データセンターと半導体の需要増は2034年度までに約715万kW、接続申込は1,500万kWに積み上がり、国は30MW以上の大口需要に接続規律を入れる。AI型は1ラック130kW・液冷・100MW級受電が前提になった。技術の中身、需要と系統制約の現在地、受変電・UPS・液冷という電気設備の課題、そして事業者・重電・施工・電力のどこに需要が落ちるのかを整理する。

データセンターと半導体の需要増は2034年度までに約715万kW、接続申込は1,500万kWに積み上がり、国は30MW以上の大口需要に接続規律を入れる。AI型は1ラック130kW・液冷・100MW級受電が前提になった。技術の中身、需要と系統制約の現在地、受変電・UPS・液冷という電気設備の課題、そして事業者・重電・施工・電力のどこに需要が落ちるのかを整理する。

ニュースの要点

715万kW
2034年度までの需要増
データセンター+半導体
62%
データセンター需要のうち東京
関西12%・中部9%
130kW
AI向けラック1台の消費電力
従来は20〜25kW
  • 電力広域的運営推進機関の2026年1月の需要想定では、データセンターと半導体工場による需要増は2034年度までに約715万kW。データセンターだけで年間約440億kWhを消費する見通しで、その6割が東京エリアに集中する。
  • データセンターの接続申込は約1,500万kW(夏の最大需要の約1割)に積み上がり、国は30MW以上の大口需要に「供給開始の遅れは1年まで、段階契約は6年まで」という接続規律を2027年度から適用する方針を示した。
  • AWS 2.26兆円、マイクロソフト約1.6兆円、NTT 1.5兆円超など投資は続くが、ボトルネックはサーバーではなく電力。「電気が来る場所にしか建たない」時代に入り、受変電設備と送電網が制約になっている。

技術の概要 ── データセンターは「電気を熱に変える工場」

ひとことで言うと:消費した電気がほぼ全量そのまま熱になる巨大な電熱負荷。AI向けでは1ラック130kWに達し、空調では冷やせなくなった。

データセンターは、サーバーを収容し、電力と冷却と通信を途切れなく供給する建物である。電気設備として見ると、消費電力のほぼ全量が最終的に熱になる「巨大な電熱負荷」で、その熱を捨てるための冷却設備がさらに電力を使う。電力使用効率(PUE)が1.2なら、サーバーが100使う電気に対して冷却などで20が上乗せされる。

AI向けのGPUサーバーで状況が変わった。NVIDIAのGB200 NVL72はラック1台で120〜132kWを消費し、従来の20〜25kW/ラックの5〜6倍になる。空調では冷やしきれず、チップに直接冷却水を流す液冷が前提になった。1棟あたりの受電容量は従来の数十MWから100MW超に広がり、特別高圧受電設備、大容量のUPS、非常用発電機、液冷の配管系統が同じ建物に入る。

従来型とAI型のラック電力密度の違いA​I​サ​ー​バ​ー​で​、​1​ラ​ッ​ク​の​電​気​が​5​〜​6​倍​に​な​っ​た2​0​〜​2​5​k​W従​来​型​(​空​冷​)1​2​0​〜​1​3​2​k​WA​I​型​(​液​冷​が​前​提​)電​気​設​備​側​で​何​が​変​わ​る​か・​1​棟​の​受​電​が​数​十​M​W​か​ら​1​0​0​M​W​超​へ・​空​調​で​は​冷​や​せ​ず​、​チ​ッ​プ​に​水​を​流​す・​負​荷​が​秒​以​下​で​数​百​k​W​単​位​に​振​れ​る・​立​地​は​「​電​気​が​確​保​で​き​る​か​」​で​決​ま​る
項目 従来型(クラウド・汎用) AI型(GPU)
ラック電力密度 5〜25kW 60〜130kW超
冷却方式 空調(空冷) 液冷(直接冷却)+空調
1棟の受電規模 数MW〜数十MW 50〜300MW級
受電電圧 高圧〜特別高圧(66kV) 特別高圧(66〜154kV)。専用変電所を伴う例も
立地の決め手 通信回線・都心近接 電力の確保(系統容量・脱炭素電源)


