第2回のテーマは連用スイッチ(2連・3連)2灯の点滅です。1つの取付枠に複数のスイッチを並べるとき、現場のカギになるのが「渡り線」。第1回で身につけた複線化の3ルールに、この渡り線を足すだけで、事務所や住宅で一番多い「1か所で複数の照明を操作する」配線がスラスラ描けるようになります。

この記事でわかること

  • 連用スイッチ(2連・3連)の考え方と図記号
  • いちばんのキモ「渡り線」とは何か・なぜ使うのか
  • 2灯を個別に点滅させる複線図の描き方
  • 2灯を同時に点滅させる「送り配線」との違い

今回のキモ:非接地側(黒)は「渡り線」で隣のスイッチへ回す

スイッチが2つ3つ並んでも、電源からの黒(非接地側)は1本だけ持ってくればOK。あとは渡り線で隣のスイッチへ黒を分けます。第1回の3ルールに、これを足すだけです。

  1. は電源から各照明へ直行(送りで数珠つなぎ)
  2. は電源から1つ目のスイッチへ渡り線で隣のスイッチへ
  3. 各スイッチから、それぞれの照明へ帰り線
1. 単線図を読む2. 白を各照明へ(送り)3. 黒を1つ目のスイッチへ4. 渡り線で隣のスイッチへ5. 各帰り線

連載「配線結線方式の手順」(全11回予定)

第1回 片切スイッチの基本回路/第2回 連用スイッチと2灯の点滅(この記事)/第3回 3路スイッチ/第4回 4路スイッチ/第5回 パイロットランプ/第6回 ほたるスイッチ/第7回 自動点滅器・タイムスイッチ/第8回 人感センサー/第9回 リモコンスイッチ/第10回 多回路の一括制御/第11回 点滅方式の選び方・総集編

1. 連用スイッチを使う場面

連用スイッチとは、1つの取付枠(連用取付枠)に複数のスイッチをまとめて取り付けたものです。2つ並べれば2連、3つで3連。玄関で「ホール灯」と「ポーチ灯」、洗面所で「照明」と「換気扇」、リビングで「メイン照明」と「ダウンライト」——このように、1か所で別々の負荷を操作したい場所で使います。

スイッチだけでなく、同じ枠にコンセントやパイロットランプを組み合わせることもできます。今回は基本として、2灯を2つのスイッチで個別に点滅させる回路を題材にします。

2. 使用する機器と図記号

機器図記号・表記役割
連用取付枠スイッチやコンセントを1か所にまとめて固定する枠。2個用・3個用がある
片切スイッチ(連用)●(傍記 イ/ロ)枠に並べて取り付けるタンブラースイッチ。各スイッチが対応する照明を点滅
渡り線並んだスイッチ間で非接地側(黒)を隣へ渡す短い電線。現場で加工するか渡り線加工済み品を使う
VVF1.6-3C黒・白・赤の3心ケーブル。スイッチへ「非接地側+帰り2本」をまとめて送るのに使う

複線図では、スイッチと照明の傍記(イ・ロ)が対応関係を表します。スイッチ(イ)→ 照明(イ)スイッチ(ロ)→ 照明(ロ)という読み方です。

3. 単線図|2灯を個別に点滅させる

単線図|スイッチ(イ・ロ)で照明(イ・ロ)を個別点滅分電盤から1φ2W 100Vジョイントボックス照明(イ)照明(ロ)2連スイッチ

設計図面では、2つの照明(イ・ロ)と、傍記「イ・ロ」を書いた2連スイッチが1本線で描かれます。施工者はこれを複線図に読み替えますが、ポイントはスイッチへ向かうケーブルの心数。非接地側の黒1本+帰り2本で、スイッチへは3心(3C)が必要になります。

4. 今回のキモ「渡り線」とは

連用スイッチの「渡り線」と「送り」の仕組み照明(イ)照明(ロ)連用取付枠(2連スイッチ)接地側(白)=送り非接地側(黒)電源から渡り線(黒を隣へ)帰り線(イ)帰り線(ロ)

スイッチを点滅させるには、どのスイッチにも非接地側(黒)が届いていなければなりません。だからといって、電源からスイッチの数だけ黒線を引いてくるのは無駄。そこで、電源からの黒は1つ目のスイッチに1本だけ入れ、そこから渡り線で隣のスイッチへ黒を分けます。これが渡り線の役割です。

