住戸内の電気計画の進め方 グラレコ

マンションの電気設計は、いきなり建物全体を考えようとすると手が止まってしまいます。でも実は、間取り図さえあれば今すぐ描き始められる部分があります。それが「住戸内(専有部)の電気計画」です。

今回はハリタ先生とペン太が、1つの住戸を例に「どの順番で、何を決めていくか」を一緒に進めていきます。

💡 この記事のポイント
  • 住戸内は 照明→スイッチ→コンセント→弱電→回路容量→専用回路→分電盤 の順で進める
  • 1回路は20A。計画は容量の80%(100Vで約1,600VA)を目安に
  • 同じ住戸が並ぶマンションは、1戸を標準化すればユニットケーブルで一気に合理化できる

まず用意するのは「間取り図」だけ

ペン太「先生、マンションの電気設計って、どこから始めればいいんですか? 受電の方式とか、幹線とか、難しそうなものばっかりで手が止まっちゃって……」

ハリタ先生「気持ちはわかるよ。でもね、いちばん最初に手を動かせるのは、実は”部屋の中”なんだ。建築の間取り図が1枚あれば、受電方式が決まる前でも住戸内の計画は進められるからね」

ペン太「へえ! じゃあ、まず間取り図を用意すればいいんですね」

ハリタ先生「そう。しかもマンションは、同じ間取りの住戸がたくさん並んでいる。だから1つの住戸をていねいに計画すれば、それを何十戸ぶんにも展開できる。最初の1戸がいちばん大事なんだ」

計画は「照明 → スイッチ → コンセント → 弱電 → 専用回路」の順で

ペン太「間取り図を広げました。……で、いきなり何を描けばいいんですか?」

ハリタ先生「順番があるんだ。この順で進めると迷わないよ」

  1. 照明器具の位置を決める
  2. その照明を操作するスイッチを置く
  3. 各部屋にコンセントを配置する
  4. テレビ・LAN・インターホンなどの弱電(通信)を置く
  5. エアコンや IH など専用回路が必要な機器を洗い出す
  6. 最後に分電盤へまとめる
住戸内の電気計画 作業ステップ図解
▲ 住戸内の電気計画は、この順で進めれば迷わない

ペン太「なんで照明が最初なんですか?」

ハリタ先生「照明は天井、スイッチは壁、コンセントは壁の下のほう……と、”どこに付くか”がはっきりしているものから決めると、後のものが置きやすいんだ。逆にコンセントから始めると、スイッチとの位置関係がちぐはぐになりやすい」

① 照明 ― 部屋の用途に合わせて

ハリタ先生「まずは各部屋に照明を置いていこう。リビングはシーリングかダウンライト、玄関や廊下・トイレはダウンライトやブラケット、洗面には器具、といった具合にね」

ペン太「部屋ごとに種類が違うんですね」

ハリタ先生「そう。ここは建築の意匠設計とも関わるところだから、”何をどこに付けるか”は建築側と相談しながら決めることも多い。電気設計としては、まず器具の位置と種類を平面図に落とすところから始めよう」

② スイッチ ― 「入ってすぐ」が基本

ハリタ先生「照明が決まったら、それを点けるスイッチを置く。基本は部屋の入口・ドアを開けてすぐの手が届く位置だね」

ペン太「廊下みたいに両端から点けたい場所は?」

ハリタ先生「いい着眼点だね。廊下や階段のように”2ヶ所から同じ照明を操作したい”ところは、3路スイッチを使う。取付高さは床から1.2mくらいが目安だよ」

③ コンセント ― 家具と家電を想像しながら

ペン太「次はコンセントですね。これはどれくらい付ければいいんですか?」

ハリタ先生「”その部屋で何を使うか”を想像するのがコツだよ。居室なら、まず各壁面に2口コンセントを配って、テレビ・掃除機・スマホの充電……と使う場面を思い浮かべる。家具で塞がれて使えない、なんてことにならないよう、家具の配置も頭に入れておくといい」

ペン太「高さはどうするんですか?」

ハリタ先生「一般の壁付けは床から25cmくらい。キッチンや洗面のカウンターの上で使うものは、天板より上に付ける。使う場所の高さに合わせるのが基本だね」

④ 弱電(通信) ― テレビ・LAN・インターホン

ハリタ先生「電気は”強電(電力)”だけじゃない。テレビ端子、LAN、インターホン、それにマルチメディアコンセントみたいな弱電もこの段階で置いておくよ」

ペン太「これも部屋ごとに考えるんですか?」

ハリタ先生「リビングにはテレビとLAN、各居室にもテレビ端子とLAN……と、暮らし方に合わせてね。玄関にはインターホンの子機、というふうに、住む人の動きを想像すると置き場所が決まってくる」

⑤ 1回路にどれだけ載せられるか ―― 回路容量の考え方

ペン太「先生、コンセントって全部まとめて1つの回路にしちゃダメなんですか?」

ハリタ先生「そこが大事なところ。まず”1つの回路にどれだけの電気を載せられるか”を知っておこう。一般的な分岐回路は20A、100Vなら――」

ハリタ先生「20A × 100V = 2,000VA(=2kVA) が、その回路の上限の目安になる」

ペン太「じゃあ、2,000VAまでならいくつでもコンセントをつないでいいんですか?」

ハリタ先生「上限ギリギリまで詰め込むと、同時に使ったときにブレーカーが落ちてしまう。だから実務では容量の80%くらいを目安に計画するんだ。20Aなら実質16A、100Vなら約1,600VAだね。目安として、居室のコンセントは6〜8個くらいまでを1回路にまとめる、と覚えておくといいよ」

