キュービクルの盤に付いている「IGR」や「絶縁監視装置」。用語集では一言で説明されますが、なぜB種接地線で測るのか、Io・Ior・Igrは何が違うのか、変圧器の「混触防止板」とどう関係するのかまでは分かりにくい言葉です。この記事は、この3つだけにしぼって説明します。

ペン太ペン太
キュービクルの盤に「IGR」って付いてました。何を測ってるんですか?
ハリタハリタ
低圧の回路全体の漏れ電流だよ。B種接地線に付けて、漏れが増えたら警報を出すんだ。
はじめての方へ:まず言葉の意味
ひとことで言うと
「絶縁監視装置(IGR)」は、建物の低圧の電気がどこかで漏れていないかを、いつも見張っている装置です。
読み方
ぜつえんかんしそうち(アイジーアール)/こんしょくぼうしばん/ビーしゅせっち
どこで出てくる?
キュービクル(高圧受電設備)の盤の中、保安点検の報告書、単線結線図。

結論

絶縁監視装置は、B種接地線に流れる漏れ電流を測って、低圧の回路全体の絶縁をいつも見張る装置です。Io(合計)・Ior(絶縁が悪い分)・Igr(別の周波数で測る)の方式があり、警報の設定値は50mAが上限です。混触防止板は、変圧器の巻線のあいだに入れてB種接地する金属の板です。

  • 漏れた電流は、最後はB種接地線に集まる
  • Io方式は静電容量の分まで拾う。絶縁の悪さはIor・Igrで見る
  • 警報は設定値(50mAまで)で出し、委託先へ自動で知らせる
  • B種接地は、中性点・低圧側の1端子・混触防止板のどれかに施す
この記事でわかること
気になるものを選べば、その項目へ飛べます。

この記事に出てくる言葉

読む前に、意味をざっと押さえておくと分かりやすくなります。

言葉 読み方 やさしい説明
絶縁 ぜつえん 電気を通さないもので包んだり隔てたりして、電気が漏れないようにすること。
絶縁抵抗 ぜつえんていこう 電気の漏れにくさを表す値。大きいほど漏れにくく安全。
キュービクル ― 高圧の電気を受けて低圧に下げる設備を、まとめて収めた金属の箱。
変圧器 へんあつき 電圧を変える機器。高圧の6,600Vを低圧の100V・200Vなどに下げる。
B種接地 ビーしゅせっち 変圧器の低圧側を大地とつなぐ接地。高圧が低圧に入り込んだときの安全のため。
静電容量 せいでんようりょう 電線と大地のあいだに電気がたまる性質。電線が長いほど大きい。
混触 こんしょく 変圧器の中で、高圧と低圧の巻線が触れてしまうこと。
保安業務 ほあんぎょうむ 自家用の電気設備を、電気主任技術者などが定期的に点検する仕事。
先に理解しておきたいこと

「絶縁監視装置」を理解するために、土台になる考え方を3つだけ押さえておきましょう。

1

低圧の電気は、B種接地で大地とつながっている

キュービクルの変圧器は、低圧側の1か所をB種接地で大地につないでいます。高圧が低圧側へ入り込んだときに、低圧の電圧が上がりすぎないようにするためです。

2

漏れた電気は、B種接地線に戻ってくる

建物のどこかで漏電すると、漏れた電気は大地を通ってB種接地線から変圧器へ戻ります。だから、B種接地線の電流を見張れば、建物全体の漏れが分かります。

3

測った電流には「見かけの漏れ」も混ざる

電線と大地のあいだには静電容量があり、漏電していなくても電流が少し流れます。電線が長いほど大きくなるので、本当の漏れ(抵抗分)だけを取り出して測る方式(Ior・Igr方式)が使われます。

絶縁監視装置は何を測る? ― B種接地線に帰ってくる漏れ電流

ペン太ペン太
どうしてB種接地線で、全部の回路の漏れが分かるんですか?
ハリタハリタ
どこで漏れても、電流は大地を通ってB種接地線から変圧器へ帰ってくるからさ。帰り道の1か所で見張ればいいんだ。

