避難器具は、階段などの避難施設で避難できなかった人のために備える設備です。消防用設備等のなかでは電気を使わない数少ない設備で、電気設備設計者が図面に描くことはまずありません。それでも押さえておく価値があるのは、避難器具の要否が収容人員直通階段の数で決まり、建築計画・防火区画・非常警報設備・誘導灯といった他の判断と同じ土俵に乗っているからです。

この設備は、条文の構造が消防用設備等のなかでも特に入り組んでいます。しきい値の人数が用途で5通りに分かれ、減免の規定が施行規則第26条に第1項から第7項まで7本あり、寸法はすべて告示にあって省令には書かれていません。この記事では、令第25条・規則第26条・規則第27条・平成8年消防庁告示第2号を条文の文言のまま整理し、市販の解説書に見られる誤りを一次資料で訂正します。

避​難器具が必要になる階と収​容人員用途(令別表第一)対象になる階収​容人員のしきい値(六)項 病院・診療所・助産所社会福祉施設・幼稚園等2階以上の階又は地階20人以上下階に特定用途があるときは10人以上(五)項 旅館・ホテル・宿泊所寄宿舎・下宿・共同住宅2階以上の階又は地階30人以上下階に特定用途があるときは10人以上(一)〜(四)項、(七)〜(十一)項劇場・遊技場・店舗・学校・図書館 等2階以上の階 又は地階※耐​火構造とした建築物の2階を除く50人以上(十二)項 工場・スタジオ(十五)項 事務所その他3階以上の階又は地階3階以上の無​窓階・地階は100人以上その他の階は150人以上上記以外で、避​難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていない階3階以上(二)(三)項等は2階以上10人以上柱書に「避​難階及び十一階以上の階を除く」とある。1階と11階以上には避​難器具は要らない「下階に特定用途」=(一)〜(四)項、(九)項、(十二)項イ、(十三)項イ、(十四)項、(十五)項が下階にあるときHARITA
図1:しきい値は用途で20人・30人・50人・100/150人・10人と変わる。「一律50人」ではない

避難器具が必要になる階|しきい値は用途で5通り

令第25条第1項の柱書はこう書き出します。

避難器具は、次に掲げる防火対象物の階(避難階及び十一階以上の階を除く。)に設置するものとする。

まず柱書で1階(避難階)と11階以上が外れます。11階以上ではしごや救助袋で降りることは現実的でないためで、代わりにスプリンクラー設備や非常用エレベーターなど別の手段で担保する考え方です。

用途対象になる階収容人員
第1号(六)項=病院・診療所・助産所・社会福祉施設・幼稚園等2階以上の階又は地階20人以上(下階に特定用途があるときは10人以上)
第2号(五)項=旅館・ホテル・宿泊所・寄宿舎・下宿・共同住宅2階以上の階又は地階30人以上(下階に特定用途があるときは10人以上)
第3号(一)〜(四)項、(七)〜(十一)項2階以上の階又は地階
ただし特定主要構造部を耐火構造とした建築物の2階を除く
50人以上
第4号(十二)項=工場・スタジオ、(十五)項=事務所その他3階以上の階又は地階3階以上の無窓階・地階は100人以上
その他の階は150人以上
第5号前各号以外で、避難階又は地上に直通する階段が2以上設けられていない階3階以上
((二)(三)項、および(十六)項イで2階に(二)(三)項用途があるものは2階以上)
10人以上

「下階に特定用途がある」というのは、条文では「下階に同表(一)項から(四)項まで、(九)項、(十二)項イ、(十三)項イ、(十四)項又は(十五)項に掲げる防火対象物が存するもの」です。下に不特定多数が出入りする用途や火気を扱う用途があると、上階の避難が難しくなるため、しきい値が10人まで下がります。

