電気設備の基本知識 #010【誘導電動機】
ポンプ、ファン、エレベーター、エスカレーター。建物の中で「回るもの」の多くは、三相誘導電動機で動いています。誘導電動機は、目に見えない回転する磁界を追いかけて回る、ちょっと不思議な機械です。この記事では、しくみ、回転速度とすべり、始動方法、逆転のさせ方、力率改善と保護を、図とたとえで1つずつ解説します。
結論
誘導電動機は回転磁界を少し遅れて追いかけて回る。速さはNs=120f÷p、逆転は3本のうち2本を入れ替える、コンデンサは手元開閉器の負荷側に並列が基本です。
- 固定子の三相巻線が回転磁界をつくり、かご形の回転子が追いかける
- 回転子は同期速度より少し遅い(すべり)
- 全電圧始動は定格の5〜8倍の電流。スターデルタ始動なら1/3
- 屋内の電動機には過負荷保護装置を付ける(0.2kW以下などを除く)
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つくり ― 固定子と回転子
三相誘導電動機は、外側の固定子(ステータ)と、内側の回転子(ロータ)でできています。固定子には三相の巻線が入っていて、電源につなぎます。回転子は、導体の棒を両端の輪で短絡したかごのような形をしていて(かご形)、どこからも電線をつなぎません。
電線をつないでいないのに回るのは、固定子がつくる磁界によって、回転子の中に電流が誘導されるからです。これが「誘導」電動機という名前の由来です。
- 外側が固定子、内側が回転子
- 回転子はかご形で、電線をつながない
- 磁界で回転子に電流を誘導して回る
回るしくみ ― 回転磁界を追いかける
三相の電流を固定子の巻線に流すと、N極とS極がぐるぐる回る回転磁界ができます。回転子は、この回転磁界に引っぱられるように回ります。
たとえるなら、先を走るウサギを追いかける犬です。犬(回転子)はウサギ(磁界)に追いつけそうで、ほんの少し遅れて走り続けます。もし追いついて同じ速さになると、回転子の導体を磁界が横切らなくなり、力が生まれません。だから、少し遅れて回るのが誘導電動機の性質です。この遅れの割合をすべりといいます。
| 記号 | 意味 | 式 |
|---|---|---|
| Ns | 同期速度(回転磁界の速さ)[min⁻¹] | Ns=120×f÷p |
| N | 回転子の回転速度[min⁻¹] | N=Ns×(1−s) |
| s | すべり(ふつう数%ほど) | s=(Ns−N)÷Ns |
- 三相の電流で回転磁界ができる
- 回転子は磁界を少し遅れて追いかける
- 遅れの割合がすべり s
回転速度 ― 周波数と極数で決まる
同期速度は Ns=120×f÷p で決まります。たとえば、4極の電動機を50Hzで使うと 120×50÷4=1,500min⁻¹、60Hzなら1,800min⁻¹です。同じ電動機でも、西日本(60Hz)のほうが速く回ることになります。
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4極、50Hz、すべり4%の電動機の回転速度は?
Ns=120×50÷4=1,500min⁻¹、N=1,500×(1−0.04)=1,440min⁻¹です。
- Ns=120×f÷p
- 極数が多いほどゆっくり回る
- 60Hzは50Hzより速く回る
始動方法 ― 始動電流を抑える
誘導電動機は、止まった状態から動き出す瞬間に、定格電流の5〜8倍もの大きな電流が流れます。たとえるなら重い台車の押し始めです。動き出すまでがいちばん力が要り、動き出せば軽く押せます。
| 始動方法 | しくみ | 始動電流 | 向いている電動機 |
|---|---|---|---|
| 全電圧始動(じか入れ) | いきなり電源電圧をかける | 定格の5〜8倍 | 容量の小さいもの |
| スターデルタ始動 | 始動はスター結線、回り出したらデルタ結線に切り替える | 全電圧始動の1/3(始動トルクも1/3) | 中容量のもの |
| インバータ始動 | 周波数と電圧をゆっくり上げる | 小さく抑えられる | 回転速度を変えたいもの |
始動電流が大きいと、電圧が一瞬下がって照明がちらついたり、ほかの機器に影響したりします。始動電流の考え方は「動力設備の設計マニュアル」の第3回でくわしく解説しています。
- 始動の瞬間は定格の5〜8倍の電流が流れる
- スターデルタ始動なら電流・トルクとも1/3
- インバータなら、ゆっくり加速できる
逆転 ― 3本のうち2本を入れ替える
三相誘導電動機の回転方向を逆にするには、電源の3本のうちどれか2本を入れ替えるだけです。回転磁界の向きが逆になり、電動機も逆に回ります。
- 2本を入れ替えると逆転する
- どの2本でもよい
- 試運転で回転方向を必ず確認する
コンデンサと保護 ― 負荷側に並列、過負荷から守る
誘導電動機は、磁界をつくるために遅れた電流を流すので、力率が低くなりがちです。力率を改善するには、進相コンデンサを手元開閉器の負荷側に、電動機と並列につなぎます。電動機と一緒に入・切されるので、止まっているときにコンデンサだけがつながり、力率が進みすぎることを防げます。力率そのものは「電気設備の基本知識 #011【電気機器の力率】」で解説しています。
また、屋内に施設する電動機には、原則として過負荷保護装置(サーマルリレーなど)を付けます。出力0.2kW以下のものなどは除かれます。電動機が重すぎる負荷で回り続けると、巻線が熱くなって焼けてしまうからです。
- 進相コンデンサは手元開閉器の負荷側に並列
- 電動機と一緒に入・切されるようにする
- 屋内の電動機には過負荷保護装置(0.2kW以下などを除く)
よくある質問
三相誘導電動機の回転速度はどうやって決まりますか?
回転磁界の速さ(同期速度)は、Ns=120×f÷p(f:周波数、p:極数)で決まります。たとえば4極なら50Hzで1,500min⁻¹、60Hzで1,800min⁻¹です。実際の回転速度は、すべりの分だけ同期速度より少し遅くなります。
すべりとは何ですか?
回転子が回転磁界より遅れる割合で、s=(Ns−N)÷Ns で表します。回転子が磁界と同じ速さで回ると、回転子の導体を磁界が横切らなくなり、力が生まれません。そのため、少し遅れて回るのが誘導電動機の性質です。
スターデルタ始動のメリットと注意点は?
始動のときだけ巻線をスター結線にすることで、始動電流を全電圧始動の1/3に抑えられます。ただし始動トルクも1/3に小さくなるので、重い負荷をつないだまま始動する用途には向きません。
三相誘導電動機の回転方向を逆にするには?
電源の3本(R・S・T)のうち、どれか2本を入れ替えます。回転磁界の向きが逆になり、電動機も逆に回ります。
力率改善用のコンデンサはどこにつなぎますか?
手元開閉器の負荷側(電動機側)に、電動機と並列につなぎます。こうすると電動機と一緒に入・切されるので、電動機が止まっているときにコンデンサだけがつながったままになり、力率が進みすぎることを防げます。
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