上の図では、黒(非接地側)がスイッチ(イ)に入り、琥珀色の渡り線でスイッチ(ロ)へ渡っています。一方、接地側(白)は照明どうしを送りでつないで両方へ。「黒はスイッチ間を渡り、白は照明間を送る」——この2つの“回し方”をセットで覚えると、連用スイッチの複線図で迷わなくなります。

5. 複線化のポイント|ボックスの中の接続

器具の配置と「白は照明へ・黒はスイッチへ」の大原則は第1回と同じです。2灯2スイッチで新しく増えるのは、ジョイントボックス内の接続と、スイッチ間の渡り線だけ。ボックス内では次の4か所を接続します。

  • 白(接地側):電源の白 ⇔ 照明イの白 ⇔ 照明ロの白(3本接続
  • 黒(非接地側):電源の黒 ⇔ スイッチへ行く黒(2本接続)
  • 帰り線イ:スイッチイから戻った線 ⇔ 照明イへ行く線(2本接続)
  • 帰り線ロ:スイッチロから戻った線 ⇔ 照明ロへ行く線(2本接続)

渡り線はボックスの中ではなく、スイッチ側(連用枠の中)でつなぎます。ここを混同しないのが正しく描くコツです。

6. 完成複線図とケーブル・色の使い分け

完成複線図|2灯・2スイッチ(渡り線つき)電源1φ2W100V接地側(白)非接地側(黒)ジョイントボックス照明(イ)照明(ロ)連用取付枠(2連)白=送り渡り線(黒)帰り(イ)帰り(ロ)VVF1.6-2CVVF1.6-2Cスイッチへは VVF1.6-3C(黒・白・赤)を1本
区間ケーブル色の使い方
電源 → ジョイントボックスVVF1.6-2C黒=非接地側/白=接地側
ボックス → 照明イ/照明ロVVF1.6-2C ×2本白=接地側(送りで両方へ)/黒=各帰り線
ボックス → 2連スイッチVVF1.6-3C ×1本黒=非接地側入り/白=帰りイ/赤=帰りロ
スイッチイ ⇔ スイッチロ渡り線(短)非接地側(黒)を隣へ渡す

スイッチへ向かうケーブルを3心(3C)1本にまとめられるのが連用のメリットです。黒で非接地側を送り込み、白と赤の2本を帰り線として使います(色に法的な決まりはありませんが、帰り線は識別しやすい色を割り当てるのが実務です)。

7. 応用|3連スイッチと「送り配線(2灯同時点滅)」

3連スイッチも考え方は同じ

スイッチが3つに増えても、黒は1つ目に入れて、渡り線で2つ目・3つ目へ順に渡すだけ。帰り線が1本ずつ増えるので、スイッチへのケーブルは心数の多いものを選ぶか、複数本に分けて配線します。

2灯を“同時に”点けたいときは「送り配線」

送り配線|1つのスイッチで2灯を同時点滅電源100Vジョイントボックス照明(イ)照明(イ)片切スイッチ(イ)白=送り帰り=送り※2灯は常に一緒に点く/消える

「2つの照明を常に一緒に点けたい」場合は、スイッチは1つで足ります。このときは渡り線ではなく送り配線を使い、1つ目の照明から2つ目の照明へ、白(接地側)と帰り線の両方を送りでつなぎます。傍記はどちらも同じ「イ」。個別に消せない代わりに、配線も器具もシンプルになります。

「別々に操作したい → 連用スイッチ+渡り線」「一緒でよい → 1スイッチ+送り配線」。この使い分けが設計・施工の判断ポイントです。

8. 結線のポイント・現場のコツ

⚠ 渡り線は「非接地側(黒)」だけを渡す

渡り線でつなぐのは、必ず各スイッチの非接地側(電源側)の端子どうしです。帰り線側(負荷側)を渡してしまうと、別々の照明が連動して点いたり、点かなくなったりします。「渡すのは黒(電源側)」と覚えてください。

  • 渡り線は電源側の端子どうし:スイッチの負荷側(帰り線が出る端子)ではなく、非接地側が入る端子を渡す。
  • 白は各照明へ直行:連用スイッチには接地側(白)を入れない。白はあくまで照明側だけ。
  • スイッチへは3Cが便利:非接地側+帰り2本を1本のVVF3Cでまとめると、ボックスもすっきりする。
  • ボックス内の本数を数える:2灯2スイッチなら白の接続が3本になる。リングスリーブのサイズと刻印を確認してから圧着。
  • 帰り線はマーキング:帰りイ・帰りロを取り違えると照明とスイッチの対応が入れ替わる。色やマークで区別する。