実用化の現在地 ── 需要は確定、供給が追いつかない

この連載の他の技術と違い、データセンターは「実用化するか」を問う段階にない。需要は本格普及の只中にあり、問題は電力供給が追いつくかである。

データセンターの需要増と地域偏在需​要​は​増​え​る​。​し​か​も​、​ほ​と​ん​ど​が​東​京​に​寄​る2​0​3​4​年​度​ま​で​の​需​要​増約​7​1​5​万​k​Wデ​ー​タ​セ​ン​タ​ー​+​半​導​体​工​場年​間​の​電​力​量​は​D​C​だ​け​で​約​4​4​0​億​k​W​hデ​ー​タ​セ​ン​タ​ー​需​要​の​地​域​内​訳東​京​ ​6​2​%関​西​1​2​%中​部​9​%そ​の​他接​続​申​込​は​全​国​で​約​1​,​5​0​0​万​k​W​ ​─​─​ ​夏​の​最​大​需​要​の​約​1​割​に​あ​た​る千​葉​県​印​西​市​の​よ​う​に​集​積​が​進​ん​だ​地​域​で​は​、​系​統​接​続​の​待​ち​時​間​が​最​大​1​0​年​と​報​じ​ら​れ​た​。

電力広域的運営推進機関が2026年1月にまとめた需要想定では、2035年度の全国の最大需要は約1億6,460万kWで、データセンターと半導体工場による増加分は2034年度までに約715万kW。年間の電力量ではデータセンターが約440億kWh、半導体が約73億kWhに達する。地域別ではデータセンター需要の約62%が東京、約12%が関西、約9%が中部で、東京への一極集中が際立つ。これは全国の需要が減る想定だった2010年代からの転換で、第7次エネルギー基本計画が原子力の「最大限活用」に転じた根拠でもある。

投資は続くが、ボトルネックは電力

投資は続く。AWSは2023〜2027年に2.26兆円、マイクロソフトは2026〜2029年に約1.6兆円、NTTのデータセンター子会社は2023〜2027年に1.5兆円超を投じ、KDDIは大阪・堺にGB200を備えたAIデータセンターを2026年1月に稼働させた。ソフトバンクは苫小牧で50MWから300MW超へ拡張する計画を進め、さくらインターネットは石狩で政府補助約500億円を受けて約1,000億円を投じる。北海道への立地は、電力と冷却に有利な気候、そして首都圏の系統制約を避ける動きである。

「空押さえ」対策が需要側にも及んだ

制約の側も動いた。千葉県印西市のように集積が進んだ地域では系統接続の待ち時間が最大10年と報じられ、データセンターの接続申込は全国で約1,500万kW(夏の最大需要の約1割)に積み上がった。国は2026年6月、30MW以上の大口需要に対して、供給開始の遅れは1年まで、段階的な契約は初回供給から6年まで、工事費負担金は供給承諾から3か月以内の支払い、という規律を2027年度当初から適用する方針を示した。1年を超えて遅れれば、混雑の有無にかかわらず容量を返還させる。系統用蓄電池で先行した「空押さえ対策」が、需要側にも及んだ形である。


電気設備の観点から見た課題

系統からサーバーラックまでの電気の流れ電​気​が​系​統​か​ら​ラ​ッ​ク​に​届​く​ま​で電​力​系​統6​6​〜​1​5​4​k​V特​別​高​圧​受​電専​用​線​・​構​内​変​電​所変​圧​器​・​幹​線納​期​が​工​程​を​左​右U​P​S負​荷​変​動​に​耐​え​る​設​計​へサ​ー​バ​ー​ラ​ッ​ク1​台​あ​た​り​1​2​0​〜​1​3​2​k​W非​常​用​発​電​機排​気​・​騒​音​・​燃​料液​冷​の​配​管​系​統漏​水​検​知​・​区​画​・​接​地銅​色​の​枠​が​、​国​内​の​設​備​設​計​会​社​と​電​気​工​事​会​社​の​仕​事​に​な​る​範​囲​。​1​棟​あ​た​り​数​百​億​円​規​模​の​案​件​に​な​る​。

