変圧器を過負荷で運転できる条件を指針から整理。周囲温度・温度上昇試験・短時間過負荷・負荷率低下と、条件が重なる場合の考え方まで。
変圧器の過負荷運転と容量検討の全体像

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今回の疑問

 

変圧器の過負荷運転ってなに?

 

結論

変圧器容量以上の過負荷運転は可能です。

  • 連続的に過負荷にする場合の最高許容負荷
冷却方式 最高許容負荷[ % ]
自冷式 125

しかし運転に当たっては下記の点について考慮しましょう

  1. 電気学会の『変圧器運転指針』を確認する
  2. 変圧器メーカーの機器仕様を確認する
 

あにまるさん
あにまるさん
なんかこのまえ変圧器って過負荷運転しても大丈夫って言われたんだけど本当なのかな?

はりた
はりた
変圧器の過負荷運転について調べているのかな?

あにまるさん
あにまるさん
そうなんだ。だけど聞いただけでどのくらい超えていいかなんて全然わかんないんだよな~

はりた
はりた
電気学会に指針が記載されているから確認していこう!

本記事のおすすめの方

  • 受変電設備を作図中の方
  • 変圧器の過負荷運転について調べている方
この記事でわかること

  1. 過負荷運転とは何か
  2. 過負荷運転可能時間
  3. 過負荷運転可能容量
  4. 変圧器容量の検討方法
過負荷率の早見表|モールド変圧器の許容負荷モールド変圧器の過負荷耐量を容量区分別にまとめた早見表。過負荷運転前の負荷率50・70・90%それぞれの許容値を確認できます。 モール...
ペン太ペン太
変圧器って定格容量を少しでも超えたら、即アウトなんですよね?
ハリタハリタ
条件付きで過負荷運転が可能です。ただし自冷式の連続運転では最高許容負荷125%を超えてはいけませんよ。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 変圧器は容量を超えて運転してよいのか
  • 周囲温度が1℃下がると、何パーセント過負荷できるのか
  • 連続的に過負荷運転する場合の最高許容負荷は何パーセントか

変圧器の過負荷運転の指針

トピック1:変圧器の過負荷運転の指針
油入変圧器運転指針

  • 変圧器の過負荷運転の指針については電気学会の『油入変圧器運転指針』『乾式変圧器運転指針』に記載されています
  • 変圧器メーカーの過負荷運転の記述にも過負荷運転の条件については電気学会の『変圧器過負荷運転指針』を参照するように書かれています。

リンク:(電気学会|油入変圧器運転指針)より

 
本指針は、昭和に作成されているため現行機種との性能が異なる場合がありますが、過負荷運転における他の記述がないため過負荷運転においては本指針に準ずるものとしています
ここまでのポイント
  • 変圧器容量以上の過負荷運転は可能
  • 電気学会の『変圧器運転指針』と変圧器メーカーの機器仕様を確認する

過負荷運転の条件

トピック2:過負荷運転の条件
変圧器過負荷運転の条件

  1. 周囲温度低下の場合
  2. 温度上昇試験記録が規定温度上昇値に達しなかった場合
  3. 短時間過負荷運転の場合
  4. 負荷率が低下した場合
  5. 冷却方式を変えた場合
  6. 種々の条件が重なった場合
 
このうち、実際の過負荷運転時に考慮するべき3つの項目を重点的に解説します
  1. 周囲温度低下の場合
  2. 温度上昇試験記録が規定温度上昇値に達しなかった場合
  3. 短時間過負荷運転の場合
過負荷運転時はこの3つを考慮し検討するようにしましょう。

最終的な判断として
  • 種々の条件が重なった場合に移ります

周囲温度低下による条件

周囲温度による条件

  1. 周囲最高温度を30℃とする
  2. 30℃より1℃下がるごとに0.8%の過負荷運転が可能
  3. 下限は0℃とし0℃以下は対象外となる
 
計算例

周囲温度10℃の場合、変圧器は

0.8×(30℃ー10℃)=16%

の過負荷運転が可能ということになります

 

温度低下時の過負荷運転ができない場合

温度低下による抵抗損減少の効果よりも

油の粘性増大による放熱効率の低下が大きくなるので

媒体の温度が0℃以下に下がるとそれ以上の過負荷運転はできないものと考える。

温度上昇試験による条件

温度上昇試験による条件

  1. 規定の温度上昇限度より試験値が5℃低い場合
  2. その差1℃ごとに1%の過負荷運転が可能
  3. 過負荷許容値は5%の余裕を見込む
 

短時間の過負荷運転による条件

短時間の過負荷運転による条件

  1. 24時間以内におきる1回の短時間過負荷に対して適用
  2. 過負荷前の負荷は過負荷前の2時間平均か、24時間の平均(過負荷時間を除く)いずれかの大きいほうをとる
  • 油入変圧器の定格出力の倍数
時間[ h ] 過負荷前の負荷[ % ]
90 70 50
定格出力の倍数[ 倍 ]
1/2(30分) 1.47 1.5 1.5
1.33 1.39 1.45
1.2 1.25 1.29
1.1 1.14 1.15
 
100kVAの変圧器を8~10時間過負荷運転したいがよいか?