「避難器具は50人以上」は覚え方として危ない

50人以上なのは第3号((一)〜(四)項・(七)〜(十一)項)だけです。病院・福祉施設は20人、共同住宅・ホテルは30人、下階に特定用途があればどちらも10人、工場・事務所は100人/150人、二方向避難が確保されていない階は10人。用途を見ずに50人で判断すると、共同住宅や福祉施設で漏れます。

「2階には避難器具は不要」も誤り

2階が外れるのは第4号(工場・事務所)だけです。第1号・第2号は2階以上が対象、第3号も2階以上が対象で、除かれるのは「特定主要構造部を耐火構造とした建築物の2階」に限られます。さらに第5号により、(二)項(三)項(キャバレー・料理店等)や、(十六)項イで2階にそれらの用途がある建物は、2階から対象になります。

収容人員そのものの数え方は無窓階と収容人員で整理しています。第4号の「無窓階」の判定も同じ記事で扱っています。

避難器具の個数と種類

避​難器具の個数はこう決まる第1号・第2号・第5号の階(六)項・(五)項・二方向避難なし単位 100人100人以下 → 1個100人までを増すごとに +1個第3号の階(一)〜(四)・(七)〜(十一)項単位 200人200人以下 → 1個200人までを増すごとに +1個第4号の階(十二)項・(十五)項単位 300人300人以下 → 1個300人までを増すごとに +1個規則第26条第1項|次の2つをどちらも満たすと、単位人数を読み替える① 特​定主​要構造部を耐​火構造としたものであること  ② 直​通階段を避​難階段又は特別避​難階段としたものが2以上あること100人 → 200人  200人 → 400人  300人 → 600人例)(五)項 共同住宅の3階・収​容人員350人/特​定主​要構造部が耐​火構造・屋外避​難階段が2① 原則(100人単位) 1個 + 250人分 → 4個② 規則26条1項の読替え(200人単位) 1個 + 150人分 → 2個③ 規則26条2項 避​難階段の数(2)を引く → 0個 1に満たないので、この階には避​難器具を設置しないことができる規則第26条第1項は「個数の緩和」であって免除ではない。0個になるのは第2項の階段数控除まで進んだときHARITA
図2:個数は用途区分ごとの単位人数で決まる。耐火+避難階段2以上で単位が倍になる

個数は用途区分ごとの「単位人数」で決まる

令第25条第2項第1号は、階の区分ごとに単位人数を変えています。

階の区分単位人数個数
第1号・第2号・第5号の階100人100人以下は1個以上。100人を超えるときは1個に100人までを増すごとに1個を加えた個数以上
第3号の階200人200人以下は1個以上。200人を超えるときは1個に200人までを増すごとに1個を加えた個数以上
第4号の階300人300人以下は1個以上。300人を超えるときは1個に300人までを増すごとに1個を加えた個数以上

「以下のときは1個以上、超えるときは…」という書き分けなので、ちょうど100人なら1個、101人で2個です。

階と用途で使える器具が変わる

令第25条第2項第1号の表が、階の区分と防火対象物の区分に応じて使える器具を定めています。

区分地階2階3階4階・5階6階以上
第1号
(六)項
避難はしご
避難用タラップ
滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋/避難用タラップ滑り台/救助袋/緩降機/避難橋滑り台/救助袋/緩降機/避難橋滑り台/救助袋/避難橋
第2号・第3号
(五)項ほか
避難はしご
避難用タラップ
滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋/滑り棒/避難ロープ/避難用タラップ滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋/避難用タラップ滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋
第4号
(十二)(十五)項
避難はしご
避難用タラップ
滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋/避難用タラップ滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋
第5号
二方向避難なし
滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋/滑り棒/避難ロープ/避難用タラップ滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋/避難用タラップ滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋滑り台/避難はしご/救助袋/緩降機/避難橋

読み取りたいのは第1号(病院・福祉施設)の行です。3階以上では避難はしごが使えません。自力で降りることが難しい人がいる施設なので、滑り台・救助袋・緩降機・避難橋に限られ、6階以上では緩降機も外れて滑り台・救助袋・避難橋の3つになります。

