電気設備の積算で、ケーブルラックの耐震支持金物を見込もうとすると手が止まる場面があります。特記仕様書には「特定の施設」か「一般の施設」のどちらかが書いてあるのに、ケーブルラックが「重要機器」か「一般機器」かはどこにも書いていない――。記事のアンケートで、積算の仕事をしている方からこの質問をいただきました。この記事は、その答えをまとめたものです。

結論

ケーブルラックは「重要機器」「一般機器」のどちらでもありません。公共建築工事標準仕様書では、ラックの耐震支持は施設区分(特定/一般)×設置階の表で決まり、特記がなければ一般の施設として拾います。

  • 重要機器・一般機器は、盤や変圧器など「機器」の震度を決める区分
  • ラックは「配管等」。表2.1.2で施設区分と設置階から種別と間隔を読む
  • 天井から吊るラックは直上階で判定。上層階は建物の階数で変わる
  • 幅400mm未満、吊り長さ平均0.2m以下は耐震支持を省略できる
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

ケーブルラックは「重要機器・一般機器」のどちらでもない

電気設備の耐震には、2種類の物差しがあります。

ひとつは機器(受変電盤・変圧器・発電機など)を床や壁に固定するための物差しです。建物の区分と機器の重要度(重要機器・一般機器)から耐震クラスS・A・Bを選び、設計用の震度を決めて、アンカーやストッパの強さを計算します。

もうひとつは配管等(金属管・金属ダクト・バスダクト・ケーブルラック)を吊って支えるための物差しです。こちらは施設区分と設置する階から、耐震支持の種別(SA種・A種・B種)と間隔を決めます。

ケーブルラックは後者の「配管等」です。だから「重要機器か一般機器か」という問いそのものが、ラックには当てはまりません。

機器は重要度で決める盤・変圧器・発電機は「重要機器か一般機器か」で耐震クラスが決まる
ラックは配管等金属管・ダクトと同じ「横引き配管等」の扱い
見るのは施設区分特記の「特定の施設」「一般の施設」
そして設置階上層階・中間階・1階と地下階で種別と間隔が変わる
項目 機器(盤・変圧器など) ケーブルラック(配管等)
決め方 施設区分×機器の重要度(重要機器・一般機器)→耐震クラス 施設区分×設置階
決まるもの 設計用の水平震度・鉛直震度 耐震支持の種別(SA種・A種・B種)と間隔
標準仕様書の場所 2.1.13(2):震度は特記による 2.1.13(3):表2.1.2
積算で拾うもの アンカーボルト・ストッパ・頂部の振止め 耐震支持金物(形と数)
出典:公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 2.1.13「耐震施工」表2.1.2。機器の耐震クラスの考え方は、建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)による。
たとえるなら
機器は「冷蔵庫」、ラックは「長い物干し竿」
冷蔵庫の転倒防止は、中身の大切さ(重要度)で止め方の強さを変えます。天井から吊った長い物干し竿は、何を干すかではなく「どの部屋に吊るか」「何mおきに止めるか」で揺れ止めを決めます。ケーブルラックは物干し竿の側です。
ここまでのポイント
  • 重要機器・一般機器は、機器の震度を決めるための区分
  • ケーブルラックは「配管等」。施設区分と設置階で支持を決める
  • 積算で拾うのは、ラックの耐震支持金物の形と数


特記の「特定の施設/一般の施設」で、使う列が決まる

公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版の2.1.13「耐震施工」(3)は、横引き配管等を表2.1.2によってSA種・A種・B種の耐震支持で支える、としています。表は「特定の施設」と「一般の施設」の2列に分かれ、その中で電気配線とケーブルラックに分かれています。

特記の欄を見る耐震施工の欄の「特定の施設」「一般の施設」
書いてなければ一般表2.1.2の備考で一般の施設を適用する
列が決まるあとは設置階の行を読むだけ
ラックは別の行金属管・ダクトより間隔が短い
設置場所 特定の施設 一般の施設
上層階・屋上・塔屋 6m以内ごとにSA種 8m以内ごとにA種又はB種
中間階 8m以内ごとにA種 8m以内ごとにA種又はB種
1階・地下階 8m以内ごとにA種 12m以内ごとにA種又はB種
ケーブルラック(横引き)の耐震支持。出典:公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 2.1.13「耐震施工」表2.1.2。金属管・金属ダクト・バスダクト等の電気配線は、どの階も12m以内ごと(種別は表による)。