高圧で受電する建物では、変圧器で低圧に下げて各回路へ送ります。低圧の機器や電線のどこかで絶縁が悪くなると、電流が大地へ漏れます。漏れた電流は大地を通って、変圧器のB種接地線から変圧器へ帰ってきます。

漏れた電流大地を通って帰ってくる
帰り道B種接地線
IGRB種接地線で漏れを測る
警報設定値は50mAまで

だから、B種接地線に1つセンサーを付ければ、その変圧器から出る低圧の回路全体の漏れを見張れます。これが絶縁監視装置(IGR)です。自家用電気工作物の点検頻度を延ばす設備条件では、漏れ電流が警報設定値(50mAを上限)に達したら警報を出し、保安業務の委託先へ自動で伝えることが求められます。

たとえるなら
絶縁監視装置は、川の河口にある水位計のようなもの
上流のどこで水があふれても、水は最後に河口へ集まります。河口に水位計を1つ置けば、流域全体の様子が分かりますよね。漏れた電流も、最後はB種接地線に集まるので、そこに1つ付ければ、低圧の回路全体を見張れます。
ここに注意!
「絶縁監視装置があれば、漏電遮断器はいらない」ではありません。
絶縁監視装置は、漏れが増えたことを知らせる装置で、電気を切るものではありません。感電を防ぐために電路を自動で切る役目は、漏電遮断器が受け持ちます。
ここまでのポイント
  • 漏れた電流は、大地を通ってB種接地線から帰ってくる
  • B種接地線で測れば、低圧の回路全体を見張れる
  • 警報設定値は50mAが上限。委託先へ自動で知らせる

Io・Ior・Igrの違い ― 何を測るかで3つの方式

ペン太ペン太
漏れ電流が大きく出たら、すぐ絶縁が悪いってことですよね?
ハリタハリタ
Io方式だと、電線の静電容量の分まで入るんだ。絶縁の悪さだけを見たいなら、IorかIgrだよ。

漏れ電流には、2つの成分があります。絶縁が悪くなって流れる抵抗分(Ior)と、電線と大地のあいだの静電容量を通って流れる容量分(Ioc)です。合計がIoです。危ないのは抵抗分で、容量分は絶縁が健全でも、電線が長いほど、インバーター機器が多いほど大きくなります。

Io漏れの合計
Ior絶縁が悪い分
Ioc静電容量の分
Igr別の周波数で取り出す
方式 測るもの 向いているとき
Io方式 漏れ電流の合計 回路が短く、容量分が小さいとき
Ior方式 Ioから容量分を除いた、抵抗分 ケーブルが長い・インバーター機器が多いとき
Igr方式 商用と違う周波数の電圧を加えて、絶縁抵抗の分を取り出す 容量分の影響を受けずに絶縁を見たいとき

Ior方式とIgr方式は、どちらも「絶縁が悪い分」を見るための方式です。Igr方式は、B種接地線から低い周波数の信号を加えて測るため、その信号を流すための装置が別に必要です。

たとえるなら
IoとIorの違いは、体重と体脂肪のようなもの
体重が増えても、筋肉が増えたのか脂肪が増えたのかで意味が違いますよね。漏れ電流も、合計(Io)が増えたとき、絶縁が悪くなった分(Ior)なのか、電線が長くなっただけの静電容量の分なのかで、意味がまったく違います。
ここに注意!
「Ioの値が大きいから、絶縁が悪い」とは限りません。
Io方式の値には、電線と大地のあいだの静電容量を流れる分も入ります。ケーブルが長い、インバーター機器が多い回路では、絶縁が健全でもIoが大きく出ます。絶縁の悪さを見たいなら、Ior方式やIgr方式を使います。
ここまでのポイント
  • 漏れ電流は、抵抗分(Ior)と容量分(Ioc)の合計(Io)
  • Io方式は容量分まで拾う
  • 絶縁の悪さを見るなら、Ior方式かIgr方式


混触防止板 ― 巻線のあいだの「盾」

ペン太ペン太
混触防止板って、どこにある板なんですか?
ハリタハリタ
変圧器の中、高圧と低圧の巻線のあいださ。触れ合ったときに、高い電圧を低圧へ入れないための盾なんだ。