データセンターは、電気設備の設計・施工にとって現在もっとも案件規模が大きく、かつ技術的な難度が上がっている領域である。

課題 01
受電と系統
100MW級の受電は特別高圧の専用線か、敷地内の変電所を伴う。系統側の空き容量がなければ増強費を負担するか、蓄電池を併設してノンファーム型(混雑時に出力・受電を制限する条件付き)で早期接続する選択になる。2027年度からの接続規律は、設計の初期段階で「いつ・どれだけ受電するか」を確定させることを求める。
課題 02
UPSと非常用電源
AI負荷は変動が激しく、数百kW単位で秒以下に上下する。UPSの容量と応答、非常用発電機の負荷投入手順、燃料の備蓄日数は、従来の「停電に備える」設計から「負荷変動に耐える」設計へ重心が移った。発電機の台数が増えるほど、排気・騒音・燃料の規制対応も重くなる。
課題 03
液冷と電気の同居
ラック内に冷却水が流れるため、漏水検知、電気室との区画、配管と幹線ルートの分離、接地とボンディングの設計が加わる。空調主体だった建物設備の設計者と電気設計者の分担線が変わる領域である。
課題 04
大量のサーバー電源と可変速ポンプ・ファンは高調波源になる。特別高圧受電では高調波流出の抑制と力率の管理が電力会社との協議項目で、フィルタや進相コンデンサの設計が受変電設備の一部になる。


産業構造とお金の流れ

データセンターの電力需要で需要が動く領域を整理する。ここに挙げる企業名は、報道や公開資料で関与が示されている事実の列挙であり、評価や推奨を意味しない。

事業者。海外のクラウド大手(AWS、マイクロソフト、グーグル、オラクル)、国内の通信系(NTT、KDDI、ソフトバンク)、専業(さくらインターネット、IDCフロンティア)、外資のデータセンター開発事業者(エクイニクス、デジタルリアルティ、AirTrunkなど)が投資している。電力会社も参入し、関西電力や九州電力はデータセンター事業への出資や共同開発を進めている。

受変電・電源設備。変圧器・開閉装置は日立、三菱電機、東芝、明電舎、富士電機など、UPSは富士電機、東芝、シュナイダー、イートン、Vertivなど、非常用発電機はヤンマー、三菱重工、キャタピラーなどが供給する。変圧器は世界的に納期が長期化しており、調達が工程を左右する。

冷却。液冷の配管・熱交換・冷却水設備は、ダイキン、日立、Vertivなどの空調・熱機器メーカーと、サーバーメーカーの領域である。

設計・施工。特別高圧の受変電設備、幹線、UPS・発電機の据付、接地、液冷との取り合いは、国内の設備設計会社と電気工事会社の仕事で、案件規模は1棟あたり数百億円に及ぶ。技術者不足が最大の制約になっている。

電力・送電網。供給側では発電所の新設・再稼働と送電網の増強が必要になり、その費用は電気料金託送料金で回収される。データセンター事業者が電力会社と長期契約を結び、脱炭素電源を確保する動きが始まっている。北海道〜本州の直流送電や原子力の再稼働は、この需要と裏表の関係にある。

関連する政策・補助金

政府は2025年に「ワット・ビット連携」(電力とデジタルインフラを一体で整備する考え方)を打ち出し、脱炭素電源の近くにデータセンターを誘導する方針を示した。第7次エネルギー基本計画は2040年の発電電力量を1.1〜1.2兆kWhと見込み、データセンター・半導体を需要増の主因に位置づける。経済産業省の次世代電力系統ワーキンググループは30MW以上の大口需要への接続規律を2027年度から適用する方針で、手続き規律の一部は2026年10月から特別高圧の需要家に始まる。さくらインターネットへの約500億円など、AI計算基盤への補助も続いている。制度は年度ごとに変わるため、最新情報は資源エネルギー庁と電力広域的運営推進機関の公表資料で確認されたい。

関連する動きを追うには

  • 電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定」── 毎年1月に更新される需要の一次情報
  • 資源エネルギー庁 次世代電力系統ワーキンググループ ── 大口需要の接続規律の一次情報
  • 各社の投資発表・IR資料 ── データセンターの立地、規模、稼働時期

本記事は公開情報にもとづく技術・産業動向の解説であり、特定の金融商品の売買や投資判断を勧めるものではありません。記載した企業名は報道・公開資料で関与が示された事実の列挙です。投資に関する判断は、ご自身の責任において行ってください。

出典

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。