耐震クラスS・A・Bを決めるには、2つの質問に答えます。ひとつは「この建物は特定の施設か、一般の施設か」。もうひとつが「この機器は重要機器か、一般機器か」です。前者は特記仕様書に書いてあることが多いのに、後者は書き方がまちまちで、迷いやすいところです。この記事では、重要機器と一般機器の違い、どんな機器が重要機器になるか、そして区分で何が変わるかを、数字で見ていきます。

結論

重要機器は地震のあとにも機能が要る機器、一般機器はそれ以外です。施設区分と組み合わせて耐震クラスが決まり、重要機器にすると設計用の震度が1段上がります。

  • 重要機器は、防災・業務継続・危険物・二次災害の4つに関わる機器
  • 受変電設備・発電機・蓄電池・UPS・消火設備などが代表例
  • 特定×重要がS、特定×一般と一般×重要がA、一般×一般がB
  • 中間階なら震度0.6→1.0。固定に見込む力が約1.7倍になる
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。全部を読まなくても、必要なところだけで解決します。

重要機器とは ― 地震のあとにも機能が要る機器

設備機器は、地震のあとの重要度で「重要機器」と「一般機器」の2つに分けます。官庁施設の考え方では、次のどれかに当たる機器が重要機器です。

  1. 災害応急対策や業務継続(非常時優先業務など)の活動に必要で、施設の機能を保つのに必要な機器
  2. 危険物・可燃性ガスなどの貯蔵・使用に関わり、被害を防ぐのに必要な機器
  3. 避難・消火などの防災機能を果たす機器
  4. 壊れると火災・水損・避難障害などの二次災害を起こすおそれのある機器
  5. そのほか、これらに類する機器

一般機器は、これ以外の機器です。「高い機器」「大きい機器」ではなく、地震のあとにその機能が要るか、壊れたときに被害を広げるかで分けます。

揺れのあとに残す機器電源・発電機・消火ポンプ・防災の受信機
判断は4つの視点防災・業務継続・危険物・二次災害
一般機器はそれ以外一般の空調・照明の盤・換気扇など
値段や大きさではない地震のあとの役目で分ける
たとえるなら
重要機器は「災害時の当番」
会社でも、地震のあとに出社して動く当番の人と、落ち着いてから戻ればよい人がいます。重要機器は当番の側で、揺れたあとも持ち場で動いてもらうため、ふだんから強く固定しておきます。
ここまでのポイント
  • 重要機器は、地震のあとにも機能が要る機器
  • 防災・業務継続・危険物・二次災害の4つの視点で判断する
  • 一般機器は、それ以外の機器

重要機器になる機器の例

自治体の設計方針などで、重要機器として挙げられている例を、電気と機械に分けて並べます。

分野 重要機器の例 重要になる理由
電気(電源) 受変電設備、自家発電設備、蓄電池設備、無停電電源装置、幹線用分電盤、太陽光発電設備 建物と防災設備の電源。止まると多くの機能が止まる
電気(防災・監視) 自動火災報知設備の受信機、中央監視装置、電話交換機 避難・通報・監視の機能を果たす
機械 消火設備(消火ポンプなど)、危険物の貯蔵・取扱設備 消火機能と、危険物の被害防止
水槽・油槽 受水槽・高置水槽、オイルタンクなどの貯留槽 壊れると水損・油の流出などの二次災害になる
出典:高知市「市設建築物の防災整備設計方針」、埼玉県の資料の例示をもとに整理。どれを重要機器にするかは、施設の用途に応じて設計者が決める。

一般機器になるのは、一般の空調機、一般照明やコンセントの分電盤、換気扇、給湯器など、止まっても防災や業務の継続に直接響かない機器です。ただし同じ空調機でも、サーバー室や手術室など止められない部屋のものは、施設によって重要機器に入れることがあります。

図面では、特記仕様書の耐震の欄か、機器表の備考(「耐震クラスS」「重要機器」など)に書かれます。書いていなければ、設計者に確かめます。

ここに注意!
「高価な機器」が重要機器、ではありません。
値段や大きさは関係ありません。小さな防災の受信機は重要機器になり、大型でも一般の空調機は一般機器になることがあります。判断は「地震のあとの役目」です。
ここまでのポイント
  • 電源(受変電・発電機・蓄電池・UPS)、防災・監視、消火、危険物、水槽・油槽が代表例
  • 止められない部屋の機器は、施設によって重要機器になる
  • 特記仕様書の耐震の欄と機器表の備考で確かめる


施設区分と組み合わせて、耐震クラスが決まる

機器の区分だけでは、耐震クラスは決まりません。建物の区分(特定の施設/一般の施設)と組み合わせます。特定の施設は、災害応急対策活動に必要な施設、避難所として位置づけられた施設、人命と物品の安全確保が特に必要な施設で、それ以外が一般の施設です。

特定×重要=S防災拠点の受変電設備など
特定×一般=A防災拠点の一般の空調機
一般×重要=A事務所ビルの非常用発電機
一般×一般=B事務所ビルの一般の空調機
施設区分 重要機器 一般機器
特定の施設 耐震クラスS 耐震クラスA
一般の施設 耐震クラスA 耐震クラスB
出典:建築設備耐震設計・施工指針(2014年版)の耐震クラスの考え方。
ここまでのポイント
  • 施設区分(建物)と機器の区分(機器)は別々に答える
  • 特定×重要がS、特定×一般と一般×重要がA、一般×一般がB
  • 一般の施設でも、重要機器ならAになる

