卒FITで何もしないと、余った電気は無償で引き取られる|売る・使う・ためるの決め方
結論
10年で終わるのは「固定価格での買取」だけです。設備は動き続けますし、発電も続きます。ただし自動継続の契約になっていない場合、余った電気は一般送配電事業者が無償で引き受けます。つまり、手続きをしないとタダで持っていかれます。
- まずいまの契約が自動継続かどうかを確認する
- 大手電力の標準的な買取は8〜8.5円/kWh前後
- 買う電気は30円台。売るより使うほうが3〜4倍の値打ち
- 蓄電池を足すなら、パワコンの交換時期と重なるかを先に見る
2019年11月から、FITの買取期間が満了する家庭が毎月出ています。「10年経つと売れなくなる」と誤解されがちですが、そうではありません。何が終わって、何が続くのか。そして次に何を選ぶのかを、数字で整理します。
2026年8月15日時点の情報です。制度・料金は変更されることがあります。必ず一次情報でご確認ください。
💬 はりた&ペン太(まずは疑問から)
🐧 見習いペン太
「10年たったら、太陽光はもう使えなくなるんですか?」
🦔 はりた
「終わるのは固定価格で買ってもらえる約束だけ。パネルもパワコンもそのまま動くよ」
🐧 見習いペン太
「じゃあ放っておいても大丈夫ですね」
🦔 はりた
「そこが落とし穴。契約の形によっては、余った電気が無償で引き取られるんだ。まずそこを確認しよう」
何もしないと、どうなるのか
買取期間が満了したあとの扱いは、契約の形で2つに分かれます。
満了後の2つの分かれ道
| 契約の状態 | 余った電気はどうなるか |
|---|---|
| 自動継続になっている | 新しい単価で買取が続きます。ただし単価はFIT期間中より大幅に下がります |
| 自動継続ではない | 一般送配電事業者が無償で引き受けます。発電した分は使われますが、収入にはなりません |
満了が近づくと、電力会社から案内が届くのが通常です。その封筒を開けずに置いてしまうのが、いちばんよくある取りこぼしです。心当たりがある方は、いまの契約先に「買取期間満了後の契約はどうなっているか」を確認してください。
選択肢は3つ。順番に見ていく
卒FIT後にできること
| 選択肢 | 費用 | 効き方 |
|---|---|---|
| 1. 売電先を選び直す | 0円 | 大手の標準は8〜8.5円/kWh。条件つきでもう少し高いプランもある |
| 2. 使う時間を昼へ寄せる | 0円 | 売れば8.5円の電気を、30円台の買電の代わりに使う |
| 3. 蓄電池・EVでためる | 高い | 昼の余りを夜へ回す。停電への備えも兼ねる |
数字で切り分ける|売るか、使うか
まず自分の買電単価を出してください。検針票の請求金額 ÷ 使用量(kWh)で、基本料金も燃料費調整額も再エネ賦課金も含んだ実質単価が出ます。多くの家庭で30円台になります。
1kWhの値打ちの差 = 買電の実質単価 − 卒FITの売電単価
例:35円 − 8.5円 = 26.5円。同じ1kWhでも、売らずに使えばこれだけ得をします。
だから卒FIT後の基本方針は、売電先探しより先に、使い方を昼へ寄せることです。洗濯機や食洗機のタイマー、エコキュートの沸き上げ時刻。設定を変えるだけで、8.5円だった電気が26.5円ぶんの働きに変わります。
そのうえで、余る分は売る。売電先は乗り換えられるので、単価だけでなく契約期間の縛りと解約条件を見てください。単価の高いプランには、電気の購入もセットにする条件が付いていることがあります。その場合は買う側の単価も含めた合計で比べないと、逆に損をします。
自家消費率という考え方そのものは、卒FITの家に限らず効きます。仕組みと上げ方は太陽光は「何kW載せるか」より「何%自分で使えるか」で図解しています。
蓄電池を後付けするなら、設備の年齢を見る
卒FITのタイミングで蓄電池を勧められることが多いのは、売電単価が下がって自家消費の値打ちが上がるからです。考え方としては正しいのですが、後付けには新築とは違う判断材料があります。
後付けで先に確認すること
- パワーコンディショナの残り寿命。10年前後で交換時期を迎える機器です。保証期間が10〜15年の製品が多く、卒FITの時期とちょうど重なります
- 単機能型かハイブリッド型か。単機能型は既設のパワコンをそのまま使い、蓄電池側に別のパワコンを足します。ハイブリッド型は太陽光と蓄電池を1台にまとめるので、既設パワコンの交換を兼ねられます
- 既設パワコンのメーカー保証。ハイブリッド型に替えると、既設の保証が終了・対象外になることがあります
- 停電時に使えるのは特定回路か家全体か。全負荷型は高くなり、200V機器に対応するかも製品ごとに違います
順番としては、パワコンがもうすぐ寿命ならハイブリッド型でまとめる、まだ元気なら単機能型か見送り、という整理になります。「どうせ交換するもの」と重ねられるかどうかで、実質的な負担がかなり変わります。
金額が見合うかどうかは、自分で計算できます。年間メリット = 1日に実際に充放電できるkWh × 365 ×(買電単価 − 売電単価)。5kWhを毎日使い切れて買電35円・売電8.5円なら、年間およそ4.8万円です。見積金額をこれで割れば、回収年数が出ます。
金額だけで判断すると、多くの場合は届きません。そのうえで、停電したときに何日ぶん電気がある状態にいくら払うか、という買い物として納得できるかを見てください。台風や地震のあと数日止まる可能性をどう見るかは、家ごとに答えが違っていいところです。
💬 はりた&ペン太(というわけで、解決!)
