図面の見方・読み方 第5回連載の一覧 ›

電気の図面には、電気の記号ではなく建築や構造の言葉で書かれた部分があります。梁にあけるスリーブ、盤を入れる EPS、機器を固定する基礎とアンカー、そして耐震計算書。この 4 つは電気の図面でありながら、建築図・構造図との取り合いを知らないと読めません。この記事では、梁貫通の制限、開口の寸法、基礎図のアンカー指定、耐震計算書の 3 ステップの式を、図で分解します。

結論

取り合いはスリーブ・開口スペース・基礎・耐震計算書の 4 場面。梁貫通は径 D/3 以下・間隔 3φ 以上・柱から離すが目安、耐震計算書は地震力 → 転倒 → アンカー 1 本の力 → 許容値と比較の 3 ステップです。

  • スリーブはボイド(屋内)・ツバ付鋼管(止水)・打込み配管(CD 管)。コア抜きは鉄筋探査と承認がセット
  • EPS・ピット・ハト小屋・OA フロアの寸法は「搬入」と「保守」の 2 段階で読む
  • 「4-M16」はボルト 4 本。あと施工アンカーは接着系が引抜きに強い
  • K_S は置く階と耐震クラスで決まる(屋上 A 1.5、1 階 B 0.4)。W は運転時の重さ
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
スリーブ図・開口図・基礎図・耐震計算書の4つの場面と、それぞれの図面の書き方の例
電気の図面は 4 つの場面で建築図と出会います。順番はそのまま工事の順番でもあります。

電気の図面が建築図と出会う4つの場面

電気設備の図面には、電気の記号ではなく建築や構造の言葉で書かれた部分があります。梁にあける穴、盤を置くスペース、機器の基礎、そして耐震計算書。この 4 つは電気の図面でありながら、読むには建築図・構造図との取り合いを理解する必要があります。

場面 図面の書き方の例 読むときの相手
スリーブ図 φ100 ボイド、100A ツバ付鋼管、CD28 打込み 構造図(梁伏図・一般注記)
開口・スペース図 EPS 1200×600、ハト小屋、電気ピット W600×D400、OAフロア H100 建築図(平面図・矩計図)
基礎図 機器基礎 H=150、4-M16 ケミカルアンカー、捨てコン t50 構造図(スラブ配筋)・据付要領図
耐震計算書 K_H=1.5、F_H=30kN、R_b=8.1kN ≦ 許容 建築設備耐震設計・施工指針
「取り合い(納まり)」は、違う工種の部材がぶつかる場所をどう収めるか、という意味の現場用語です。

建築図そのものの読み方――GL・FL・SL・CH、通り芯、躯体――は用語編②「電気屋のための建築用語」にまとめてあります。この記事は、その先――電気の図面に出てくる建築側の指示を読む回です。

ここまでのポイント
  • 4 つの場面:スリーブ・開口スペース・基礎・耐震計算書
  • 相手は構造図(梁・配筋)と建築図(平面・矩計)
  • 順番は工事の順番。スリーブは躯体の前、基礎は据付の前

スリーブ図 ― 梁貫通の3つの制限と、スリーブの種類

梁貫通スリーブの3つの制限(径は梁せいの1/3以下、中心間隔は径の3倍以上、柱面から梁せい程度以上離す)を示した断面図
数字は RC 造でよく使われる目安です。実際の制限は構造図の一般注記に書かれ、超えるときは構造設計者の承認が要ります。

配管を梁に通すには、コンクリートを打つ前にスリーブ(穴の型)を入れておきます。梁は鉄筋で持っているので、穴をあけられる場所には制限があります。構造図の一般注記に必ず書かれる代表的な制限は 3 つです。