滑り棒と避難ロープは、2階にしか、しかも第2号・第3号・第5号の階にしか現れません。避難に危険が伴うためで、病院・福祉施設では使えません。

減免と免除|規則第26条の7つの項

令第25条第2項第1号のただし書が「当該防火対象物の位置、構造又は設備の状況により避難上支障がないと認められるときは、総務省令で定めるところにより、その設置個数を減少し、又は避難器具を設置しないことができる」と委任していて、その総務省令が規則第26条です。第1項から第7項まで7本あり、前半4本が「減らす」、後半3本が「要らなくなる」規定です。

規則第26条|減らす規定と、要らなくなる規定個数を減らす(第1項〜第4項)設置しないことができる(第5項〜第7項)第1項特​定主​要構造部が耐​火構造 かつ 直​通階段を避​難階段又は特別避​難階段としたものが2以上 → 単位人数を2倍第2項建基令120〜122条で必要な直​通階段のうち、屋外避​難階段・告示適合の屋内避​難階段・特別避​難階段の数を引く引いた数が1未満なら、その階に設置しないことができる第3項耐​火構造又は鉄骨造の渡​り廊下(両端に自閉式の特​定防火設備の防​火戸/避難・通行・運搬以外に使わない)→ 渡​り廊下の数 × 2 を引く第4項屋​上広場(100㎡以上・窓と出入口に防​火戸)の避​難橋直下階から屋上への避​難階段等が2以上あること→ 避​難橋の数 × 2 を引く第5項① イ〜ヘの組合せ(耐火/区画/区画内の収​容人員が基準未満/  準不燃仕上げ又はSP設備/避​難階段等/バ​ルコニー等 か 二方向)② 耐火 + バ​ルコニー等から地上に通じる階段等③ 耐火 + 居室から直​通階段に直結 + 収​容人員30人未満第6項小規模特定用途複合防​火対象物の(六)項・(五)項部分下階に特定用途なし/直​通階段2以上/収容20人・30人未満第7項屋​上広場1,500㎡以上の直下階((一)項・(四)項を除く)屋上への避​難階段又は特別避​難階段が2以上屋上から避​難階・地上への避​難階段等があること第5項第1号は用途で必要な項目が変わる:(一)〜(八)項=イ〜ヘ全部/(九)〜(十一)項=イ・ニ・ホ・ヘ/(十二)(十五)項=イ・ホ・ヘ条文の用語は現行ではすべて「特​定主​要構造部」。「主​要構造部」と書いた資料は改正前の表記HARITA
図3:減らす規定(1〜4項)と、設置しないことができる規定(5〜7項)は別物

第1項|単位人数を2倍に読み替える

次の2つをどちらも満たすと、令第25条第2項第1号本文の「百人」を「二百人」に、「二百人」を「四百人」に、「三百人」を「六百人」に読み替えます。

第1号特定主要構造部を耐火構造としたものであること
第2号直通階段を避難階段又は特別避難階段としたものが2以上設けられていること

ここでよくある誤解が「耐火構造で避難階段が2つあれば避難器具は不要」というものです。第1項は個数の緩和にとどまり、1個は残ります。0個になるのは、次の第2項以降に進んだときです。

第2項|避難階段の数だけ引く

建築基準法施行令第120条・第121条・第122条により必要とされる直通階段を、次のいずれかとした場合に、その数を引くことができます。引いた数が1に満たないときは、その階に避難器具を設置しないことができます。

屋外に設ける避難階段建築基準法施行令第123条・第124条
屋内に設ける避難階段で、消防庁長官が定める部分を有するもの下記の告示に適合するもの
特別避難階段建築基準法施行令第123条第3項

