この記事は、連載「照明設備の設計マニュアル」第6回 非常照明・誘導灯 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。
非常照明の回路の取り方の全体像

非常照明の器具は選べても、いざ盤図を描く段になって「この回路、分電盤のどこから取るんだっけ?」と手が止まる——実はここ、取り方を間違えるといざ停電したときに点灯しないという、こわいミスにつながります。

🤔 こんなモヤモヤ、ありませんか?

・非常照明の回路は、主幹の一次側?二次側?
・スイッチは付けていい?専用回路にすべき?
・一般照明や発電機の回路から取ってもいいの?

この記事では、主流の電池内蔵形を中心に、非常照明回路を分電盤のどこから・どう取るのかを、結線イメージとNG例つきで整理します。電源別置形との違いもあわせて確認しましょう。

非常照明の回路は分電盤のどこ?まるわかりノート
要点まとめ|主幹の二次側・専用・スイッチなしで常時通電が基本
ペン太ペン太
非常照明の回路って、普通の電灯回路に一緒に載せちゃダメなんですか?盤のどこから取るのか迷います。
ハリタハリタ
主幹の二次側から専用回路で、スイッチなしが結論です。常に充電状態を保つ必要があるからです。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 非常照明の回路は、主幹の一次側と二次側のどちらから取るか。なぜか
  • 非常照明の回路に点滅スイッチを設けてはいけない理由は2つ。それは何か
  • 電池内蔵形でも耐火配線は必要か

1. 結論:主幹の「二次側」から専用回路で、スイッチなし

トピック1:1. 結論:主幹の「二次側」から専用回路で、スイッチなし

まず結論から。電池内蔵形の非常照明は、分電盤の主幹の二次側から専用の分岐ブレーカで取り、スイッチを設けず常時通電にします。器具の中の電池を常に充電しておき、停電したら器具自身が検知して内蔵電池で点灯する——この動きを成立させるための取り方です。

電池内蔵形の分電盤での回路の取り方の結線図
主幹の二次側から専用回路で分岐、スイッチなしで常時通電。NG例も

🐧 ペン太:主幹の“二次側”ってわざわざ書くのは、一次側から取る人がいるからですか?

🦔 ハリタ先生:そう。ポイントは「停電したら切れる回路」から取ること。電池内蔵形は“供給が切れた”のを合図に点灯するから、停電しても生きている一次側や発電機回路から取ると、器具は「まだ電気が来てる」と思って点灯しないんだ。

動きで見る:停電したら非常灯はこう動く

言葉より、動きで見たほうが早いかもしれません。①平常時(充電中)→ ②停電で常用電源が絶たれる → ③非常灯が検知して内蔵電池に切替 → ④点灯、という一連の流れです。

停電時に非常灯が点灯するまでの流れのアニメーション
停電したら非常灯はこう動く|①平常→②停電→③検知・切替→④点灯(電池内蔵形)

補足:主幹の「二次側」から、電灯回路とは別回路で

非常照明の回路は、分電盤の主幹(メインブレーカ)の二次側から、電灯(一般照明)回路とは別の専用回路で組みます。ここでいう一次側/二次側は主幹のことで、分岐(小)ブレーカの一次側・二次側の話ではありません。

もし主幹の一次側(手前)から取ると、停電しても非常灯には電気が供給され続けるため、停電を検知できず点灯しません。電池内蔵形は「供給が絶たれたこと」を合図に点灯するので、必ず停電で切れる側=主幹の二次側から取ります。

非常照明の回路図|主幹の二次側から専用回路(○)と主幹の一次側NG(✕)の比較
回路図で比較|○ 主幹の二次側から電灯回路とは別の専用回路 ✕ 主幹の一次側から取る(停電で点灯しない)

🦔 覚え方:「主幹の二次側・電灯とは別回路」

主幹の一次側から取る、あるいは電灯回路と共用する——このどちらも「いざ停電で点灯しない」リスクにつながります。非常照明は主幹の二次側から、電灯回路と分けた専用回路で組むのが基本です。

盤結線図で「非常照明専用回路であること」「主幹の二次側から取っていること」を示しておくと、確認申請の審査でも接続方式が明快になります。

ここまでのポイント
  • 電池内蔵形は、分電盤の主幹の二次側から専用の分岐ブレーカで取る
  • スイッチは設けず常時通電にして、器具内の電池を常に充電しておく
  • 一次側/二次側は主幹の話で、分岐(小)ブレーカの一次側・二次側ではない
  • 主幹の一次側から取ると停電しても電気が来続けるため、停電を検知できず点灯しない

