技術図書館動力盤の構成は切る単位から決める分電盤との違い、主幹の要否、盤の中身と盤の外の取り合いこの資料をスライドで見る資料一覧を見る
この記事は連載「動力設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
動力盤の構成の全体像:1回路1台、主幹は必須ではない、決め手は停電範囲、盤の外にも3つある

こんにちは、HARITAの設計室です。

動力設備の設計マニュアル、第5回です。前回でブレーカーとケーブルを決めました。ここまでで「機器1台に何を使うか」は出そろっています。

今回は、それを盤にまとめるところです。

動力盤の設計でいちばん質問が多いのが主幹の要否です。図面によって付いていたり付いていなかったりして、先輩に「これ外していいよ」と言われて不安になる ― よくある場面だと思います。

先に結論を言うと、主幹は必ず付けるものではありません。ただし、省略していいかどうかには、はっきりした判断の起点があります。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 先輩に「この主幹、外していいよ」と言われた。何を確認すれば判断できるか
  • 1本の幹線から2つの動力盤へ分岐している。主幹は要るか
  • 過負荷保護のサーマルは、動力盤の中か、機械設備側の制御盤か
ペン太ペン太
動力盤って、主幹は付いていたり付いていなかったりしますよね。
はりたはりた
そう。内線規程でも、引込口装置になるものを除けば、特に必要がある場合以外は付けなくてよいとされている。
ペン太ペン太
じゃあ何で決めるんですか?
はりたはりた
どこまで停電するか。幹線が1対1なら供給元を切っても止まるのはこの盤だけ。でも幹線が分岐していたら、この盤に主幹がないと他の盤まで止まる。そこが分かれ目。

同じ「盤」でも、中身の考え方が違う

トピック1:電灯分電盤との違い
同じ「盤」でも、中身の考え方が違う電灯分電盤単相3線式が基本1回路に照明やコンセントを複数主幹で盤全体を切る回路は「場所」で分ける動力盤三相3線式が基本1回路に機器1台が基本主幹は無いこともある回路は「機器」で分ける動力は1回路=1台。だから「切る単位」が回路そのものになるHARITAの設計室
図1:電灯分電盤と動力盤は、中身の考え方が違う

動力盤を電灯分電盤と同じ感覚で描くと、どこかでずれます。まず前提の違いを押さえます。

電灯分電盤 単相3線式が基本で、1つの回路に照明やコンセントを複数つなぎます。回路は「場所」で分けます。主幹で盤全体を切ります。

動力盤 三相3線式が基本で、1つの回路に機器1台が基本です。回路は「機器」で分けます。主幹は無いこともあります。

大事なのは1回路=1台という点です。電灯で切るのは「この部屋の照明」ですが、動力で切るのは「このポンプ」です。つまり動力盤では、切る単位が回路そのものになっています。

だから主幹の意味も変わります。電灯分電盤の主幹は「盤全体を切る」ために当然のように置きますが、動力盤は回路ごとに切れるので、盤全体を切る必要が本当にあるのかを毎回考えることになります。盤の基本的な構成そのものは 分電盤の構成と計画指針 が扱っています。

電灯分電盤動力盤
方式単相3線式が基本三相3線式が基本
1回路につなぐもの照明・コンセントを複数機器1台が基本
回路の分け方「場所」で分ける「機器」で分ける
主幹盤全体を切るために置く無いこともある
ここまでのポイント
  • 電灯分電盤=単相3線式・回路は「場所」で分ける・主幹で盤全体を切る
  • 動力盤=三相3線式・1回路=機器1台・回路は「機器」で分ける
  • 動力盤では切る単位が回路そのもの。だから主幹の意味も変わる