屋内避難階段が使えるかどうかは告示で決まる

「消防庁長官が定める部分」の中身は、平成14年11月28日 消防庁告示第7号「消防法施行規則第四条の二の三並びに第二十六条第二項、第五項第三号ハ及び第七項第三号の規定に基づく屋内避難階段等の部分を定める件」にあります。

階段の各階又は各階の中間の部分ごとに設ける直接外気に開放された排煙上有効な開口部で、開口面積が2㎡以上であり、開口部の上端が当該階段の部分の天井の高さの位置にあること。ただし、階段の部分の最上部における天井の高さの位置に500c㎡以上の外気に開放された排煙上有効な換気口がある場合は、上端の位置は問いません。

この2㎡・500c㎡という数値は、規則にも建築基準法にもありません。告示です。

第3項|渡り廊下は数×2を引く

特定主要構造部を耐火構造としたものに、次の3つをすべて満たす渡り廊下が設けられている場合、渡り廊下の数に2を乗じた数を引くことができます。

第1号耐火構造又は鉄骨造であること
第2号渡り廊下の両端の出入口に自動閉鎖装置付きの特定防火設備である防火戸(防火シャッターを除く)が設けられていること
第3号避難、通行及び運搬以外の用途に供しないこと

第4項|屋上広場の避難橋も数×2を引く

特定主要構造部を耐火構造としたものに避難橋を屋上広場に設け、かつ直下階から屋上広場に通じる避難階段又は特別避難階段が2以上設けられているときは、避難橋の数に2を乗じた数を引くことができます。屋上広場の条件は次の3つです。

第1号屋上広場の有効面積が100㎡以上であること
第2号屋上広場に面する窓及び出入口に防火戸が設けられ、出入口から避難橋に至る経路が避難上支障がないこと
第3号避難橋に至る経路の扉等が、避難のとき容易に開閉できること

第2号は条文上「防火戸」とだけ書かれています。「特定防火設備である防火戸または鉄製網入りガラス戸」と説明している資料がありますが、条文にその限定はありません。渡り廊下(第3項第2号)のほうは「自動閉鎖装置付きの特定防火設備である防火戸(防火シャッターを除く)」と明記されているので、両者を混ぜないよう注意してください。

第5項|設置しないことができる3類型

第5項は3つの号を並べ、いずれかに該当すれば避難器具を設置しないことができます。

第1号はイからヘまでの6項目ですが、用途によって求められる項目が変わります。

用途必要な項目
(一)項〜(八)項イ・ロ・ハ・ニ・ホ・ヘ(全部
(九)項〜(十一)項イ・ニ・ホ・ヘ
(十二)項・(十五)項イ・ホ・ヘ
項目条文の要件
特定主要構造部を耐火構造としたものであること
開口部に防火戸を設ける耐火構造の壁又は床で区画されていること
ロの区画された部分の収容人員が、令第25条第1項各号の収容人員の数値未満であること
壁及び天井(天井のない場合は屋根)の室内に面する部分の仕上げを準不燃材料でし、又はスプリンクラー設備が当該階の主たる用途に供するすべての部分に設けられていること
直通階段を避難階段又は特別避難階段としたものであること
バルコニー等が避難上有効に設けられているか、又は2以上の直通階段が相互に隔たった位置に設けられ、当該階のあらゆる部分から2以上の異なった経路でそれらの2以上に到達しうるよう設けられていること

ロについて「特定防火設備である防火戸または鉄製網入りガラス戸」と書いている解説がありますが、条文は「開口部に防火戸を設ける耐火構造の壁又は床で区画」とだけ書いています。ハについても「最低収容人員以内」ではなく「数値未満」です。ちょうど基準人数のときは該当しません。

第2号は、特定主要構造部が耐火構造で、居室の外気に面する部分にバルコニー等が避難上有効に設けられ、そこから地上に通ずる階段その他の避難のための設備・器具、または他の建築物に通ずる設備・器具が設けられている場合です。(五)項・(六)項では「バルコニー等」ではなく「バルコニーに限る」、地上への手段も「階段に限る」と条文で絞られています。

