📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

こんにちは、HARITAの設計室です。施工実務編もいよいよ最終回——竣工前の試験・測定。工事が終わっても、すぐには電気を入れられません。「入れても安全」を証明する試験に合格してから。送電までの関所を順に見ていきます。

ペンタ
先輩、工事が終わったらブレーカーを入れて「点いた!完成!」じゃないんですか?
はりた
それ、いちばんやってはいけないやつ(笑)。もし配線に傷があったら送電した瞬間に漏電・短絡だ。だから電気を入れる前に、無電圧のまま測って安全を証明する。関所マップで全体を見よう。

送電までの関所マップ

目視から性能実測まで送電前チェック6関所のフロー
【図1】送電までの関所。順番を崩してはいけない理由ごと覚える
ペンタ
絶縁と接地を送電の前に測るのは、「入れてから測ったんじゃ遅い」からなんですね。
はりた
その通り。絶縁抵抗測定(メガー)は電線の健康診断、接地抵抗測定は逃げ道の確認。どちらも無電圧でしか測れない/測ってはいけない試験だ。そして回路の照合——盤の回路が図面どおりの行き先か、2人1組で声を出して確認する。行き先不明の回路に電気を入れるのは、宛先不明の荷物を発送するようなものだからね。

試験カタログ ― 何を・なぜ・どう見るか

絶縁抵抗・接地抵抗・回路確認・相回転・照度の試験一覧表
【図2】竣工試験カタログ。成績書の項目の意味が分かれば立会いが変わる
ペンタ
「相回転」って初めて聞きました。三相の回転方向…?
はりた
三相(第2回)はつなぐ順番で回転磁界の向きが決まる。逆だとポンプやファンが逆回転して、水が上がらない・風が出ない・機器を傷める。検相器という測定器でクルッと確認するんだ。最後は照度測定——設計照度どおりの明るさが出ているか、設計の答え合わせをして竣工だよ。

💼 実務でこう生きる

📋 実務活用事例:試験成績書を「読める」設計者になる
竣工書類に綴じられる試験成績書。回路ごとの絶縁抵抗値・接地種別ごとの接地抵抗値・照度の実測値が、設計値・基準値と並んでいます。数値の意味が分かれば、引渡し後の「なんか調子悪い」の問い合わせにも、成績書から仮説を立てられます。
📋 実務活用事例:検査立会いは「怪しいものを通さない」
立会いで見るのは、値が基準ぎりぎりの回路・行き先不明の回路・表示のない盤。違和感をその場で質問するのが立会い者の仕事です。送電後に直すのは何倍も大変——「今なら1時間、あとなら1日」が試験の世界の相場です。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

🐣 メガーって、なんで「メガー」なの?
絶縁抵抗の単位がMΩ(メガオーム)だからです。健全な回路の絶縁抵抗は非常に大きく、メガ(100万)単位で測るため、測定器ごと「メガー」と呼ばれるようになりました。測定時は回路に測定電圧をかけるので、電子機器を外してから測るのが作法です。
🐣 検相器って何をする道具?
三相の相順(回転方向)を確認する測定器です。3本のクリップを挟むと、正相か逆相かをランプや回転表示で教えてくれます。ポンプ・ファン・エレベーターなど回転機器のある建物では送電時の必須アイテムです。

🔎 深掘りQ&A ― 会話だから、もっと分かる

🔎 「絶縁不良が見つかったらどうするんですか?」と聞いてみた
はりた「回路を分割して測り直し、不良箇所を絞り込む。ジョイント部の水濡れ、ステップルの噛み込み、器具内部…原因はいろいろ。見つけて直して再測定、合格するまで送電はお預け。ここで妥協しないのがプロだよ」
🔎 「絶縁抵抗の合格ラインはいくつなんですか?」と聞いてみた
はりた「回路の電圧区分で決まっていて、低圧回路なら0.1〜0.4MΩ以上という基準がある。数字の根拠は電気設備の技術基準——つまり法規の世界だから、第5部でみっちりやろう。今日は“回路ごとに基準があり、成績書はそれとの比較表”と覚えて」
🔎 「送電の順番って決まってるんですか?」と聞いてみた
はりた「上流から下流へ、が原則。受電→幹線分電盤の主幹→分岐、と第7回の「電気の流れ1枚図」の順に入れていく。いきなり全部入れず、段階ごとに異常がないか確認しながら。流れの地図がここでも効いてくるんだ」

⚠️ 新人がやりがちな注意ポイント

  • 電子機器をつないだままメガーを当てない:測定電圧で機器を壊します。弱電・電子機器は外してから。
  • 「たぶんこの回路」で送電しない:行き先不明・表示なしの回路は確認が済むまで投入しない。
  • 成績書を「もらって終わり」にしない:設計値と見比べて初めて意味を持ちます。設計の答え合わせまでが仕事。

まとめ ― 今日の1枚

  • 送電前は見る→測る(絶縁・接地)→照合→送電→実測の関所を順に通る。
  • 測定は無電圧で先に。「入れても安全」を証明してから入れる。
  • 相回転の確認を忘れると回転機器が逆回転。検相器でクルッと確認。
  • 試験成績書は建物の健康診断書。設計値との答え合わせまでが設計の仕事

これで施工実務編(全8回)完結! 現場の1日から送電の瞬間まで、設計が形になる道のりを一気に駆け抜けました。本編は第11回(第4部開幕:需要率・負荷率)から計算の世界へ。引き続きお楽しみに!

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。
📖次に読むならこれ【新人講座 第16回】電気の法律ぜんぶ地図 ― 基準値の“出どころ”をたどる新人教育