この記事は連載「コンセント設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
コンセント設備の設計マニュアル① 計画の全体フローと負荷想定の全体像
コンセント設備の設計マニュアル第1回。「何個つける」より先に「何が挿さるか」を数える負荷想定から、配置・回路分割・接地選定までの全体フロー。

こんにちは、HARITAの設計室です。今回から「コンセント設備の設計マニュアル」という新しい連載を始めます。

コンセントは、電気設備の中でいちばん身近で、いちばん「なんとなく」で決められがちな設備です。図面の隅に記号をポンポンと置いていくだけなら誰でもできます。

でも、竣工後に「ブレーカーがよく落ちる」「複合機を置く場所にコンセントがない」「増設工事に数十万円」というクレームになるのは、たいていコンセントです。

この連載では、コンセント計画を「個数決め」ではなく「電気の割り振り」として、実務の順番どおりに解説していきます。工事項目別の全体像は 設計・施工マニュアル(工事項目別 計画ステップ) にまとめてあるので、あわせてどうぞ。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 「この部屋、コンセントいくつ?」に答える前に、何を決めていますか。
  • 負荷を4つに分けるとしたら、どう分けますか。
  • 図面に現れにくい負荷を、3つ挙げられますか。
ペン太ペン太
この部屋、コンセントいくつ付けておけばいいですか。
はりたはりた
その質問に先輩がすぐ答えられるのは、頭の中で「その部屋で何を使うか」の想定が先に終わっているからです。個数は、その結果にすぎません。

この連載の地図(全6回)

トピック1:設計を進める手順、そのままの順番

連載は、実際に設計を進める手順そのままの順番で構成しています。

コンセント設備の設計マニュアル全6回の地図1負荷の想定「何が挿さるか」を数える今回!2配置計画どこに・いくつ・どの高さ3回路分割どのブレーカーに載せる?4200V・EV・非常用5施工・検査現場のおさまりと確認6図面化・積算数量とお金にするHARITAの設計室|harita2021.com
図1:コンセント設備の設計マニュアル 全6回の地図 ― 実際に設計を進める手順そのままの順番
  • 第1回(今回):計画の全体フローと負荷の想定 ― 「何が挿さるか」を数える
  • 第2回:配置計画 ― 設置数・取付高さ・器具の選び方
  • 第3回:回路分割 ― 1回路の個数・専用回路分岐回路の設計
  • 第4回:接地と特殊コンセント ― 接地極・200V・EV・非常コンセント
  • 第5回:施工・検査 ― 現場でのおさまりとトラブル予防
  • 第6回:図面化と拾い・積算 ― 計画を「数量とお金」にする
ここまでのポイント
  • 連載は、実際に設計を進める手順そのままの順番で構成している
  • 第1回 負荷想定 → 第2回 配置 → 第3回 回路分割 → 第4回 接地と特殊 → 第5回 施工・検査 → 第6回 図面化と拾い・積算
  • 工事項目別の全体像は「設計・施工マニュアル」にまとめてある

コンセント計画は「個数決め」ではない

トピック2:個数は、結果にすぎない

新人のころ、先輩に「この部屋、コンセントいくつ付けとけばいい?」と聞いて「2〜3個でいいよ」と言われた経験はないでしょうか。実は、この会話には大事な前提が隠れています。先輩の頭の中では「その部屋で何を使うか」の想定が先に終わっていて、個数はその結果にすぎない、ということです。

コンセント計画の本質は、建物の中で使われる電気機器を洗い出し、それぞれに適切な電気の通り道を割り振ることです。個数・位置・回路・種類は、すべてこの「何が挿さるか」から逆算で決まります。だから連載の第1回は、図記号でも取付高さでもなく、負荷の想定から始めます。

コンセント計画 = 電気の割り振り一般用誰が何を挿すかは分からない → 配置で決めるOA用デスクまわりに集中 → レイアウト図が先専用回路大きい・止めたくない機器 → 1機器1回路特殊(200V・EV・非常用) 「とりあえず2〜3個」…は根拠のない個数決め!HARITAの設計室
図2:コンセント計画は「個数決め」ではなく、電気の割り振り
ここまでのポイント
  • コンセント計画の本質は、使われる電気機器を洗い出し、それぞれに適切な電気の通り道を割り振ること
  • 個数・位置・回路・種類は、すべて「何が挿さるか」から逆算で決まる
  • だから第1回は、図記号でも取付高さでもなく、負荷の想定から始まる

計画フローの全体像 ― 6つのステップ

トピック3:地図を持ってから、歩き出す

まず、コンセント計画がどんな手順で進むのか、地図を持っておきましょう。

計画フローの全体像1負荷の想定第1回・今回2配置計画第2回3回路分割第3回4第4回5施工・検査第5回6図面化・積算第6回HARITAの設計室
図3:コンセント計画の6ステップ ― 負荷想定から図面化・積算まで

