【コンセント設備の設計マニュアル④】接地と特殊コンセント ― 接地極・200V・EV・非常コンセント
こんにちは、HARITAの設計室です。連載「コンセント設備の設計マニュアル」第4回は接地と特殊コンセント。第3回までで一般的なコンセントの計画は一通り完成しました。今回は、残しておいた「ちょっと特殊な世界」――接地・200V・EV・非常コンセント――を一気に片づけます。
特殊、と言っても身構える必要はありません。4つとも「なぜそうなっているか」の理由がはっきりしているので、理由から覚えれば忘れません。
この3つ、すぐ答えられますか
- 接地極付(E)と接地端子付(ET)は、何が違いますか。
- 200Vを引くのに、大工事が要らないのはなぜですか。
- 非常コンセントは、誰が使う設備ですか。
ペン太
はりた- 接地 ― E・ET・EETの使い分けと、機器側から見る判断
- 200V ― 単相3線なら、もう建物に来ている
- EV充電の4つの掟(200V専用・防水と高さ・ケーブル長・将来)
- 非常コンセント ― 消防隊のための設備と、その設置対象
今回の全体像 ― 4つの特殊コンセント
- 特殊といっても、4つとも「なぜそうなっているか」の理由がはっきりしている
- 理由から覚えれば忘れない。丸暗記の必要はない
- 接地・200V・EV充電・非常コンセントの4つを、この回で片づける
① 接地 ― 「極付き」と「端子付き」は別モノ
接地(アース)は、漏電したときに電気を安全に地面へ逃がして人を守る仕組みです。基本の考え方は 新人講座 第15回 接地のきほんと接地線サイズ でおさらいできます。コンセント側で問題になるのは、接地極付(E)と接地端子付(ET)の使い分けです。
ポイントは「機器側がどちらの形で接地を求めているか」。アース付きプラグの機器なら極付、緑の接地線が別に出ている機器なら端子付、水回り家電が来る場所は両方付き(EET)にしておくと安全です。詳しい判断基準は コンセントの接地極・接地端子の使い分け へ。
接地工事そのもの(A〜D種と接地線サイズ)は 接地線の太さ早見表と接地工事の種類 にまとまっています。
| 種類 | 接地のとり方 | 向いている機器・場所 |
|---|---|---|
| 接地極付(E) | プラグの接地極を穴で受ける | アース付プラグの機器。OAエリア |
| 接地端子付(ET) | ねじ端子に接地線を後付けする | 緑の接地線が別に出ている機器 |
| 両方付き(EET) | 極も端子も備える | 冷蔵庫・洗濯機など、水回り家電が来る場所 |
- 接地は、漏電したときに電気を安全に地面へ逃がして人を守る仕組み
- コンセント側で問題になるのは、接地極付(E)と接地端子付(ET)の使い分け
- 判断のもとは「機器側がどちらの形で接地を求めているか」
② 200V ― もう建物に来ている電圧
「200Vを引く」と聞くと大工事に思えますが、単相3線式で受電している建物なら、200Vはすでに分電盤まで来ています。
仕組みの詳しい解説は 200Vコンセントへの切替工事|単相3線式の仕組み へ。注意点は2つ。200V回路は必ず専用回路にすること、そしてコンセントの形状が250V用に変わることです(100Vのプラグが物理的に挿さらない形になっているのは、誤挿入を防ぐ安全設計です)。
- 単相3線式で受電している建物なら、200Vはすでに分電盤まで来ている
- 両端の線(L1-L2)から取れば200V。大工事にはならない
- 200V回路は必ず専用回路にする。コンセントの形状も250V用に変わる
③ EV充電 ― これから一気に増える新顔
EV・PHEVの普通充電用コンセントは、住宅でも事務所でも設計依頼が急増中です。掟は4つ。
費用感・補助金・V2Hまで含めた全体像は EVコンセントを自宅に付ける費用と補助金【2026年版】 に詳しくまとめています。設計目線では「4:将来を見込む」がいちばん大事で、配管を太めに入れておくと、後からケーブルを入れ替えるだけで6kW充電器やV2Hに対応できます。
- EV・PHEVの普通充電用は200Vの専用回路。分電盤から1本引く