🐧 見習いペン太
「まず契約を確認して、次に使う時間を昼へ寄せる。蓄電池はそのあとですね」
🦔 はりた
「そう。それと後付けはパワコンの年齢を必ず見ること。交換時期と重なるならハイブリッド型が効いてくる」
🐧 見習いペン太
「単価の高い売電プランに飛びつかなくていいんですか?」
🦔 はりた
「条件を全部見てからね。売電単価が高い代わりに買う電気が高いプランもある。合計で比べよう」
- 燃料費調整額の上限。大手電力の規制料金には上限がありますが、新電力の多くは上限を設けていません。燃料価格が上がった局面では、単価が安いはずのプランが逆転することがあります
- 解約金・契約期間の縛り。1年未満の解約で費用がかかるプランがあります
- 停電したときの連絡先は変わりません。設備の保安は送配電会社の担当なので、乗り換えても対応する会社は同じです(責任分界点の記事)
よくある質問
買取期間が終わったかどうかは、どこで分かりますか?
運転を開始した日から10年です。電力会社との受給契約書や、毎月の購入電力量のお知らせに記載があります。分からない場合は、いま売電している契約先に問い合わせるのが確実です。
満了の数か月前に案内が届くのが通常なので、太陽光を載せてから9年たった家は、郵便物に注意しておいてください。
売電先を変えると、工事や費用はかかりますか?
一般的には、設備をいじる工事は不要です。契約の切り替えだけで済みます。スマートメーターが付いていない場合は交換が必要になることがありますが、これも通常は費用がかかりません。
ただしプランによって、契約期間の縛りや解約時の条件が設定されていることがあります。単価だけを見て決めないでください。
10年たったパネルは、まだ発電しますか?
します。太陽光パネルは可動部がなく、メーカーの出力保証も20〜25年という設定が一般的です。年数とともに出力は少しずつ落ちますが、10年で使えなくなるものではありません。
むしろ先に寿命が来るのはパワーコンディショナのほうです。こちらは電子部品のかたまりなので、10年前後で交換を考える機器になります。
売電をやめて、全部自家消費にはできますか?
制度としては可能ですが、現実には昼の発電を全部使い切るのは難しく、余りは出ます。その余りを無償で引き取られるくらいなら、8.5円でも買い取ってもらうほうが得です。「自家消費に寄せる」と「売電契約を結んでおく」は両立しますので、両方やってください。
停電したとき、太陽光だけで電気は使えますか?
多くのパワーコンディショナには自立運転という機能があり、停電時に専用コンセントから電気を取り出せます。ただし1,500W程度までという制限があり、使えるのは日射のある昼だけです。夜は使えません。
この自立運転コンセントの場所と使い方は、取扱説明書に書いてあります。停電してから探すと間に合わないので、いちど確認して家族に共有しておいてください。蓄電池を足すと、この制限がなくなります。
参考にした情報
- 京セラ「卒FITを迎えるお客さまへ」(自動継続の場合は新単価で買取継続。自動継続でない場合、余剰電力は一般送配電事業者が無償で引き受け)
- 各社の卒FIT買取プラン(大手電力の標準的な買取単価はおおむね8〜8.5円/kWh。条件つきプランではこれより高い設定もある)
- 東京電力エナジーパートナー「賦課金等について」(2026年度の再エネ賦課金 4.18円/kWh)
※単価・契約条件は電力会社と時期によって変わります。契約前に必ず最新の条件をご確認ください。
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