強電設備の設計|非常照明の回路は分電盤のどこにつける?取り方とNG例
非常照明の器具は選べても、いざ盤図を描く段になって「この回路、分電盤のどこから取るんだっけ?」と手が止まる——実はここ、取り方を間違えるといざ停電したときに点灯しないという、こわいミスにつながります。
🤔 こんなモヤモヤ、ありませんか?
・非常照明の回路は、主幹の一次側?二次側?
・スイッチは付けていい?専用回路にすべき?
・一般照明や発電機の回路から取ってもいいの?
この記事では、主流の電池内蔵形を中心に、非常照明回路を分電盤のどこから・どう取るのかを、結線イメージとNG例つきで整理します。電源別置形との違いもあわせて確認しましょう。

1. 結論:主幹の「二次側」から専用回路で、スイッチなし
まず結論から。電池内蔵形の非常照明は、分電盤の主幹の二次側から専用の分岐ブレーカで取り、スイッチを設けず常時通電にします。器具の中の電池を常に充電しておき、停電したら器具自身が検知して内蔵電池で点灯する——この動きを成立させるための取り方です。

🐧 ペン太:主幹の“二次側”ってわざわざ書くのは、一次側から取る人がいるからですか?
🦔 ハリタ先生:そう。ポイントは「停電したら切れる回路」から取ること。電池内蔵形は“供給が切れた”のを合図に点灯するから、停電しても生きている一次側や発電機回路から取ると、器具は「まだ電気が来てる」と思って点灯しないんだ。
動きで見る:停電したら非常灯はこう動く
言葉より、動きで見たほうが早いかもしれません。①平常時(充電中)→ ②停電で常用電源が絶たれる → ③非常灯が検知して内蔵電池に切替 → ④点灯、という一連の流れです。

補足:主幹の「二次側」から、電灯回路とは別回路で
非常照明の回路は、分電盤の主幹(メインブレーカ)の二次側から、電灯(一般照明)回路とは別の専用回路で組みます。ここでいう一次側/二次側は主幹のことで、分岐(小)ブレーカの一次側・二次側の話ではありません。
もし主幹の一次側(手前)から取ると、停電しても非常灯には電気が供給され続けるため、停電を検知できず点灯しません。電池内蔵形は「供給が絶たれたこと」を合図に点灯するので、必ず停電で切れる側=主幹の二次側から取ります。

🦔 覚え方:「主幹の二次側・電灯とは別回路」
主幹の一次側から取る、あるいは電灯回路と共用する——このどちらも「いざ停電で点灯しない」リスクにつながります。非常照明は主幹の二次側から、電灯回路と分けた専用回路で組むのが基本です。
盤結線図で「非常照明専用回路であること」「主幹の二次側から取っていること」を示しておくと、確認申請の審査でも接続方式が明快になります。
2. なぜスイッチを設けないのか
非常照明回路には点滅スイッチを付けません。理由は2つ。ひとつは常に充電状態に保つため——スイッチで切ると充電されず、いざというとき電池が空になります。もうひとつは、スイッチOFF=消灯を器具が「停電」と誤検知して点灯し、内蔵電池を無駄に消耗してしまうため。清掃や点検でうっかり切られないよう、そもそもスイッチを設けないのが基本です。
3. 電灯回路とは別の「専用回路」にする
非常照明は、電灯(一般照明)やコンセントとは別の専用回路で組みます。取り方の考え方は、前述の「主幹の二次側から、電灯回路とは別回路で」のとおりです。
4. やりがちなNG
✕ 発電機やUPSだけで生きる回路から取る:停電を検知できず、肝心なときに点灯しない。
✕ 主幹の一次側から取る:停電を検知できず、いざというとき点灯しない。
5. 電池内蔵形と電源別置形のちがい

ここまでは主流の電池内蔵形の話です。器具ごとに電池を内蔵し、常用電源で充電、停電で自動点灯。配線は一般配線(VVF)でよく、中小規模で広く使われます。
一方の電源別置形は、別置きの蓄電池設備や自家発電から専用の非常回路で給電し、停電時は非常電源に自動切替します。この場合の給電配線は耐火配線が必要で、大規模・多灯の建物で有利です。まずは自分の物件がどちらの方式かを確認しましょう。
6. 図面・施工でのチェックポイント
盤図では、非常照明の分岐に「非常照明用」と明示し、スイッチを介さない結線にします。回路名・負荷を盤内表示に残しておくと、保守時の誤操作(切り忘れ・切られ)を防げます。配線の耐火・耐熱の区分や範囲、回路構成の細部は、告示1830号や所轄の審査機関の運用で最終確認してください。
7. 非常照明と誘導灯のちがい(比較)
名前が似ていて混同されがちですが、非常照明と誘導灯は根拠法も役割も別ものです。回路のつくり方にも共通点と違いがあるので、あわせて押さえておきましょう。

| 項目 | 非常照明 | 誘導灯 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 建築基準法(令126条の4) | 消防法(令26条) |
| 目的 | 停電時に床面を照らし避難を助ける | 避難口・避難方向を「案内」する(ピクト) |
| 平常時 | 消灯でよい | 常時点灯(原則) |
| 点灯 | 停電(常用電源の遮断)で点灯 | 常時点灯。停電時も非常電源で継続 |
| 非常電源の時間 | 30分以上 | 20分以上(大規模・地階等は60分以上) |
| 明るさの基準 | 床面1lx(LED・蛍光灯は2lx) | 表示面の輝度・識別距離(A/B/C級) |
| 回路(電源) | 専用回路・スイッチなしで常時通電 | 同様に常時通電。原則スイッチで消さない |
回路の観点では、どちらも電池内蔵形が主流で一般配線(VVF)が使え、スイッチで切らず常時通電にする点は共通です。大きな違いは、非常照明が「停電で点灯」なのに対し、誘導灯は「常時点灯」であること。誘導灯は消灯させない前提なので、回路の取り方も“消えない・切られない”ことが最優先になります。なお一方がもう一方を兼ねることはできず、非常照明(建基法)と誘導灯(消防法)はそれぞれ独立して基準を満たす必要があります。誘導灯の級・有効範囲など詳細は誘導灯の設置基準の記事で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 非常照明を一般照明と兼用できる?
A. 兼用する場合、その回路を点滅させず常時通電にする必要があります。実務では誤操作を避けるため、専用回路にするのが無難です。
Q. 電池内蔵形でも耐火配線は必要?
A. 内蔵電池が予備電源になるため、配線が焼けても点灯でき、一般に耐火配線は不要(VVF可)です。耐火配線が必要になるのは電源別置形の給電回路です。
Q. 主幹の一次側から取ってはいけない?
A. 電池内蔵形は「供給が切れたこと」を合図に点灯します。停電しても生きている一次側や発電機回路から取ると停電を検知できず点灯しないため、原則は主幹の二次側(停電で切れる常用電源)から取ります。
まとめ
電池内蔵形の非常照明は、分電盤の主幹の二次側から、専用回路で、スイッチを設けず常時通電——これが基本形です。狙いは「常に充電しておき、停電を検知して点灯させる」こと。点滅スイッチ回路への相乗りや、発電機・UPSだけで生きる回路からの給電は、いざというとき点灯しないNGです。電源別置形は非常電源から耐火配線で給電します。まずは器具の形式を確認し、迷う点は告示・所轄で最終チェックを。