B種接地は、高圧と低圧が変圧器の中で触れてしまった(混触した)とき、低圧側に高い電圧が出ないようにするための接地です。ふつうは低圧側の中性点に施しますが、もう1つの方法が混触防止板です。高圧巻線と低圧巻線のあいだに金属の板を入れ、この板にB種接地をしておきます。

混触防止板巻線のあいだの板
絶縁が破れたら板から大地へ
B種接地中性点・1端子・防止板
使いみち低圧側を接地しない回路

巻線のあいだの絶縁が破れても、高圧の電気は混触防止板から大地へ流れ、低圧の巻線までは届きません。そのため、混触防止板付きの変圧器を使えば、低圧側を接地しない回路(非接地)にすることもできます。B種接地を施す場所は電技解釈 第24条で決められていて、B種接地そのものの考え方は単線結線図の見方⑪ 接地で説明しています。

ここに注意!
「B種接地は、低圧側の中性点にしか施せない」ではありません。
B種接地は、低圧側の中性点のほか、中性点が取れないときの低圧側の1端子(使用電圧300V以下)や、巻線のあいだの混触防止板に施す方法もあります。混触防止板を使うと、低圧側を接地しない回路にもできます。
ここまでのポイント
  • 混触防止板は、高圧と低圧の巻線のあいだの金属の板
  • 板にB種接地をして、混触しても低圧に高い電圧を入れない
  • 低圧側を接地しない回路にもできる

まとめ|結論

結論

絶縁監視装置は、B種接地線に帰ってくる漏れ電流を測り、低圧の回路全体の絶縁をいつも見張ります。合計を見るIo方式は容量分まで拾うので、絶縁の悪さはIor方式かIgr方式で見ます。混触防止板は、変圧器の巻線のあいだに入れてB種接地する板で、混触から低圧側を守ります。

盤の絶縁監視を確かめるときは、この順で見ます。

  1. 絶縁監視装置が、どの変圧器のB種接地線に付いているか
  2. 方式(Io・Ior・Igr)と、警報設定値(50mAまで)
  3. 警報が委託先へ自動で伝わるか
  4. 変圧器のB種接地が、中性点・1端子・混触防止板のどこに施されているか


よくある質問

絶縁監視装置(IGR)とは何ですか?

低圧の電路の絶縁の状態を、いつも見張る装置です。変圧器のB種接地線に流れる漏れ電流を測り、設定値を超えると警報を出します。低圧のどこで漏れても、漏れた電流はB種接地線を通って変圧器へ帰るので、1か所で全体を見張れます。

なぜB種接地線で測るのですか?

低圧の機器や電線で漏れた電流は、大地を通ってB種接地線から変圧器へ帰ってきます。B種接地線には、その変圧器から出る低圧の回路全体の漏れが集まるので、ここで測ると全体の絶縁の状態が分かります。

Io・Ior・Igrの違いは何ですか?

Io方式は漏れ電流の合計を見ます。Ior方式はIoから静電容量による分を除いて、絶縁が悪い分だけを見ます。Igr方式は商用と違う周波数の電圧を加えて、絶縁抵抗による分を取り出して測ります。

警報の設定値はいくつですか?

自家用電気工作物の点検頻度を延ばすための設備条件では、警報設定値は50mAを上限とすることになっています。警報は、保安業務の委託先へ自動で伝える必要があります(各地の産業保安監督部の設備条件確認書による)。

混触防止板とは何ですか?

変圧器の高圧巻線と低圧巻線のあいだに入れた金属の板で、B種接地をしておきます。巻線のあいだの絶縁が破れても、高圧の電気は板から大地へ流れ、低圧側に高い電圧が入りません。低圧側を接地しない回路にするときなどに使います。

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HARITA
電気設備の設計に携わる技術者です。内線規程や電気設備技術基準の解釈などの一次資料をもとに、設計・施工者向けの技術解説と、専門知識のない方に向けた「住まいの電気」の解説を書いています。