制御盤・動力盤の盤図の読み方|MC・THR・TLR・BS の機器記号、a接点・b接点、交互運転、盤の仕様欄(形状・扉・塗装・耐塩・JSIA)を分解する【図面の見方・読み方④】
動力盤の図面には、分電盤にはない 1 枚があります。展開接続図(シーケンス図)――MC・THR・BS の記号と a 接点・b 接点が並ぶ図です。さらに盤図の隅には形式・扉・塗装・耐塩・JSIA という仕様欄がある。この記事では、機器記号、接点の読み方、「交互運転」の一言の意味、そして仕様欄の 7 項目を図で分解します。
結論
動力盤の図面は単線結線図・展開接続図・仕様欄の 3 枚で読みます。展開接続図は主回路(MCCB→MC→THR→電動機)と制御回路(ON で入る→自己保持→OFF か THR で切れる)の 2 枚重ね、仕様欄は形式・寸法・扉・材質・塗装・設置環境・準拠規格の 7 項目です。
- 記号は JEM 1115 の文字記号(MC・THR・TLR・BS・COS)。器具番号(88・49・43)を併記する図面もある
- a 接点は動作で閉じる、b 接点は動作で開く。止める側は b 接点で直列
- 交互=入れ替え、連動=足りない・故障時にもう 1 台、台数制御=段階で増減
- 表示灯の色は国内慣習(赤=運転)と JIS(赤=危険)で逆のことがある。凡例で確認
動力盤の図面は「単線結線図・展開接続図・仕様欄」の3枚
動力盤・制御盤の図面は、分電盤より 1 枚多くあります。単線結線図(何を何台、どの遮断器で)に加えて、展開接続図(シーケンス図)――電動機をどんな条件で入れて切るか――があり、その外側に盤の仕様欄(形状・扉・塗装・耐塩)が付きます。前回までの遮断器・配線の読み方はそのまま使えるので、この記事では残りの 2 つを読みます。
| 図書 | 書いてあること | 読むときの入口 |
|---|---|---|
| 単線結線図(盤図) | 主幹・分岐の遮断器、電動機の容量、MC・THR の有無 | 第①回のブレーカー表記の読み方がそのまま使える |
| 展開接続図(シーケンス図) | 主回路と制御回路を展開して描いた接続 | 機器記号(MC・THR・BS…)と a 接点・b 接点 |
| 盤仕様欄・外形図 | 形式・寸法・扉・材質・塗装・設置環境・準拠規格 | 回路とは別に、盤の「箱」の指定を読む |
- 動力盤は「単線結線図・展開接続図・仕様欄」の 3 枚で読む
- 遮断器と配線の表記は第①②回のとおり
- 展開接続図は縦書き・横書きの両方がある
機器記号 ― MC・THR・TLR・BS・COS を読む
展開接続図の記号は、JEM 1115(配電盤・制御盤の文字記号)が元になっています。同じ器具に器具番号(JEM 1090)――MC は 88、THR は 49、切換スイッチは 43――を併記する事務所もあり、この 2 系統が混ざると難しく見えます。図面のどこかに凡例があるので、先に「この図面は文字記号か、器具番号か」を確かめます。
| 記号 | 名前 | 何をする器具か | 図面で気をつける点 |
|---|---|---|---|
| MC(88) | 電磁接触器 | コイルに電気を入れると主接点が閉じ、電動機が回る | MS と書いてあれば MC+THR のセット(電磁開閉器) |
| THR(49) | 熱動継電器 | 過負荷でバイメタルが曲がり、b 接点が開いて MC を切る | 設定値は電動機の定格電流。2E・3E リレーで代替する図面もある |
| TLR/TR | 限時継電器 | 設定時間後に接点が動く。Y-Δ の切替、順次起動に使う | オンディレイかオフディレイか、設定時間の秒数 |
| X/AX | 補助継電器 | 接点の数を増やす、信号を中継する | 接点番号(X1-a、X1-b)で回路をたどる |
| BS/PB | 押しボタンスイッチ | ON(a 接点)・OFF(b 接点)・非常停止 | OFF と非常停止は b 接点。押すと回路が切れる |
| COS/43 | 切換スイッチ | 手動/自動、現場/遠方の切替 | 位置ごとに接点表があり、どの位置で何が閉じるか |
| LS・61F・FS | 検出スイッチ | 位置・水位・流れを検出して接点を動かす | 61F は電極式のフロートレススイッチ。E1〜E3 の電極棒番号 |
| SL(RL・GL・WL・OL) | 表示灯 | 運転・停止・電源・故障を色で示す | 色の意味は次の見出しで |