原則として出来ません。(電気学会発行の『変圧器過負荷運転指針』をご参照ください) 50%出力で連続運転後、113%8時間が限度となります

出典:(過負荷運転 | 保守・サービス | 東芝産業機器システム株式会社 )より

 
計算例

過負荷前の負荷率が70%、過負荷時間が2時間の場合

定格出力の1.25倍

の過負荷運転が可能ということになります

 

負荷率の低下による条件

負荷率の低下による条件

  1. 24時間以内の時間周期にて適用
  2. 周期内の負荷率が90%より低くなった場合とする
  3. 90%との差1%毎に下記表の数値だけ過負荷可能
  • 負荷率低下による過負荷
冷却方式 定格出力に対する増加の割合 最高[ % ]注1)
自冷式 0.5 20
注1)負荷率50%に相当するもので、負荷率50%以下に下がってもこれ以上過負荷させることはできない

冷却方式を変えた場合の条件(参考)

冷却方式を変えた場合の条件(参考)

  1. 変圧器温度を物理的に下げる
  2. 変圧器にファンを取り付ける
これはあくまでも理論上の検討であり、変圧器の構造、種類によって異なるため指針としては考慮していない
ここまでのポイント
  • 実際の検討で重点となるのは、周囲温度低下・温度上昇試験記録・短時間過負荷の3つ
  • 周囲温度は30℃を基準に、1℃下がるごとに0.8パーセントの過負荷が可能(下限0℃)
  • 温度上昇試験は規定限度より5℃低い場合、差1℃ごとに1パーセントの過負荷が可能

種々の条件が重なった場合の条件 ☜条件の総括

トピック3:種々の条件が重なった場合
種々の条件が重なった場合の条件

  1. 周囲温度低下による過負荷
  2. 温度上昇試験記録による過負荷
  3. 短時間過負荷運転による過負荷
は各々の過負荷率を加算してもよいことになっています しかし連続的に過負荷運転する場合は、次の表の値以上の過負荷ならないようにしましょう

  • 連続的に過負荷にする場合の最高許容負荷
冷却方式 最高許容負荷[ % ]
自冷式 125
  • 短時間過負荷にする場合の最高許容負荷
時間[ h ] 過負荷前の負荷[ % ]
90 70 50
定格出力の倍数[ 倍 ]
1/2(30分) 1.47 1.5 1.5
1.33 1.39 1.45
1.2 1.25 1.29
1.1 1.14 1.15
短時間の過負荷の場合過負荷前の負荷50%で30分使用の定格出力×150%が最大許容負荷となります
過負荷運転の最大過負荷率

  1. 連続運転時  :125%
  2. 短時間運転時 :115~150%
ここまでのポイント
  • 3つの条件による過負荷率は各々を加算してもよい
  • 連続的に過負荷運転する場合、自冷式の最高許容負荷は125パーセント
  • 短時間運転時の最大許容負荷は115〜150パーセント

過負荷運転容量の計算例

トピック4:過負荷運転容量の計算例
計算条件

  • 油入変圧器    :自冷式
  • 周囲温度最高   :20℃
  • 温度上昇試験記録 :48℃
  • 負荷率      :90%
  • 過負荷運転時間  :2時間
計算例

  • 周囲温度低下による過負荷
0.8×(30‐20)=8%
  • 温度上昇試験記録による過負荷
1.0×(55‐5ー48)=2%
  • 短時間過負荷
20%
時間[ h ] 過負荷前の負荷[ % ]
90 70 50
定格出力の倍数[ 倍 ]
1/2(30分) 1.47 1.5 1.5
1.33 1.39 1.45
1.2 1.25 1.29
1.1 1.14 1.15

上記過負荷率を加算する

8+2+20=30[%]

  1. 過負荷率130%
  2. 連続過負荷時間2時間
が可能ということになります
ペン太ペン太
周囲温度が1℃下がるごとに0.8%上乗せなら、冬はどんどん盛れますね!
ハリタハリタ
指針は昭和時代の資料です。周囲温度低下の検討は除外し、連続運転を抑える方向で考えるのが安全ですよ。
取り違えやすいところ正しくは
変圧器は容量以上で運転できない指針の条件を満たせば過負荷運転は可能
周囲温度は低いほど無制限に過負荷できる下限は0℃。0℃以下は対象外
条件が重なっても1つしか使えない3つの条件の過負荷率は加算してもよい
加算すればいくらでも上げられる連続運転は自冷式で最高許容負荷125パーセント
周囲温度低下の条件はそのまま使ってよい指針が古いため、対象外として検討する方が安全
ここまでのポイント
  • 計算例では8+2+20=30パーセントとなり、過負荷率130パーセント
  • 連続過負荷時間は2時間が可能という結果になる

