技術図書館誘導電動機は回る磁界を追いかける固定子と回転子、すべりと回転速度の式、始動電流の抑え方、逆転とコンデンサの付け方この資料をスライドで見る資料一覧を見る
第二種電気工事士 合格カリキュラム学科③ 電気機器・配線器具・材料・工具
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この記事は、連載「動力設備の設計マニュアル」の 第1回 動力とは何か・第3回 始動電流という別の顔 の補足解説です。計画全体の流れは 設計・施工マニュアル(目次) からご覧いただけます。

ポンプ、ファン、エレベーター、エスカレーター。建物の中で「回るもの」の多くは、三相誘導電動機で動いています。誘導電動機は、目に見えない回転する磁界を追いかけて回る、ちょっと不思議な機械です。この記事では、しくみ、回転速度とすべり、始動方法、逆転のさせ方、力率改善と保護を、図とたとえで1つずつ解説します。

結論

誘導電動機は回転磁界を少し遅れて追いかけて回る。速さはNs=120f÷p、逆転は3本のうち2本を入れ替える、コンデンサは手元開閉器の負荷側に並列が基本です。

  • 固定子の三相巻線が回転磁界をつくり、かご形の回転子が追いかける
  • 回転子は同期速度より少し遅い(すべり)
  • 全電圧始動は定格の5〜8倍の電流。スターデルタ始動なら1/3
  • 屋内の電動機には過負荷保護装置を付ける(0.2kW以下などを除く)
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。
三相誘導電動機のつくりとして、三相巻線を持つ固定子(ステータ)、かご形の回転子(ロータ)、軸(シャフト)を示した図
誘導電動機は、外側の固定子と内側の回転子でできています。

つくり ― 固定子と回転子

三相誘導電動機は、外側の固定子(ステータ)と、内側の回転子(ロータ)でできています。固定子には三相の巻線が入っていて、電源につなぎます。回転子は、導体の棒を両端の輪で短絡したかごのような形をしていて(かご形)、どこからも電線をつなぎません。

電線をつないでいないのに回るのは、固定子がつくる磁界によって、回転子の中に電流が誘導されるからです。これが「誘導」電動機という名前の由来です。

ここまでのポイント
  • 外側が固定子、内側が回転子
  • 回転子はかご形で、電線をつながない
  • 磁界で回転子に電流を誘導して回る

回るしくみ ― 回転磁界を追いかける

固定子の三相巻線がつくる回転磁界(N極・S極)が回り、その内側でかご形の回転子が少し遅れて追いかけるように回ることを示した動く図解と、同期速度・すべりの式
動く図解:回転子(中)は、回転磁界(外)より少しだけ遅れて回ります。

三相の電流を固定子の巻線に流すと、N極とS極がぐるぐる回る回転磁界ができます。回転子は、この回転磁界に引っぱられるように回ります。

たとえるなら、先を走るウサギを追いかける犬です。犬(回転子)はウサギ(磁界)に追いつけそうで、ほんの少し遅れて走り続けます。もし追いついて同じ速さになると、回転子の導体を磁界が横切らなくなり、力が生まれません。だから、少し遅れて回るのが誘導電動機の性質です。この遅れの割合をすべりといいます。

記号 意味 式
Ns 同期速度(回転磁界の速さ)[min⁻¹] Ns=120×f÷p
N 回転子の回転速度[min⁻¹] N=Ns×(1−s)
s すべり(ふつう数%ほど) s=(Ns−N)÷Ns
f:周波数[Hz]、p:極数
ここまでのポイント
  • 三相の電流で回転磁界ができる
  • 回転子は磁界を少し遅れて追いかける
  • 遅れの割合がすべり s

回転速度 ― 周波数と極数で決まる

同期速度の早見表として、2極・4極・6極の電動機が50Hzで3,000・1,500・1,000min⁻¹、60Hzで3,600・1,800・1,200min⁻¹になることを示した図
同期速度は、周波数と極数だけで決まります。

同期速度は Ns=120×f÷p で決まります。たとえば、4極の電動機を50Hzで使うと 120×50÷4=1,500min⁻¹、60Hzなら1,800min⁻¹です。同じ電動機でも、西日本(60Hz)のほうが速く回ることになります。

ここまでのポイント
  • Ns=120×f÷p
  • 極数が多いほどゆっくり回る
  • 60Hzは50Hzより速く回る


始動方法 ― 始動電流を抑える

全電圧始動では始動時に定格電流の5〜8倍の電流が流れ、スターデルタ始動ではそれが1/3に抑えられることを、電流の時間変化のグラフで比べた動く図解
動く図解:動き出す瞬間に、大きな電流が流れます。

