電源別置形と耐火配線|大規模建物の非常照明はどう配線する?
「非常照明の電源って、器具の中の電池だけじゃないの?」
大規模な建物の図面を見て、こう戸惑った経験はありませんか。実は非常用照明には電源が2方式あり、大きな建物では「中央の電源+耐火配線」という組み方が出てきます。この記事では電源別置形と、その要になる耐火・耐熱配線を、実務目線でまるっと整理します。
そもそも非常照明の「電源」は2方式ある
🐧 ペン太:先生、非常灯って全部あの器具に電池が入ってるものだと思ってました。
🦔 ハリタ先生:それは電池内蔵形だね。確かに中小規模ではそれが主流。でももう一つ、電源別置形という方式がある。器具の外=建物の中央にある蓄電池設備や自家発電から電気を送るタイプだよ。
ざっくり言うと、電池を「どこに置くか」で2つに分かれます。器具の中に置くのが電池内蔵形、建物の中央にまとめて置くのが電源別置形です。
| 項目 | 電池内蔵形 | 電源別置形 |
|---|---|---|
| 電源のありか | 器具ごとの内蔵電池 | 中央の蓄電池/自家発電 |
| 器具までの配線 | 一般配線(VVF)でOK | 耐火・耐熱配線が必要 |
| 予備電源の寿命 | 短め(電池交換が必要) | 長く信頼性が高い |
| 向く規模 | 中小規模 | 大規模・多灯 |
| 初期コスト | 器具は割高/配線は安い | 配線・中央電源で高くなりがち |
どちらの方式でも、停電後30分以上の点灯、床面で1lx(LEDは2lx)以上という性能は共通です(建築基準法施行令126条の5/告示1830号)。違うのは「電源をどこから、どう引くか」です。
電源別置形とは? 中央電源から耐火配線で各器具へ
🐧 ペン太:中央にまとめると、何がいいんですか?
🦔 ハリタ先生:予備電源の寿命が長く、信頼性が高いのが大きい。器具側は電池を持たないので軽くて長持ち、灯数が多い大規模建物ほど集中管理で経済的になるんだ。
電源別置形では、常用電源(商用)が断たれると自動的に非常電源へ切り替わり、復旧すると自動で元に戻ります。非常電源は蓄電池設備か、40秒以内に始動する自家発電設備(またはその組み合わせ)とされています。
ここがポイント:中央の非常電源から器具までの配線は、火災の熱でやられると意味がありません。だから、この区間を耐火・耐熱配線にすることが求められます。電池内蔵形が一般配線でよいのは、器具の中に電池があり配線が切れても点灯するから。別置形は電源が遠いぶん、配線そのものを火に強くするわけです。
告示1830号の配線ルール
非常用照明装置の配線は、昭和45年建設省告示1830号にルールが定められています。電源別置形で「電源~器具」を施工するときは、次のいずれかの方法によります。
| 配線の方法(いずれか) | 内容 |
|---|---|
| 耐火構造に埋設 | 耐火構造の主要構造部(コンクリート等)の内部に埋設する |
| 不燃天井裏+鋼製電線管 | 下地・仕上げを不燃材料とした天井の裏に、鋼製電線管で配線 |
| 準耐火構造の床・壁内 | 準耐火構造の床・壁の内部に配線する |
| 耐火バスダクト | 裸導体バスダクト、または耐火バスダクトを用いる |
| MIケーブル | 無機絶縁(MI)ケーブルを用いる |
電線は600V二種ビニル絶縁電線(HIV)その他これと同等以上の耐熱性を持つものを使います。実務では用途に応じて、HIV・MIケーブル・FP(耐火ケーブル)・HP(耐熱電線)などが選ばれます。
配線の3原則(告示1830号)
・専用回路にする。誘導灯・非常照明以外の電気回路には接続しない。
・器具の口出線と配線は直接接続し、途中にスイッチやコンセントを設けない。
・開閉器には「非常用の照明装置用」である旨を表示する。
🐧 ペン太:スイッチを付けちゃダメなのは、内蔵形の回路と同じ考え方ですね。
🦔 ハリタ先生:そう。いざというときに確実に点くようにする、という目的は共通なんだ。別置形はそこに「配線を火に耐えさせる」が加わる、と整理するといいよ。
内蔵形と別置形、どう使い分ける?
結論はシンプルで、中小規模は電池内蔵形、大規模・多灯は電源別置形が目安です。内蔵形は配線がラクで器具側の設計自由度も高く、コストも読みやすい。一方、灯数がとても多い建物や、非常電源を自家発電で持つような大規模施設では、別置形のほうが電源の信頼性・維持のしやすさ・トータルコストで有利になることがあります。
🦔 実務ワンポイント:早い段階で方式を決める
別置形は耐火配線のルートと中央電源スペースが計画に効いてきます。後から「やっぱり別置形」となると、配線ルートや電気室の見直しが大変です。規模・灯数・非常電源の方針から、早い段階で方式を固めておくのがおすすめです。
※ 配線方法や非常電源の細かな取り扱いは、所轄・特定行政庁で確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 電池内蔵形なら耐火配線はいらない?
A. 器具までの配線は一般屋内配線(VVF等)で施工できます。器具の中に電池があり、配線が断たれても点灯するためです。ただし、器具の選定や回路の取り方など内蔵形なりのルールはあります。
Q. 「耐火配線」と「耐熱配線」は違うもの?
A. どちらも火災の熱に耐えさせるための配線ですが、要求される耐熱の程度や施工方法が異なります。非常用照明装置は告示1830号に定める方法(埋設・鋼製電線管・MIケーブル等)により施工します。使う場所ごとに要求が変わるため、図面・仕様で確認しましょう。
Q. 予備電源は何分もてばいい?
A. 建築基準法の非常用照明は30分以上が基本です(大規模建築物などでより施工します。誘導灯(消防法)とは基準が別なので混同しないよう注意します。
Q. 非常電源は蓄電池と自家発電、どちらでもいい?
A. 告示上は、充電を行うことなく30分継続点灯でき、常用電源が断たれたら自動で切り替わるものとされ、実務では蓄電池設備、または40秒以内に始動する自家発電設備(あるいはその組み合わせ)が用いられます。
まとめ
非常用照明の電源は電池内蔵形と電源別置形の2方式。別置形は中央の蓄電池・自家発電から給電するため、電源~器具の配線を耐火・耐熱配線にする必要があります。配線は告示1830号に沿って、専用回路・途中にSWやコンセントを設けない・開閉器に用途表示が基本。「どこから電源をとるか」で必要な配線が変わる——ここを押さえれば、方式選びと図面の意図がクリアになります。
照度や台数の考え方は「非常照明の照度計算・器具配置」、回路の取り方は「非常照明の回路は分電盤のどこ?」もあわせてどうぞ。