過負荷運転率検討時の注意点とその理由

トピック5:過負荷運転率検討時の注意点
検討事項と注意点

  1. 指針の発表から歳月が空きすぎている
  2. 周囲温度低下に伴う検討は対象外とした方がよい
  3. 連続過負荷運転を抑える方向で検討する
  • 今回の電気学会の指針は資料が古いものであり、特に近年の平均気温の上昇により周囲温度低下による負荷率の検討はむしろ地域・設置場所によっては上がる可能性は大きい
  • 極力連続運転をせずに短時間の過負荷運転を協議すべきである
  • 目安として短時間運転時は表の値110%~150%、連続的に使用する場合は125%

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ここまでのポイント
  • 指針の発表から年月が経っているため、周囲温度低下による検討は対象外とした方がよい
  • 連続過負荷運転を抑える方向で検討する
  • 目安は短時間運転時110〜150パーセント、連続使用時125パーセント

よくある質問(FAQ)

トピック6:よくある質問(FAQ)

Q.変圧器は容量を超えて過負荷運転してもよいのですか?
A.可能です。ただし連続的に過負荷運転する場合は、自冷式で最高許容負荷125%を超えないようにします。

Q.周囲温度が低いとどれくらい過負荷できますか?
A.周囲最高温度を30℃とし、そこから1℃下がるごとに0.8%の過負荷が可能です。下限は0℃で、0℃以下は対象外です。

Q.短時間の過負荷運転はどこまで許容されますか?
A.過負荷前の負荷率と時間によって変わり、過負荷前の負荷50%・30分使用で定格出力の150%が最大許容負荷となります。

Q.過負荷率を検討するときの注意点は?
A.指針の発表から年月が経っているため、周囲温度低下による検討は対象外とし、連続運転を抑える方向で検討するのが安全です。目安は短時間運転で110~150%、連続使用で125%です。

ペン太ペン太
計算例をなぞったあと、実務ではどう活かせばいいですか?
ハリタハリタ
125%の上限と条件の重なり方を確認してから判断しましょう。迷ったら容量に余裕を持たせるのが確実ですよ。

まとめ

変圧器の過負荷運転と容量の検討方法について

過負荷運転に考慮する条件

  1. 周囲温度低下の場合
  2. 温度上昇試験記録が規定温度上昇値に達しなかった場合
  3. 短時間過負荷運転の場合
周囲温度による条件
  1. 周囲最高温度を30℃とする
  2. 30℃より1℃下がるごとに0.8%の過負荷運転が可能
  3. 下限は0℃とし0℃以下は対象外となる
温度上昇試験による条件
  1. 規定の温度上昇限度より試験値が5℃低い場合
  2. その差1℃ごとに1%の過負荷運転が可能
  3. 過負荷許容値は5%の余裕を見込む
短時間の過負荷運転による条件
  1. 24時間以内におきる1回の短時間過負荷に対して適用
  2. 過負荷前の負荷は過負荷前の2時間平均か、24時間の平均(過負荷時間を除く)いずれかの大きいほうをとる
  • 連続的に過負荷にする場合の最高許容負荷
冷却方式 最高許容負荷[ % ]
自冷式 125
  • 短時間過負荷にする場合の最高許容負荷
時間[ h ] 過負荷前の負荷[ % ]
90 70 50
定格出力の倍数[ 倍 ]
1/2(30分) 1.47 1.5 1.5
1.33 1.39 1.45
1.2 1.25 1.29
1.1 1.14 1.15
短時間の過負荷の場合過負荷前の負荷50%で30分使用の定格出力×150%が最大許容負荷となります

変圧器の過負荷運転は、条件ごとの過負荷率を求めて加算し、最高許容負荷で頭を押さえるという手順です。

条件考え方計算例での値
周囲温度低下30℃から1℃下がるごとに0.8パーセント(下限0℃)0.8×(30−20)=8パーセント
温度上昇試験記録規定限度より5℃低い場合、差1℃ごとに1パーセント1.0×(55−5−48)=2パーセント
短時間過負荷過負荷前の負荷率と時間で定格出力の倍数が決まる20パーセント
合計各条件の過負荷率を加算する8+2+20=30パーセント
最終判断連続運転は自冷式で125パーセントを超えない過負荷率130パーセント・2時間が可能

検討で押さえること

  • 重点は周囲温度低下・温度上昇試験記録・短時間過負荷の3条件
  • 各条件の過負荷率は加算してよい
  • 連続的に過負荷運転する場合は自冷式で最高許容負荷125パーセント
  • 短時間運転時の最大許容負荷は115〜150パーセント

実務での注意点

  • 指針の発表から年月が経っており、資料が古い
  • 近年の平均気温上昇により、周囲温度低下による検討は地域・設置場所で不利になりうる
  • 極力連続運転をせず、短時間の過負荷運転を協議する
  • 変圧器メーカーの機器仕様もあわせて確認する

迷ったときは容量に余裕を持たせる判断が確実です。数値は電気学会の指針とメーカー仕様の両方で裏を取ってください。

📘 体系的に学びたい方へ
このテーマは、連載「高圧受変電設備の設計マニュアル(全14回+資料編)」で、単線結線図の読み方・書き方とあわせて基礎から解説しています。
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。