誘導電動機は、止まった状態から動き出す瞬間に、定格電流の5〜8倍もの大きな電流が流れます。たとえるなら重い台車の押し始めです。動き出すまでがいちばん力が要り、動き出せば軽く押せます。

始動方法 しくみ 始動電流 向いている電動機
全電圧始動(じか入れ) いきなり電源電圧をかける 定格の5〜8倍 容量の小さいもの
スターデルタ始動 始動はスター結線、回り出したらデルタ結線に切り替える 全電圧始動の1/3(始動トルクも1/3) 中容量のもの
インバータ始動 周波数と電圧をゆっくり上げる 小さく抑えられる 回転速度を変えたいもの
一般的な傾向。どの始動方法にするかは、電動機の容量や電源の条件で決める

始動電流が大きいと、電圧が一瞬下がって照明がちらついたり、ほかの機器に影響したりします。始動電流の考え方は「動力設備の設計マニュアル」の第3回でくわしく解説しています。

ここまでのポイント
  • 始動の瞬間は定格の5〜8倍の電流が流れる
  • スターデルタ始動なら電流・トルクとも1/3
  • インバータなら、ゆっくり加速できる

逆転 ― 3本のうち2本を入れ替える

三相電源R・S・Tを電動機のU・V・Wにふつうにつなぐと正転し、RとTを入れ替えてつなぐと逆転することを比べた図
2本を入れ替えると、回転磁界の向きが逆になります。

三相誘導電動機の回転方向を逆にするには、電源の3本のうちどれか2本を入れ替えるだけです。回転磁界の向きが逆になり、電動機も逆に回ります。

ひっかけ注意
配線を全部つなぎ直さなくていいんですね!
そうなんです。ただ、ポンプやファンは逆に回ると役に立たないので、試運転では必ず回転方向を確認しますよ。
ここまでのポイント
  • 2本を入れ替えると逆転する
  • どの2本でもよい
  • 試運転で回転方向を必ず確認する

コンデンサと保護 ― 負荷側に並列、過負荷から守る

電源から手元開閉器、過負荷保護装置を経て電動機につなぎ、力率改善用の進相コンデンサを開閉器の負荷側で電動機と並列に接続することと、過負荷保護装置の役割を示した図
コンデンサは、電動機と一緒に入・切される位置につなぎます。

誘導電動機は、磁界をつくるために遅れた電流を流すので、力率が低くなりがちです。力率を改善するには、進相コンデンサを手元開閉器の負荷側に、電動機と並列につなぎます。電動機と一緒に入・切されるので、止まっているときにコンデンサだけがつながり、力率が進みすぎることを防げます。力率そのものは「電気設備の基本知識 #011【電気機器の力率】」で解説しています。

また、屋内に施設する電動機には、原則として過負荷保護装置(サーマルリレーなど)を付けます。出力0.2kW以下のものなどは除かれます。電動機が重すぎる負荷で回り続けると、巻線が熱くなって焼けてしまうからです。

ここまでのポイント
  • 進相コンデンサは手元開閉器の負荷側に並列
  • 電動機と一緒に入・切されるようにする
  • 屋内の電動機には過負荷保護装置(0.2kW以下などを除く)


よくある質問

三相誘導電動機の回転速度はどうやって決まりますか?

回転磁界の速さ(同期速度)は、Ns=120×f÷p(f:周波数、p:極数)で決まります。たとえば4極なら50Hzで1,500min⁻¹、60Hzで1,800min⁻¹です。実際の回転速度は、すべりの分だけ同期速度より少し遅くなります。

すべりとは何ですか?

回転子が回転磁界より遅れる割合で、s=(Ns−N)÷Ns で表します。回転子が磁界と同じ速さで回ると、回転子の導体を磁界が横切らなくなり、力が生まれません。そのため、少し遅れて回るのが誘導電動機の性質です。

スターデルタ始動のメリットと注意点は?

始動のときだけ巻線をスター結線にすることで、始動電流を全電圧始動の1/3に抑えられます。ただし始動トルクも1/3に小さくなるので、重い負荷をつないだまま始動する用途には向きません。

三相誘導電動機の回転方向を逆にするには?

電源の3本(R・S・T)のうち、どれか2本を入れ替えます。回転磁界の向きが逆になり、電動機も逆に回ります。

力率改善用のコンデンサはどこにつなぎますか?

手元開閉器の負荷側(電動機側)に、電動機と並列につなぎます。こうすると電動機と一緒に入・切されるので、電動機が止まっているときにコンデンサだけがつながったままになり、力率が進みすぎることを防げます。

ハリタ

この記事を書いた人:ハリタ

電気設備設計の実務者。内線規程・電気工事士資格・住宅の電気設備を「設計者の視点」で解説しています。プロフィール詳細

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