電気設備サブコンを志望するとき、あるいは今いる会社の先を考えるとき、年収と同じくらい生活を左右するのが「どこで働くことになるのか」だ。転勤の範囲、実家からの距離、配偶者の仕事、住宅を買うタイミング——そのすべてが会社の拠点網の形に規定される。

ところが「主なエリア」という情報は、意外なほど数字で語られていない。会社説明会では「全国展開しています」と言われ、求人サイトには「全国転勤あり」とだけ書いてある。それは事実ではあるが、実際の拠点がどこに何件あるかという構成比を見ると、9社の姿はまったく違う

この記事では、大手9社が自社の公式サイトに掲載している拠点一覧だけを使い、所在地を都道府県単位で数え上げて8地方区分に集計した。転職メディアの独自集計や、出典不明の「拠点数◯◯」は一切使っていない。推定・按分・欠測の補完も行っていない。数えられないものは「非公表」と書く。

この記事の結論

9社の拠点件数を横に並べて比較することはできない。各社が拠点一覧に載せる粒度が違うためで、関電工は住所付き37件(営業所は名称のみで住所非掲載)、住友電設は営業所という区分自体がなく22件、一方でクラフティアは155件、きんでんは122件を営業所レベルまで掲載している。件数の多い少ないは、拠点網の大小ではなく開示方針の違いを映している。

比較できるのは「社内での構成比」と「支店・支社クラスの所在都道府県数」。この2つで見ると、9社は電力会社の管内にほぼ収まる5社と、関東・近畿を軸に全国へ薄く広がる4社に、はっきり分かれる。

最も地域集中が強いのは中電工(中国地方86.6%)、最も分散しているのは日本電設工業(最大シェアの関東でも46.8%、20都道府県/8地方)。同じ「大手サブコン」でも、転勤圏の広さは実質的に別物と考えたほうがいい。

1. その前に:拠点件数の横並び比較は成立しない

最初に、この記事でやらないことを書いておく。「A社は155拠点、B社は22拠点だからA社のほうが拠点網が大きい」という比較は成立しない。理由は単純で、各社が拠点一覧ページに何を載せるかを決めるルールがバラバラだからだ。

大手9社の拠点情報の開示状況マトリクス
図3 各社の拠点一覧ページの掲載粒度。件数の多寡は拠点網の大小ではなく開示方針の違いを映す。

関電工の拠点一覧に住所付きで掲載されているのは、営業本部・支店・支社クラスの37件である。同じページの注記には営業所名が多数列挙されているが、所在地の記載がない。所在地が書かれていないものを都道府県に割り振れば、それは推定になる。この連載では推定を行わないので、37件を関電工の集計対象とした。

住友電設はもう一段特殊で、拠点一覧に「営業所」という区分自体が存在しない。本社・支社・支店に加えて事業所と工事センターが並び、合計22件。これは拠点が22しかないという意味ではなく、支店より下の単位を一覧に載せない方針だという意味だ。

逆にクラフティア(155件)、きんでん(122件)、トーエネック(83件)、ユアテック(76件)、中電工(67件)、日本電設工業(62件)、四電工(48件)は、営業所・工事所クラスまで掲載している。だから件数が多い。開示が丁寧なほど数字が大きく出る、という構造になっている。

注記:会社が公表する「拠点総数」はほぼ存在しない

9社のうち、決算資料・統合報告書・会社概要のいずれかに拠点の総数を数字で書いているのは四電工のみで、統合報告書2025に「全国の事業所数 49拠点」の記載がある。ただし同社の拠点一覧ページの掲載は48件で、1件の差がある。差異の理由は公表されていない。

残る8社は拠点総数を非公表としている。したがって本稿の件数はすべて「各社が一覧ページに掲載した拠点の実数」であり、会社が公表する拠点総数ではない。取得日は2026年7月26日。

2. 地方別に見ると、9社は3つの型に分かれる

件数の絶対値は比較できないが、同じ会社の中での構成比なら比較できる。自社の拠点のうち何%がどの地方にあるか——これは開示粒度が変わっても、その会社の重心を素直に映す。8地方区分(北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州沖縄)に集計した。

大手9社の拠点の地方別構成比を示したヒートマップ
図1 9社の拠点構成比(8地方区分・社内シェア)。各社公式サイトの拠点一覧ページ(2026年7月26日取得)を集計。

型① 電力会社の管内がそのまま主なエリア(5社)

トーエネック(中部78.3%)、中電工(中国86.6%)、ユアテック(東北73.7%)、四電工(四国81.2%)、クラフティア(九州沖縄84.5%)。この5社は拠点の7〜9割が単一の地方に集中している。いずれも各地域の電力会社と資本・取引の関係が深い会社で、配電線工事という地域密着の仕事が事業の土台にある以上、拠点が管内に集まるのは必然といえる。