主幹は「必ず付けるもの」ではない

トピック2:主幹は必須ではない
主幹は「必ず付けるもの」ではない引込口装置になるものを除き、特に必要がある場合以外は取り付けなくてもよい ― とされている1入切する箇所負荷電流を通じたり止めたりする必要がある2閉鎖する箇所故障・点検・測定・修理で電路を閉鎖する必要がある3ヒューズの電源側ヒューズに近接して開閉器を設ける該当しないなら省略できる。「なんとなく付ける」も「なんとなく外す」も避ける判断の起点は「切る必要があるかどうか」HARITAの設計室
図2:主幹の要否判断の起点

内線規程では、分電盤の主開閉器は引込口装置になるものを除き、特に必要がある場合以外は取り付けなくてもよいとされています。動力盤も同じ考え方です。

では「特に必要がある場合」とは何か。低圧開閉器を必要とする箇所として挙げられているのが、次の3つです。

  • 入切する箇所 負荷電流を通じたり止めたりする必要がある
  • 閉鎖する箇所 故障・点検・測定・修理などで電路を閉鎖する必要がある
  • ヒューズの電源側 ヒューズに近接して開閉器を設ける

この3つのどれにも当てはまらず、引込口装置でもなければ、省略できます。

条文番号は版で変わります
規程の項番は改定で変わることがあります。図面や協議記録に根拠を書くときは、採用している版で確認してください。

注意したいのは、「なんとなく付ける」も「なんとなく外す」も同じくらい危ないということです。前者は盤の寸法とコストに効き、後者は保守の段取りに効きます。どちらも判断の理由を残しておくべきところです。

この論点だけを詳しく追いたい方は 動力盤主幹の設置基準と有無の判断方法 が正面から扱っています。

ここまでのポイント
  • 内線規程では、分電盤の主開閉器は引込口装置になるものを除き、特に必要がある場合以外は取り付けなくてもよい
  • 「特に必要がある場合」=入切する箇所/閉鎖する箇所/ヒューズの電源側
  • 「なんとなく付ける」も「なんとなく外す」も危ない。判断の理由を残す

停電する範囲で考えると、答えが出る

トピック3:停電範囲で考える
停電する範囲で考えると、答えが出る例1 幹線が1対1供給元動力盤更新工事で供給元のブレーカーを切っても、止まるのはこの盤だけ主幹は省略できる例2 幹線が分岐供給元動力盤A動力盤B供給元を切ると、分岐した先の他の盤まで停電してしまうこの盤には主幹が要る主幹の要否は、盤の大きさではなく「系統の切り方」で決まる主幹は、切る単位を決めるためにあるHARITAの設計室
図3:幹線が1対1か分岐かで、主幹の要否が変わる

実務でいちばん効いてくるのは2つ目(電路を閉鎖する必要があるか)です。改修や点検のとき、どこまで止めることになるかで考えると判断がはっきりします。

例1 幹線が1対1 供給元と動力盤がケーブル1本でつながっている場合。盤を更新するとき供給元のブレーカーを切っても、止まるのはこの盤の負荷だけです。メンテナンス上の支障がないので、主幹は省略できます。

例2 幹線が分岐している 1本の幹線から分岐して複数の動力盤へ供給している場合。この盤に主幹がないと、更新のたびに供給元を切ることになり、分岐した先の他の盤まで停電します。この場合は主幹が要ります。

つまり主幹の要否は、盤の大きさでも回路数でもなく、系統をどこで切れるようにしておくかで決まります。

同じ系統に24時間動く設備(冷凍機、排水ポンプ、テナントの空調など)がぶら下がっていないかは、必ず確認してください。

また、将来の増設で分岐が増える計画があるなら、いまは1対1でも主幹を置いておくという判断はあり得ます。ただしその理由は図面か設計メモに残してください。

幹線側の分岐の考え方は 幹線編 第5回 保護と幹線分岐 と合わせて読むと整理しやすいと思います。

ここまでのポイント
  • 効いてくるのは電路を閉鎖する必要があるか
  • 幹線が1対1なら供給元を切っても止まるのはこの盤だけ=省略できる
  • 幹線が分岐していると他の盤まで停電する=主幹が要る