種別の違いは、支持の組み方です。SA種とA種は、地震のときに働く引張り・圧縮・曲げのそれぞれに耐える材料で組みます。支持材は、配管等の重量に1.0(SA種)または0.6(A種)を掛けた水平地震力で選べます。B種は、引張りに効く振止めの斜材だけで組み、吊り材と同じくらいの強度の材料を使います。

積算では、この違いが金物の形と手間の差になります。一般の施設なら全部の階で「A種又はB種」、特定の施設なら上層階はSA種、それ以外はA種です。

ここに注意!
「特定の施設」は「重要機器」ではありません。
施設区分は建物(施設)全体の区分で、重要機器は機器ひとつずつの区分です。特記に「特定の施設」とあっても、それは表2.1.2の列を選ぶ情報で、ラックが重要機器になるという意味ではありません。
ここまでのポイント
  • 特記の「特定/一般」で、表2.1.2の列が決まる
  • 書いていなければ一般の施設(表の備考)
  • 一般の施設はどの階もA種又はB種、特定の施設は上層階がSA種


階の数え方 ― 上層階と、天井から吊るときの「直上階」

列が決まったら、次は行です。表2.1.2の注で、階の分け方が決まっています。

建物の階数 上層階になる階
2〜6階建て 最上階
7〜9階建て 上の2階
10〜12階建て 上の3階
13階建て以上 上の4階
屋上と塔屋は上層階と同じ行。中間階は、1階と地下階を除き、上層階でない階。出典:表2.1.2 注*2・*3。
上層階は階数で変わる8階建てなら7階・8階と屋上
中間階は真ん中8階建てなら2階〜6階
吊るなら直上階天井から下げる配管等は上の階で判定
1階の天井下は2階12mではなく8mで拾う

見落としやすいのが注*1です。設置場所の区分は、配管等を支持する床で決め、天井面から支持する配管等は直上階を適用します。1階の天井から吊ったラックは2階扱いになり、多くの建物では中間階です。一般の施設なら、1階扱いの12mではなく、中間階の8mで拾うことになります。

ここに注意!
「1階に付いている」から1階扱い、ではありません。
吊りボルトで天井から下げているなら、支えているのは上の階の床です。平面図の階ではなく、吊り元のスラブがどの階の床かで判定します。
ここまでのポイント
  • 上層階は建物の階数で決まる(2〜6階建ては最上階、7〜9階建ては上の2階…)
  • 天井から吊る配管等は直上階で判定
  • 1階の天井下に吊るラックは、多くの建物で中間階になる

支持を置く場所と、省略できる2つのケース

表2.1.2の間隔だけでは、支持の位置は決まりません。標準仕様書は、横引き配管等について次の2つも求めています。

  • 末端から2m以内、曲がり部と分岐部の付近に耐震支持を置く
  • 耐震支持は管軸方向にも行う
末端は2m以内ラックの端は揺れが大きくなりやすい
曲がり・分岐の付近向きが変わるところで止める
その間を間隔ごとに表2.1.2の6・8・12m
管軸方向にもラックの長さ方向の揺れも止める

反対に、次のどちらかに当てはまれば、耐震支持を省略できます。

幅400mm未満幅300mmのラックなら省略できる
吊り長さ平均0.2m以下スラブに近く吊るなら省略できる
どちらか1つでよい両方そろわなくても省略できる
通常の支持は残る鋼製は2m以下ごと

省略できるのは耐震支持だけです。ラックそのものの支持(鋼製は2m以下、その他は1.5m以下ごと)は、耐震支持を省略しても必要です。また、立ち上がり(垂直)のラックは別の表2.1.3で、支持間隔6m以下の範囲で各階ごとに耐震支持を行います。

ここまでのポイント
  • 末端から2m以内・曲がり・分岐の付近にも支持を置く
  • 管軸方向にも止める
  • 幅400mm未満、または吊り長さ平均0.2m以下なら耐震支持は省略できる