ペン太「200Vだと変わりますか?」

ハリタ先生「同じ20Aでも、200Vなら 20A × 200V = 4,000VA まで載る。だからエアコンやIHのように大きな電気を使う機器は、200Vにして負担を軽くすることが多いんだ」

1回路の容量(20A分岐の目安)
・上限 … 100V:20A×100V=2,000VA / 200V:20A×200V=4,000VA
・計画は容量の80%を目安(20A→16A|100V:約1,600VA / 200V:約3,200VA)
・居室コンセントは1回路あたり6〜8個を目安にまとめる

⑥ 専用回路が必要な機器を洗い出す

ハリタ先生「回路の容量がわかると、次に見えてくるのが”1台で回路を埋めてしまう機器”だ。消費電力の大きい機器は、その機器だけの専用回路にする。ほかと共用すると、すぐブレーカーが落ちてしまうからね」

ハリタ先生「住戸で専用回路にする代表的なものは、このあたり」

機器電圧回路(目安)
エアコン(各室)100V / 200V専用20A(能力の大きい機種は200V)
IHクッキングヒーター200V専用(20〜30A級)
電子レンジ・オーブンレンジ100V専用(消費電力が大きい)
食器洗い乾燥機100V専用
洗濯乾燥機(特にドラム式)100V専用が望ましい
温水洗浄便座100V専用(水まわりなのでアース付き)
EV充電(将来対応)200V専用(共用側との兼ね合いは後の回で)

ペン太「けっこうありますね……。これを見落とすとどうなるんですか?」

ハリタ先生「入居してから『レンジと炊飯器を同時に使うとブレーカーが落ちる』なんてクレームになる。だから計画の段階で、大きい家電はどこに置かれるかを想像して、専用回路として1本ずつ確保しておくんだ。この専用回路の数が、次の分電盤の回路数に効いてくるよ」

⑦ 最後に分電盤へまとめる

ハリタ先生「照明・コンセント・専用回路が出そろったら、それを分電盤に集約する。各回路をブレーカーに割り振って、必要な回路数を数えるんだ」

ペン太「回路数って、どうやって決まるんですか?」

ハリタ先生「照明やコンセントの一般回路に、さっきの専用回路を足していく。分電盤は玄関の近くやパイプスペース脇など、幹線を引き込みやすくて点検しやすい場所に置く。……で、ここで決めた”1戸ぶんの分電盤”が、次回からの『幹線』や『受電方式』の話につながっていくんだよ」

ペン太「なるほど! 1戸の中身が決まると、それが建物全体につながっていくんですね」

+α ユニットケーブルという選択 ― 同じ住戸だからできる合理化

ユニットケーブルのしくみ 図解
▲ 分電盤〜各器具を工場でコネクタ付きに一体製作。現場は“カチッ”と差すだけ

ハリタ先生「ここまでで1戸ぶんの配線が固まったね。マンションではもう一歩進んで、ユニットケーブル(住戸用のプレハブ配線)を採用することが増えているんだ」

ペン太「ユニットケーブル……? ふつうのケーブルと何が違うんですか?」

ハリタ先生「分電盤から各部屋のコンセント・スイッチ・照明までの配線を、工場であらかじめコネクタ付きのユニットに仕立てておくんだ。現場では、ジョイントボックスにコネクタを”カチッ”と差し込むだけ。切ったり結線したりを現場で繰り返さなくて済む」

ペン太「へえ! でも、なんでマンションで増えてるんですか?」

ハリタ先生「マンションは同じ住戸が何十戸も並ぶだろう。だから、標準化した1戸ぶんの配線をそのまま工場製作にまわせる。効果はこんな感じだね」

ユニットケーブル採用のねらい
工期短縮 … 現場は”差すだけ”で配線が進む
品質の均一化 … 工場加工なので仕上がりが安定
省人化 … 職人不足のなかで現場作業を減らせる
歩掛りの安定 … 同じ住戸×戸数で数量が読みやすい

ペン太「いいことだらけじゃないですか。じゃあ全部これにすれば……?」

ハリタ先生「そう単純でもないんだ。ユニットケーブルは事前に設計を固めておくことが前提になる。間取りやコンセント位置を後から住戸ごとに変えると、ユニットが合わなくなってしまう。だからこそ、最初の1戸を丁寧に標準化しておくことがここで効いてくるんだよ」

ペン太「なるほど……。①からの積み重ねが、そのまま現場の合理化につながるんですね」

ハリタ先生「その通り。設計段階で”繰り返せる1戸”をつくれるかどうか。それがマンション電気設計の腕の見せどころなんだ」

作図の完成イメージ ― 記号が入るとこう見える

住戸内の平面図 作図イメージ
▲ 間取りに照明・スイッチ・コンセント・専用回路・弱電・分電盤を落とし込んだ例(記号は簡略イメージ)

まとめ ― 住戸内は「1戸を丁寧に、あとは展開」

住戸内の電気計画は、照明 → スイッチ → コンセント → 弱電 → 専用回路 → 分電盤の順で進めると迷いません。マンションは同じ住戸が並ぶので、この1戸ぶんの計画がそのまま何十戸にも展開できます。まずはここから手をつけるのが、実際の設計でも自然な入り方です。

次回は、この住戸をどう建物に配っていくか ―― 「幹線の計画」に進んでいきます。