この記事は連載「照明設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
技術図書館照明の回路分割|1回路は容量と長さの両方で決まる8割という容量の目安、こう長で効いてくる電圧降下、開閉器と電線を決める順番をスライドで整理しました。この資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事の全体像:1回路に載せる台数、電圧降下、開閉器と電線の組み合わせ、分電盤と回路表

こんにちは、HARITAの設計室です。連載「照明設備の設計マニュアル」第5回は回路分割と分電盤第4回までで、器具と点滅グループが決まりました。ここから先は電気の話です。決めたものを、盤の中に落とし込みます。

今回の合言葉は「1回路は“容量”と“長さ”の両方で決まる」。台数だけで回路を割ると、長い廊下や屋外灯でつまずきます。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 1回路に載せる負荷は、開閉器の定格の何割までが目安ですか。
  • 点滅グループと回路は、同じものですか。
  • 開閉器と電線、先に決めるのはどちらですか。
ペン太ペン太
回路割りって、台数を数えて均等に分ければいいんですよね。
はりたはりた
台数だけで割ると、長い廊下や屋外灯でつまずくんだ。
ペン太ペン太
長さ、ですか。
はりたはりた
1回路は「容量」と「長さ」の両方で決まる。容量が足りていても、盤から遠い器具は電圧が下がる。今回はその両方を見ていこう。
この記事でわかること
第4回で決めた器具と点滅グループを、盤の中に落とし込みます。容量と長さ、2つの物差しで回路を割ります。

今回の全体像 ― 器具から盤まで4ステップ

トピック1:器具から盤まで、4ステップ
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図1:回路分割と分電盤の4ステップ

幹線・分電盤・回路の関係そのものがあやふやな人は、新人講座 第9回 幹線・分電盤・回路のきほん を先に読んでおくと、この回がすっと入ります。

ここまでのポイント
  • 第4回までで器具と点滅グループが決まった。ここから先は、決めたものを盤の中に落とし込む作業
  • 合言葉は「1回路は“容量”と“長さ”の両方で決まる」
  • 台数だけで回路を割ると、長い廊下や屋外灯でつまずく

① 1回路に何台載せるか ― 器は8割で満杯

トピック2:器は、8割で満杯

1回路の容量は、開閉器の定格で決まります。ただし定格いっぱいまで使ってはいけません。照明は一度点けたら何時間も連続して流れる負荷です。連続使用の負荷は、定格の8割程度までに抑えるのが目安です。

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図2:1回路に載せられる台数の考え方

ここで混同しやすいのが、点滅グループと回路は別ものだという点です。第4回で決めたA・B・Cのグループは「スイッチの分け方」であって、「ブレーカーの分け方」ではありません。

同じ回路のなかでスイッチだけ3つに分けることもできますし、逆にグループごとに回路を分けることもできます。グループ単位で回路を分けておくと、後の改修や増設がやりやすくなる ― これは覚えておく価値があります。

そして専用回路にするもの。屋外灯(他室に影響させない・自動点滅器がつく)、非常照明(第6回で詳説)、そして大容量の器具。これらは最初から独立させます。分岐回路の考え方そのものは 分岐回路の設計について詳しく解説 にまとまっています。

物差し決まり方つまずくところ
容量開閉器の定格。連続使用の負荷は定格の8割程度までが目安LEDは電流が小さくても、点灯の瞬間の突入電流でブレーカーが落ちることがある
長さ電圧降下は「流れる電流 × こう長」にだいたい比例事務室のような近い負荷では問題にならないが、長い廊下・駐車場の外灯・離れた棟で一気に効く
ここまでのポイント
  • 1回路の容量は開閉器の定格で決まる。ただし定格いっぱいまで使ってはいけない
  • 照明は一度点けたら何時間も連続して流れる負荷。連続使用の負荷は、定格の8割程度までが目安
  • 点滅グループと回路は別もの。グループは「スイッチの分け方」、回路は「ブレーカーの分け方」
  • 同じ回路のなかでスイッチだけ3つに分けることもできるし、逆にグループごとに回路を分けることもできる
  • グループ単位で回路を分けておくと、後の改修や増設がやりやすくなる
  • 屋外灯(他室に影響させない・自動点滅器がつく)、非常照明、大容量の器具は、最初から専用回路にする
ペン太ペン太
LEDって消費電力が小さいから、1回路にたくさん載せても平気ですよね。
はりたはりた
電流だけ見ればそのとおりで、以前より多くの台数が載る。ただし突入電流には注意だ。
ペン太ペン太
突入電流……。
はりたはりた
LED器具は電源装置を持っていて、点灯の瞬間に定格をはるかに超える電流が一瞬流れる。台数が多いと、点けた瞬間にブレーカーが落ちることがある。カタログで突入電流と接続できる台数を確認しよう。

