新人の学習ルート 1. 仕事の全体像をつかむ
この記事は、このステップの 1 / 4 本目です
進み方を見る →
動く図解この記事のポイントを動く図解にまとめました(①登場人物 → ②1日 → ③成果物 → ④実例・くり返し再生)。ジャンル「設計の仕事と法規」で見る →
📚 この記事は連載「図解&会話で学ぶ 電気設備設計の基礎」の1本です。→ 全カリキュラム(目次)はこちら
今回の内容を1枚にまとめたグラレコ
📝 今日の全体像を1枚で。まずこのグラレコ、詳しくは本文で!

「電気設備設計」に配属されたけど、正直まだ何をする仕事かピンとこない――そんな新人さんのためのシリーズ第0回(導入)です。むずかしい話はまだ出てきません。まずは仕事の全体像と1日の流れ、そしてあなたの役割を、はりた先輩といっしょにつかみましょう。

ペン太ペン太
電気設備設計って、一日中黙々と図面を描く仕事なんですよね?
ハリタハリタ
作図は一部です。客先や建築、施工をつなぐハブ役としての調整が大きいんですよ。

この記事で押さえる3つのこと

  • 電気が安全に・過不足なく・使いやすく行き渡るように、図面と計算で決める仕事
  • 関わる相手は客先・建築・空調衛生・メーカー・施工・審査。設計者はその真ん中のハブ役
  • 設計は決める・描く、施工は実際に作る。設計図は施工する人への指示書

電気設備設計ってどんな仕事?

要望 客先から受ける。
決める 設計者が計算で。
描く 設計者が図面に。
作る・検査 施工会社・審査。
たとえるなら
設計者は、旅行の幹事
幹事は、参加する人の希望を聞き、宿や交通の都合を調整して、全員が迷わず動ける「しおり」を作ります。自分で運転するわけではありません。電気設備設計者も、客先の要望を聞き、建築や空調・衛生と調整して、施工する人が迷わず作れる図面(しおり)を作ります。
ここに注意!
「電気設備設計は、一日中ひとりで図面を描く仕事」ではありません。
作図は一部です。客先の要望を形にし、建築や空調・衛生とぶつからないよう調整し、施工しやすい図面に落とす「つなぐ仕事」が多くを占めます。
ペンタ
ペンタ(新人)
はりたさん…僕、今日から電気設備設計の部署なんですけど、そもそも「電気設備設計」って何を作る仕事なんですか?図面を描くのは、なんとなく分かるんですけど…。
はりた
はりた(先輩)
おっ、いい入り方!ひとことで言うと、「建物のなかで電気が“安全に・過不足なく・使いやすく”行き渡るように、図面と計算で決める仕事」だよ。まずはこの図を見てみよう。動いている矢印が“つながり”ね。
図1 登場人物マップ:電気設備設計者を中心に客先・建築・空調衛生・メーカー・施工・審査がつながる
図① 登場人物マップ ― 設計者は“真ん中”で、みんなをつなぐハブ役
ペンタ
ペンタ(新人)
えっ、こんなにたくさんの人と関わるんですか。ずっと一人で黙々と図面を描くイメージでした…。
はりた
はりた(先輩)
そこ、新人さんがいちばん誤解するところ!もちろん作図も大事だけど、実は「客先の要望を形にして、他の設備とぶつからないように調整して、施工しやすい図面に落とす」という“つなぐ仕事”がすごく多いんだ。
まぎらわしい相手 その人の役割
電気店(街の電気屋さん) 販売・修理をする
電気工事士 現場で実際に作る
電気設備設計者 決めて・描く
設計と施工の関係 設計図は施工する人への“指示書”。現場を想像して描けると「いい設計」になる
ここまでのポイント
  • ひとことで言えば「建物のなかで電気が安全に・過不足なく・使いやすく行き渡るように、図面と計算で決める仕事」
  • 作図も大事だが、実際は「要望を形にし、他の設備とぶつからないよう調整し、施工しやすい図面に落とす」つなぐ仕事が多い


設計者の「1日」をのぞいてみる

ペンタ
ペンタ(新人)
じゃあ…設計者って、1日どんなふうに過ごしてるんですか?急にリアルな質問ですけど(笑)。
はりた
はりた(先輩)
いい質問!赤いカーソルを目で追ってみて。1日の流れがざっくり分かるよ。
図2 設計者の1日タイムライン:朝の確認→作図→打合せ・調整→積算→夕方の図面チェック
図② 設計者の1日タイムライン(一例)― 作図だけでなく確認・打合せ・積算・見直しが散らばる
ペンタ
ペンタ(新人)
思ったより、打合せとかチェックの時間が多いんですね。作図だけの日じゃないんだ…。
はりた
はりた(先輩)
そう。図面はゴールに向けた“手段”。逆に言うと、「今どの工程をやっているか」が分かると自分の作業の意味が見えて、ぐっと動きやすくなるよ。