中電工
中国地方シェア
86.6%
クラフティア
九州沖縄シェア
84.5%
四電工
四国シェア
81.2%
トーエネック
中部シェア
78.3%
ユアテック
東北シェア
73.7%

ただしこの5社の数字を読むときは、8地方区分と電力管内がずれる県に注意がいる。総務省型の8地方区分では新潟県は中部、三重県は近畿に入るが、新潟県は東北電力の管内であり、三重県は中部電力の管内だ。

実際、ユアテックの「中部11件」は全件が新潟県で、これは同社の東北電力管内という性格を切り分けてしまった結果にすぎない。同様にトーエネックの「近畿12件」のうち10件は三重県で、これも中部電力管内である。地方区分は集計の道具であって、事業の実態そのものではない。

型② 関東を軸に全国へ薄く広がる(2社)

関電工(関東56.8%)と日本電設工業(関東46.8%)。本社はそれぞれ東京都港区、東京都台東区で、関東が最大シェアである点は共通する。しかし関電工が関東に半分以上を集めているのに対し、日本電設工業は最大シェアの関東でも5割に届かない。同社は関東46.8%・中部14.5%・東北11.3%と続き、8地方すべてに拠点があり、しかも最大シェアが最も低い9社中唯一の会社だ。

日本電設工業は鉄道電気設備を主力とする会社で、鉄道は路線に沿って全国に伸びている。拠点網が薄く広くなるのは、その事業構造の反映と読める。なお同社の「横浜支社」は鉄道統括本部の傘下で所在地は東京都大田区であり、拠点名と所在地が一致しない例として、本稿では所在地で数えている。

型③ 近畿または2本社で東西に張る(2社)

きんでん(近畿49.2%)と住友電設(関東45.5%・近畿22.7%)。きんでんは大阪市北区に本社を置き関西電力系の系譜を持つが、近畿シェアは49.2%と型①の5社より明確に低く、近畿と中部を合わせてようやく62.3%、8地方すべてに拠点がある。型①と型②の中間に位置する会社といえる。

住友電設は大阪市西区と東京都港区の2本社制で、最大シェアは近畿ではなく関東(45.5%)。関東と近畿の合計で68.2%になる。掲載22件と母数が小さいため1件の重みが4.5ポイントと大きく、構成比の細かい上下を読み込みすぎないほうがいい数字ではある。

3. 粒度差に強い副指標:支店・支社クラスは何都道府県にあるか

構成比は会社の重心を示すが、「転勤の可能性がある範囲」を知りたい読者には物足りない。そこでもう一つ、開示粒度の差を受けにくい指標を用意した。各社の一覧上で本社・本店・本部・支社・支店と表記された拠点だけを取り出し、その所在都道府県の数を数える。営業所を載せる会社と載せない会社の差が、この指標では消える。

大手9社の支店・支社クラスの所在都道府県数を示した横棒グラフ
図2 支店・支社クラスの所在都道府県数と地方数。営業所を一覧に載せない会社との粒度差を受けにくい副指標。

日本電設工業が20都道府県/8地方でトップ、関電工が19都道府県/7地方で続く。きんでん・クラフティアが16、住友電設が15。対して四電工は6都道府県/3地方と、支店クラスの展開範囲が明確に狭い。中電工とユアテックの11都道府県/5地方がその次に狭い。

ここで注意したいのは、関電工が19都道府県/7地方という上位の数字を示している点だ。図1では関電工の関東シェアが56.8%と高く、関東中心の会社に見える。しかし関電工の集計対象37件は支店クラスに限られているので、図2の指標では母数がほぼそのまま反映される。つまり関電工は支店クラスだけで19都道府県に及んでいる——これは他社の営業所を含む数字と比べても遜色ない広がりだ。

この2つの図の読み分け方

図1(構成比)は「その会社の仕事の重心がどこにあるか」を示す。配属先の地域分布に近いイメージで、確率的にどこに行きやすいかを表す。

図2(支店クラスの都道府県数)は「組織として旗を立てている範囲の広さ」を示す。支店がある県には基幹的な人員配置があるので、キャリアの中で異動しうる拠点の地理的な幅に近い。

重心が狭く(図1で高シェア)、かつ範囲も狭い(図2で少ない)のが四電工・中電工・ユアテック。重心は関東寄りだが範囲が広いのが日本電設工業・関電工。同じ「大手サブコン」でも、この2軸上の位置はまったく違う