② 電圧降下 ― 長さが効いてくる

トピック3:長さが、効いてくる

容量が足りていても、盤から遠い器具は電圧が下がります。電線にも抵抗があるからです。落ち方は「流れる電流 × こう長」にだいたい比例します。事務室のような近い負荷では問題になりませんが、長い廊下、駐車場の外灯、離れた棟の照明では一気に効いてきます。

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図3:電圧降下とこう長

電圧が下がるとどうなるか。LEDの場合、多少の電圧変動では明るさはほとんど変わりませんが、電源装置の許容範囲を下回るとちらつきや不点灯が起きます。しかも竣工時は問題なくても、末端に器具を1台足した瞬間に症状が出る、という現れ方をします。

対策は3つ。電線を太くするのがいちばん素直ですが、こう長が長いと材料費が跳ね上がります。回路を分けて1回路あたりの電流を減らすのも有効です。距離がどうにもならない場合は、200V配電にして電流そのものを半分にする方法もあります。第2回で決めた配置が、ここで効いてくるわけです。

作図イメージ:1回路を決める2つの物差しと、回路番号で3つをつなぐこと
図4:作図イメージ ― 容量と長さの2つの物差し、そして回路番号
ここまでのポイント
  • 容量が足りていても、盤から遠い器具は電圧が下がる。電線にも抵抗があるから
  • 落ち方は「流れる電流 × こう長」にだいたい比例する
  • LEDは多少の電圧変動では明るさはほとんど変わらないが、電源装置の許容範囲を下回るとちらつきや不点灯が起きる
  • しかも竣工時は問題なくても、末端に器具を1台足した瞬間に症状が出る、という現れ方をする
  • 対策は3つ。電線を太くする/回路を分けて1回路あたりの電流を減らす/200V配電にして電流そのものを半分にする

③ 開閉器と電線 ― セットで決める

トピック4:セットで、決める

開閉器(ブレーカー)と電線は、どちらか一方だけでは決まりません負荷電流から開閉器の定格を決め、その開閉器が守れる太さの電線を選ぶ。この順番です。

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図5:開閉器と電線サイズの決まり方

逆にすると危険です。太い開閉器に細い電線をつなぐと、ブレーカーが落ちる前に電線が発熱します。守るべきものが守られない状態です。分岐回路の定格・電線太さ・こう長の組み合わせは内線規程に表があるので、必ず確認してください。

ブレーカー選定の考え方は 新人講座 第14回 ブレーカー(遮断器)選定のきほん、電灯負荷に絞った開閉器サイズの選び方は 電灯負荷の開閉器サイズ選定方法 に詳しく書いています。

ここまでのポイント
  • 開閉器(ブレーカー)と電線は、どちらか一方だけでは決まらない
  • 負荷電流から開閉器の定格を決め、その開閉器が守れる太さの電線を選ぶ。この順番
  • 逆にすると危険。太い開閉器に細い電線をつなぐと、ブレーカーが落ちる前に電線が発熱する
  • 守るべきものが守られない状態になる
  • 分岐回路の定格・電線太さ・こう長の組み合わせは内線規程に表があるので、必ず確認する

④ 分電盤と回路表 ― 番号で全部つなぐ

トピック5:番号で、全部つなぐ

最後に、決めた回路を盤に並べます。ここでやることは、コンセント編の第6回とまったく同じです。平面図・回路表・盤の3つを、回路番号という共通のキーで結ぶ

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図6:分電盤と回路表

回路表の用途欄には、室名だけでなく「窓側」「専用」といった性格まで書いておくと親切です。10年後に改修する人が、どの回路を触っていいかを判断できます。

盤そのものの構成 ― 主幹の選定、分岐の数、予備回路の持ち方 ― は 分電盤の構成と計画指針 にまとめてあります。予備回路は必ず残してください。将来の増設は「あるかもしれない」ではなく「必ず起きる」ものです。

