PCB廃棄物 特集 処分費用の補助金

PCBの処分でいちばん相談が多いのは、期限そのものより「いくらかかるのか」です。金額が読めないと、社内で稟議も上がりません。

この記事では、PCB廃棄物の処分費用を軽くする制度を1本に整理します。結論から言うと、高濃度の軽減制度はJESCOの登録受付が終了し、いま新たに使えるのは低濃度の助成金です。低濃度には全国一律の制度がない——と言われていたのは2025年3月までの話で、2025年4月1日から助成金が始まっています

連載の第5回(処分手続きと費用)ではこの点を「低濃度には軽減制度がない」と書いていました。制度の新設にあわせて、この記事で内容を更新します。

結論|高濃度は受付終了、低濃度は助成金が使える

トピック①:高濃度と低濃度で制度が違う

PCBの補助制度は、高濃度か低濃度かでまったく別の仕組みです。まず自分の機器がどちらかを確定させてください(判定のしかたは第3回、高濃度と低濃度の違いは第2回)。

高濃度PCBと低濃度PCBで使える支援制度の違いを示した図
濃度が決まらないと、どの制度を見るべきかも決まりません。

低濃度PCB廃棄物の処分期限は2027年(令和9年)3月31日です。助成金の受付もこの日までですが、予算の範囲を超えた日に受付は停止されます。期限より先に枠が終わる可能性がある、という点が今回いちばんお伝えしたいところです。

高濃度PCB|中小企業者等の軽減制度と、受付終了の意味

トピック②:高濃度PCBの軽減制度

高濃度PCB廃棄物には、処分費用を大きく下げる中小企業者等の軽減制度がありました。

中小企業者等の軽減制度(環境省・JESCO)
  • 中小企業者(会社・個人事業主・中小企業団体等)および法人 収集運搬費用等および処分費用の70%を軽減
  • 個人 同じく95%を軽減
  • 対象 トランス類、コンデンサ類、PCB油類、安定器等・汚染物、保管容器
  • 財源 独立行政法人環境再生保全機構が運営するPCB廃棄物処理基金および国庫補助金
  • 申込 JESCOから案内があった方のみ受付

ただし、JESCOによる高濃度PCB廃棄物処理の登録受付は2025年(令和7年)10月15日をもって終了しています。これから新たに高濃度が見つかった場合、この制度に申し込むことはできません。

いま高濃度が見つかったら、まず報告
  • 使用中の自家用電気工作物 電気関係報告規則にしたがって、管轄の産業保安監督部へ届出
  • 廃棄物(使用をやめたもの) PCB特別措置法にしたがって、管轄の自治体へ届出

自己判断で保管を続けたり、処分業者を探し始めたりする前に、まず報告して指示を受けてください。

ここまでのポイント
  • 高濃度は中小企業者70%・個人95%の軽減制度。財源はPCB廃棄物処理基金と国庫補助金
  • 対象はトランス類・コンデンサ類・PCB油類・安定器等/汚染物・保管容器
  • 申込はJESCOから案内があった方のみ
  • JESCOの登録受付は2025年10月15日で終了している


低濃度PCB|2025年4月に始まった全国の助成金

トピック③:低濃度PCBの助成金

低濃度PCB廃棄物については、2025年(令和7年)4月1日から「低濃度PCB廃棄物処理支援事業」が始まりました。実施主体は公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団です。

制度の骨格
  • 対象者 中小企業者(会社・個人事業主・中小企業団体等)、常時使用する従業員100人以下の法人、個人など。業種ごとに資本金または従業員数の要件があります
  • 助成対象 分析費(試料採取・分析)と、処理費(収集・運搬、漏えい防止措置、処分)
  • 受付期間 2025年4月1日〜2027年3月31日。ただし予算の範囲を超えた日をもって受付を停止
低濃度PCB廃棄物処理支援事業の助成対象と助成率・限度額を示した図
助成率は2分の1。費目ごとに限度額が決まっています。

限度額は廃棄物の種類ごとに細かく決められています。ここに挙げたのは代表的な区分だけなので、自社の機器がどの区分にあたるかは「助成金交付申請の手引き」で確認してください。

ここまでのポイント
  • 制度名は「低濃度PCB廃棄物処理支援事業」。実施主体は産業廃棄物処理事業振興財団
  • 2025年4月1日開始。受付は2027年3月31日まで(予算の範囲を超えた日に停止)
  • 対象は中小企業者・個人事業主・中小企業団体等・従業員100人以下の法人など
  • 助成率は分析費・処理費とも2分の1。費目ごとに限度額がある