盤の中に、何を並べるか

トピック4:盤の中に並べるもの
盤の中に、何を並べるか1主幹置くかどうかは、切る単位で決める2分岐回路機器1台に1回路が基本。予備も見込んでおく3電磁開閉器運転の入切と過負荷保護。機器側との取り合いを確認4表示灯動作状況を示すもの。小容量のものを使う5電流計最大使用電流に対して余裕のある目盛を選ぶ表示灯や電流計の仕様にも規程の定めがあります。採用している版で確認してください並べる前に、切る単位と操作する人を決めるHARITAの設計室
図4:動力盤の中に並べるもの

主幹の要否が決まったら、中身に入ります。

分岐回路 機器1台に1回路が基本です。予備回路を見込むかどうかは、増設の可能性と盤のスペースで決めます。予備は「入れておけば安心」ではなく、幹線と主幹の容量にも効いてくるので、何を想定した予備なのかまで決めておきたいところです。

電磁開閉器・サーマル 運転の入切と過負荷保護です。前回のとおり、過負荷保護は機器側が担当します。問題はそれが動力盤の中にあるのか、機械設備側の制御盤にあるのかです。ここは取り合いでいちばん揉めるところなので、早めに確認します。

表示灯 動作状況を示すためのものです。消費電力の小さいものを使うのが原則とされています。

電流計 最大使用電流に対して余裕のある目盛を選びます。電動機用は始動があるぶん、さらに余裕を見た目盛が求められます。

表示灯や電流計、断路用器具の扱いには規程の定めがあります。具体的な数値は 内線規程【066】低圧電動機・各装置類への電路に施設する機器類 にまとめてありますが、版によって変わり得るので原典で確認してください。

負荷表そのものを作る作業は、動力分電盤負荷表作成ツール で機械的に処理できます。

動力盤の盤図の作図イメージ:単線結線図・姿図・負荷表
図5:動力盤の盤図は、実際にはこう描く(単線結線図・姿図・負荷表)
ここまでのポイント
  • 分岐回路は機器1台に1回路。予備は「何を想定した予備か」まで決める
  • 電磁開閉器・サーマルが動力盤の中か、機械設備側の制御盤かは取り合いで揉めやすい
  • 表示灯は消費電力の小さいもの、電流計は始動を見込んで余裕のある目盛

盤だけでは、動力設備は完結しない

トピック5:盤の外にある3つ
盤だけでは、動力設備は完結しない動力盤手元開閉器機器のそばで切る現場操作盤運転・停止を操作する電動機盤の中の制御は、この3つが読めれば大半が追える自己保持押して離しても動き続けるインターロック同時に動かせなくするタイマー決めた時間だけ待つ制御の仕様は機械設備側で決まることが多い。早めに取り合いを確認する電気が切れる場所と、人が操作する場所を分けて考えるHARITAの設計室
図6:盤の外にある手元開閉器・現場操作盤・制御回路

動力盤を描き終えても、まだ終わりではありません。盤の外に3つあります。

手元開閉器 機器のそばで電源を切れるようにするものです。点検や修理のとき、盤まで戻らずに切れる場所をつくります。省略できる条件は規程に定めがあります(手元開閉器とは?設置基準と省略できる条件)。

現場操作盤 運転・停止を現場で操作するためのものです。誰がどこで操作するかは運用側と機械設備側で決まることが多いので、電気側だけで決めきらないようにします。

制御回路 盤を作るのは盤屋でも、仕様を決めて図面を承認するのは設計者です。自己保持・インターロック・タイマーの3つが読めれば、シーケンス図の大半は追えます(シーケンス制御の基本回路|自己保持・インターロック・タイマーの読み方)。

取り合いとして、少なくとも次の4点は早い段階で決めておきたいところです。

  • 電磁開閉器は電気側の動力盤に入れるのか、機械側の制御盤に入るのか
  • 現場操作盤はどちらの支給か
  • 制御電源をどこから取るか
  • 運転信号・故障信号を中央監視へ出すか