9. よくあるミス・欠陥

  • 渡り線を帰り線側(負荷側)につないでしまう → 2灯が連動する・正しく点滅しない。
  • スイッチに接地側(白)を入れてしまう → 第1回と同じく感電・誤動作のもと。
  • 帰りイと帰りロを取り違える → スイッチイで照明ロが点くなど対応がちぐはぐに。
  • 白の3本接続を2本用スリーブで圧着する → 適正サイズ・刻印を必ず確認(1.6mm×3本は「小」)。

10. 改修(リフォーム)で連用化するときの注意点

既存の1個スイッチを2連・3連へ増やす、照明を1灯足して連用化する——こうした改修では、新築の配線とは別の注意が必要です。既存配線が“開けてみないと分からない”ことが多いからです。

⚠ 改修の鉄則:必ずブレーカーを切り、検電してから触れる

既存回路は他の回路と混在していることがあり、見た目では活線かどうか判断できません。作業前に該当ブレーカーを切り、検電器で無電圧を確認してから結線し直します。既存の渡り線や送り線に、別系統の電圧が残っていることもあります。

  • スイッチBOXに「白(接地側)」が来ているか確認:既存の片切スイッチのBOXには、黒(非接地側)と帰り線しか来ていないのが普通です。照明を増設して連用化するなら、増設灯の接地側(白)を照明側のBOXや天井裏のジョイントボックスから取れるかを先に確認します。
  • 非接地側(黒)を渡り線で分けられるか・容量は足りるか:既存スイッチに来ている黒を渡り線で増設スイッチへ送れますが、増設した負荷が既存回路のブレーカー容量・電線サイズを超えないかを必ず確認します。
  • BOXの大きさ・開口・電線の収容量:1個用スイッチボックスを2個用・3個用へ替えるなら、壁の開口拡大やプレート交換が必要です。電線本数が増えるのでBOX内の収容量(占積率)オーバーにも注意します。
  • 既存電線・機器の劣化:古いVVFやスイッチは被覆・端子が傷んでいることがあります。皮むき済み部分の再利用や、劣化したコネクタ・渡り線の流用は避け、新品に取り替えるのが基本です。
  • 速結端子の差込穴数・電線種別:連用スイッチの速結端子は差込穴の数が決まっています。渡り線用の穴が足りるか、既存が単線か(より線は速結端子に使えない機種があります)を確認します。
  • 回路系統を壊さない・記録を残す:その回路がどのブレーカーか、既存が3路など特殊な点滅になっていないかを図面・現物で確認します。改修後は回路図やスイッチ表示(テプラ等)を更新しておきます。

「開けたら白が来ていなかった」「BOXが小さくて増設分が入らない」は、改修で頻出のつまずきです。着工前にスイッチBOXと照明側のBOXを一度開けて、白の有無とスペースを確認しておくと、手戻りを防げます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 渡り線は自分で作るのですか?

短い電線を現場でカットして作るほか、両端を加工済みの「渡り線」も市販されています。連用スイッチの裏側で電源側の端子どうしをつなぎます。

Q2. 2連・3連の枠に、スイッチとコンセントを混ぜてもいい?

できます。連用取付枠は同じ枠にスイッチ・コンセント・パイロットランプなどを組み合わせられます。ただしコンセントには常時電源(非接地側と接地側)が必要なので、渡り線の取り回しが変わります。

Q3. スイッチへ行くケーブルは必ず3Cですか?

2灯を個別点滅する基本形では、非接地側+帰り2本で3心が便利です。負荷やスイッチの数によっては2Cを複数本にしたり、より心数の多いケーブルを使うこともあります。

まとめ

第2回のまとめ

  • 連用スイッチは1枠に複数のスイッチ。別々の照明を1か所で操作する
  • キモは渡り線=非接地側(黒)を隣のスイッチへ渡す短い線(電源側どうし)
  • 黒はスイッチ間を渡り、白は照明間を送る」をセットで覚える
  • 個別に点滅なら連用+渡り線、同時点滅でよければ1スイッチ+送り配線

次回・第3回は、いよいよ3路スイッチ。階段や長い廊下を「2か所のどちらからでも」点滅させる、現場でも試験でも頻出の配線を、単線図から複線図まで同じ手順で解説します。

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