申請の順番|交付決定より先に動くと対象外

トピック④:申請の順番を間違えない

この制度でいちばん多い取りこぼしが、順番です。

助成金の申請から支払いまでの流れと、着手のタイミングを示した図
申請 → 交付決定 → 着手。この順番を崩すと助成されません。
交付決定前の実施は、助成されません

「交付決定通知書の発行よりも前に分析や処理を実施した場合、助成金の交付はできません」と明記されています。見積りを取るところまではよいのですが、実際の分析・収集運搬・処分に着手するのは交付決定を受けてからです。工期を組むときは、この待ち時間を先に見込んでおいてください。

ペン太ペン太
見積りが出たので、先に発注してから助成金を申請しようと思います。
はりたはりた
それは順番が逆なんだ。交付決定通知書が出る前に実施した分は、助成されない
ペン太ペン太
申請してから待つ必要があるんですか。
はりたはりた
そう。申請 → 交付決定 → 着手、の順。工期を組むときは、この待ち時間を先に見込んでおくこと。
問い合わせ先
  • 低濃度PCB助成金コールセンター 電話 098-995-7100(月〜金 10時〜12時/13時〜17時、祝日・年末年始を除く)
  • メール joseikin@sanpainet.or.jp
  • 公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団 低濃度PCB廃棄物処理支援事業
ここまでのポイント
  • 流れは 申請 → 交付決定通知 → 分析・処理 → 実績報告 → 交付額確定 → 支払い
  • 交付決定通知書の発行より前に実施したものは、助成の対象外
  • 迷ったら着手前にコールセンターへ確認する
  • 申請書類は「助成金交付申請の手引き」を見ながら作る


自治体の制度と、併用のルール

トピック⑤:自治体の制度と併用のルール

国の助成金とは別に、都道府県や市町村が独自の補助を設けていることがあります。ここで気をつけたいのが同じ費目を二重に受け取ることはできないという点です。

国の助成金と自治体の補助金の対象費目と併用の可否を示した図
分け方は「費目」。どちらでどれを見るかを先に整理します。

たとえば北海道の「低濃度PCB含有電気機器把握支援補助金」は分析のみが対象で、分析費については国の助成金と併用できません。一方で、国の助成金の処理費(収集・運搬費、処分費)とは併用できる形になっています。

自治体の制度は、こう探す

自治体名+低濃度PCB+補助」で検索するか、産業廃棄物の担当課(環境部局)に問い合わせるのが早道です。年度ごとに予算・要件が変わるので、前年度の情報をそのまま当てにしないでください。

ここまでのポイント
  • 同じ費目を国と自治体の両方から受け取ることはできない
  • 自治体側が分析費だけを対象にしている場合、処理費は国の助成金を使える
  • 対象費目と併用の可否は自治体ごとに違う
  • 管轄の自治体の窓口で、必ず先に確認する

期限から逆算した動き方

トピック⑥:期限から逆算した動き方
2027年3月31日の処分期限から逆算した動き方を示した図
枠が終わるほうが先に来る可能性があります。

分析に2〜4週間、見積りと契約に数週間〜数か月、そこから収集運搬・処分の搬入枠を押さえます。今回はさらに「助成金の申請 → 交付決定」の時間が前に乗るので、従来の逆算よりも早めに動く必要があります。

ペン太ペン太
うちは低濃度なので、費用の軽減制度はないと思っていました。
はりたはりた
以前はそうだった。でも2025年4月から、低濃度にも全国の助成金ができた
ペン太ペン太
高濃度の70%軽減みたいなものですか。
はりたはりた
率は2分の1で、費目ごとに限度額がある。それでも分析費・収集運搬費・処分費が対象だから、効きは小さくない。あと予算の範囲を超えた日に受付が止まるので、期限より先に枠が終わることもある。

