加えます。直流で行う場合はさらに2倍の20,700Vになります。ケーブルの静電容量が大きく、交流では試験電源の容量が不足する場合に直流が選ばれます。
低圧と高圧の境目はどこですか?
低圧は交流600V以下・直流750V以下、高圧はそれを超えて7,000V以下、7,000Vを超えると特別高圧です。交流と直流で低圧の上限が違う点に注意してください。高圧と特別高圧の境目は、交流も直流も7,000Vです。
直流の低圧が1,500Vになったと聞きましたが本当ですか?
省令の電圧区分そのものは、いまも直流750V以下のままです。2024年10月の電技解釈の改正で直流750V超〜1,500V以下に触れているのは、電気自動車の急速充電設備と充電ケーブルに関する保安要件の例示です。区分の定義が変わったわけではないため、一般の直流回路にそのまま当てはめないでください。
高圧受電が必要になるのは何kWからですか?
契約電力50kW以上が目安です。50kW未満は低圧受電、50kW以上2,000kW未満が高圧受電、2,000kW以上は原則として特別高圧受電になります。境目の案件では、将来の増設計画まで含めて判断してください。あとから高圧化すると、受電設備を丸ごと造ることになります。
なぜ20kV級の配電に移行しないのですか?
非接地方式による地絡電流の扱いや、柱上変圧器が大量に分散配置されている既存設備の規模を理由に挙げる解説がありますが、今回の調査では出典の明確な資料にたどり着けませんでした。納得しやすい説明ではあるものの、裏付けが取れていないため、そういう見方があるという以上のことは言えません。
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