⚠️ 表示灯の色は「国内の慣習」と「JIS(IEC)」で逆になることがある
国内の動力盤では長く 赤=運転、緑=停止 が使われてきました。一方、JIS C 0448(IEC 60073)は 赤=危険・非常、緑=正常・安全 です。同じ「赤」でも図面によって意味が逆なので、凡例の「RL=運転表示」のような一文を必ず確認します。
- 記号は JEM 1115 の文字記号。器具番号(88・49・43)を併記する図面もある
- MC は入・切、THR は過負荷保護、TLR は時間差、X は接点の中継
- 表示灯の色の意味は凡例で確認。国内慣習と JIS で逆のことがある
a 接点・b 接点 ― 展開接続図を上から下へたどる
展開接続図は、a 接点(メーク接点)=ふだん開いていて、動作すると閉じる、b 接点(ブレーク接点)=ふだん閉じていて、動作すると開く、この 2 つの組み合わせでできています。最初の図の制御回路を、上から下へたどってみます。
💡 制御回路を読む順番
- OFF(b) ふだん閉じている。押すと回路が切れて MC が落ちる
- ON(a) 押すと閉じて、MC のコイルに電気が流れる
- MC-a(自己保持) MC が入ると自分の a 接点が閉じ、ON から手を離しても回路が保たれる
- THR-b 過負荷で THR が動作すると開き、MC が落ちて電動機が止まる
- MC コイル ここに電気が届いている間だけ、主回路の MC が閉じている
この「ON で入る → 自分の接点で保つ → OFF か THR で切れる」が、動力盤の最小単位です。自己保持・インターロック・タイマーの回路パターンはシーケンス制御の基本回路で詳しく扱っているので、ここでは図面上でどう見えるかだけを押さえます。
| 図面の見え方 | 意味 | 読み方のコツ |
|---|---|---|
| 接点の脇に「MC」「X1」 | その器具が動作したときに動く接点 | コイルを探して、同じ名前の接点を全部たどる |
| 線番(1・2・3、R1・S1) | 導線の番号。端子台の番号と一致 | 盤内の実配線と図面を照合する手がかり |
| TB1-3、端子番号 | 端子台の何番か | 外部(現場の押しボタン・センサー)との境界 |
| 点線で囲まれた範囲 | 盤の外にある機器(現場側) | 盤屋の工事範囲と電気工事の範囲の境界 |
| 接点表(COS の欄) | 切換スイッチの位置ごとの接点の開閉 | 「手動」で閉じる接点、「自動」で閉じる接点を分けて読む |
ペン太
ハリタ
ペン太
ハリタ- a 接点=動作で閉じる、b 接点=動作で開く
- 「ON で入る → 自己保持 → OFF か THR で切れる」が最小単位
- 止める側(OFF・非常停止・THR)は b 接点で直列に並ぶ
交互運転・連動運転・台数制御 ― 図面の一言が回路を決める
ポンプやファンの盤図には、「交互運転」「連動運転」「台数制御」のような一言が書かれます。この一言が制御回路の複雑さを決めるので、意味を先に押さえます。
| 盤図の言葉 | 動き方 | 回路に増えるもの |
|---|---|---|
| 交互運転 | 起動のたびに No.1 と No.2 を入れ替え、運転時間をならす | 交互リレー(切替用の補助継電器・ラッチリレー) |
| 連動運転(並列運転) | 1 台で足りないとき、または 1 台が故障したとき、もう 1 台が起動する | 故障検出(THR-b・MC-b)から相手側へ渡す接点 |
| 台数制御 | 水位・圧力の段階に応じて運転台数を増減する | 段階ごとの検出(61F の電極、圧力スイッチ)と順序回路 |
| 手動/自動(COS) | 自動は水位・圧力で起動、手動はボタンで起動 | 切換スイッチの接点表 |
| 現場/遠方 | 盤の前で操作するか、監視室から操作するか | 遠方の端子台と、遠方側の表示・警報 |
- 交互=入れ替えて運転時間をならす、連動=足りない・故障のときにもう 1 台
- 台数制御=段階に応じて台数を増減
- 一言ごとに増える器具(交互リレー・故障接点・段階検出)を図面で探す
盤の仕様欄 ― 形式・扉・材質・塗装・耐塩・JSIA
盤図の隅に、回路とは関係のない項目が並んでいます。形式・寸法・扉・材質と板厚・塗装・設置環境・準拠規格。盤屋さんが見積と製作で最初に見るのはここです。
| 項目 | 書き方の例 | 読むときの意味 |
|---|---|---|