処分そのものの流れは第5回に、委託先の探し方は付録の業者一覧にまとめてあります。


ケース別|こんなとき、どうするか

トピック⑦:ケース別|こんなとき、どうするか

現場で実際に出てくる形に並べ直しました。上から順に読む必要はありません。当てはまるものだけ拾ってください。

ケース別|こんなとき、どうするか
CASE 1キュービクルの更新で、古い変圧器が出てきた
まず濃度を確定させる。分析費から助成の対象になる。
分析は交付決定通知を受けてから実施します。先に分析してしまうと、その分析費は助成されません。更新工事の工程を組む前に、申請の時間を見込んでおきます。
CASE 2高濃度だとわかった
使用中か廃棄物かで、報告先が変わる。
使用中の自家用電気工作物なら電気関係報告規則により産業保安監督部へ、廃棄物ならPCB特措法により自治体へ届け出ます。JESCOの登録受付は2025年10月15日で終了しているため、まず報告して指示を受けてください。
CASE 3もう処理業者に発注してしまった
その分は助成の対象外になる。残りの費目で組み直す。
交付決定前に実施した費用は助成されません。ただしまだ着手していない費目(たとえば分析は済んでいるが収集運搬・処分はこれから)があれば、そこから申請できないか確認する価値はあります。
CASE 4自治体にも補助があると聞いた
同じ費目の重複はできない。対象費目を突き合わせる。
たとえば北海道の補助金は分析のみが対象で、分析費については国の助成金と併用できません。一方で国の助成金の処理費(収集・運搬費・処分費)とは併用できます
CASE 5複数の事業所に、少しずつ機器がある
まとめて出すほど、1台あたりの負担は下がる。
収集運搬費は距離と荷姿で決まります。グループ内・事業場内の対象機器を洗い出して一括で見積りを取ると、限度額の枠も使いやすくなります。

よくある質問

高濃度の軽減制度は、もう使えませんか?

JESCOによる高濃度PCB廃棄物処理の登録受付は2025年10月15日で終了しています。すでに登録済みで案内を受けている場合を除き、新規の申込はできません。新たに高濃度が見つかったときは、使用中なら産業保安監督部へ、廃棄物なら自治体へまず報告してください。

分析だけ先にしたいのですが、助成の対象になりますか?

分析費(試料採取・分析に要する経費)は助成対象で、助成率は2分の1、1検体あたり10,000円が上限です。ただし交付決定通知書を受け取ってから分析を実施してください。先に分析すると、その費用は対象外になります。

すでに処理業者へ発注してしまいました。もう無理でしょうか?

交付決定前に実施した費用は助成されません。ただし、まだ着手していない費目が残っていれば、そこから申請できる可能性があります。着手済みと未着手を切り分けて、コールセンターに確認してください。

自治体の補助と国の助成金は、両方もらえますか?

同じ費目を二重に受け取ることはできません。自治体側が分析費だけを対象にしている場合、処理費(収集・運搬費・処分費)は国の助成金を使う、といった組み合わせになります。対象費目と併用の可否は自治体ごとに違うので、必ず管轄の窓口で確認してください。

予算はいつまで残っていますか?

受付期間は2027年3月31日までですが、予算の範囲を超えた日をもって受付を停止すると明記されています。現時点の残り枠は公表されていないため、期限を待たずに早めに申請することをおすすめします。

機器がまだ使用中でも申請できますか?

使用中の機器は、まず電気関係報告規則にもとづく届出が必要です。そのうえで、更新して廃棄物になった段階から処分の話になります。更新工事とPCB処分は同じ計画に載せると、停電・搬出・据付をまとめられます(第4回)。


まとめ

トピック⑧:まとめ
ここまでのポイント
  • 高濃度は中小企業者70%・個人95%の軽減制度。ただしJESCOの登録受付は2025年10月15日で終了
  • いま高濃度が見つかったら、使用中なら産業保安監督部、廃棄物なら自治体へまず報告
  • 低濃度は2025年4月1日から「低濃度PCB廃棄物処理支援事業」が使える
  • 助成率は分析費・処理費とも2分の1。分析費は1検体あたり10,000円が上限
  • 交付決定通知書より前に実施した費用は対象外。順番を崩さない
  • 国と自治体で同じ費目の重複はできない。対象費目を突き合わせる
  • 受付は2027年3月31日まで。ただし予算の範囲を超えた日に停止する
この記事の前提

本記事は2026年8月20日時点で公開されている情報をもとに整理しています。助成率・限度額・受付状況は年度や予算の消化状況で変わります。申請の前に、必ず実施主体の最新の案内と「助成金交付申請の手引き」を確認してください。

あわせて読みたい|PCB廃棄物 連載(全6回)

参考にした情報
環境省 ポリ塩化ビフェニル(PCB)早期処理情報サイト「中小企業者等の軽減制度について」/同「PCB廃棄物処理等に係る支援制度」/同 低濃度PCB廃棄物早期処理情報サイト「低濃度PCB廃棄物処分について」/中小企業庁 パンフレット「低濃度PCB廃棄物の適正処理を支援します」(公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団)/北海道「低濃度PCB含有電気機器把握支援補助金」/川崎市「中小企業(個人事業主を含む)の低濃度PCB廃棄物処理の助成金制度について」(いずれも2026年8月20日確認)

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。