積算での拾い方 ― 試算の例

ここまでを、拾いの手順に並べます。

ケーブルラックの耐震支持を拾う手順

  1. 特記の施設区分 「特定の施設」「一般の施設」。なければ一般の施設
  2. 建物の階数 上層階・中間階・1階と地下階を分ける
  3. ラックの階 天井から吊るなら直上階
  4. 省略の判定 幅400mm未満か、吊り長さ平均0.2m以下か
  5. 区間ごとに数える 末端・曲がり・分岐で区切り、間隔ごとに置く
  6. 形と方向 A種かB種か、管軸方向の数は設計図・施工図・金物の仕様で決める

例として、地上8階建ての事務所ビルで、5階の天井から吊る幅600mmのラックを考えます。横引き20mのあと曲がって16m続き、両端は端から1mの位置で支持するとします。5階の天井から吊るので6階扱い、8階建てでは中間階です。

一般の施設・中間階8m以内ごとにA種又はB種で6か所
特定の施設・上層階6m以内ごとにSA種で8か所
区間で割って数える19m÷8m→3区間、15m÷8m→2区間
数は目安末端の位置と管軸方向の数は施工図で決まる

同じ長さのラックでも、施設区分と階の違いで、数も種別も変わります。積算の段階では、この試算のように区間ごとに数えておき、施工図ができたら位置を合わせ直すのが確実です。

ここまでのポイント
  • 施設区分 → 階 → 省略の判定 → 区間ごとに数える、の順
  • 同じラックでも、条件で6か所と8か所のように変わる
  • A種かB種か、管軸方向の数は図面と金物の仕様で決める

図面で判断できないときは ― 質疑の書き方

公共工事で標準仕様書が適用されるなら、特記に施設区分がなければ一般の施設です。迷うのは、民間工事などで特記に「建築設備耐震設計・施工指針による」とだけ書かれている場合です。

指針の配管等の表は、「耐震クラスS対応」と「耐震クラスA・B対応」の2つの列に分かれています。どちらの列を使うかは、建物の用途や地震のあとに求める機能から設計者が決める事項で、積算の側では判断できません。そのときは、質疑で確かめます。

質疑の例
ケーブルラック等の横引き配管の耐震支持について、適用する施設区分(特定の施設/一般の施設)と耐震支持の種別をご指示ください。ご指示がない場合は、公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)表2.1.2の「一般の施設」として積算します。

「指示がない場合は〜として積算します」と前提を書いておくと、回答が遅れても見積を進められ、あとで条件が変わったときの説明にもなります。

ここまでのポイント
  • 標準仕様書が適用なら、特記がなければ一般の施設
  • 指針による場合は、S対応かA・B対応かを設計者に確かめる
  • 質疑には「指示がなければ〜で積算する」と前提を書く


よくある質問

ケーブルラックは重要機器ですか、一般機器ですか?

どちらでもありません。重要機器・一般機器は、盤や変圧器など機器を固定するときの震度を決める区分です。ケーブルラックは「配管等」として、公共建築工事標準仕様書 表2.1.2の施設区分(特定の施設/一般の施設)と設置階から、耐震支持の種別と間隔を決めます。

特記仕様書に施設区分が書いていない場合は?

表2.1.2の備考に「特記がなければ、一般の施設を適用する」とあります。一般の施設の列で拾い、気になる場合は質疑で確かめます。

幅300mmのケーブルラックにも耐震支持は要りますか?

幅400mm未満のケーブルラックは、耐震支持を省略できます(標準仕様書 2.1.13(3)(ア))。ただし通常の支持(鋼製は2m以下ごと)は必要です。

1階の天井から吊るケーブルラックは1階扱いですか?

天井面から支持する配管等は直上階で判定します(表2.1.2 注*1)。1階の天井から吊るなら2階扱いで、多くの建物では中間階になります。

一般の施設の「A種又はB種」は、どちらで拾えばよいですか?

表はどちらでもよいとしているので、設計図・施工図の指定に従います。指定がなければ質疑で確かめます。B種は振止めの斜材だけで組む支持で、A種より材料が少なくなります。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。