ここが決まらないと、盤の大きさもケーブルの本数も確定しません。機器表が固まる前に確認しておくのが結局いちばん早い、というのが実感です。

ここまでのポイント
  • 盤の外に手元開閉器・現場操作盤・制御回路の3つがある
  • 現場操作盤は運用側・機械設備側で決まることが多い。電気側だけで決めきらない
  • 制御回路は作るのは盤屋、承認するのは設計者

盤を置く場所を、最後に確認する

トピック6:置き場所の確認

動力盤は機器の近くに置くことが多いので、機械室・屋上・ピット周りなど、条件の悪い場所になりがちです。

  • 扉の開き代と、前面の作業スペースが取れるか
  • 水がかかる場所か、粉じんの多い場所か(盤の仕様が変わります)
  • 温度と湿度(機械室は想像より高温になります)
  • ケーブルの引き込み方向と、余長を取れるか
  • 更新のとき、その盤を搬入・搬出できる経路があるか

設置場所が決まらないと、盤の仕様も決まりません。屋内か屋外か、防じん・防水をどこまで見るか。ここを後回しにすると、盤の見積が最後にひっくり返ります。

ペン太ペン太
結局、盤を描く順番は?
はりたはりた
主幹の要否 → 分岐と予備 → 電磁開閉器や計器 → 盤の外(手元開閉器・現場操作盤・制御回路)→ 置き場所。切る単位が決まらないうちに中身を並べても、あとで組み替えになる。

まとめ ― 主幹は、切る単位を決める

トピック7:ここまでの整理
  • 動力盤は1回路=1台。切る単位が回路そのものになる
  • 主幹は必ず付けるものではない。引込口装置になるものを除き、特に必要がある場合以外は省略できる
  • 「特に必要がある場合」は、負荷電流の入切/電路の閉鎖/ヒューズの電源側で判断する
  • 実務の決め手は幹線が分岐しているかどうか。停電範囲で考える
  • 盤の中身(分岐・予備・電磁開閉器・表示灯・電流計)は、切る単位が決まってから
  • 手元開閉器・現場操作盤・制御回路は盤の外。取り合いを早めに確認する
今回の合言葉
主幹は、切る単位を決める。
付けるか外すかではなく、どこで切りたいかを先に決めます。

よくある質問

トピック8:よくある質問

Q1. 主幹がない動力盤は、規程違反になりませんか?

引込口装置になるものを除き、特に必要がある場合以外は取り付けなくてもよいとされています。該当しなければ省略しても差し支えありません。ただし「該当しないことを確認したうえで省略する」という順番が大事です。条文の番号は版で変わることがあるので、採用している版で確認してください。

Q2. 主幹を付けるかどうかは、誰が決めるのですか?

決めるのは電気設計です。ただし判断の材料 ― 改修時にどこまで止めてよいか、24時間動く設備が同じ系統にあるか ― は運用側と機械設備側が持っています。一人で決めきらず、「停電範囲の話」として確認すると話が早いです。

Q3. 予備回路はいくつ見込めばいいですか?

決まった数はありません。増設の可能性、盤のスペース、幹線と主幹の容量への影響で決めます。「とりあえず2回路」ではなく、何を想定した予備なのかを書き残しておくと、次の担当者が判断できます。

Q4. 電磁開閉器は動力盤に入れますか、機械側の制御盤に入れますか?

案件によります。どちらでも成立しますが、決めるのが遅いほど手戻りが大きくなります。盤の大きさ、ケーブルの本数、制御電源の取り方がすべて変わるので、機器表が固まる前に取り合いを確認してください。

次回予告

トピック9:次回予告

第6回・最終回は「図面化と拾い」です。動力設備で描く図面(配置図・動力幹線系統図・機器表・制御回路図)の役割分担と、拾いの進め方。そして動力設備の情報が、なぜ最後に機器表へ集まるのか。

合言葉は「動力は、機器表で決まる」。

→ 第6回・最終回 図面化と拾い ― 動力は、機器表で決まる を公開しました。これで連載は完結です。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。