この記事は連載「地震と停電にそなえる家の電気」(全5回)の1本です。

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全体像:太陽光・蓄電池・EVは災害時にどこまで頼れるか(自立運転1500Wと全負荷/特定負荷)

本連載は、電気設備の設計・施工に携わるプロが「家の電気の防災」を暮らし目線で解説するシリーズです。第1回第4回番外編も公開中。

ペン太ペン太
太陽光パネルがあれば、停電しても自動で電気が使えるんですよね?
ハリタハリタ
実は停電すると自動停止します。自立運転モードへの手動切替が必要なんですよ。

この3つ、すぐ答えられますか

  • 太陽光を載せている家は、停電すると自動で電気が使えるか。
  • 蓄電池があれば、停電中も家中どこでも電気が使えるか。
  • EVの電気を家に流すには、何が必要か。
この記事でわかること
※ 本記事は連載「地震と停電にそなえる家の電気」の第5回です。第1回〜第4回・番外編・最終回は記事末尾のリンクからご覧いただけます。

「数日単位の停電」に立ち向かえるのは住まいの設備だけ

トピック1:「数日単位の停電」に立ち向かえるのは住まいの設備だけ

第2回で紹介したポータブル電源は心強い味方ですが、容量には限りがあります。停電が数日続く事態に本当に強いのは、太陽光発電・家庭用蓄電池・EV(電気自動車)という住まいレベルの設備。ただし、それぞれ「できること」と「できないこと」がはっきり分かれています。

太陽光発電の自立運転モード、家庭用蓄電池、EVとV2Hの災害時にできること・できないことの比較図。太陽光は晴れた昼間のみ1500Wまで、蓄電池は夜も使えるが全負荷型か特定負荷型かで守備範囲が違う、EVは電池容量40〜60kWh超で一般家庭の数日分だがV2H機器が必要。太陽光とためる設備の組み合わせで昼ためて夜つかう自給自足ができる
設備停電中にできること制約事前に確認すること
太陽光発電自立運転モードに切り替えれば、晴れた昼間に発電した電気を使える専用の自立運転コンセントで合計1500Wまで。停電すると発電は自動停止するので手動切替が必要パワコンの場所と自立運転コンセントの位置
家庭用蓄電池ためた電気を夜も使える。太陽光とセットなら「昼ためて夜つかう」ループ全負荷型は家全体、特定負荷型はあらかじめ決めた回路だけ停電時にどのコンセントが生きるか
EV(電気自動車)電池容量は40〜60kWh超。一般家庭の1日分(約10kWh前後)と比べて数日分に相当家に電気を流すにはV2H機器(数十万円〜+工事)が必要V2Hの有無。なければ車内の1500Wコンセントや外部給電器
ポータブル電源+ソーラーベランダでも充電でき、賃貸でも導入できる容量には限りがある必要な容量と出力
ここまでのポイント
  • 第2回で紹介したポータブル電源は心強い味方だが、容量には限りがある。
  • 停電が数日続く事態に本当に強いのは、太陽光発電・家庭用蓄電池・EVという住まいレベルの設備。
  • ただし、それぞれ「できること」と「できないこと」がはっきり分かれている。

太陽光発電 ―「自立運転モード」を知らないと宝の持ち腐れ

トピック2:太陽光発電 ―「自立運転モード」を知らないと宝の持ち腐れ

意外に知られていませんが、太陽光を載せている家でも停電すると発電は自動停止します(復旧作業員の感電を防ぐための安全機能)。停電中に使うには、手動で「自立運転モード」に切り替える必要があります。

停電時の太陽光発電の自立運転モードの使い方4ステップ。1 パワーコンディショナの自立運転ボタンを確認、2 自立運転モードに切り替える、3 自立運転コンセントに家電を差す、4 復旧したら連系運転に戻す。使えるのは合計1500Wまで晴れた昼間だけ

使えるのは専用の自立運転コンセントで合計1500Wまで、晴れた昼間だけ。天気で出力が揺れるので、家電を直接動かすよりスマホ・モバイルバッテリー・ポータブル電源に「充電」する使い方が確実です。太陽光のある家は、今日パワコンの場所と自立運転コンセントの位置を確認しておいてください。

ペン太ペン太
蓄電池さえあれば、停電中も家中どこでも電気が使えるんじゃ…?
ハリタハリタ
全負荷型か特定負荷型かで使える範囲が全く違います。事前確認が肝心です。
ここまでのポイント
  • 太陽光を載せている家でも、停電すると発電は自動停止する(復旧作業員の感電を防ぐための安全機能)。
  • 停電中に使うには、手動で「自立運転モード」に切り替える必要がある。
  • 使えるのは専用の自立運転コンセントで合計1500Wまで、晴れた昼間だけ
  • 天気で出力が揺れるので、家電を直接動かすより、スマホ・モバイルバッテリー・ポータブル電源に「充電」する使い方が確実。
  • 太陽光のある家は、今日パワコンの場所と自立運転コンセントの位置を確認しておく。

家庭用蓄電池 ―「全負荷」か「特定負荷」かで停電時の景色が変わる

トピック3:家庭用蓄電池 ―「全負荷」か「特定負荷」かで景色が変わる

蓄電池を検討するとき、防災目線でいちばん大事なのが全負荷型か特定負荷型かです。全負荷型は停電時も家全体に給電(エアコンやIHも使える)、特定負荷型はあらかじめ決めた回路(冷蔵庫・リビングのコンセントなど)だけに給電します。

特定負荷型のほうが安く電気も長持ちしますが、「停電時にどのコンセントが生きるのか」を契約前に必ず確認しましょう。太陽光とセットなら「昼ためて夜つかう」ループで数日単位の停電にも対応できます。