ステップ① 負荷の想定 ― 何が挿さるかを数える

室ごとに、使われる電気機器を洗い出します。ここが今回のテーマです。

ステップ② 配置計画 ― どこに・いくつ・どの高さで

想定した機器から、設置数・位置・取付高さを決め、器具の種類(接地極付・抜け止め・防雨形など)を選びます。→ 第2回で詳説

ステップ③ 回路分割 ― どのブレーカーにぶら下げるか

1回路に接続する個数の目安と、専用回路にすべき負荷を仕分けて、分電盤の回路構成に落とし込みます。→ 第3回で詳説

ステップ④ 接地・特殊コンセントの選定

接地極・接地端子の使い分け、200V・EV・非常コンセントなど特殊な負荷への対応を決めます。→ 第4回で詳説

ステップ⑤ 施工・検査

ボックスのおさまり、結線、検査時のチェックポイント。設計と施工の橋渡しです。→ 第5回で詳説

ステップ⑥ 図面化・拾い・積算

計画を「あとで拾える図面」にし、数量と金額につなげます。→ 第6回で詳説

ここまでのポイント
  • 計画は 負荷想定 → 配置 → 回路分割 → 種類・接地 → 施工・検査 → 図面化 の6ステップ
  • この地図を持ってから歩き出すと、途中で迷わない
  • 各ステップが、そのまま連載の各回に対応している

ステップ① 負荷の想定 ― 4つの分類で数える

トピック4:数えるのではなく、分けて整理する

「何が挿さるか」を数えると言っても、テレビ1台・掃除機1台と数え上げていたらキリがありません。実務では、負荷を4つに分類して考えると整理できます。

「何が挿さるか」は 4分類 で数える?一般用誰が何を挿すか分からない→ 室の用途×広さ・配置で決めるOA用PC・複合機がデスクに集中→ レイアウト図をもらってから専用回路大きい・止めたくない機器→ 1機器=1回路で独立させる特殊200V・EV・非常コンセント HARITAの設計室
図4:コンセント負荷の4分類 ― 一般用・OA用・専用回路・特殊

分類① 一般用 ― 「誰が何を挿すかわからない」コンセント

清掃機器やスマホの充電など、不特定の機器が挿さる、いわゆる普通のコンセントです。機器を特定できないぶん、室の用途と広さから配置で決めていきます(第2回のテーマ)。コンセントの形と定格の関係は コンセントの種類と読み方 で先に押さえておくと、このあとの話がぐっと楽になります。

分類② OA用 ― 情報機器のかたまり

パソコン・モニタ・プリンタ・ネットワーク機器など、事務室のデスクまわりに集中する負荷です。1台1台は小さくても、島型のデスクレイアウトでは1か所に十数台がぶら下がります。デスクレイアウト図をもらってから考えるのが鉄則です。

分類③ 専用回路 ― 「この機器のためだけ」の負荷

エアコン・給湯器・複合機・厨房機器・自動販売機など、消費電力が大きい、または動作を止めたくない機器は、他と共用せず専用回路にします。なぜ専用にするのかは エアコンに専用コンセントが必要な理由 が分かりやすい例です。

住宅の台所はこの分類の宝庫で、キッチンのコンセント計画 に家電の消費電力一覧をまとめています。

分類④ 特殊 ― 200V・EV・非常用

単相200Vの機器(大型エアコン・IH・工具類)、EV充電、消防法で求められる非常コンセントなどです。電圧・法規・引込み方が一般用と違うため、計画の早い段階で有無を確認しておきます。詳しくは第4回で扱いますが、200Vコンセントの仕組み非常コンセントの設置基準 で先取りできます。

分類どんな負荷か計画での扱い
① 一般用清掃機器・スマホの充電など、不特定の機器が挿さる機器を特定できないので、室の用途と広さから配置で決める
② OA用PC・モニタ・プリンタ・ネットワーク機器1台は小さくてもデスク島に集中する。レイアウト図をもらってから考える
③ 専用回路エアコン・給湯器・複合機・厨房機器・自動販売機など消費電力が大きい、または止めたくない機器。他と共用しない
④ 特殊単相200V機器・EV充電・非常コンセント電圧・法規・引込み方が違う。計画の早い段階で有無を確認する
ここまでのポイント
  • 「何が挿さるか」を1台ずつ数え上げるとキリがない。4分類で考えると整理できる
  • 分けてから数えることで、抜けと重複が見つけやすくなる
  • 特殊(200V・EV・非常)は早い段階で有無を押さえておく

見落とすと手戻りになる負荷チェックリスト

トピック5:数え間違いより、数え漏れ

負荷の想定でこわいのは「数え間違い」より「数え漏れ」です。図面に現れにくく、あとから発覚しやすい負荷をリストにしました。打合せや現地調査のチェックリストとして使ってください。