- 屋外は雨がかかる前提で防水形にし、操作しやすい高さに付ける
- 充電口の位置は車種で違う。届く位置に置き、将来のV2Hに備えて配管は太めに
④ 非常コンセント ― 消防隊のための設備
最後は毛色の違うやつ、消防法の非常コンセント設備です。これは入居者用ではなく、火災時に消防隊が照明器具や破壊器具の電源として使うためのコンセントです。
設置対象(11階以上の階・延べ1,000㎡以上の地下街)、設置位置、配線とケーブルサイズの選定方法は 非常コンセントの設置基準とケーブルサイズの選定方法 で詳説しています。電源側の考え方(非常電源の4種類)は 消防用設備の非常電源 とセットで読むと立体的に理解できます。
- 非常コンセントは入居者用ではなく、火災時に消防隊が照明器具や破壊器具の電源として使う設備
- 設置対象は11階以上の階と、延べ1,000㎡以上の地下街
- 赤い表示灯+専用ボックスに収まり、耐火配線+非常電源から供給される
ペン太
はりたまとめ
特殊コンセントは、覚えるものではなく、理由から引き出すものです。接地は機器の都合、200Vは受電方式の都合、EV充電は将来の都合、非常コンセントは消防の都合。判断に迷ったら、その都合に戻れば答えが出ます。
4つを、1枚で見る
| どんな都合で決まるか | 設計で外さないこと | 外すと起きること | |
|---|---|---|---|
| 接地(E・ET・EET) | 機器側がどちらの形で接地を求めているか | 水回り・家電置場はEET、OAエリアはE、それ以外は一般 | 機器の接地がとれない、または全部EETでコストが上がる |
| 200V | 単相3線で受電しているかどうか | 専用回路にし、形状は250V用にする | 他負荷と共用して容量が足りない、プラグが挿さらない |
| EV充電 | 将来どこまで見込むか | 200V専用・防水と高さ・ケーブル長・配管は太めに | 届かない位置に付く、あとから配管をやり直す |
| 非常コンセント | 消防法の要求 | 11階以上・地下街で設置。耐火配線+非常電源、日常用と別系統 | 火災中に生きていない、日常用と混ざる |
接地と200V ― 建物側の事情で決まる
- 接地は「機器側がどちらを求めているか」で極付(E)・端子付(ET)を使い分け。水回りはEET
- 200Vは単相3線ならすでに来ている。専用回路+250V形状がセット
EVと非常 ― 将来と、法令で決まる
- EV充電は「200V専用・防水・ケーブル長・将来の配管」の4つの掟
- 非常コンセントは消防隊用。11階以上・地下街で登場し、耐火配線+非常電源で生かす
最後に ― 場所で使い分けるのが設計
「とりあえず全部EET」は安全側ではありますが、コストが上がります。水回り・家電置場はEET、OAエリアは極付(E)、それ以外は一般 ― 場所で使い分けるのが設計です。そして使った記号は、必ず凡例に載せる。次回はこの計画が、壁の中でどう形になるかを見ていきます。
よくある質問
Q1. とりあえず全部EETにしておけば楽では?
A. 安全側ではありますがコストが上がります。水回り・家電置場はEET、OAエリアは極付(E)、それ以外は一般、と場所で使い分けるのが設計です。
Q2. 200Vにすると電気代は上がる?
A. 電圧が2倍になっても、同じ電力なら電流が半分になるだけで電気代は同じです。むしろ大容量機器を効率よく動かせます。
Q3. 非常コンセントは普段使ってもいい?
A. 使いません。専用ボックスに収まった消防隊専用の設備で、日常用のコンセントとは完全に別系統として設計します。
次回予告
第5回は「施工・検査」。設計した計画が現場でどう形になるか。ボックスのおさまり、結線、検査でのチェックポイント、そしてよくあるトラブルの芽の摘み方まで。設計者こそ知っておきたい現場の話です。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。
→ 公開しました:第5回 施工・検査 ― 現場でのおさまりとトラブル予防
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