👉 どんな構成なら本当に停電時に使えるのか、4パターン別の実力比較と契約前に聞くべき質問は、深堀り編「太陽光+蓄電池が停電時に「生きる」条件」で詳しく解説しています。

ここまでのポイント
  • 防災目線でいちばん大事なのが全負荷型か特定負荷型か
  • 全負荷型は停電時も家全体に給電(エアコンやIHも使える)、特定負荷型はあらかじめ決めた回路(冷蔵庫・リビングのコンセントなど)だけに給電する。
  • 特定負荷型のほうが安く電気も長持ちするが、「停電時にどのコンセントが生きるのか」を契約前に必ず確認する
  • 太陽光とセットなら「昼ためて夜つかう」ループで、数日単位の停電にも対応できる。

EV ―「走る大容量電池」。ただしV2Hが要る

トピック4:EV ―「走る大容量電池」。ただしV2Hが要る

EVの電池容量は40〜60kWh超。一般家庭の1日の使用量(約10kWh前後)と比べると数日分に相当する大容量です。実際、太陽光+EV+V2Hで2日半の停電を乗り切った家庭の事例も公開されています。

ポイントは家に電気を流すには「V2H機器」(数十万円〜+工事)が必要なこと。V2Hがなくても、車内の1500Wコンセント(対応車種)や外部給電器があれば、延長コードで冷蔵庫や照明を動かす「即席の非常用電源」になります。ハイブリッド車の1500Wコンセントも同様に使えます。

導入するなら補助金を必ずチェック

蓄電池・V2Hは国や自治体の補助金が手厚い分野です(年度により内容が変わります)。「蓄電池 補助金 + お住まいの自治体名」「V2H 補助金」で最新情報を確認してから見積もりを取りましょう。

ここまでのポイント
  • EVの電池容量は40〜60kWh超。一般家庭の1日の使用量(約10kWh前後)と比べると数日分に相当する大容量。太陽光+EV+V2Hで2日半の停電を乗り切った家庭の事例も公開されている。
  • ポイントは、家に電気を流すには「V2H機器」(数十万円〜+工事)が必要なこと。
  • V2Hがなくても、車内の1500Wコンセント(対応車種)や外部給電器があれば、延長コードで冷蔵庫や照明を動かす「即席の非常用電源」になる。ハイブリッド車の1500Wコンセントも同様。
  • 蓄電池・V2Hは国や自治体の補助金が手厚い分野(年度により内容が変わる)。最新情報を確認してから見積もりを取る。

設備までは無理…という家は「中間解」もある

トピック5:設備までは無理…という家は「中間解」もある

太陽光もEVもハードルが高い、という場合は、大容量ポータブル電源+折りたたみソーラーパネルが「ミニ自給自足」の中間解になります。ベランダでも充電でき、賃貸でも導入可能。第2回で紹介したBLUETTIなどのメーカーは、ポータブル電源から家庭用蓄電池クラスまで段階的にそろえています。

ペン太ペン太
うちはEVもあります。次は何を確認すればいいですか?
ハリタハリタ
V2H機器の有無ですね。太陽光と組めば昼ためて夜つかう循環が作れますよ。
ここまでのポイント
  • 太陽光もEVもハードルが高いなら、大容量ポータブル電源+折りたたみソーラーパネルが「ミニ自給自足」の中間解になる。
  • ベランダでも充電でき、賃貸でも導入できる。
  • ポータブル電源から家庭用蓄電池クラスまで、段階的にそろえられる。

まとめ ― 第5回の持ち帰りポイント

トピック6:まとめ ― 第5回の持ち帰りポイント

設備があること自体は、停電に強いことを意味しません。太陽光は切替が要り、蓄電池は範囲が決まっていて、EVには機器が要ります。要るのは、その前提を先に知っておくことです。

今日できる確認契約・購入の前に決めること
太陽光パワコンの場所と自立運転コンセントの位置
蓄電池全負荷型か特定負荷型か。停電時にどのコンセントが生きるか
EV車内に1500Wコンセントがある車種かどうかV2H機器を入れるか。補助金の年度内容
ポータブル電源手持ちの容量と出力必要な容量と、ソーラーパネルを足すかどうか

太陽光でやること

  • 太陽光は停電すると自動停止。自立運転モードへの手動切替を今日確認
  • 自立運転は1500Wまで・晴れた昼だけ。「充電に使う」が正解

蓄電池とEVで決めること

  • 蓄電池は全負荷型か特定負荷型かを契約前に確認
  • EVはV2H機器があれば数日分の家庭用電源に。1500Wコンセント付き車種も活躍

設備を入れないという選択

  • 設備が無理ならポータブル電源+ソーラーパネルの中間解

この回で挙げた3つの設備は、どれも「入れたら安心」ではなく「入れたうえで、条件を満たしているか」で実力が決まります。まずは今日、太陽光のある家ならパワコンの前に立ってみてください。自立運転の切替スイッチがどこにあるかを知っているだけで、停電した昼の過ごし方は変わります。

次回・最終回は「わが家の分電盤を知ろう ― ブレーカーが落ちる仕組みと復旧のしかた」。連載の締めくくりとして、停電・復電のときに慌てないための分電盤リテラシーをお届けします。

参考資料:日産「リーフとV2Hで2日半の停電を乗り切った事例」/タイナビ「自立運転モードの操作方法」/東京電力EP「EVバッテリーから給電する方法」

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次に読むならこれ太陽光+蓄電池が停電時に「生きる」条件|4パターン別の実力と契約前に聞く5つの質問【地震と停電にそなえる家の電気・深堀り編】防災・停電対策
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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。