第3号は、特定主要構造部が耐火構造で、居室・住戸から直通階段に直接通じており、その直通階段に面する開口部に特定防火設備である防火戸(防火シャッターを除く)を設けたうえで、収容人員が30人未満である場合です。防火戸は随時開くことができる自動閉鎖装置付きのもの、または次の構造のものです。

(イ)随時閉鎖することができ、かつ煙感知器の作動と連動して閉鎖すること
(ロ)直接手で開くことができ、かつ自動的に閉鎖する部分を有し、その部分の幅75cm以上・高さ1.8m以上・下端の床面からの高さ15cm以下であること

(イ)の煙感知器連動は、電気設備設計者が押さえておくべき条件です。避難器具を省くために防火戸の連動が要求されるという、設備をまたいだ関係になっています。

第6項・第7項

第6項は、小規模特定用途複合防火対象物のなかの(六)項・(五)項部分についての免除です。下階に(一)項から(二)項ハまで・(三)項・(四)項・(九)項・(十二)項イ・(十三)項イ・(十四)項・(十五)項の用途がないこと、直通階段が2以上あること、収容人員が第1号の階では20人未満・第2号の階では30人未満であること、の3つを満たす場合です。

第7項は屋上広場を使う免除です。令第25条第1項第3号・第4号の階((一)項・(四)項を除く)が、特定主要構造部を耐火構造とした建築物の屋上広場の直下階であり、当該階から屋上広場に通ずる避難階段又は特別避難階段が2以上ある場合で、屋上広場が次の3つを満たすときです。

第1号屋上広場の面積が1,500㎡以上であること
第2号屋上広場に面する窓及び出入口に、防火戸が設けられていること
第3号屋上広場から避難階又は地上に通ずる直通階段で、屋外避難階段・告示適合の屋内避難階段・特別避難階段としたもの、その他避難のための設備又は器具が設けられていること

第3号を「特別避難階段が2ヵ所以上」と説明している資料がありますが、条文は避難階段でもよく、また「その他避難のための設備又は器具」も認めています。2以上を求めているのは当該階から屋上広場に通ずる階段のほう(第7項本文)です。

設置位置と細目|寸法は規則ではなく告示にある

特定一階段等の上乗せ要件と、告示が定める数値特定一階段等防​火対象物(規則第27条第1項第1号)数値は告示にある(平成8年消防庁告示第2号)安全かつ容易に避難することができる構造のバ​ルコニー等に設けるもの常時、容易かつ確実に使用できる状態で設置されているもの一動作(開口部を開口する動作及び保安装置を解除する動作を除く)で、容易かつ確実に使用できるこの3つの「いずれか」に適合すればよい表示(同項第3号イ・ハ)設置・格納場所の出入口の上部又は直近に識別措置EVホール又は階段室の出入口付近に場所を明示した標識開口部(壁面)高さ0.8m以上×幅0.5m以上又は 高さ1m以上×幅0.45m以上開口部の下端床面から1.2m以下開口部(床面)直径0.5m以上の円が内接すること標識の大きさ縦0.12m以上×横0.36m以上地色と文字の色は相互に対比色ハッチの下ぶた下端は避難空地の床面上1.8m以上操作面積・降下空間・避難空地の定義も告示規則第27条第2項の「消防庁長官が定める」委任を受けたもの規則第27条の条文には、これらの数値は一つも書かれていない特定一階段等防​火対象物だからといって避​難器具が2個以上必要になるわけではない。個数は令第25条第2項第1号の一般則どおり第27条第1項第1号が上乗せするのは「器具の構造」であって「個数」ではないHARITA
図4:構造の上乗せは規則、寸法は告示。この切り分けが協議で効く

