電気設備の基本知識 #011【電気機器の力率】
「力率」は、電気設備の設計や省エネで必ず出てくるのに、イメージしにくい言葉です。でも、ビールのジョッキを思い浮かべると、ぐっとわかりやすくなります。この記事では、力率とは何か、電圧と電流のタイミング、機器ごとの力率、力率が低いと何が困るのか、改善の方法を、図とたとえで1つずつ解説します。
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力率とは ― ジョッキの中のビールの割合
ジョッキにビールを注ぐと、上に泡ができます。お金を払ったのはジョッキ1杯分ですが、実際に飲めるのはビールの部分だけです。電気も同じで、電源が送り出す電力には、実際に仕事をする部分と、行ったり来たりするだけで仕事をしない部分があります。
| たとえ | 電力の名前 | 単位 | 意味 |
|---|---|---|---|
| ビール | 有効電力 P | W(ワット) | 熱・光・回転など、実際に仕事をする電力 |
| 泡 | 無効電力 Q | var(バール) | 電源と機器の間を行き来するだけの電力 |
| ジョッキ全体 | 皮相電力 S | V·A(ボルトアンペア) | 電圧×電流。電源が送り出す見かけの電力 |
泡が少ないほど、つまり無効電力が小さいほど、力率は100%に近づきます。
- 力率=有効電力÷皮相電力
- ビール=有効電力、泡=無効電力、ジョッキ=皮相電力
- 泡が少ないほど力率が高い
なぜ下がる ― 電圧と電流のタイミング
交流では、電圧と電流が波のように行ったり来たりしています。電熱器や白熱灯のような抵抗だけの機器では、電圧と電流の波がぴったりそろって動きます。このとき力率はほぼ100%です。
ところが、モータのようにコイルを持つ機器では、電流の波が電圧より遅れてしまいます。たとえるなら二人三脚です。息がそろえば力がむだなく前に進みますが、足のタイミングがずれると、同じだけ力を使っても前に進みにくくなります。このずれの角度θを使って、力率は cosθ と表します。
- 抵抗は電圧と電流がそろう(力率約100%)
- コイルは電流が遅れる(力率が下がる)
- ずれの角度θで、力率=cosθ
電力の三角形 ― 3つの電力の関係
3つの電力は、直角三角形の関係になっています。底辺が有効電力P、高さが無効電力Q、斜めの辺が皮相電力Sです。
📘 計算してみよう
皮相電力が10kV·A、有効電力が8kWのとき、力率は 8÷10=0.8(80%)です。無効電力は、S²=P²+Q² から 10²=8²+Q²、Q=6kvar です。
- 底辺P・高さQ・斜辺Sの直角三角形
- cosθ=P÷S、S²=P²+Q²
- S=V×I(単相の場合)
機器ごとの力率 ― 抵抗は高く、コイルは低め
| 機器 | 力率のめやす | 理由 |
|---|---|---|
| 電熱器・白熱灯 | 約100% | ほぼ抵抗だけ。電圧と電流がそろう |
| LED照明(一般的な製品) | 90〜95%程度 | 電源回路で力率を高めている製品が多い |
| 誘導電動機 | 70〜90%程度 | コイルで電流が遅れる。軽い負荷ほど低い |
| 蛍光灯(低力率形) | 50〜60%程度 | 安定器のコイルで電流が遅れる |
ペン太
ハリタ- 電熱器・白熱灯は約100%
- モータは70〜90%程度、軽い負荷ほど低い
- LED照明は一般に高め
低いと困ること ― 同じ仕事でも電流が増える
電流は I=P÷(V×力率)で求められます。100Vで1kWの仕事をするとき、力率100%なら10Aですが、80%なら12.5A、60%なら約16.7Aも必要です。
| 困ること | 理由 |
|---|---|
| 電線の損失が増える | 損失は電流の2乗に比例する(I²R) |
| 電圧降下が大きくなる | 電流が増えるほど電線で電圧が下がる |
| 設備が大きくなる | 太い電線や大きな変圧器が必要になる |
| 基本料金に影響する(高圧受電) | 力率によって基本料金を割引・割増する制度がある |
家庭の電力量料金は実際に使った有効電力量で決まるので、力率がそのまま料金を上げるわけではありません。一方で、高圧で受電するビルや工場では、力率が高いほど基本料金が割引される契約が一般的です。配線の設計の考え方は「電気設備の基本知識 #016【屋内配線の設計】」も参考にしてください。
- 同じ仕事でも、力率が低いと電流が増える
- 損失・電圧降下・設備の大きさに影響する
- 高圧受電では基本料金にも影響する
改善の方法 ― 進相コンデンサで打ち消す
コイルは電流を遅らせ、コンデンサは電流を進ませます。そこで、モータなどと一緒に進相コンデンサをつなぐと、遅れと進みが打ち消し合い、無効電力(泡)が小さくなって力率が100%に近づきます。有効電力(ビール)は変わりません。
⚠️ つけすぎに注意
コンデンサをつけすぎたり、モータが止まっているのにコンデンサだけがつながっていたりすると、今度は電流が進みすぎになり、電圧が上がるなどの問題が起きます。電動機のコンデンサは、手元開閉器の負荷側に並列につなぎ、電動機と一緒に入・切されるようにします。つなぎ方は「電気設備の基本知識 #010【誘導電動機】」で解説しています。
- コイルの遅れを、コンデンサの進みで打ち消す
- 有効電力は変わらず、無効電力が減る
- つけすぎると進みすぎになる
よくある質問
力率とは何ですか?
電源から送り出す見かけの電力(皮相電力)のうち、実際に仕事をする電力(有効電力)が占める割合です。力率=有効電力÷皮相電力=cosθ で表します。ビールのジョッキにたとえると、ジョッキ全体が皮相電力、ビールが有効電力、泡が無効電力です。
電熱器や白熱灯の力率はなぜ高いのですか?
中身がほぼ抵抗だけでできていて、電圧と電流のタイミングがそろうためです。電気がそのまま熱や光になるので、力率はほぼ100%になります。
モータの力率が低くなるのはなぜですか?
モータの巻線(コイル)が磁界をつくるため、電流が電圧より遅れて流れます。この遅れの分が無効電力になり、力率が下がります。とくに軽い負荷で回しているときは力率が低くなります。
力率が低いと電気代は高くなりますか?
家庭などの電力量料金は、実際に使った有効電力量で決まるので、力率がそのまま料金を上げるわけではありません。ただし、高圧で受電するビルや工場の契約では、力率によって基本料金が割引・割増される制度があります。また、力率が低いと電流が増え、電線の損失や電圧降下が大きくなります。
力率を改善するにはどうすればよいですか?
進相コンデンサをつなぎます。コイルは電流を遅らせ、コンデンサは電流を進ませるので、遅れを打ち消して力率を100%に近づけられます。ただし、つけすぎると逆に進みすぎになるので、負荷に合った容量にします。
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