資材の値上げ|2026年の実施状況と先行発注の判断 ― メーカー49社の公式情報から
こんにちは、HARITAの設計室です。2026年に入ってから、電気設備の資材はほぼ全分野で値上げが続いています。見積を出し直すたびに単価が変わる、承認をもらった頃には旧価格の期限が切れている ― そんな状況が現場で起きています。
この記事は、メーカー49社の公式サイトに掲載された一次情報だけを集めて、いま何がどれだけ上がっているのか、これから何が上がるのか、そして値上げ前の先行発注が本当に効くのかを整理したものです。数値の出典はすべて各メーカーの公式案内にリンクしています。
銅建値は2年で1.7倍 ― 値上げの震源
49社のほぼすべてが、改定理由に「原材料価格の高騰」を挙げています。国内電気銅建値は2024年8月の136.5万円/tから、2026年8月には238万円/tへ。2年で約1.7倍(+74%)です。LME価格で見ても、2024年8月を100とした指数は銅151・アルミ135(2026年7月時点)。
銅は電線・ケーブルだけの材料ではありません。盤内の配線、遮断器の接点、変圧器の巻線、進相コンデンサ。電気設備のほとんどの部品に入っています。だから照明から自火報まで一斉に上がる、という構図です。
どの分野が、どれだけ上がったか
| 分野 | 改定率のレンジ | 特徴 |
|---|---|---|
| 電線・ケーブル | 4〜8% | 銅建値に連動。改定の頻度が高い |
| 照明器具 | 5〜70% | 器具本体は10〜15%。直管LEDは約30%、補修部品は約70% |
| 盤・分電盤 | 9〜35% | 住宅用分電盤・ブレーカが20〜35%と大きい |
| 受配電・制御機器 | 7〜80% | 電磁開閉器の+80%が突出 |
| 弱電・防災・通信 | 1〜100% | 自火報の感知器10〜50%、消火設備は最大100% |
目を引くのは盤部品です。三菱電機は電磁開閉器を+80%、日立産機システムは低圧開閉器を60%。盤メーカーの中立電機が「電気機器メーカー各社から+20〜80%の改定要求を受けた」と公表しているのは、この波及です。盤の見積が読みにくくなっている原因はここにあります。
これから実施される改定
- 2026年9月1日 受注登録分〜:コイズミ照明「あかり専科」平均約11.5%
- 2026年10月1日 納品分〜:パナソニックEWネットワークス ネットワーク機器全般 約15〜30%
- 2026年11月2日 受注登録分〜:コイズミ照明「Lighting PRO・waybee」平均約10.5%
ネットワーク機器の15〜30%は、スイッチングハブや無線APだけでなく、防犯カメラ・入退室・BASのインフラに効いてきます。弱電の見積を持っている案件は早めに確認したほうがよさそうです。
見落としやすいのは改定率より「起算点」
値上げの案内文を読むときに一番大事なのは、改定率ではなく何をもって新価格になるかです。同じ「2026年7月1日から」でも、社によって意味がまったく違います。
- 受注分(三菱電機、日立産機システム、河村電器産業 ほか)― 注文を受けた日
- 出荷分(三菱電機照明、遠藤照明、大垣電機 ほか)― 工場から出た日
- 納品分(パナソニックEWネットワークス、GSユアサ ほか)― 現場に納まった日
- 見積分(ケアコム、共立電機製作所 ほか)― 見積書を出した日
「受注分」なら早く発注すれば旧価格を取れます。しかし「出荷分」「納品分」だと、発注を急いでも納期が実施日を越えれば新価格です。案内文の1行を読み違えると、見積と実際の請求が食い違います。
さらに厳しい「納期を越えたら新価格」条項
2026年の改定で目立つのが、受注が間に合っても、納期が一定日を越えると新価格になるという条件です。公式案内で確認できたのは次の3社。
- 三菱電機(配電制御機器):2026年6月30日までの受注でも、納期が2026年12月1日を超える場合は新価格
- 日立産機システム:2026年6月1日までの注文でも、2026年9月1日納期を超える場合は新価格
- ニチコン:2026年7月15日までの受注でも、2026年10月1日以降の納品分は新価格
これは実質的に駆け込み発注封じです。長納期品ほど、先に発注しても旧価格が適用されない仕組みになっています。
駆け込み発注が効かないもう一つの理由 ― 納期の壁
電線メーカー4社が公表している概算納期を見ると、品目による差が極端です。
| 品目 | 概算納期 |
|---|---|
| VVF・EM-EEF | 約1ヶ月 |
| IV・HIV、低圧CV・CVT | 即納〜2.5ヶ月 |
| 高圧CV(ETタイプ) | 3〜5ヶ月 |
| 高圧CV(EEタイプ) | 4〜9ヶ月 |
高圧ケーブルは、いま発注しても納まるのは半年前後先です。先ほどの「納期を越えたら新価格」条項と組み合わせると、長納期品ほど旧価格を取りにいけない構造になります。
逆に、低圧CV・IV・VVFのように1ヶ月前後で入る品目は、実施日の前に発注すれば旧価格を取れる可能性が高い。先行発注が効くのは短納期品、というのが2026年の実感です。
実務としてどう動くか
- 案内文の起算点を確認する(受注/出荷/納品/見積のどれか)
- 「納期を越えたら新価格」条項の有無を確認する
- 必要日から逆算して、発注が実施日に間に合うか確認する
- 間に合わないなら、旧価格を狙うより納期優先に切り替える(ETタイプへの変更、在庫品への振替など)
- 客先への納期回答は、メーカー公表の概算納期を根拠に幅で答える
一覧とツール
49社の改定率・実施時期・公式案内へのリンクは、こちらのページにまとめています。実施月のカレンダー、電線の納期早見表、銅建値の推移も同じページで確認できます。毎月見直して更新しています。
「この日に必要なら、いつまでに発注すればいいか」は、資材の発注リミット逆算ツール(セコサポ)で出せます。品目とメーカーを選ぶと、上の概算納期をもとに発注期限を日付で返します。
おわりに
値上げそのものは止められませんが、起算点と納期を押さえておけば、意味のない駆け込みと、間に合わない発注は避けられます。とくに「納期を越えたら新価格」条項は見落としやすいので、長納期品の案件では必ず案内文の原文を確認してください。
なお、価格・納期は地域(支店・営業所)や販売代理店、取引条件によって異なります。適用価格と確定納期は、必ず各地域の担当者・販売代理店にご確認ください。