2. なぜスイッチを設けないのか

トピック2:2. なぜスイッチを設けないのか

非常照明回路には点滅スイッチを付けません。理由は2つ。ひとつは常に充電状態に保つため——スイッチで切ると充電されず、いざというとき電池が空になります。

もうひとつは、スイッチOFF=消灯を器具が「停電」と誤検知して点灯し、内蔵電池を無駄に消耗してしまうため。清掃や点検でうっかり切られないよう、そもそもスイッチを設けないのが基本です。

3. 電灯回路とは別の「専用回路」にする

トピック3:3. 電灯回路とは別の「専用回路」にする

非常照明は、電灯(一般照明)やコンセントとは別の専用回路で組みます。取り方の考え方は、前述の「主幹の二次側から、電灯回路とは別回路で」のとおりです。

ペン太ペン太
主幹の一次側から取ればもっと確実に電源が来ると思ってました…それもNGなんですか?
ハリタハリタ
電池内蔵形は供給が切れたことを停電信号にします。一次側からだと停電を検知できず点灯しません。
ここまでのポイント
  • スイッチを設けない理由は2つ。常に充電状態に保つためと、誤検知させないため
  • スイッチで切ると充電されず、いざというときに電池が空になる
  • スイッチOFF=消灯を器具が「停電」と誤検知し、内蔵電池を無駄に消耗する
  • 非常照明は電灯やコンセントとは別の専用回路で組む

4. やりがちなNG

トピック4:4. やりがちなNG
✕ 廊下・階段の点滅スイッチ回路に相乗り:スイッチOFFで消灯し、充電も止まる。
✕ 発電機やUPSだけで生きる回路から取る:停電を検知できず、肝心なときに点灯しない。
✕ 主幹の一次側から取る:停電を検知できず、いざというとき点灯しない。

5. 電池内蔵形と電源別置形のちがい

トピック5:5. 電池内蔵形と電源別置形のちがい
電池内蔵形と電源別置形の比較図
電源の取り方と配線が変わる|内蔵形はVVF可、別置形は耐火配線

ここまでは主流の電池内蔵形の話です。器具ごとに電池を内蔵し、常用電源で充電、停電で自動点灯。配線は一般配線(VVF)でよく、中小規模で広く使われます。

一方の電源別置形は、別置きの蓄電池設備や自家発電から専用の非常回路で給電し、停電時は非常電源に自動切替します。この場合の給電配線は耐火配線が必要で、大規模・多灯の建物で有利です。まずは自分の物件がどちらの方式かを確認しましょう。

回路の取り方判定理由
主幹の二次側から専用回路・スイッチなしOK停電で供給が切れ、器具が検知して内蔵電池で点灯する
廊下・階段の点滅スイッチ回路に相乗りNGスイッチOFFで消灯し、充電も止まる
発電機やUPSだけで生きる回路から取るNG停電を検知できず、肝心なときに点灯しない
主幹の一次側から取るNG停電しても供給が続くため、停電を検知できず点灯しない
ここまでのポイント
  • NG①|廊下・階段の点滅スイッチ回路に相乗りする
  • NG②|発電機やUPSだけで生きる回路から取る
  • NG③|主幹の一次側から取る
  • 内蔵形は一般配線(VVF)でよく中小規模向け、別置形は耐火配線が必要で大規模・多灯向け

6. 図面・施工でのチェックポイント

トピック6:6. 図面・施工でのチェックポイント

盤図では、非常照明の分岐に「非常照明用」と明示し、スイッチを介さない結線にします。回路名・負荷を盤内表示に残しておくと、保守時の誤操作(切り忘れ・切られ)を防げます。配線の耐火・耐熱の区分や範囲、回路構成の細部は、告示1830号や所轄の審査機関の運用で最終確認してください。

要否の入口は「その室が居室か」から。設置対象の考え方は「居室」とは?の記事、照度・台数は非常照明の照度計算・器具配置で解説しています。
項目電池内蔵形電源別置形
予備電源器具ごとの内蔵電池別置きの蓄電池設備・自家発電
平常時常用電源で充電する常用電源から給電する
停電時器具が検知して内蔵電池に切替非常電源へ自動切替
配線一般配線(VVF)でよい給電配線は耐火配線が必要
向く規模中小規模大規模・多灯

7. 非常照明と誘導灯のちがい(比較)

トピック7:7. 非常照明と誘導灯のちがい(比較)