設計用標準震度 ― 耐震クラスと階で決まる数字

耐震クラスが決まると、機器を置く階から設計用標準震度 KSが決まります。設計用水平震度は KH=Z×KS(Z は地域係数。官庁施設では1.0とする)、設計用鉛直震度はその1/2です。

上層階が最も大きい建物の上ほど揺れが大きい
Sは1段上の数字Sの値はAの1つ上の階の値と同じ
水槽は割り増し1階でも中間階と同じ値
防振支持も割り増しバネの上の機器は揺れが増える
設置場所 耐震クラスS 耐震クラスA 耐震クラスB
上層階・屋上・塔屋 2.0(2.0) 1.5(2.0) 1.0(1.5)
中間階 1.5(1.5) 1.0(1.5) 0.6(1.0)
1階・地下階 1.0(1.0) 0.6(1.0) 0.4(0.6)
1階・地下階の水槽 1.5 1.0 0.6
( )内は防振支持の機器に使う値。上層階は2〜6階建ては最上階、7〜9階建ては上の2階、10〜12階建ては上の3階、13階建て以上は上の4階。出典:海上保安庁 入札資料「建築設備に関する耐震安全性確保の検討方法」(官庁施設の考え方による)、高知市「市設建築物の防災整備設計方針」。

設置場所は、機器を支える床で決めます。床や壁で支える機器はその階、天井(上の階の床)から吊る機器は上の階を使います。

ここまでのポイント
  • KH=Z×KS、鉛直はその1/2
  • 上層階・中間階・1階と地下階で値が変わる
  • 水槽と防振支持の機器は割り増しの値を使う


重要機器にすると何が変わるか ― 地震力の計算例

地震で機器を押す力は、FH=KH×W(W は機器の重量)で求めます。重量800kg(約7.8kN)の盤を、一般の施設の中間階に置く例で比べます。

重要機器ならクラスAKS=1.0、FH≒7.8kN
一般機器ならクラスBKS=0.6、FH≒4.7kN
差は約1.7倍同じ盤でも固定の強さが変わる
アンカーに響く太さ・本数・頂部の振止め

この力に対して、アンカーボルトの引抜きとせん断、背の高い盤なら頂部の振止めを確かめます。重要機器にすると見込む力が大きくなるので、アンカーの太さや本数、ストッパの仕様が変わり、積算や施工計画にも響きます。計算書の読み方は、取り合い図・機器基礎・耐震計算書の読み方で詳しく扱っています。

ここまでのポイント
  • 地震力は FH=KH×W
  • 中間階では、重要機器(A)と一般機器(B)で約1.7倍違う
  • アンカーや振止めの仕様が変わる

配管やケーブルラックには、この区分を使わない

重要機器・一般機器は機器の区分です。配管・ダクト・金属管・ケーブルラックのような「配管等」には使いません。配管等は、施設区分と設置階から、耐震支持の種別(SA種・A種・B種)と間隔を決めます。詳しくはケーブルラックの耐震クラスはどう決める?にまとめています。

質疑の例
機器の耐震施工について、重要機器として扱う機器の範囲をご指示ください。ご指示がない場合は、受変電設備・自家発電設備・蓄電池設備・無停電電源装置・消火設備・防災設備の受信機を重要機器、それ以外を一般機器として計画します。
ここまでのポイント
  • 重要・一般の区分は機器だけに使う
  • 配管等は施設区分×設置階で支持を決める
  • 範囲が分からなければ、前提を書いて質疑する

よくある質問

重要機器と一般機器の違いは何ですか?

地震のあとにその機器の機能が必要かどうかです。災害応急対策や業務継続に要る機器、危険物の被害防止に要る機器、避難・消火などの防災機能を持つ機器、壊れると火災・水損・避難障害を起こすおそれのある機器が重要機器で、それ以外が一般機器です。

受変電設備は重要機器ですか?

多くの施設で重要機器として扱われます。建物全体の電源で、非常用発電機や防災設備の電源にもつながるためです。ただし最終的には設計者が施設ごとに決めるので、特記仕様書や機器表で確認します。

耐震クラスS・A・Bはどう決まりますか?

施設区分と機器の区分の組み合わせです。特定の施設の重要機器がS、特定の施設の一般機器と一般の施設の重要機器がA、一般の施設の一般機器がBです。

重要機器にすると何が変わりますか?

設計用標準震度が大きくなり、固定に見込む地震力が増えます。中間階なら一般の施設で0.6から1.0になり、同じ機器でも約1.7倍の力でアンカーや振止めを選ぶことになります。

ケーブルラックや配管にも重要機器・一般機器の区分はありますか?

ありません。配管・ダクト・ケーブルラックは「配管等」として、施設区分と設置階から耐震支持の種別と間隔を決めます。

次に読むならこれケーブルラックの耐震クラスはどう決める?|「重要機器・一般機器」ではなく施設区分と設置階で見る【積算の拾い方つき】仕様の設計
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。