この記事は連載「動力設備の設計マニュアル」(全5回)の1本です。
動力とは何かの全体像:分けるのは電圧ではなく負荷の性格、動力負荷のいる場所、変圧器で分かれる、設計の6ステップ

こんにちは、HARITAの設計室です。

今回から「動力設備の設計マニュアル」を全6回でお送りします。

建物の電気は、大きく電灯動力に分かれます。図面でも「L」「P」と書き分けますし、盤も幹線も別になります。

新人のうちにいちばん多い誤解は、「電圧が違うから分けている」というものです。たしかに電灯は単相、動力は三相なのですが、電圧が理由ではありません。理由は使われ方のほうにあります。

第1回は、この分け方の考え方と、動力設備の設計が全体としてどう進むのかを見ていきます。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 電灯と動力を分ける理由は何か。電圧が違うからではない
  • 高圧受電の建物で、電灯と動力はどこから別系統になるか
  • 機器付属の制御盤は、機械側と電気側のどちらが用意するか
ペン太ペン太
電灯と動力って、単相と三相で分けているんですよね。
はりたはりた
逆。電圧が理由じゃなくて、使われ方が違うから分けている。電灯は人がスイッチで点けたり消したりする。動力は機械が自動で動かして、運転中はずっと回っている。
ペン太ペン太
じゃあ電圧は…
はりたはりた
性格が違うから、結果として電圧も変圧器も盤も契約も別になる、という順番。ここを取り違えると「なぜ動力盤を別に置くのか」が腑に落ちない。
この記事でわかること
動力設備の設計マニュアル 全6回の第1回。②容量換算 ③始動電流 ④保護 ⑤動力盤 ⑥図面化と続きます。

分けるのは電圧ではなく、負荷の性格

トピック1:分けるのは負荷の性格
使100V200V使調使200V 使使HARITA
図1:電灯と動力の違い

電灯(L)は、照明とコンセントが代表です。人がスイッチを操作して、点けたり消したりして使います。単相100Vや200Vで供給します。

動力(P)は、ポンプ、空調機、送風機、エレベーターが代表です。こちらは機械が自動で動かすもので、運転中はずっと回り続けます。三相200Vが中心です。

この「使われ方の違い」が、設計のいろいろなところに効いてきます。

  • 電流の性格が違う 電動機は動き出す瞬間に大きな電流が流れます(第3回で扱います)
  • 変圧器が別になる 電灯用(単相)と動力用(三相)で分けます
  • 盤が別になる 電灯分電盤と動力盤
  • 契約が別になる 電灯の契約と動力の契約

つまり電圧が違うから分けるのではなく、性格が違うから分けた結果として電圧も違う、という順番です。ここを取り違えると、あとで「なぜ動力盤を別に置くのか」が腑に落ちません。

電灯と動力の違いそのものは 【新人講座 第10回】電灯と動力のちがい でも図解しています。

電灯(L)動力(P)
代表的な負荷照明、コンセントポンプ、空調機、送風機、エレベーター
使われ方人がスイッチで操作する機械が自動で動かし、運転中は回り続ける
電圧単相100V/200V三相200Vが中心
変圧器・盤・契約性格が違うため、いずれも別になる
ここまでのポイント
  • 電灯(L)は人がスイッチで使う/動力(P)は機械が自動で動かし、運転中は回り続ける
  • 使われ方が違うから、電流の性格・変圧器・盤・契約がそれぞれ別になる
  • 電圧が違うから分けるのではなく、性格が違うから結果として電圧も違う

動力は、建物のこういう場所にいる

トピック2:動力はここにいる
調EVHARITA
図2:建物の中の動力負荷

では実際に、建物のどこに動力負荷がいるのか。代表的なところを挙げてみます。

  • 屋上 空調の室外機、冷却塔、排煙ファン
  • 機械室 給水ポンプ、排水ポンプ、消火ポンプ
  • シャフト エレベーター、エスカレーター
  • 駐車場・外部 電動シャッター、ゲート、EV充電設備
  • 厨房・水まわり 排気ファン、厨房機器の動力

並べてみて気づくことがあります。そのほとんどが機械設備の機器だということです。ポンプも空調機もエレベーターも、選ぶのは機械設備の設計者です。

電気設計の仕事は、そこへ電源を持っていくこと。だから動力設備の設計は、他の工事項目より「相手から情報をもらう」比重が大きくなります。

ここまでのポイント
  • 屋上=空調の室外機・冷却塔・排煙ファン/機械室=給水・排水・消火ポンプ
  • シャフト=エレベーター、エスカレーター/駐車場・外部=電動シャッター、ゲート、EV充電設備
  • いずれも機器を決めるのは機械設備。電気設計は電源を持っていく側

分かれ道は、変圧器にある

トピック3:分かれ道は変圧器
100/200V 200V調HARITA
図3:電灯と動力は変圧器から分かれる

高圧受電の建物では、電灯と動力が分かれるのは変圧器のところです。

受電した高圧を、電灯用変圧器で単相100/200Vに、動力用変圧器で三相200Vに落とします。そこから先はずっと別系統です。幹線も別、盤も別、回路も別。

低圧受電の建物でも、電灯の契約と動力の契約が分かれていれば、引込の段階から別になります。

この「ずっと別」という感覚を早めに持っておくと、幹線計画のときに迷いません。幹線設備の設計マニュアル① で扱った系統の分け方も、用途別に分けるという話でした。動力はその代表例です。