設計の“成果物”はこんな図面たち

最終的に仕上げるのは、配置図(どこに何を置くか)、単線結線図(電気の系統を1本の線で表す図)、幹線図、器具表など。いまは名前だけでOK。図面の読み方は第2部(第4〜6回)でじっくり練習します。

💼 この回が実務でこう生きる

  • 先輩の指示や打合せの会話についていける(「どの工程の話か」が分かる)。
  • 自分の作業が全体のどこか見えて、質問の粒度が上がる。
  • 「誰のための、何のための図面か」が分かり、手戻りが減る。
成果物 何を表す図か
配置図 どこに何を置くか
単線結線図 電気の系統を1本の線で表す
幹線図 建物を通る太い電気のルート
器具表 使う器具の名前と数量
ここまでのポイント
  • 1日は作図だけでなく、確認・打合せ・積算・見直しが散らばる
  • 図面はゴールに向けた“手段”
  • 「今どの工程をやっているか」が分かると、打合せの会話についていける

📋 実務活用事例|「コンセント1つ」の依頼でも、地図があると動ける

空き回路 図面で確認。
天井内 空調・衛生に確認。
ルート 施工会社に相談。
図面化 手戻りゼロ。
ここに注意!
「コンセント1つなら、記号を1つ描けば済む」ではありません。
分電盤の空き回路、天井内の他設備、配線ルートを先に確かめないと、施工段階でやり直しになります。

ケース:テナントの会議室に「コンセントを1か所増やしたい」と依頼が来た。

全体像を知らない新人:図面にコンセント記号を1つ描いて提出 → 施工段階で「分電盤に空き回路がない」「天井内はダクトで通せない」と発覚し、やり直し。

地図を持っている新人:①分電盤の空き回路を確認(図面)→②天井内の他設備を空調・衛生に確認(調整)→③配線ルートを施工会社に相談(施工性)→④図面化。関係者それぞれに“聞くべきこと”が見えているので、手戻りゼロで進む。

※ 第0回で覚えた「登場人物マップ」が、そのまま実務のチェックリストになる、という例です。

🐣 いまさら聞けない素朴なギモン

「こんなこと聞いていいのかな…」という質問ほど大事。ここで拾います。

Q.電気設備設計って、数学がすごく得意じゃないと無理ですか?
→ 実務で毎日使うのは四則演算と比率がほとんど。公式も「決まった型に当てはめる」形が多く、文系出身で活躍している設計者もたくさんいます。

Q.街の「電気屋さん」や電気工事士さんとは、何が違うんですか?
→ 販売・修理をするのが電気店、現場で作るのが電気工事士、そして「決めて・描く」のが設計者。同じ“電気”でも役割分担が違います。


🔎 深掘りQ&A ― もう一歩、聞いてみよう

決める 設計は決める・描く。
ふわっと 現場から問い合わせ。
想像して 回路・高さ・ルートまで。
いい設計 そのとおりに作れる。
ここに注意!
「設計図は、描けば終わり」ではありません。
設計図は施工する人への指示書です。現場で迷わず作れるかを想像して描けると、問い合わせや手戻りが減ります。

Q.「設計」と「施工」って、何が違うんですか?

A.ざっくり言うと、設計は「決める・描く」/施工は「実際に作る」。設計図は施工する人への“指示書”。だから設計がふわっとしてると現場が困る。逆に、現場を想像して描けると「いい設計」になるよ。

Q.設計をやるのに、電気工事士の資格って要りますか?

A.設計そのものに必須ではないよ。でも資格の勉強をすると図面のリアリティが段違いになる。資格の順番や勉強法は終章(第24回)でロードマップにするね。

Q.で、まず何から覚えればいいですか?

A.この講座の順番でバッチリ。次回は電気の超基礎「電圧・電流・抵抗(オームの法則)」。図面の「200V」「20A」が読めるようになる最初の一歩だよ。

Q.配属されたばかりで、先輩に何を聞けばいいか分かりません。

A.まず「今どの工程の話か」を聞くと、打合せの会話についていきやすくなります。次に、依頼を受けたら「誰に何を確認すればいいか」を聞きます。登場人物マップ(客先・建築・空調衛生・メーカー・施工・審査)を手元に置いておくと、質問の相手と中身が決めやすくなります。

Q.最初の1か月は、何をしていればいいですか?