| 形式 | キャビネット形 自立/壁掛 | 床に置く自立形か、壁に掛ける壁掛形か。JSIA の構造区分 |
| 寸法 | W700×H1900×D400 | 幅・高さ・奥行(mm)。搬入経路(EPS の扉幅)と据付面積を先に確認 |
| 扉 | 片開き/両開き、前面保守 | 両開きは幅 800 を超えるあたりから。背面保守なら壁から離す |
| 材質・板厚 | SPCC t2.3、SUS304 t1.5 | 冷間圧延鋼板の厚さ。屋外や腐食環境はステンレスや溶融亜鉛めっき |
| 塗装 | マンセル 5Y7/1 半つや | 色は記号で指定する。既設盤と合わせる指示が多い |
| 設置環境 | 屋内/屋外、耐塩/重耐塩、IP 等級 | 海岸に近い地域は耐塩仕様(塗装の重ね・ステンレス金具)。屋外は防雨形 |
| 準拠規格 | JSIA 規格、JIS C 8480 | 日本配電制御システム工業会の構造・性能規格。キャビネット形分電盤は JIS C 8480 |
💡 傍記文字と DIN レール
仕様欄のほかに、盤図の器具のそばに小さな文字――傍記文字――があります。「予備」「将来」「別途」「客先支給」などで、盤屋さんが器具を付けるかどうかの指示です。器具の取付方法として DIN レール(35mm 幅のレール)の指定があれば、小形の継電器やタイマーはレールに並べる、と読めます。
- 仕様欄は 7 項目。盤の価格と納期はここで決まる
- 寸法は搬入経路と据付面積、扉は保守方向、材質と耐塩は設置環境で決まる
- 傍記文字(予備・別途・支給)は器具を付けるかどうかの指示
実例 ― ポンプ盤の1行を読む
盤図に「P-1・P-2 水中ポンプ 3.7kW ×2 MCCB 3P 30AF/30AT MS 2E 交互・連動運転 61F 自動/手動 屋外・耐塩」とあったら、こう読みます。
💡 読み下し
- 3.7kW の水中ポンプが 2 台。それぞれ MCCB 3P 30AF/30AT で保護(第①回)
- MS 2E 電磁接触器+過負荷・欠相保護。THR の代わりに 2E リレー
- 交互・連動 ふだんは交互に起動し、水位が高いときや故障時はもう 1 台が起動する
- 61F 自動/手動 電極式の水位検出で自動起動、COS で手動に切替できる
- 屋外・耐塩 盤は防雨形で、塗装・金具は耐塩仕様
ここまで読めたら、確かめることは 3 つです。30AT が 3.7kW の電動機(定格電流の目安 約 15A。始動電流を見込んで、遮断器は定格電流の 2〜3 倍程度まで大きく選べる)に対して適切か、61F の電極棒の本数と水位の段階が合っているか、耐塩仕様の範囲(盤本体だけか、外部の押しボタンまでか)が図面に書かれているか。次回は、盤を置く基礎と耐震計算書、建築との取り合い図を読みます。
よくある質問
MC と MS の違いは何ですか?
MC は電磁接触器で、コイルに電気を入れると主接点が閉じて電動機を回します。MS は電磁開閉器で、MC に熱動継電器(THR)を組み合わせて過負荷保護まで含めたものです。図面に MS とあれば MC+THR のセットと読みます。
a 接点と b 接点はどう違いますか?
a 接点(メーク接点)はふだん開いていて、動作すると閉じます。b 接点(ブレーク接点)はふだん閉じていて、動作すると開きます。OFF ボタン・非常停止・THR のように「止める」役目の接点は、壊れても止まる側に倒れるよう b 接点で直列に入れます。
交互運転と連動運転の違いは何ですか?
交互運転は起動のたびに No.1 と No.2 を入れ替えて運転時間をならす方式です。連動運転は 1 台で足りないとき、または 1 台が故障したときに、もう 1 台を起動する方式です。ポンプ 2 台の盤では両方を組み合わせるのが一般的です。
表示灯の赤は運転ですか、異常ですか?
図面によって違います。国内の動力盤では赤=運転、緑=停止の慣習が長く使われてきましたが、JIS C 0448(IEC 60073)では赤=危険・非常、緑=正常です。必ず図面の凡例で確認します。
耐塩仕様とは何ですか?
海岸に近い地域など塩分を含む空気で錆びやすい場所向けの盤の仕様です。塗装の重ね塗りやステンレス製の金具などで対策します。より厳しい環境向けに重耐塩仕様があります。盤の仕様欄の設置環境の項目に書かれます。
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