制限 よくある目安 意味
① 穴の径 梁せい D の 1/3 以下、梁の中央高さに 上下の主筋を避け、せん断力を受け持つ部分を残す
② 穴どうしの間隔 中心間隔は径の 3 倍以上 穴と穴の間のコンクリートを確保する
③ 柱からの距離 柱面から梁せい程度以上離す 梁端部はせん断力が大きく、穴をあけられない
目安を超える穴や、まとまった穴は、開口補強筋(穴のまわりを囲む鉄筋)を入れる指示が構造図に付きます。
スリーブの種類 図面の書き方 使う場所
ボイドスリーブ φ100 ボイド 紙管をコンクリートに打ち込み、あとで抜く。屋内の梁・壁・スラブ
ツバ付貫通スリーブ 100A ツバ付鋼管 鋼管にツバ(止水板)が付いたもの。外壁・地下の水が回る場所
打込み配管 CD28 打込み 合成樹脂可とう電線管(CD 管)をそのまま埋める。スラブ内の配線
区画貫通処理 防火区画貫通 ロックウール充填 認定工法 防火区画を通すときの穴の埋め方。認定番号を付記
打込み配管は PC 造(プレキャスト)では基本的にできません。工場で作った部材に、あとから穴をあける制限が厳しいためです。

⚠️ 「コア抜き」は最後の手段

スリーブを入れ忘れた穴を、あとからコア抜き(コアボーリング)であけることがあります。鉄筋を切る危険があるので、X 線や電磁波レーダーで鉄筋位置を探査し、構造設計者の承認を取ってから行います。図面に「コア抜き」が最初から書かれていたら、既存建物の改修で、鉄筋探査の項目があるかを確認します。防火区画を通すときの考え方は令8区画と共住区画の違いに書いています。

ここまでのポイント
  • 梁貫通の制限は「径 D/3 以下・間隔 3φ 以上・柱から D 程度以上」が目安。実際は一般注記
  • ボイド(屋内)、ツバ付鋼管(止水)、打込み配管(CD 管)、区画貫通処理
  • コア抜きは鉄筋探査と構造の承認がセット


開口・スペース図 ― EPS・ピット・ハト小屋・二重天井・OAフロア

盤や配線が入る場所は、建築図の中に電気のために確保されています。名前と寸法の読み方を並べます。

場所 図面の書き方 読むときの確認
EPS(電気配管シャフト) EPS 1200×600、扉 W700 幹線とラックが縦に通る部屋。扉幅より大きい盤は入らない
電気ピット・配線用ピット ピット W600×D400、蓋 鋼製 床下の配線溝。水が入る場所か、排水はあるか
ハト小屋 屋上 ハト小屋 W1500×D1000×H800 屋上へ配管を出すための小屋。防水の立上がりと貫通位置
二重天井・システム天井 CH 2600、天井内 400 天井裏の高さ。ラック・ダクト・照明器具の埋込み深さが入るか
OA フロア(フリーアクセスフロア) OA フロア H100 床下の高さ。配線の高さと、パネルの耐荷重
LGS(軽量鉄骨下地) LGS 65 型 壁の下地。盤やコンセントボックスを固定できる位置
エキスパンションジョイント(EXP.J) EXP.J 部 可とう配管、余長 300 建物のつなぎ目。地震でずれるので、配線に余長を取る
免震層 免震層 可とう電線管、クリアランス 600 免震建物の上下がずれる層。配線は動きに追従する納まり
寸法の数字は「入るか」を確かめるためのものです。盤の外形図(第④回の仕様欄)と突き合わせます。
ペン太ペン太
EPS の扉幅が 700 で、盤の幅が 700 だったら入りますか?
ハリタハリタ
入りません。扉枠の内法はもっと狭いし、盤には扉のハンドルや取っ手が出ています。搬入は「盤の幅+余裕」、据付は「盤の幅+保守スペース」。図面の寸法は 2 段階で読みます。
ペン太ペン太
保守スペースって、どれくらい?
ハリタハリタ
盤の扉が全開できて、人が立てる幅。前面 1m 程度が一つの目安で、キュービクルなら保安規程で点検スペースが決まります。図面に「保守スペース」の点線があれば、そこは物を置いてはいけない場所です。
ここまでのポイント
  • EPS・ピット・ハト小屋・二重天井・OA フロアは「電気のために確保された場所」
  • 寸法は「入るか(搬入)」と「使えるか(保守)」の 2 段階で読む
  • EXP.J・免震層は建物が動く場所。配線に余長と可とう管