A.この講座を順番に読みながら、先輩の打合せや図面チェックに同席して「今どの工程か」を追うのがおすすめです。配置図・単線結線図・幹線図・器具表などの図面の名前を覚え、知らない用語はメモして1つずつ回収していきます。

💬 はりたから新人さんへ:ペンタみたいに「じゃあ何が違うの?」「まず何から?」とその場で聞けることが、いちばん伸びる新人の条件。分からないをそのままにしない――この講座も“質問しながら”読み進めてね。

ここまでのポイント
  • 設計は「決める・描く」、施工は「実際に作る」
  • 設計そのものに電気工事士の資格は必須ではないが、勉強すると図面のリアリティが上がる
  • 実務で毎日使うのは四則演算と比率がほとんど
消費電力 1500W。
わり算 ÷100V=15A。
比率 15÷20=75%。
確かめる 型に当てはめる。
ここに注意!
「数学がすごく得意でないと、設計はできない」ではありません。
実務で毎日使うのは、たし算・わり算・比率がほとんどです。公式も決まった型に当てはめる形が多くあります。


⚠️ ここだけ注意

たとえるなら
第0回は、初めての街で地図を開くこと
初めての街で、すべての店や道を覚えてから歩き出す人はいません。地図を開いて「今どこにいて、どっちへ行けばいいか」が分かれば十分です。第0回のゴールも同じで、仕事の全体像という地図を持つこと。細かい用語は、歩きながら1つずつ覚えていけば大丈夫です。
ここに注意!
「最初から全部を理解しないと、先へ進めない」ではありません。
第0回のゴールは、仕事の全体像という地図を持つことです。知らない用語は、この講座で1つずつ回収していけば読めるようになります。

最初から全部を理解しようとしなくて大丈夫。まず“地図”を持つことが第0回のゴールです。知らない用語はこの講座で1つずつ潰していけば、必ず読めるようになります。

ペン太ペン太
全体像は掴めました。第1回からは何を学ぶんですか?
ハリタハリタ
電圧・電流・抵抗の基礎からです。図面の200Vや20Aが読めるようになりますよ。

まとめ

結論。図面を描く仕事というより、決めてつなぐ仕事。だから最初に要るのは知識より“地図”です。

同じ「コンセント1か所増設」でも 全体像がないと 地図があると
最初の動き 図面に記号を1つ描いて提出 分電盤の空き回路を図面で確認
他設備との関係 見ていない 天井内の状況を空調・衛生に確認
施工性 見ていない 配線ルートを施工会社に相談
結果 施工段階で発覚してやり直し 聞くべきことが見えていて手戻りゼロ

仕事のかたち

  • 電気設備設計=建物に電気が安全に・過不足なく・使いやすく行き渡るよう、図面と計算で決める仕事。
  • 設計者は“みんなをつなぐハブ役”。作図だけでなく調整が多い(図①)。
  • 1日は作図だけでなく確認・打合せ・積算・見直しが散らばる(図②)。

地図を持つと変わること

  • 全体像を持つと初日から迷子にならず、質問の質が上がる。

最初から全部を理解しようとしなくて大丈夫です。知らない用語は、この講座で1つずつ回収していきます。

▶ 次回・第1回

電圧・電流・抵抗(オームの法則)を身近な例で
図面の「200V・20A」がなぜそう書いてあるのか。水の流れの例えで、電気の“いちばん基本”をつかみます。

✅ 振り返りチェック ― 今日の理解度をセルフ確認
3つ以上チェックできたら合格!あやしい項目は、その見出しまで戻ってサッと復習しよう。
次に読むならこれブレーカーとは?しくみ・動作特性・定格の選び方・漏電遮断器を動く図解で超基本から新人教育
次はこれ
解説記事電気設備の新人が読む順番|配属から1年の教育ロードマップ15分
仕事の全体像をつかむ のステップ
新人マイページで進捗とノートを残す →読んだ記事は自動で記録されます。ノートは端末に保存され、書き出せます。
SHORTS
この記事の図解を、1分の動画で
記事の動く図解を、音と動きでたどるショート動画にしました。移動中の復習や、後輩への説明にどうぞ。
YouTubeで開くほかのショートも見る
ABOUT ME
HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。