4. 9社それぞれの「主なエリア」

会社本社所在地一覧掲載件数最大シェアの地方第2位の地方支店級の展開
関電工東京都港区37件関東 56.8%(21件)中部 18.9%(7件)19都道府県/7地方
きんでん大阪府大阪市北区122件近畿 49.2%(60件)中部 13.1%(16件)16都道府県/8地方
クラフティア福岡県福岡市中央区155件九州沖縄 84.5%(131件)関東 9.0%(14件)16都道府県/6地方
トーエネック愛知県名古屋市中区83件中部 78.3%(65件)近畿 14.5%(12件)13都道府県/6地方
住友電設大阪府大阪市西区/東京都港区(2本社制)22件関東 45.5%(10件)近畿 22.7%(5件)15都道府県/8地方
中電工広島県広島市中区67件中国 86.6%(58件)四国 4.5%(3件)11都道府県/5地方
ユアテック宮城県仙台市宮城野区76件東北 73.7%(56件)中部 14.5%(11件)11都道府県/5地方
日本電設工業東京都台東区62件関東 46.8%(29件)中部 14.5%(9件)20都道府県/8地方
四電工香川県高松市48件四国 81.2%(39件)近畿 8.3%(4件)6都道府県/3地方
各社公式サイトの拠点一覧ページ(2026年7月26日取得)を集計。掲載件数は各社が一覧に載せた拠点の実数であり、粒度が異なるため社間の絶対比較はできない。

表を縦に眺めると、本社所在地とその会社の最大シェア地方は、9社中8社で一致している。唯一ずれるのが住友電設で、本社の一つは大阪市西区にありながら最大シェアは関東。同社は2本社制であり、そもそも東西どちらかに寄せる設計になっていない。

5. 社名が変わる/変わった2社

表記に注意:この1年で社名が動いている

九電工 → 株式会社クラフティア(2025年10月1日付・実施済み)。本稿の表・図はすべて新社名で記載している。求人票や過去記事で「九電工」を見た場合は同一の会社である。

住友電設 → セムリンクス株式会社(2026年10月1日付で商号変更予定)。同社は2026年3月3日に上場廃止となり、大和ハウスグループ入りしている。本稿の取得日(2026年7月26日)時点では商号変更前のため、図表は「住友電設」で統一した。

本連載の番外編(初任給の記事)では旧社名の「九電工」表記が残っている。データの出典年次を固定するため過去記事の表記はそのままにしているが、現在の社名は上記のとおりである。

6. この数字を自分のキャリアにどう使うか

最後に、20〜30代の実務者がこの数字をどう読むかを整理しておく。ここから先はデータそのものではなく、データの使い方の話になる。

「全国転勤あり」の中身は会社ごとに全然違う

求人票の「全国転勤あり」は9社ともほぼ同じ文言だが、実際の分布は四電工の6都道府県から日本電設工業の20都道府県まで3倍以上の開きがある。四電工・中電工・ユアテックのように支店クラスが5地方以内に収まる会社では、転勤があっても生活圏が大きく変わらない可能性が相対的に高い。逆に日本電設工業・きんでん・住友電設は8地方すべてに支店級の拠点がある。

高シェア地方は「戻れる場所」でもある

地域集中は制約であると同時に資産でもある。拠点の8割が特定地方にある会社では、その地方に戻る人事上の受け皿が常に存在する。一方で全国に薄く広がる会社では、特定の県に長く留まる保証は構造的に弱くなる。どちらが良いかは家族構成と持ち家の計画次第で、優劣ではない。

拠点網の形は、仕事の中身とも連動する

配電線工事を土台に持つ電力会社系5社は、地域に張り付いた設備の維持更新が仕事の柱になる。鉄道電気設備の日本電設工業は路線に沿って全国へ、屋内線・情報通信を軸とする会社は大都市圏の建築案件へ、それぞれ重心が寄る。拠点分布を見ることは、その会社がどの種類の電気設備で食べているかを見ることとほぼ同義だ。

7. このデータの限界

以下は本稿が示していないこと

拠点の規模を反映していない。本社も従業員10人の営業所も1件として数えている。人員数の拠点別内訳はいずれの会社も公表していないため、加重は行っていない。

拠点数と売上・人員の地域構成は一致しない。セグメント別の地域内訳を開示している会社はなく、拠点数はあくまで拠点数である。

グループ会社・関係会社の拠点は含めていない。各社とも地域子会社を持つが、親会社の拠点一覧に載らないものは集計対象外とした。

海外拠点は集計に含めていない。本稿は国内の地方構成を扱う。なお海外拠点を一覧に持つのは関電工・きんでん・クラフティア・トーエネック・ユアテックなどで、日本電設工業は海外拠点なしと記載している。

一覧ページの更新タイミングにずれがある。ユアテックは2026年4月・7月の組織整備で統合された営業所が取得日時点の一覧に残っている。本稿は掲載どおりに数えており、独自の補正は加えていない。

出典

すべて各社公式サイトの拠点一覧ページ(2026年7月26日取得)。地方区分は総務省の8地方区分に準拠した。

拠点総数の公表について:四電工「統合報告書2025」に「全国の事業所数 49拠点」の記載。他8社は拠点総数を非公表。商号変更について:株式会社クラフティア(2025年10月1日、旧・株式会社九電工)、住友電設株式会社(2026年10月1日付でセムリンクス株式会社へ商号変更予定、2026年3月3日上場廃止)。いずれも各社公式リリースによる。