基礎図 ― 機器基礎・アンカー・捨てコン

キュービクル・発電機・盤を床に固定するには機器基礎が要ります。基礎図には、基礎の寸法とアンカーボルトの指定が書かれています。

項目 図面の書き方 読むときの意味
基礎の高さ・寸法 H=150、機器外形+100 ずつ 床からの立上がり。水がかかる場所は高く(屋外 200〜300)
アンカーボルト 4-M16、埋込み L=300 本数と径、埋込み長さ。耐震計算書の R_b・Q_b と対応
あと施工アンカー M16 ケミカルアンカー(接着系)/金属拡張アンカー 既存の床にあとから打つ。接着系は引抜きに強い
定着力・許容引抜荷重 M16 短期許容 ○kN アンカーがコンクリートから抜けない力。メーカーの試験値
捨てコン(捨てコンクリート) 捨てコン t=50 地中の基礎の下に打つ、墨出しと均しのためのコンクリート
開口補強 スラブ開口 補強筋 D13 床に穴をあけたときに、まわりに入れる鉄筋
C 型チャンネル鋼 C-100×50×20×2.3 架台 機器を載せる鋼製の架台。屋上や盤の下に
「4-M16」は「M16 のボルトが 4 本」。「4-φ18」なら「直径 18mm の穴が 4 つ」で、ボルトではなく穴の指定です。

💡 基礎の高さは、水と点検で決まる

屋内の盤なら H=100〜150 で十分ですが、屋外のキュービクルは雨水の跳ね返りと積雪を考えて H=200〜300 にします。さらに基礎の高さは「扉を開けたときに下端が地面にぶつからないか」「点検口の高さが作業しやすいか」でも決まります。図面の H の数字は、構造ではなく使い勝手の数字です。

ここまでのポイント
  • 基礎図は「寸法」と「アンカー」の 2 つ。アンカーは耐震計算書と対応
  • 「4-M16」はボルト 4 本、「4-φ18」は穴 4 つ
  • あと施工アンカーは接着系(ケミカル)と金属拡張。引抜きに強いのは接着系


耐震計算書 ― 水平地震力・転倒モーメント・引抜力を読む

キュービクルの自由体図(重心・水平地震力F_H・重量W・重心高さh_G・ボルト間隔ℓ)と、水平地震力・転倒モーメント・アンカーボルト引抜力の式
式は 3 ステップです。計算書の数字を追うより、どの値がどこから来たかを図で押さえます。

耐震計算書は難しそうに見えますが、やっていることは 3 ステップです。①地震力を出す → ②転倒しようとする力を出す → ③アンカー 1 本にかかる力を出して、許容値と比べる。式は建築設備耐震設計・施工指針(日本建築センター)の考え方が元になっています。

記号 名前 どこから来るか
W 機器の重量 メーカーの仕様書。運転時(油・水を含む)の重さ
K_H 設計用水平震度 Z(地域係数 0.7〜1.0)× K_S(設計用標準震度:階とクラスで決まる)
F_H 設計用水平地震力 K_H × W。機器を横に押す力
F_V 設計用鉛直地震力 F_H の 1/2。機器を持ち上げる方向にも働くので、抵抗する自重が減る
h_G 重心の高さ 機器の重心から基礎面まで。背が高いほど転倒しやすい
ℓ、ℓ_G ボルト間隔、重心から支点までの距離 基礎図のアンカー位置。転倒の支点は、押される側と反対の縁
R_b、Q_b ボルト 1 本の引抜力、せん断力 許容値(アンカーの短期許容荷重)と比べて判定
計算書ソフトによって記号の書き方が少し違います(K_H を K_SH、R_b を P_t など)。意味は同じです。
設計用標準震度の表(上層階・中間階・1階地下階 × 耐震クラスS・A・B)
機器を置く階と耐震クラスで K_S が決まります。屋上の A クラスなら 1.5、つまり重量の 1.5 倍の力で横に押されると考えます。

計算書の最初にある K_S(設計用標準震度)は、上の表から引きます。屋上のキュービクルはクラス A で 1.5、1 階の盤はクラス B で 0.4――同じ機器でも置く場所で 4 倍近く違います。クラス S・A・B の決め方は耐震クラスS・A・Bの決め方にまとめています。

💡 計算例 ― 屋上のキュービクル(W=20kN、クラス A)