名前が似ていて混同されがちですが、非常照明誘導灯は根拠法も役割も別ものです。回路のつくり方にも共通点と違いがあるので、あわせて押さえておきましょう。

非常照明と誘導灯のちがいの比較表
非常照明と誘導灯のちがい|根拠法・目的・点灯・非常電源・回路の比較
項目非常照明誘導灯
根拠法建築基準法(令126条の4)消防法(令26条)
目的停電時に床面を照らし避難を助ける避難口・避難方向を「案内」する(ピクト)
平常時消灯でよい常時点灯(原則)
点灯停電(常用電源の遮断)で点灯常時点灯。停電時も非常電源で継続
非常電源の時間30分以上20分以上(大規模・地階等は60分以上)
明るさの基準床面1lx(LED・蛍光灯は2lx)表示面の輝度・識別距離(A/B/C級)
回路(電源)専用回路・スイッチなしで常時通電同様に常時通電。原則スイッチで消さない

回路の観点では、どちらも電池内蔵形が主流で一般配線(VVF)が使え、スイッチで切らず常時通電にする点は共通です。大きな違いは、非常照明が「停電で点灯」なのに対し、誘導灯は「常時点灯」であること。誘導灯は消灯させない前提なので、回路の取り方も“消えない・切られない”ことが最優先になります。

なお一方がもう一方を兼ねることはできず、非常照明(建基法)と誘導灯(消防法)はそれぞれ独立して基準を満たす必要があります。誘導灯の級・有効範囲など詳細は誘導灯の設置基準の記事で解説しています。

ここまでのポイント
  • 盤図では非常照明の分岐に「非常照明用」と明示し、スイッチを介さない結線にする
  • 回路名・負荷を盤内表示に残すと、保守時の誤操作(切り忘れ・切られ)を防げる
  • 要否の入口は「その室が居室か」から判断する

よくある質問(FAQ)

トピック8:よくある質問(FAQ)

Q. 非常照明を一般照明と兼用できる?
A. 兼用する場合、その回路を点滅させず常時通電にする必要があります。実務では誤操作を避けるため、専用回路にするのが無難です。

Q. 電池内蔵形でも耐火配線は必要?
A. 内蔵電池が予備電源になるため、配線が焼けても点灯でき、一般に耐火配線は不要(VVF可)です。耐火配線が必要になるのは電源別置形の給電回路です。

Q. 主幹の一次側から取ってはいけない?
A. 電池内蔵形は「供給が切れたこと」を合図に点灯します。停電しても生きている一次側や発電機回路から取ると停電を検知できず点灯しないため、原則は主幹の二次側(停電で切れる常用電源)から取ります。

ペン太ペン太
専用回路・スイッチなしは覚えました。図面では他に何をチェックしますか?
ハリタハリタ
電池内蔵形か電源別置形かの区別と、床面1lx(LEDは2lx)・30分点灯の確保を押さえましょう。

まとめ

トピック9:まとめ

結論。「停電したら切れる回路」から取ることが、点灯の合図になる。だから主幹の二次側で、専用回路で、スイッチなしです。

図面でのチェック見るところ
電源の取り出し位置分電盤の主幹の二次側になっているか
回路の独立電灯(一般照明)・コンセントとは別の専用回路か
スイッチ回路の途中に点滅スイッチが入っていないか
盤内表示分岐に「非常照明用」と明示し、回路名・負荷を残しているか
器具の形式電池内蔵形か電源別置形か。別置形なら耐火配線の範囲
性能床面1lx(LED・蛍光灯は2lx)以上・30分以上の点灯を確保できているか
最終確認告示1830号や所轄の審査機関の運用で確認したか

押さえどころ

  • 一次側/二次側は主幹の話。分岐(小)ブレーカの一次側・二次側ではない
  • スイッチを設けない理由は「充電を止めないため」と「OFFを停電と誤検知させないため」
  • 電池内蔵形は配線が焼けても点灯するため、一般に耐火配線は不要
  • 誘導灯とは根拠法も目的も別。非常照明は建築基準法、誘導灯は消防法

電池内蔵形の非常照明は、分電盤の主幹の二次側から、専用回路で、スイッチを設けず常時通電——これが基本形です。狙いは「常に充電しておき、停電を検知して点灯させる」こと。

点滅スイッチ回路への相乗りや、発電機・UPSだけで生きる回路からの給電は、いざというとき点灯しないNGです。電源別置形は非常電源から耐火配線で給電します。まずは器具の形式を確認し、迷う点は告示・所轄で最終チェックを。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。