変圧器の容量配分は受変電編で
電灯用と動力用にどう容量を振り分けるか、台数をどうするかは受変電設備の設計そのものです。高圧受変電設備の設計マニュアル で詳しく扱っています。この連載では、動力用変圧器から先――動力盤と分岐回路の話をします。
電灯と動力が変圧器で分かれる系統図と、機械設備との取り合いの図
図4:系統の分かれ方と、取り合いの引き方
ここまでのポイント
  • 高圧受電では、電灯用変圧器(単相100V/200V)と動力用変圧器(三相200V)で分かれる
  • そこから先は幹線も盤も回路もずっと別
  • 低圧受電でも、電灯と動力の契約が分かれていれば引込の段階から別

動力の設計は、この順番で進む

トピック4:設計の6ステップ
12kW 3654HARITA
図5:動力設備の設計フロー6ステップ

この連載の地図です。6つのステップが、そのまま第1回から第6回に対応しています。

  • ① 負荷を拾う 機器表から、何がどこにいくつあるかを拾います。今回の話です。
  • ② 容量を換算する 銘板のkWから、電線を選ぶための電流へ(第2回)。
  • ③ 始動方式を見る 動き出す瞬間の電流を確認します(第3回)。
  • ④ 保護を決める ブレーカーとケーブルの選定(第4回)。
  • ⑤ 動力盤を組む 主幹の要否と分岐の構成(第5回)。
  • ⑥ 図面化と拾い 機器表と系統図に落とす(第6回)。

他の連載と違うのは、①の起点が自分の中にないことです。照明なら「どこを何ルクスにするか」を自分で決められますが、動力の負荷は機械設備が決めます。

だから動力設備の設計は、機器表がいつ出てくるかに支配されます。

ここまでのポイント
  • ①負荷を拾う →②容量を換算 →③始動方式 →④保護を決める →⑤動力盤を組む →⑥図面化と拾い
  • 他の連載と違うのは、①の起点が自分の中にないこと
  • だから動力設備の設計は、機器表がいつ出てくるかに支配される

機器は機械、電源は電気

トピック5:機器は機械、電源は電気
HARITA
図6:機械設備と電気設備の担当範囲

担当の分かれ方を整理しておきます。

機械設備が決めるのは、機器そのものです。ポンプの種類、容量、台数、制御の考え方。これが機器表という形でまとまります。

電気設備が決めるのは、そこへ電源を持っていく方法です。盤の構成、幹線、分岐回路、保護、接地。

取り合いになるのは、その境目です。実務でよく確認が必要になるのは次のようなところです。

  • 機器に付属する制御盤は、機器側か電気工事側か
  • 現場操作盤は誰が用意するか
  • 電源は動力盤から直接か、制御盤経由か
  • インバータは機器付属か、盤に組み込むか

ここが曖昧なまま進むと、着工後に「その盤、誰が手配していますか」という話になります。早い段階で機械設備と工事区分を確認してください。

機器表は動く
機器表は、設計中に何度も変わります。容量が変わればブレーカーもケーブルも変わり、台数が変われば盤の回路数が変わります。「機器表が確定してから設計する」のでは間に合わないので、変わる前提で余裕を持たせておくのが現実的です。この考え方は第5回の盤の構成でも出てきます。
ここまでのポイント
  • 機械設備が決めるのは機器そのもの(種類・容量・台数・制御の考え方)=機器表
  • 電気設備が決めるのはそこへ電源を持っていく方法(盤・幹線・分岐回路・保護・接地)
  • 取り合いは制御盤・現場操作盤・電源の取り方・インバータ。曖昧なまま進めない
ペン太ペン太
この連載、何から手をつければいいですか?
はりたはりた
機器表を待つこと、と言いたいところだけど、実際は待っていられない。機器表は設計中に何度も変わるから、変わる前提で余裕を持たせながら進める。これが動力設計のいちばん大きな特徴。

まとめ ― 分けるのは電圧ではなく、負荷の性格

トピック6:ここまでの整理
  • 電灯と動力を分ける理由は電圧ではなく使われ方。性格が違うから、結果として電圧も系統も別になる
  • 動力負荷の多くは機械設備の機器。電気設計は電源を持っていく側
  • 高圧受電では変圧器のところで分かれ、その先は幹線も盤も回路も別
  • 設計は「負荷を拾う → 容量換算 → 始動方式 → 保護 → 盤 → 図面化」の順
  • 起点は機器表。しかもそれは設計中に何度も変わる
  • 機器と電源の取り合い(制御盤・現場操作盤・インバータ)は早めに確認する
今回の合言葉
分けるのは電圧ではなく、負荷の性格。
電灯は人が使い、動力は機械が使います。

よくある質問

トピック7:よくある質問

Q1. 単相200Vの機器は、電灯ですか動力ですか?

負荷の性格で判断します。単相200Vのエアコンや電気温水器のように、電灯回路から供給する機器もあります。一方で三相200Vの機器は動力です。電圧だけでは決まらないというのが今回の話の中身です。判断に迷うときは、どの変圧器・どの盤から取るのが自然かで考えると整理できます。

Q2. 小さな建物でも、動力盤は別に置くのですか?

動力負荷が少なければ、動力盤を独立させず分電盤の中に動力用の分岐を設けることもあります。判断の考え方は第5回で扱います。ただし三相と単相を同じ盤で扱うときは、盤の仕様と表示に注意してください。

Q3. 機器表がまだ出てこないとき、設計はどう進めますか?

過去の類似案件から仮の容量を置いて進めるのが一般的です。そのときは仮であることを図面と資料に明記してください。仮の数字がいつのまにか確定値として扱われるのが、いちばん危ないパターンです。

次回予告

トピック8:次回予告

第2回は「負荷容量の換算」です。銘板に書いてあるのはkW、でも電線を選ぶのに要るのは電流。この間をどう埋めるのか。力率と効率、そして規約電流という考え方を扱います。

合言葉は「kWのままでは、電線は選べない」。→ 第2回 負荷容量の換算 を公開しました。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。