  1. K_H = Z 1.0 × K_S 1.5 = 1.5 → F_H = 1.5 × 20 = 30kN、F_V = 15kN
  2. 転倒モーメント = F_H × h_G = 30 × 1.0 = 30kN·m(重心高さ 1.0m)
  3. R_b = {30 × 1.0 − (20 − 15) × 0.8} ÷ (1.6 × 2) = 26 ÷ 3.2 = 約 8.1kN/本(ℓ=1.6m、ℓ_G=0.8m、引張側 2 本)
  4. Q_b = 30 ÷ 4 = 7.5kN/本(4 本)
  5. この 2 つを、M16 あと施工アンカーの短期許容引抜荷重・許容せん断荷重と比べて、下回っていれば OK

⚠️ 計算書の「W」が空のときの重さになっていないか

変圧器の油、発電機の冷却水、蓄電池の電解液――運転時の重さは、カタログの「本体質量」より重くなります。計算書の W が本体質量のままだと、地震力も引抜力も小さく出ます。W の出典(メーカー仕様書の「運転時質量」か)を確認するのが、耐震計算書を読むときの最初のチェックです。

ここまでのポイント
  • 耐震計算は「地震力 → 転倒 → アンカー 1 本の力 → 許容値と比較」の 3 ステップ
  • K_S は置く階と耐震クラスで決まる。屋上 A で 1.5、1 階 B で 0.4
  • W は運転時の重さ。h_G が高いほど、ℓ が狭いほど引抜力は大きい


実例 ― 基礎図と計算書の1行を読む

基礎図に「キュービクル基礎 H=200、機器外形+100、4-M16 ケミカルアンカー L=150、耐震クラス A(屋上)」、計算書に「K_H=1.5、F_H=30kN、R_b=8.1kN ≦ 許容 12kN OK」とあったら、こう読みます。

💡 読み下しと照合

  1. 屋上なので基礎は高め(200)。外形より 100 ずつ大きい基礎に、M16 の接着系アンカーを 4 本、150mm 埋め込む
  2. 屋上・クラス A → K_S 1.5。計算書の K_H=1.5 と一致しているか(Z=1.0 の地域か)
  3. F_H=30kN → W=20kN。この W が運転時質量か
  4. R_b=8.1kN が、M16 ケミカルアンカーの短期許容 12kN 以下 → OK。埋込み 150 で許容値が出ているか(埋込み長さで許容値が変わる)
  5. 基礎図の 4 本と、計算書の n=4・n_t=2 が一致しているか

建築との取り合いは、電気の図面の中で最も「他の人の図面」に依存する部分です。読めると、現場での手戻り――スリーブの入れ忘れ、搬入できない盤、抜けるアンカー――を図面の段階で止められます。次回は、非常用発電機・UPS・蓄電池の仕様書と系統図を読みます。

よくある質問

梁にあけられる穴の大きさに制限はありますか?

あります。RC 造では、穴の径は梁せいの 1/3 以下、穴どうしの中心間隔は径の 3 倍以上、柱面から梁せい程度以上離す、という目安がよく使われます。実際の制限は構造図の一般注記に書かれ、超える場合は構造設計者の承認と開口補強が必要です。

ボイドスリーブとツバ付スリーブの違いは何ですか?

ボイドスリーブは紙管をコンクリートに打ち込んで穴を作るもので、屋内の梁・壁・スラブに使います。ツバ付貫通スリーブは鋼管に止水板(ツバ)が付いたもので、外壁や地下など水が回る場所に使います。

耐震計算書の K_H とは何ですか?

設計用水平震度で、機器の重量の何倍の力で横に押されると考えるかを表す係数です。地域係数 Z(0.7〜1.0)と設計用標準震度 K_S(機器を置く階と耐震クラスで決まる)の積で、屋上のクラス A なら 1.5 程度になります。

アンカーボルトの引抜力はどう計算しますか?

水平地震力 F_H に重心高さ h_G を掛けた転倒モーメントから、自重による抵抗(W − F_V)× ℓ_G を引き、ボルト間隔 ℓ と引張側のボルト本数 n_t で割ります。R_b = {F_H × h_G − (W − F_V) × ℓ_G} ÷ (ℓ × n_t) が建築設備耐震設計・施工指針の考え方です。

「4-M16」と「4-φ18」はどう違いますか?

「4-M16」は M16(ねじの呼び径 16mm)のボルトが 4 本という意味です。「4-φ18」は直径 18mm の穴が 4 つという意味で、ボルトそのものではなく穴の指定です。M16 のボルトを通す穴が φ18 になります。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。