見落としやすい負荷チェックリスト複合機・シュレッダー給湯室狭い場所に家電が集中する自動販売機決まるのが遅い → 先に確保サーバーラック24時間稼働。共用はNG別途工事に紛れて漏れる廊下・ホールの清掃用清掃動線に一定間隔で屋外・外構防水仕様の検討を忘れずに将来増設の予備レイアウト変更に備える!数え間違いより数え漏れ!打合せ・現地調査の持ち物リストとして使ってくださいHARITAの設計室
図5:見落としやすい負荷チェックリスト ― 図面に現れにくい負荷を先に潰す
  • 複合機・シュレッダー:起動時の電流が大きく、共用回路だとブレーカーが落ちる定番
  • 給湯室:ポット・冷蔵庫・電子レンジ・食洗機が狭い場所に集中する
  • 自動販売機:設置が決まるのが工事の終盤になりがち。位置と回路を先に確保
  • サーバーラック・通信機器:24時間稼働。清掃用と共用すると事故のもと
  • 電気錠・自動ドア・セキュリティ機器:施主支給・別途工事に紛れて漏れやすい
  • 廊下・ホールの清掃用:日常の清掃動線に沿って一定間隔で必要
  • 屋外・外構:看板・イベント・散水・防犯カメラ。防水仕様の検討が必要
  • 将来増設のスペース:レイアウト変更・テナント入替を見込んだ予備
作図イメージ:負荷想定シートの書き方。室ごとに機器を書き出し、4分類に仕分けて、想定する回路まで置いていく
図6:作図イメージ ― 負荷想定シート。室ごとに機器を書き出し、4分類に仕分けて、想定する回路まで置く。下段はこのシートが6ステップのどこにあるか
ここまでのポイント
  • 負荷の想定でこわいのは「数え間違い」より「数え漏れ」
  • 複合機・給湯室・自動販売機・サーバー・電気錠・清掃用・屋外・将来増設は漏れやすい
  • 打合せや現地調査のチェックリストとして使う
ペン太ペン太
コンセント1個あたり何VAで見込めばいいですか。
はりたはりた
一律に「1個◯VA」と決めるのではなく、回路側で管理するのが実務の考え方です。1回路に何個という話は、第3回でまとめて扱います。

まとめ

トピック6:何が挿さるかから、逆算する

個数は結果であって、出発点ではありません。コンセント計画の本質は、建物の中で使われる電気機器を洗い出し、それぞれに適切な電気の通り道を割り振ることです。位置も回路も種類も、すべて「何が挿さるか」からの逆算で決まります。

4つの分類と、その扱い

分類代表的な負荷決まり方外すと起きること
一般用清掃機器・充電器など不特定室の用途と広さから配置で決める(第2回)使われない位置に付き、延長コードが増える
OA用PC・モニタ・プリンタ・通信機器デスクレイアウト図をもらってから決める島に十数台がぶら下がり、回路が足りなくなる
専用回路エアコン・複合機・厨房機器・自販機他と共用せず1機器1回路(第3回)同時に使うとブレーカーが落ちる
特殊200V機器・EV充電・非常コンセント早い段階で有無を確認する(第4回)電圧・法規・引込み方の違いが後から発覚する

考え方と、数え方

  • コンセント計画は「個数決め」ではなく「電気の割り振り」。すべては「何が挿さるか」からの逆算
  • 負荷は「一般用・OA用・専用回路・特殊」の4分類で数えると整理できる
  • 数え間違いより数え漏れがこわい。チェックリストで潰す

進め方

  • 計画は 負荷想定→配置→回路分割→種類・接地→施工・検査→図面化 の6ステップで進む

最後に ― 記号を置き始める前に

図面の隅に記号をポンポンと置いていくだけなら誰でもできます。けれど竣工後に「ブレーカーがよく落ちる」「複合機を置く場所にコンセントがない」と言われるのも、たいていコンセントです。負荷想定が埋まらないうちは、記号を置き始めない。それが、この連載を通してのいちばんの約束です。

よくある質問

トピック7:現場でよく出る、3つの疑問

Q1. コンセント1個あたり何VAで見込めばいいですか?
A. 一律に「1個◯VA」と決めるのではなく、回路側で管理するのが実務の考え方です。1回路に接続できる個数や負荷の考え方は第3回で詳しく解説します。先取りしたい方は 1回路あたりのコンセント接続個数の選定方法 へ。

Q2. 住宅と事務所で考え方は変わりますか?
A. 4分類の考え方は同じですが、住宅は「専用回路の割合」が高くなります。キッチン書斎(在宅勤務) の計画例が参考になります。

Q3. この連載と既存の解説記事はどう使い分ければいいですか?
A. 連載は「手順と判断」、個別記事は「根拠と深掘り」です。連載を読みながら、気になったところでリンク先に潜る、という使い方を想定しています。全体の地図は 設計・施工マニュアル にあります。

次回予告

トピック8:次は、配置計画へ

第2回は「配置計画」。想定した負荷を、どこに・いくつ・どの高さで置くか。室用途別の設置数の目安と、接地極付・抜け止め・防雨形といった器具の選び分け、図記号の書き方まで進めます。お楽しみに。

→ 公開しました:第2回 配置計画 ― どこに・いくつ・どの高さ

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。