回路ごとの容量を積み上げて盤の主幹まで確認する作業には、単相3線式 盤図作成用 容量積み上げツール が使えます。手計算で表を埋めていた時間が、そのまま浮きます。

ここまでのポイント
  • 平面図・回路表・盤の3つを、回路番号という共通のキーで結ぶ
  • 回路表の用途欄には、室名だけでなく「窓側」「専用」といった性格まで書いておく
  • 10年後に改修する人が、どの回路を触っていいかを判断できる
  • 予備回路は必ず残す。将来の増設は「あるかもしれない」ではなく「必ず起きる」もの

まとめ

トピック6:今日のまとめ

回路割りは、台数を数えて均等に分ける作業ではありません。1回路は「容量」と「長さ」の両方で決まる ― 容量が足りていても、盤から遠い器具は電圧が下がります。

決めることと、落とし穴

この回でやることは5つです。それぞれに、竣工後や改修時に効いてくる落とし穴があります。

決めること決め方落とし穴
1回路の台数開閉器の定格の8割程度までLEDでも突入電流で落ちる。カタログで接続できる台数を確認する
グループと回路別もの。グループ単位で分けると改修が楽回路数が増えるぶん、盤は大きくなる
電圧降下太くする/分ける/200Vにする竣工時は問題なくても、末端に1台足した瞬間に症状が出る
開閉器と電線負荷電流 → 開閉器 → 守れる太さの電線逆にすると、ブレーカーが落ちる前に電線が発熱する
回路表回路番号で平面図・回路表・盤をつなぐ予備回路を残さない。増設は必ず起きる

容量と、長さ

  • 1回路の容量は開閉器の定格で決まる。連続負荷は定格の8割程度までが目安
  • 点滅グループと回路は別もの。ただしグループ単位で回路を分けると改修が楽になる
  • 屋外灯・非常照明・大容量器具は専用回路にする
  • 電圧降下は「電流×こう長」で効く。対策は太くする・分ける・200Vにするの3つ

盤に、落とし込む

  • 開閉器と電線はセット。開閉器が守れる太さの電線を選ぶ
  • 回路番号で平面図・回路表・盤をつなぐ。予備回路は必ず残す

最後に ― 10年後に、誰が読むか

回路表の用途欄に室名だけを書くのは簡単ですが、そこに「窓側」「専用」といった性格まで書いておくと、10年後に改修する人がどの回路を触っていいかを判断できます

予備回路も同じ発想です。将来の増設は「あるかもしれない」ではなく「必ず起きる」もの。盤の空きは、次に触る人へ渡す余白だと思ってください。

よくある質問

トピック7:よくある質問

Q1. LEDは消費電力が小さいので、1回路にたくさん載せても平気では?
A. 電流だけ見ればそのとおりで、以前より多くの台数が載ります。ただし突入電流には注意が必要です。

LED器具は電源装置を持っていて、点灯の瞬間に定格をはるかに超える電流が一瞬流れます。台数が多いと、点けた瞬間にブレーカーが落ちることがあります。器具のカタログで突入電流と、その開閉器に接続できる台数を確認してください。

Q2. 点滅グループごとに回路を分けたほうがいいですか?
A. 必須ではありませんが、分けておくと得です。改修で「窓側だけ器具を替える」「一部を非常照明に変更する」といった話が出たとき、回路が分かれていれば工事範囲が閉じます。回路数が増えるぶん盤は大きくなるので、そのバランスで判断してください。

Q3. 電圧降下は、どのくらいまで許容されますか?
A. 許容値はこう長と受電方式で変わり、内線規程に基準が示されています。数値をここで断言するより、案件ごとに表で確認する習慣を持ってください。そのうえで、末端に器具を足す余地があるかどうかまで見ておくと安全です。

次回予告

トピック8:次回予告

次回はいよいよ最終回、第6回「非常照明・誘導灯」。建築基準法の非常照明と、消防法の誘導灯。名前が似ていて、根拠も目的もまったく違う2つを整理します。電池内蔵形と電源別置形、耐火配線、そして回路の取り方まで。連載全体の地図は 設計・施工マニュアル からどうぞ。

→ 公開しました:第6回・最終回 非常照明・誘導灯 ― 建築基準法と消防法の二本立て

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。