令第25条第2項の第2号・第3号は、設置位置についてこう書いています。

二 避難器具は、避難に際して容易に接近することができ、階段、避難口その他の避難施設から適当な距離にあり、かつ、当該器具を使用するについて安全な構造を有する開口部に設置すること。

三 避難器具は、前号の開口部に常時取り付けておくか、又は必要に応じて速やかに当該開口部に取り付けることができるような状態にしておくこと。

令第25条は第1項と第2項の2項構成で、第2項は第1号から第3号までの3号しかありません。「標識」という語は令第25条には一度も出てきません。標識は規則第27条第1項第3号ロにあります。

規則第27条にあるもの・ないもの

規則第27条第1項は第1号から第11号まであり、器具ごとの取付け方法を定めています。

内容
第1号特定一階段等防火対象物に設けるものの構造(イ・ロ・ハのいずれか)
第2号開口部は相互に同一垂直線上にない位置にあること(すべり棒・避難ロープ・避難橋・避難用タラップを除く。避難上支障のないものは除く)
第3号表示・標識(イ=特定一階段等の識別措置、ロ=避難器具である旨と使用方法の標識、ハ=EVホール・階段室出入口付近の標識)
第4号固定はしご(横さんは防火対象物から10cm以上、降下口は直径50cm以上の円が内接、4階以上は金属製+バルコニー等+直下階と同一垂直線上にない位置)
第5号つり下げはしご(材料はJIS G3101又はG3444、横さんは10cm以上、4階以上は取付け具を避難器具用ハッチとする
第6号緩降機(ロープが防火対象物と接触して損傷しないこと、ロープの長さは取付位置から降着面まで)
第7号すべり台(安全な降下速度、転落防止措置)
第8号すべり棒・避難ロープ
第9号避難橋・避難用タラップ
第10号救助袋
第11号避難器具(金属製避難はしご及び緩降機を除く)は消防庁長官が定める基準に適合すること

そして第2項が「前項に規定するもののほか、避難器具の設置及び維持に関し必要な事項は、消防庁長官が定める」と委任しています。

開口部の寸法・操作面積・降下空間・標識の大きさは、すべて告示

根拠は平成8年4月16日 消防庁告示第2号「避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目」です。規則第27条第2項の委任を受けたものです。

  • 壁面の開口部:高さ0.8m以上かつ幅0.5m以上、又は高さ1m以上かつ幅0.45m以上
  • 開口部の下端:床面から1.2m以下の高さ
  • 床面の開口部:直径0.5m以上の円が内接することができるもの
  • 標識:縦0.12m以上×横0.36m以上、地色と文字の色は相互に対比色
  • 避難器具用ハッチの下ぶたの下端:避難空地の床面上1.8m以上

操作面積・降下空間・避難空地という用語の定義もこの告示にあります。「規則第27条に開口部の寸法が定められている」と書くのは誤りです。器具ごとの操作面積・降下空間の数値表も同じ告示にあり、さらに細かい離隔寸法は各消防本部の審査基準によります。

特定一階段等防火対象物の上乗せ

特定一階段等防火対象物の定義は令第4条の2の2第2号で、(一)項〜(四)項・(五)項イ・(六)項・(九)項イの用途が避難階以外の階にあり、その階から避難階又は地上に直通する階段が2(屋外に設けられたもの、または総務省令で定める避難上有効な構造のものは1)以上ないものです。

ここに設ける避難器具は、規則第27条第1項第1号のイ・ロ・ハのいずれかに適合しなければなりません。バルコニー等に設けるか、常時使用できる状態で設置されているか、一動作で使用できるか、の3択です。

「特定一階段等防火対象物には避難器具が2以上必要」という説明を見ることがありますが、個数は令第25条第2項第1号の一般則どおりで、変わりません。第27条第1項第1号が上乗せするのは器具の構造であって、個数ではありません。

工事・届出・点検|「避難器具=消防設備士」ではない

避難器具は消防用設備等ですが、全部が消防設備士の独占業務になるわけではありません。法第17条の5は「政令で定めるもの」と委任していて、令第36条の2第1項が列挙しているのは次の3つだけです。

設備
第11号金属製避難はしご(固定式のものに限る)第5類
第12号救助袋第5類
第13号緩降機第5類

つまり、すべり台・すべり棒・避難ロープ・避難橋・避難用タラップ、そしてつり下げ式(非固定式)の金属製避難はしごは、令第36条の2の対象外です。甲種第5類は工事又は整備、乙種第5類は整備のみを行えます。

着工届(法第17条の14)は「第17条の5の規定に基づく政令で定める工事」について、着手しようとする日の10日前までに必要です。対象は上の3つに限られるので、すべり台や避難用タラップの設置に着工届は要りません。設置届(法第17条の3の2・令第35条)は消防用設備等として必要です。

検定対象は2つだけ

令第37条の検定対象機械器具等に挙がっている避難器具は、金属製避難はしご(第11号)緩降機(第12号)の2つです。規格省令はそれぞれ「金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令(昭和40年自治省令第3号)」「緩降機の技術上の規格を定める省令(平成6年自治省令第2号)」。救助袋は検定対象ではありません。救助袋やすべり台などは、規則第27条第1項第11号の委任を受けた「避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)」によります。

点検

平成16年消防庁告示第9号により、避難器具は機器点検6か月・総合点検1年の両方が対象です。連結散水設備や非常コンセント設備のように総合点検が外れる設備とは違います。点検と報告の全体像は消防用設備等の点検と報告を参照してください。

よくある誤りを条文で確認する

よく見かける記述条文で確認すると
避難器具は収容人員50人以上で必要50人は第3号だけ。(六)項20人、(五)項30人、下階に特定用途があれば10人、(十二)(十五)項100/150人、二方向避難なし10人
2階に避難器具は不要2階が外れるのは第4号だけ。第3号で除かれるのは「特定主要構造部を耐火構造とした建築物の2階」に限る
耐火構造+避難階段2以上で免除規則第26条第1項は個数の緩和(単位人数を2倍)。0個になるのは第2項の階段数控除以降
免除条件の区画は「特定防火設備である防火戸または鉄製網入りガラス戸」規則第26条第5項第1号ロは「開口部に防火戸を設ける耐火構造の壁又は床で区画」とだけ書く
区画内の収容人員が基準人数「以内」条文は「数値未満」(同項同号ハ)
屋上広場1,500㎡の免除は特別避難階段2ヵ所以上屋上への階段が2以上(第7項本文)。屋上から地上へは避難階段でもよく、「その他避難のための設備又は器具」も可(第7項第3号)
「主要構造部を耐火構造とした」現行条文はすべて「特定主要構造部を耐火構造とした」(令第25条第1項第3号、規則第26条第1項・第3項・第4項・第5項・第7項)
開口部の寸法は規則第27条に定めがある規則第27条に寸法はない。平成8年消防庁告示第2号(規則第27条第2項の委任)
特定一階段等防火対象物には避難器具が2以上必要個数は一般則どおり。規則第27条第1項第1号が定めるのは器具の構造
令第25条第3項/第1項ただし書/第2項第4号(標識)いずれも存在しない。令第25条は2項構成、第2項は3号まで。減免の委任は第2項第1号ただし書、標識は規則第27条第1項第3号ロ
避難器具の工事は消防設備士の独占業務対象は固定式の金属製避難はしご・救助袋・緩降機の3つだけ(令第36条の2第1項第11号〜第13号)
避難器具はすべて検定品検定対象は金属製避難はしごと緩降機のみ。救助袋は検定対象外

電気設備設計者が避難器具を見る意味

収容人員の算定が他設備と共通

避難器具の要否を決めるのは収容人員です。同じ収容人員が、防火管理者の選任(令第1条の2第3項)、非常警報設備(令第24条)、消防機関へ通報する火災報知設備の一部の判断にも使われます。収容人員を1回きちんと算定しておけば、複数の設備の要否が同時に決まります。逆に、途中で用途変更があって収容人員が動くと、避難器具と非常警報設備が一緒に動くことになります。非常警報設備の側は非常警報設備の設置基準にまとめました。

防火戸の煙感知器連動が免除条件になっている

規則第26条第5項第3号ロ(イ)は、直通階段に面する開口部の防火戸を「随時閉鎖することができ、かつ煙感知器の作動と連動して閉鎖する」構造とすることを求めています。避難器具を省くために、電気側の連動が必要になるケースです。自動火災報知設備の感知器配置・連動制御の計画に、この条件が乗ってくることがあります。

避難器具設置場所の照明・誘導

条文上、避難器具そのものに電源は要りません。ただし規則第27条第1項第3号ハが、特定一階段等防火対象物ではエレベーターホール又は階段室(附室があれば附室)の出入口付近の見やすい箇所に、避難器具設置等場所を明示した標識を設けることを求めています。誘導灯の配置と干渉しないか、標識が見える明るさが確保されているかは、現地で確認しておくとよい点です。

避難器具用ハッチはバルコニーの床に開く

4階以上の階につり下げはしごを設ける場合、規則第27条第1項第5号ニは「バルコニー等に設け、かつ取付け具は避難器具用ハッチとすること」と定めています(落下防止措置が講じられている場合を除く)。バルコニーの床に開口が開くので、その直下の避難空地(告示で下ぶた下端1.8m以上)と、外灯・配線ルート・室外機置場が競合しないかを、早い段階で意匠側と確認しておくと手戻りが減ります。

まとめ

避難器具の要否は、まず用途で5通りに分かれるしきい値を見ます。50人で一律に判断すると、共同住宅(30人)や福祉施設(20人)、下階に特定用途がある場合(10人)で漏れます。1階と11階以上は柱書で外れます。

個数は用途区分ごとの単位人数(100人/200人/300人)で決まり、規則第26条第1項の読替えで単位が倍になります。ただし第1項は緩和であって免除ではありません。0個になるのは第2項の階段数控除や、第5項〜第7項の免除規定に該当したときです。

寸法はすべて告示にあります。開口部0.8m×0.5m、標識0.12m×0.36m、屋内避難階段の開口部2㎡——これらを「規則に書いてある」と説明すると、根拠を聞かれたときに答えられません。令・規則・告示・自治体基準の4層を分けて把握しておくことが、この設備ではとくに効いてきます。

そして条文の用語は現行ではすべて「特定主要構造部」です。手元の資料が「主要構造部」のままなら、それは改正前のものです。

参考条文・告示

  • 消防法 第17条の3の2、第17条の5、第17条の14
  • 消防法施行令 第4条の2の2第2号(特定一階段等防火対象物)
  • 消防法施行令 第25条(避難器具に関する基準)第1項・第2項
  • 消防法施行令 第35条(設置届)、第36条の2(消防設備士の独占業務)、第37条(検定対象機械器具等)
  • 消防法施行規則 第26条(避難器具の設置個数の減免)第1項〜第7項
  • 消防法施行規則 第27条(避難器具に関する基準の細目)第1項・第2項
  • 消防法施行規則 第33条の3(消防設備士免状の種類ごとの工事・整備の対象)
  • 平成8年4月16日 消防庁告示第2号(避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目)
  • 平成14年11月28日 消防庁告示第7号(屋内避難階段等の部分を定める件)
  • 昭和53年3月13日 消防庁告示第1号(避難器具の基準)
  • 平成16年消防庁告示第9号(点検の期間・方法・報告書の様式)
  • 金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令(昭和40年自治省令第3号)/緩降機の技術上の規格を定める省令(平成6年自治省令第2号)
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